2021年12月22日水曜日

USSコネティカット修理に米議会が予算を計上したが、最終費用と工期は不明。同艦がそれだけ重要な装備品である証拠。ただし、インフレ調整でドル価値が減っていることに驚く。

 

USNI News

 

米議会はUSSコネティカット修理に50百万ドルを計上したものの、修理費用ははるかに膨らみそうだ。

 

2022年度国防政策法案の最新版からUSSコネティカットの修理費用の概略がうかがわれる。同法案では10百万ドルで艦首ソナードームを調達し、さらに40百万ドルでその他「緊急を要する修理」を実行するとある。

 

 

Forbes記事でクレイグ・フーパーCraig Hooperが真っ先にコネティカット修理の内容を伝えている。同法案は上院を通過しており、ジョー・バイデン大統領の署名を待つのみだ。同法案は今月初めまで国防認可法案(NDAA)と呼ばれていた。コネティカットは南シナ海で水中海嶺に衝突し、ソナードームを喪失したほか各所に損傷を受けた。

 

US CONGRESS

 

NDAAではシーウルフ級潜水艦用の艦首ドーム調達費用を計上している。単位は千ドル。

 

US CONGRESS

 

その他「緊急修理」費用も計上されている。単位は千ドル。

 

海中衝突事故後に同艦はグアムへ移動し、ほぼ2カ月かけて損傷の初期評価(内容不詳)を受け、緊急修理および内容不詳のテストを受けた。同艦はグアムからサンディエゴ移動を経て週末に最終的にワシントン州に帰港した。

 

事故後のコネティカットは安全に潜航できなくなり、ソナードームを喪失し制御が難しくなり、航行の安定性を欠いており、太平洋横断は悪夢の経験になったはずだ。

 

法案をこれ以上見てもコネティカット修理の情報は他になく、同艦を復帰させるため必要な作業がこれ以上あるのかも不明だ。ソナードームが10百万ドル超の装備であることに驚く向きもあるかもしれないが、同艦を完全復帰させるにはさらに費用が掛かるのは大いにあり得る話だ。

 

USSコネティカットがワシントンン母港へ到着(UPDATED)

By Joseph Trevithick

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USSコネティカットのサンディエゴまでの移動は悪夢の体験 (UPDATED)

By Tyler Rogoway

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USSコネティカットがサンディエゴを出港 (UPDATED)

By Tyler Rogoway

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損傷を受けたUSSコネティカットがグアムからこっそりサンディエゴへ帰港 (UPDATED)

By Tyler Rogoway

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USSコネティカットが海嶺へ衝突し、ソナードームをもぎ取られた模様By Joseph Trevithick

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比較するとロサンジェルス級攻撃型潜水艦USSサンフランシスコが海嶺に衝突し艦首を大損傷した事故があり、2006年の修理費用は79百万ドル(現在の価値で109百万ドル)だった。その際の修理ではUSSホノルルの艦首部分全体を引きはがし、三年の工期で134百万ドル(現在の173百万ドルに相当)をかけ同艦を復帰させた事例がある。

 

PUBLIC DOMAIN/WIKIMEDIA

USSサンフランシスコの海中衝突事故(2005年)後の姿

 

海軍がこの修理方法を採択した理由としてサンフランシスコは燃料交換を実施したばかりで、ホノルルが同様の修理をまもなく受ける予定で、当時の試算で170百万ドル(現在の234百万ドルに相当)とされていたためだ。

 

コネティカットでは同様の「艦首取り換え」は実効不能だ。シーウルフ級は三隻しかなく、各種特殊任務に引っ張りだこな状態だ。USSジミー・カーターはさらに特殊改装を受けた唯一の艦で、艦体を100フィート延長し多任務プラットフォームMulti-Mission Platform (MMP)を挿入している。同艦ではMMP以外各種改装を行い水中諜報活動に投入されており、海底の物体採取ほか要員の回収等にとあたっている。

 

シーウルフ級の隻数が少ないことに合わせ、設計年次が1980年代で、製造後相当の年数がたっていることのため海軍や建造企業ジェネラル・ダイナミクス内の知見が消えていることから修理費用の最終額にも影響が出そうだ。USSシーウルフはじめ同級各艦は史上最高が鵜の潜水艦で1985年当時の建造費31億ドルは現在の85億ドルに相当し、USSジミー・カーターはさらに高額となっている。

 

