2016年5月2日月曜日

米サイバー軍はISISの指揮命令機能、財務機能をどう攻撃しているのか




ISIS向けサイバー作戦は相当の効果を出してきたようです。当然相手方も防衛対抗措置を取りますので、当面はいたちごっこでしょうか。でも資金源の遮断が効果を挙げれば活動も低調になっていくはずです。イスラムの教義でまとまった組織というよりも金銭でつながった利益集団と見るほうが正しいのかもしれません。

The Cyber Threat: Cybercom’s War on ISIS

May 2, 2016 5:00 am

cyber
アシュトン・カーター国防長官と統合参謀本部議長ジョセフ・F・ダンフォードJr海兵隊大将 / AP
     
ペンタゴンが秘密のうちに実施中のイスラム国へのサイバー戦で追加情報が浮上した。
  1. アシュ・カーター国防長官とジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長が米サイバー軍の作戦内容について質問を上院公聴会で28日受けた。
  2. 「目的はISILの指揮統制機能を妨害し、資金移動を妨害し、地元住民を恐怖で統治するのを妨害し、外部から戦闘員を募集するのを邪魔すること」とカーター長官は述べ「このすべてでサイバーを利用して実施中です」
  3. ダンフォード議長からは「仮想隔離状態を作り出そうとしています」「地上作戦を補完し、特にISILが外部各地で展開を狙う作戦を対象にしています」と発言。
  4. カーター長官は米国と有志連合軍の空爆作戦の裏でシリアとイラク国内でサイバー攻撃を行っていると述べた。「感触ですが直接の効果が生まれています。空爆と並行してインターネットを遮断しています」「近代戦では敵打破のために利用できる手段すべてを投入する必要があります」
  5. 二人とも作戦の詳細には触れなかったが、サイバー攻撃は1月に開始され秘密のベールに覆われたままだ。
  6. バグダッドでは空軍少将ピーター・ガーステン(対ISIS軍事作戦および情報担当副司令官)が火曜日にサイバー作戦が「戦場に効果を」上げつつあると述べたが「詳細は最高度の機密情報だ」とした。「高度に調整された作戦であるとだけお伝えできます。デーシュへ照準を合わせており、損害を与える能力もこちらにはあります」
  7. 少将は調整業務の始まりは「特定の標的に対してどんな効果をあげたいのか」を考えて計画立案することだと説明。「各情報機関と作戦部隊など関係者はすべて調整し、図上で作戦を立てます。各方面から内容説明があり、その後で実施に移ります」
  8. ISISに対してサイバー軍は27個編成した戦闘ミッションチームの一つを選択し、タンパにある中央軍と組ませる。中央軍はイスラム国への軍事作戦を統括している。
  9. チーム構成は軍人、民間人、契約企業で海外のコンピュータシステムを標的にサイバー諜報活動を行う。アラビア語が達者なものが多数あり、ISISの作戦・通信の理解には不可欠だ。
  10. サイバー軍の目標はチーム数を133まで増やし、合計6,187名規模にすることで、各チームは45名から60名が配置される。
  11. サイバー攻撃立案の第一段階は作戦の必要条件を設定することで通常は軍がISISの「重心」と呼ぶ指導層、資金、兵器、そして指揮統制通信が行われるサイバー空間が標的となる。
  12. イスラム国は携帯装置で通信をしており、有線通信も多用されている。インターネットの利用は減っているが、アルカイダはまだウェブサイトを好んで使っている。
  13. ISISは人の手を介して重要内容を伝えることもあり、部隊指揮官やそうした文書配達係はサイバー攻撃でも高価値の標的になる。
  14. 最近入手したISIS内部文書によればフェイスブックやツィッターも多用され戦闘員の移動からシリア入りまでを助けていると判明した。
  15. サイバー攻撃の標的にはほかに公式、非公式のISIS情報があり、公式発表からビデオ映像まで同集団のテロ活動の支援に使われている。
  16. ISIS戦闘員の使う主なアプリににテレグラムがあり、データを暗号化している。サイバー作戦ではこのアプリを狙い暗号解読を目指している。テレグラム利用者のフォーラムにはプロパガンダや指示内容が含まれており、例としてオンラインで正体を隠す方法を説明するものがある。
  17. IS関係者は海外のハッカー集団に金銭で各国政府ウェブサイトから極秘情報を盗ませていることが判明しており、将来のテロ作戦の参考にしている可能性がある。今後は米サイバー部隊がここに着目するはずだ。
  18. 2014年だけでISISが資金10億ドルを調達している。原油販売、恐喝、身代金、現金押収、ISIS支配地域での徴税や美術品密売でこれだけの金額を作った。
  19. そこで資金調達を妨害すべく、サイバー攻撃がISISの財務システムに行われている可能性があり、機能停止や妨害、またはなりすましで偽情報を流しているのだろう。
  20. 軍事問題の専門家によればISIS独特の指揮命令形態はアナリストが「中央統制、分権を組み合わせた実施」と呼ぶ方式で自称カリフのアブ・バカ・アルバグダディを頂点に指導層には中央方式で命令を伝え、実際の実施詳細は現場指揮官に任せる方式だという。
  21. そこでサイバー攻撃の第一段階では広範囲の情報収集で対象活動の指揮統制の仕組みを解明する。
  22. サイバー軍司令官マイク・ロジャーズ提督は4月5日、米国からのサイバー攻撃で「ISILは攻撃の立案、実施でイラクあるいはシリア内の拠点から米国を狙うのが一層困難になっており、わが軍将兵による物理的な攻撃は安全に実施できるようになり、最終的にISILを撃滅する」と証言している。
  23. ISIS自体のサイバー戦実施能力についてロジャーズ大将は懸念はあるが相手方のサイバー攻撃実施能力は限定的であり、むしろサイバー空間を利用した宣伝プロパガンダや、戦闘員勧誘、過激思想の普及、資金集めが中心になっていると述べた。
  24. サイバー作戦自体が秘密の扉の向こうにあるため、少なくとも2010年代末まで作戦が効果を上げているかは明らかにされないだろう。■


バルト海上空で再びロシア機が米軍機にバレルロールで挑発行為



Russian Su-27 barrel rolls on U.S. spyplane over the Baltic Sea. Once again.

Apr 29 2016 - By David Cenciotti

Image credit: Crown Copyright

  1. 4月29日、ロシアのSu-27フランカー一機が米空軍RC-135の真上で「バレルロール」をした。米軍機はバルト海上空の国際空域で偵察任務に就いていたとCNNが報道している。
  2. ロシア機は米軍情報収集機の横25フィートまで接近した後反転し、RC-135の反対側に抜けた。まるでトップガンのような曲芸は別のSu-27が同じバルト海で4月14日に里ヴェっとジョイント機を相手に行っている。
  3. このような危険行為が米軍スパイ機とロシア戦闘機では世界各地で当たり前になってきた。今年1月25日にはRC-135が黒海上空でロシアSu-27フランカーの迎撃を受け、Su-27が過激な操縦を行ったためRC-135の操縦安定性に影響が出ている。昨年4月7日にはこれもSu-27がRC-135Uからわずか20フィートの地点を飛行する事態がバルト海上空で発生。また昨4月23日には米空軍RC-135Uコンバットセントが通常の偵察飛行をオホーツク海上空で行っていたところロシアSu-27が同機の航路を横切り距離は100フィート未満だった。
  4. ロシアのフランカーがカリニングラードから離陸し「アクロバット操縦」をしかけるのが通例になっており、大人げない危険な行為である。■

★★A400M>エンジンギアボックス問題で深刻な遅延が発生している模様



この機体も相当当初の日程から遅れて費用もかさんでいるようですが、C-17を導入したほうが安上がりだったのでは。それをマレーシアが導入するというのはどういうことなんでしょう。日本も人のことは言っておられず、C-2の開発で苦労していますね。
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Airbus Reports A400M Engine Gearbox Problems Will Cause Delays

Pierre Tran, Defense News 10:32 a.m. EDT April 28, 2016
635817516142734637-DFN-France-A400Mx(Photo: Airbus Defence)
PARIS — エアバスが巨額の財政損失に見舞われそうだ。A400M軍用輸送機のエンジンギアボックス問題が原因だと同社は4月28日に明らかにした。
  1. 「A400Mの生産引き渡しで深刻な問題があり、エンジンプロペラのギアボックスで新たに予想外の問題が発生したためだ」とエアバスグループのCEOトム・エンダースが第一四半期営業報告で述べた。「面倒だが解決方法をエンジンメーカーと探っていく」
  2. エアバスはギアボックスの補修費用は「相当な金額」になるとみている。
  3. 「補修費用は完了時に上乗せするが、現時点で設計、技術、営業で全体像が見えず、費用面で大きな影響が出そうだとしか言えない」と同社は伝えている。
  4. 同社発表では50億ユーロ(57億ドル)がこの問題で費用に上乗せされる可能性があるとする。
  5. 解決方法の模索が進行中だと同社は発表。発注元と交渉も継続中で、引き渡し日程が変更となる。
  6. A400MのエンジンメーカーはスペインITP、ドイツMTU、ロールスロイスとサフランの共同事業体だ。ギアボックスのメーカーはジェネラルエレクトリックのイタリア子会社アヴィオエアロ。
  7. エアバスグループの営業利益は5.01億ユーロと前年の6.51億ユーロから減少しているが、売り上げも211億ユーロが122億ユーロになっている。年間全体の見込みは民間商用機の納入により年末にかけてキャッシュフローと利益双方が安定してくると同社は見ている。
  8. A400Mのローンチカスタマーのベルギー、英国、フランス、ドイツ、ルクセンブルグ、スペイン、トルコの各国はここにマレーシアも含め同機を購入する予定だ。引き渡しの新日程はヨーロッパ調達機関OCCARを通じて現在交渉中である。■>