PUBLIC DOMAIN/WIKIMEDIA

USSコネティカットが1990年代に建造された。

 

こうしてみると50百万ドルという費用計上はコネティカット修理の頭金にすぎないのではないか。最終費用と工期は現時点で不明だ。

 

同時に海軍による次世代攻撃型潜水艦SSN(X) の発注は2031年以降との予想が出ており、SSN(X)はシーウルフ級後継艦の位置づけも期待されている。中国やロシアとの交戦を想定し、潜水艦部隊が増勢に向かうのは同年以降となる。中国やロシアの潜水艦部隊の脅威により、米海軍は対潜戦能力の整備に改めて関心を高めているところだ。

 

そうなると、コネティカットの有する比類なき能力を活用するためにも米海軍としては費用に糸目をつけないのではないか。■

 

Congress Has Already Allocated Tens Of Millions For USS Connecticut Repairs

BY JOSEPH TREVITHICK DECEMBER 21, 2021

2021年12月20日月曜日

中国が盗む技術情報は年間5千万ドル超との試算。このたび有罪判決を受けた国家保安部情報官の裁判で改めて中国の手口が明るみに。2022年は中国へもっと厳しい目を向ける必要がある。

 F-35関連の情報が大量に外部に漏れていることがわかり大騒ぎになってからだいぶたちますが、当時はまだ中国を名指しで非難できなかったのですが、今や中国がすべての元凶のように思われていますね。中国と中国共産党を区別するような議論もありますが、いまも広がる経済スパイ活動は中国人の思考方法に問題があると思います。手を汚して一から学ぶよりもカネで(あるいは非合法な手段で)買えば(入手すれば)良いとの考えで、このために中国は国産エンジンをいまだ実用化できていません。ガソリンエンジンを廃止するのはまさしく中国の思い通りの展開で、複雑度において最高峰の高効率エンジン技術をマスターした日本ははしごを外された格好です。


China’s efforts to modernize military aircraft and the connection to espionage

 

国がデータを入手し、西側の防衛材料をリバースエンジニアリングする方法が明るみに出てきた。これは米国に送還された中国情報機関の幹部が起訴され有罪判決を受けたためだ。

 

 

中国共産党下の国家安全部で上級情報官のYanjun Xuは、2018年にベルギーで逮捕され、米国に引き渡された。

 

米国陪審院はXuに有罪判決を下し、米国との技術格差を解消するためスパイ行為を図ったと認定した。

 

イノベーションよりも模倣で知られる中国政府は、自力開発できない技術はスパイ活動で入手している。スパイ行為は、防衛技術からソフトウェア開発、消費者製品に至るまで、各生産段階をで行われている。

 

11月、江蘇省MSS第6局の副局長だったXuは、経済スパイ行為と企業機密窃盗の共謀および未遂の罪で有罪判決を受けた。

 

Yahoo! newsによると、XuはジェネラルエレクトリックエイビエーションGeneral Electric Aviationが開発した複合素材製航空機エンジンのファンを入手しようと、複雑な策略を調整していた。

 

2017年、GEエイビエーション社員デイヴィッド・チェンDavid Zhengは、LinkedInを通じて南京航空宇宙大学Nanjing University of Aeronautics and Astronautics の教授にフィッシングされ、プレゼンテーションを行うよう要求された。

 

GEアビエーションには保安措置の内規があるが、チェンは訪中しプレゼンテーションした。

 

プレゼンテーションの準備中、チェンのノートパソコンに問題が発生し、中国人学生の「助け」の申し出を受け、サムドライブをパソコンに挿入されデバイス操作(マルウェアやコピーなど)をされた。

 

ノートパソコンには、GEエイビエーションの研修資料が入っていた。

 

帰国後、チェンはFBI捜査を受け、機密資料を渡していないと明らかになったが、騙されたと気づいたチェンはFBIに協力しXuを中国領から誘い出した。2018年、Xuはベルギーで逮捕され、米国に引き渡された。

 

取り調べと追加調査の結果、FBIは、Xuが偽名と手法を使って西側の航空会社を詐欺していたこと、しばしば学問を隠れ蓑として使っていたことを突き止めた。

 

中国は人的資産意外に、サイバー攻撃やマルウェアを利用して、個人情報や対象技術に関するハードデータなどの資料まで盗み出している。米国推定では、中国は年間約2000億〜6000億ドルの経済機密を盗んでおり、米国の軍事技術は氷山の一角に過ぎない。■

 

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China's efforts to modernize military aircraft and the connection to espionage | War Is Boring

December 16, 2021 Staff Writer 

 


常識破りの長射程、精密射撃で飛躍的に伸びた中距離ミサイル装備で、米陸軍は敵侵攻を食い止める抑止効果も狙う。統合武器作戦構想の一環となる。この実現を可能にしたのがロシアのINF破りという皮肉な事実。



ロッキード・マーチン(NYSE: LMT)は、陸軍の精密打撃ミサイル(PrSM)となる次世代長距離ミサイルの試射にニューメキシコ州ホワイトサンズ・ミサイル発射場で成功した。

Lockheed Martin

 

 

 

 

「米陸軍ミサイルの長期目標は海上、陸上を問わず全ドメインでの攻撃能力の実現であり、PrSMがその答えだ」

 

陸軍は、アリゾナ砂漠で行われた戦闘ネットワーク実験「プロジェクト・コンバージェンス21」で新型精密打撃ミサイルPrecision Strike Missile (PrSM)を試射し、マルチドメイン対応可能兵器の確立への取り組みを進めた。今年初めの実験で射程の新記録を樹立したPrSMは、陸上・海上の目標を破壊できる長距離精密攻撃兵器として構想されたものであり、アリゾナ州ユマ試験場での実験ではこの機能が評価された。

 

精密打撃ミサイル(PrSM) 

PrSMは、バンデンバーグ宇宙空軍基地(カリフォルニア州)での試射で新記録を更新した。同ミサイルは、敵の地上施設、防空施設、指揮統制機能、さらに移動目標へ新たな有効範囲と精度をもたらして地上戦のパラダイムを一変させる効果をねらう。

 

当初は、敵を「アウトレンジ」し、前例のない距離で敵を破壊する陸上攻撃兵器として構想されたが、PrSMは、陸上発射で敵水上艦艇への海上攻撃システムとしても重要となってきた。

 

「陸軍の長期的なミサイル・ソリューションは、海上陸上を含むすべての領域を攻撃することであり、PrSMはそのためのもの」(陸軍将来コマンド、長距離精密火力機能横断チームのジョン・ラファティ准将Brig. Gen. John Rafferty

 

PrSMメーカーのロッキード・マーチンは、バンデンバーグでの試射で400km以上と従来の射程距離を超えたとの声明をThe National Interestに伝えてきた。現在同兵器は2023年の配備に向け試験・開発段階にある。

 

「将来的には、発射装置をさらに多く導入し、拡大したい。そして、ネットワークをどこまで広げられるか。発射装置をどこまで増やせるか?センサーをどこまで増やせるか?いずれ上限が見えてくるとしても上限はどこにあるのか?そして、紛争が絶えない環境下で機能するのか」と米陸軍未来コマンドのジョン・マーレイ大将Gen. John Murrayは、Warrior誌に語っている。

 

マルチドメインネットワーク技術の向上と強化が進めば、ロシアのINF条約違反で誕生したPrSMに新たな用途と標的対象の可能性を、陸軍が見つけていくだろう。

 

中距離ミサイルを制限していたINF条約にロシアが違反したのを受け、米軍は長射程攻撃可能な地上発射型兵器の試験・開発を重ねてきた。

 

 

PrSMは、ロシアの違反行為により中距離核戦力条約(INF条約)が破棄されたことを受け、従来の射程制限を超える取り組みとマレー大将は指摘する。約500キロ射程の兵器は中距離攻撃用で、米同盟国多数が存在するヨーロッパ大陸などで特に重要な意味を持つ。敵の攻撃や反撃のリスクを抑えつつ、敵の接近を抑止することが、同ミサイルの戦略的意図だ。

 

陸軍の長距離精密射撃技術は戦闘戦術や戦略に変化をもたらしており、新世代の大国の脅威に対応するべく新しい統合武器作戦Combined Arms Maneuverの構築が急がれている。

 

前例を超える射程と進化 

精密打撃ミサイル(PrSM)は、前例のない射程距離を達成し、新しい精密誘導シーカー技術によって、障壁を打ち破っている。攻撃範囲における画期的なデモンストレーションに新たな誘導方式と精密照準が加わることで、敵の防空施設、施設、さらには移動標的への長距離攻撃でパラダイムの変化が実現する。

 