2016年5月1日日曜日

★★X-2の初飛行の意味はこう見られている





OPINION: Why Japan's X-2 fighter is more than a symbol of pride


29 APRIL, 2016
BY: FLIGHT INTERNATIONAL
Asset ImageAkira Uekawa
三菱重工業のX-2が初飛行に成功したが、高性能戦闘用航空機の開発が続く北アジアで大きな一里塚になったのではないか。
  1. X-2は実験機で実戦用ではないが、政府の万全な支援のもと日本産業界が着実に技術開発を進めてきた成果を体現した高性能戦闘機でステルス、推力偏向制御、センサー類や高性能エンジンを実用化している。
  2. 今回の成果はもっとも野心的な航空宇宙事業となる戦闘機開発につながるはずだ。同機にはF-3の名称がつくのだろう。
  3. 業界の経験則からこの事業は挑戦の価値があるが、高価なものになりそうだ。日本が国内開発した前作F-2は米国の支援を受けてロッキード・マーティンF-16と類似した機体ができたが翼面積は25%広く、機体単価は三倍になった。
  4. だが日本だけではない。中国も戦闘機二型式を同時に開発中だ。
  5. このうちJ-20はロシア製エンジン双発で初飛行から6年が経過しているが、中国のブログによればいよいよ供用開始しそうだ。ただし、機体は黒く塗装されているものの本当に低視認性なのか不明だ。
  6. また任務も不明のままだ。制空戦闘機としては機体が大きすぎ、長距離迎撃戦闘機として敵の重要な支援機材を攻撃するのが役目かもしれない。
  7. FC-31はもっと謎に満ちており中国が同機にどこまで真剣なのか見えてこない。昨年11月のドバイ航空ショーでAVICは前例のない報道会見を行い、海外各国に広く同機開発の費用分担を求めていた。
  8. 韓国はインドネシアが20%負担する形でKFXに取り組んでいる。GEエイビエーションF414双発またはユーロジェットEJ200双発となる。2015年に中核技術の供与を米国が拒んだのは大きな痛手だが韓国は同機の成功を疑っていない。
  9. 既存メーカーが日本、中国、韓国それぞれの開発事業を冷笑するのは簡単だ。技術や統合ノウハウがないことを理由にできる。「純国産機」とはむなしい事業以上の何物でもない。
  10. それでも米国、ヨーロッパ、ロシアの機体メーカーは今後北アジアで自社製品の需要が縮小することを覚悟せねばならない。技術面でどれだけ海外製機材が優れていようと一国の誇りを背負った機材には太刀打ちできない。■


★極超音速飛行>中国が滑空テストに成功したと報道がありますが.....



極超音速飛行はまだ未知の領域で、ミサイル防空体制を無効にするミサイルになるまではまだ時間がかかりそうですが、米国の開発が予算問題などでもたもたしているうちに中国に先を越されかねません。
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China’s Hypersonic Glider Passes New Test


POSTED BY: MATT COX APRIL 29, 2016
The DF-ZF hypersonic glide vehicle. Photo: People's Daily Online.The DF-ZF hypersonic glide vehicle. Photo: People's Daily Online.
中国が新型極超音速滑空体の第七回目飛行テストに先週成功していたことが人民日報オンライン版で紹介されている。

「DF-ZF」滑空体はマッハ5から10で飛行できるとしている。

中国での記事では米情報機関は中国がDF-ZFで「核弾頭を搭載しミサイル防衛システムを突破する」ことを恐れているとのWashington Free Beacon を引用している。

中国国防省報道官は中国が極超音速ミサイルの実験を2015年3月に行っていたことを確認しており、同実験では特定の国を標的にしたものではなく、あくまでも科学研究が目的だったと強調している。

米空軍も極超音速兵器開発で一定の成果を上げており、スクラムジェットの実験で成功を収めている。

2013年にX-51ウェイヴライダーの第四回目テストを行い、これまでで最長の飛翔時間を達成している。B-52から発射したロケットから分離したX-51はボーイング製で高度6万フィートまで上昇しマッハ5.1に加速して3.5分間飛行した後燃料切れとなり太平洋へ落下している。