今年初め、陸軍副参謀長ジョセフ・マーティン大将Gen. Joseph Martinは、陸軍がPrSM用の新しい「シーカー」技術を開発していると述べており、陸軍はジェネラル・アトミックス・エレクトロマグネティック・システムズ(GA-EMS)にデジタル誘導ミサイルDigital Guided Missile(DGM)システムのコンセプトプロトタイプの設計、製造、試験を委託している。

 

同コンセプトは、陸軍のノンライン・オブ・サイトNon-Line-of-Sight (NLOS)機能のミサイルで新次元の標的捕捉能力を実現するもので、PrSMが射程の新記録を達成したことを考えると、非常に大きな意味がある。新しいレンジダイナミクスとNLOSターゲティング技術を組み合わせることで、陸軍地上部隊の標的捕捉と攻撃オプションにまったく新しい領域が生まれる。GA-EMS の DGM は、より多くの子弾を発射することで、「コストパーキル」を大幅に最適化可能となり、このコスト面での利点は、標的の自動認識能力により、殺傷力が大幅に改善され強化される。子弾は、「リフトボディに翼をつけ、さらに滑空させる」ことで、PrSMの射程を超える機動性をめざす設計と、開発者は説明している。

 

将来型垂直上昇機と次世代戦闘機

デジタル誘導弾システムの最初の用途はPrSMの改良だが、陸軍と業界では、陸軍がめざす将来型垂直上昇機および次世代戦闘機プログラムでの使用など、さらなる用途の可能性を想定している。

 

GA-EMS社は、デジタル誘導弾システムを、プラットフォーム間で容易に移行でき、必要に応じてアップグレード可能とする技術標準で構築しているようだ。理由の1つとして、GA-EMSが自社資金で研究開発とデジタルエンジニアリングミサイルの設計をすすめていることがある。

 

GA-EMS社長スコット・フォーニーScott Forneyは、同社声明文で以下述べている。「当社には10年以上にわたる各軍向け極超音速兵器技術の開発、発展の実績があります。当社は、検証済みモデリングとシミュレーションのインフラストラクチャに基づくデジタルモデルでミサイルを開発しています」

 

PrSMはGPSと慣性計測技術を利用しているが、照準精度、誘導、データリンク通信、"ハードニング "に関する各種革新的技術が裏にあることは確実だ。このため、陸軍がGA-EMSの技術に注目し誘導ネットワークのハード化を図り、さらにGPSを使わず妨害を受けにくい標的捕捉技術を模索していても不思議ではない。

 

今年初めに行われたPrSMに関する議論で、ラフェティ准将は、長距離攻撃兵器は実際に、統合武器作戦の高度化に役立つとWarriorに説明している。

 

「長距離射撃で、敵の統合防空網を制圧・無力化し、統合兵器の機動力を発揮できる。統合武器体系は、敵に接近し破壊することを可能にできる。そのためには、装甲車、歩兵、戦闘航空隊が同期して協力することが必要となる。同期できないと、攻撃効果ははるかに少なくなってしまう。敵に大射程距離があれば、こちらの複合武器チームが分断される。敵はわが方を見て、戦い方を学んできた。彼らは我々の優位性を相殺できる分野に投資してきた」とラファティ准将は語っている。■

 

 

New Army Precision Strike Missile to Attack Enemy Ships at Sea, Achieves Breakthrough Range - Warrior Maven: Military and defense news

UPDATED:DEC 16, 2021ORIGINAL:DEC 16, 2021

KRIS OSBORN, WARRIOR MAVEN


 

 

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest and President of Warrior Maven -the Center for Military Modernization. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.


 

2021年12月19日日曜日

イスラエルのKC-46前倒し調達要望が米政府に却下された。背景に空中給油能力不足のまま、長距離攻撃のイラン空爆作戦立案を迫られるイスラエルの焦り。

 

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ISRAELI MINISTRY OF DEFENSE

 

政府はイスラエルが求めてきたKC-46Aペガサス空中給油機の同国向け引き渡し前倒し要望を却下し、技術問題品質問題が理由でメーカーの納入遅れが発生していることを理由にしたといわれる。記事によればイスラエル政府が同機の早期取得を強く希望しているのはイラン核施設への空爆の可能性が強まっているためだという。

 

 

ニューヨークタイムズ記事ではKC-46A納入日程についての米イ当局間協議の席上でイスラエル側が早期引き渡しを強く希望してきたとある。これに先立ち、イスラエル国内紙Yedioth Ahronothの記事が出ており、ナフタリ・ベネットNaftali Bennett首相率いるイスラエル政府がイラン核施設空爆作戦を復活させようとしており、イスラエル国防軍が訓練を強化中とある。ときあたかも米国はイランとの核交渉が挫折しつつある。

 

米政府は当初KC-46A計8機に付属品併せた一式として24億ドルでイスラエル向け売却を2020年3月に承認していた。今年2月になりイスラエル国防省の発表で最初の二機導入が遅れ、受領時期は不明とされた。昨日のニューヨークタイムズ記事では2024年以降とある。

 

昨年の報道では製造中の米空軍向け機体2機ををイスラエルが入手する検討をしているとあった。ただし、今回の動きとの関連は不明。

 

最大の問題はボーイングが米空軍向け機体納入で遅延を発生させていることで、原因に機体の技術面の問題が解決できていないこと、製造上の品質問題があるとされる。今年9月にもペガサス完成期の納入がほぼ一カ月停止されたのは機内燃料ラインで詰まりが見つかった機体があったためで、同機はシーモア・ジョンソン空軍基地(ノースカロライナ)へ到着後に問題が見つかったという経緯がある。米空軍は以前にも同機受領を停止したのは、FODつまり異物デブリが機内で見つかり安全上の懸念が浮上したためだった。

 

とはいえ、製造ラインの問題が解決されても、KC-46Aで長く残ったままの遠隔視覚装備(RVS)の問題解決をめざし再設計作業に入っている。RVSは機内操作員が給油時に使うが、従来の給油機では操作員が機体後部で苦しい体位で給油を操作していたが、ペガサスでは機体前方ですわったままカメラ多数を見ながらRVSを操作する。RVSは2D3Dのハイブリッドシステムで操作員は特殊メガネを装着し操作する。空軍はRVSの正常な運用は2023年から2024年まで待つ必要があるとみており、同機の空中給油機能が制約をうけたままだ。

 

USAF

KC-46A機内で遠隔視覚装置を操作するブーム操作員が特殊メガネを装着している

 

このためイスラエルが前倒しで機材を受領しても、やはり2024年までは重要機能が制約されたままの機体となる。そもそもイスラエル政府が給油機取得を早期に必要とする背景にイラン空爆の支援が必要と判断していることがあるため、これは重要だ。イラン空爆作戦は複雑かつ高リスクになるとみられる。イスラエル空軍にはボーイング707を改装した給油機が7機あったが、3機は廃止済みで、4機で給油任務をこなしている。KC-46Aで問題がすべて解決すればイスラエルに新鋭給油機が登場し、従来より大量の空中給油が可能となる。

 

IAF

イスラエルはボーイング707改装の空中給油機を運用中。

 

 

「KC-46新造機が加わればイスラエルは攻撃範囲、攻撃力の増強が可能となる。KC-46は攻撃機戦闘機への給油に加え、自機も空中給油を受けられるからだ」「給油能力は重要で、イスラエルは旧式機を使いまわしつつ、アラブ首長国連邦やサウジアラビアに途中着陸せざるを得ない。この両国ともイランに競合しているとはいえ、攻撃に加担したと非難を受けたくないはずだ」とニューヨークタイムズは指摘している。

 

あわせてイスラエル軍には複雑な形での長距離攻撃実行の経験が豊かで、今も能力整備を続けている。なかでもF-15イーグルを特別改装している。タンカーを追加配備すれば航空作戦の拡大につながる。さらにステルス戦闘機F-35Iアディールが大きな効果を上げる。F-35Iはイラン防空体制を突破し無力化しつつ、その後に続く非ステルス機による空爆の成否を握ると期待されているが、機外燃料タンク装着で航続距離延長ができない。

 

 

KC-46A受領の遅れで別機材導入をイスラエル政府が検討している兆候はないが、エアバスのA330多用途給油輸送機(MRTT)の採用が他国に多く、このたびロッキード・マーティンも米空軍向けに同機をペガサスの競合機種として採用働きかけを開始している。イスラエル航空宇宙工業傘下のベデクエイビエーショングループが中古767を給油機に改装する動きをボーイングが阻止したいとしているが、現実にブラジル、コロンビア両国向け改装機の販売が成立している。KC-46Aも原型は767だ。

 

イランも考えられる脅威を認識し、核ミサイル施設を地下深くに移設している。通常型の空中発射兵器でこうした強化目標を撃破するにはバンカーバスター型兵器が必要となる。

 

懸念の爆撃目標にフォルドの地下核施設含む地下深くの標的への攻撃手段を有するのは米国のみで、GBU-57/B大型貫通爆弾の出番となり、米空軍ではB-2スピリットステルス爆撃機がこれを搭載する。そうなると、イスラエルがイラン核計画を完全破壊しようとすれば米国の直接支援が必要となる。

 

イスラエルには米国が供給したGBU-28/Bレーザー誘導5,000ポンド級バンカーバスター爆弾があるが、旧式装備で信頼性に疑問が生まれている。米空軍では同じ5,000ポンド級バンカーバスター爆弾の新型を開発中とされる。未確認報道ながらイスラエルがこの新型装備の情報提供を求めているらしいが、十分な数量確保は当面不可能だろう。

 

イスラエル空軍には小型バンカーバスター兵器があり、強化度が低い標的への攻撃に投入でき、その他関連施設で防護措置が軽いものへは標準型誘導爆弾ないしスタンドオフミサイルで対応できる。

 

イラン空爆作戦では同国のイスラエル向け報復攻撃能力を無力化するのが狙いであるのは疑う余地はない。ここでもミサイル関連施設の多くが地下に構築されており、イスラエル側には対応が必要な施設が多数ある。イランの弾道ミサイルが地下施設にあり、これを現有のバンカーバスターで攻撃するのがイスラエルの作戦となる。

 

地下施設へのアクセスを止めるべく入口をふさぐ攻撃もイスラエル空軍の課題となる。これに成功すればイランは施設機能の再開に多大な労力と時間を投入せざるを得なくなる。

 

地下深くに構築された施設への攻撃として、特殊部隊で弾道ミサイル基地を襲撃する作戦も大規模空爆と並行して実施されるはずだ。施設を汚染して使えなくする作戦もあり得る。イスラエルは暗殺工作や妨害工作を広く展開していると見られており、サイバー攻撃もその手段で、米国も支援することがあり、イランの核開発の野望を食い止めようとしてきた。イスラエルがイラン核兵器開発の阻止に直接軍事行動を取れば、こうした作戦も大規模に展開されるはずだ。

 

いずれにせよ、現時点でイスラエルは何らかの軍事行動による抑止効果をイランに示す選択肢を真剣に検討しているようだ。その結果として空爆にかわりに間接的に目的を達成するその他作戦もあり得、イラン政権の重要人物を狙うかもしれない。

 

イスラエル軍には「イランによる作戦級行動への備え」を命じたと国防相ベニー・ガンツBenny Gantzが発言しており、「国際社会から政治外交、経済、軍事でイランへの圧力が続いており、核開発の幻想に歯止めをかけようとしている」と評した。

 

「絶えず米国と連携していきたいが、結局わが国の運命は自分で責任を持たざるを得ず、自国市民の安全を確保するのも自国の責任範囲だ」とイスラエル国防軍エイアル・ザミール少将Maj. Gen. Eyal Zamirが語っている。同少将はIDF参謀総長就任の予定だ。「とはいえ、米国と調整なしにこれだけ大規模の作戦を実行するのは難しい」

 

その中で米政府関係者は引き続きイランとの交渉への悲観的見解を大っぴらに述べており、核開発をめぐり新たな合意が生まれる余地が少ないことがわかる。ドナルド・トランプ大統領が2018年に多国間合意から米国を脱退させてから、イラン政府は合意の主要分野で違反を重ねている。なかでもウラン濃縮を強化し核兵器の実現に近づいていることがイスラエルはじめ各国の憂慮の的だ。ただし米情報機関の見解ではイラン政府が核兵器製造の決定を下した兆候はない。

 

米イ両国では「プランB」の選択肢を検討中といわれ、新たな経済制裁、サイバー攻撃、あるいは間接軍事行動を中東のイラン代理勢力に展開することがあるという。これはイランとの交渉がつぶれた際の選択肢だ。

 

KC-46Aがないまま、あるいはその他戦力がないままでイスラエル軍が単独でイランへの攻撃を開始するのか、イスラエル政府が自国権益の保護で必要と判断したら行動を実施に移すのかはまだわからない。■

 

Israel's Request To Speed Delivery Of KC-46 Tankers Critical For Striking Iran Denied

The KC-46As would go a long way to bolstering Israel's already small and dwindling tanker fleet.

BY JOSEPH TREVITHICK DECEMBER 14, 2021