X-51は9年間で3億ドルが投じられており、スクラムジェットで加速後、炭化水素燃料を取り込み、能動的な冷却効果を実証するのが目的だと空軍は説明している。通常のエンジンと異なりスクラムジェットあるいは超音速燃焼型ラムジェットは可動部品が少なくて済み空気取り入れ式推進で超音速飛行が可能となる。■



2016年4月30日土曜日

北朝鮮の最新SLBMから変更点を読み解く




North Korea announces third SLBM launch

Richard D Fisher Jr, Washington DC - IHS Jane's Defence Weekly
29 April 2016
2015年5月8日(左)と4月23日(右)の比較では固体燃料エンジンと液体燃料エンジンの相違に由来する噴煙の違いが明白だ。Source: KCNA
北朝鮮が4月24日に公表した写真では二番目の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)は固形燃料方式でガス圧縮発射技術を使っていることをうかがわせる。これとは別に北極星1号ミサイルが液体燃料方式であると判明している。
朝鮮中央通信(KNCA)は4月24日に今回のSLBM実験は「高出力固体燃料方式エンジン」で「朝鮮方式による水中発射システムの信頼性を確認強化し主体思想による水中攻撃作戦の技術要求をすべて満たした」と報じていた。
国防総省はSLBMの発射は4月23日に行われたと確認しているが、韓国聯合通信は韓国統合参謀本部が北朝鮮ミサイルは30キロ飛翔したと述べたと報道していた。またミサイルを発射したのは排水量2千トンのSinpo級潜水艦だったと見られるとも伝えている。
画像から2015年5月8日の北極星1号SLBMは液体燃料エンジンであったと推測された。噴煙が広がっておらず透明度が高いためだ。北極星1号を米国はKN-11の名称で識別し、ソ連のR-27ジブ(SS-N-6サーブ)液体燃料式SLBMが原型と見られている。
An image showing the SLBM emerging from its cold-launch tube. The launch may have taken place on a stationary platform rather as the walls of the submarine's fin cannot be seen. (Rodong Sinmun)圧縮ガス発射管からSLBMが飛び出す瞬間をとらえた画像から発射は水中固定発射台から行われたのがわかる。潜水艦の潜航舵が見えないため。(Rodong Sinmun)

4月24日の公式発表に合わせて公表された画像では北極星の名前が書かれた類似ミサイルが水中発射される様子が移っているが、ミサイルに番号がついているか判明しない。ただしこのミサイルの噴煙はもっと広がって透明度が下がっており、固形燃料ロケットの特徴と符合する。またミサイルに飛行制御用の噴射弁が4つあることもわかる。
3月23日には直径1.25メートルの固体燃料ロケットエンジンを製作可能と発表している。北朝鮮がイランから固体燃料ロケット技術を導入した可能性はある。イランには二段式固体燃料ミサイル「セジリ」があり、直径が1.25メートルで飛行制御用の噴射弁がついている。■


★ISIS戦闘員は月給50ドル! 空爆で財政ピンチだがまだ崩壊の兆しなし




ISIS internal docs show struggle to retain fighters, cut costs

By Ryan Browne, CNN
Updated 1340 GMT (2040 HKT) April 27, 2016


ISISは資金、人員両面で不足に直面中と有志連合軍副司令官が26日明らかにした。
その裏付けが新たに入手したISIS内部文書だ。資金面では一部を性奴隷に使い、戦闘員には電力消費を節約し、公用車を私的に使わないよう求めている。人員面では士気が低下して、医師診断書で第一線勤務を回避する動きがある。
ピーター・E・ガーステン中将は記者会見でISISの財政と人員を狙う作戦で外国人戦闘員の数は一年前の毎月1,500名から2,000名入隊が今は毎月200名に低下したと明らかにした。
「戦闘員の消耗率が上がる一方、士気が低下しているのがわかります。給与支払いが難しくなっています。デーシュを抜ける動きが見られます」とISISの別名を口にした。
昨年10月から米国主導の有志連合軍はISISの石油施設や現金保管場所を集中的に攻撃し、ISISの財務力を低下させ3億ドルから8億ドルが消え、今後もさらにISISの財務力を標的にするとガーステン中将は述べた。
アイメン・アルタミミはワシントンに本部を置く中東フォーラムでジハード情報戦の研究員でISIS内部文書をこのたび入手した。「内部資料から圧力がじわじわと効いてきて内部の軍事、財政、行政機能が影響を受けていることがわかる」と記している。
アルタタミは各種文書をイスラム国の占拠地にいた元住民や活動家、ジャーナリストから入手した。文書の一部はISISから奪回した場所で発見された。
ISISの公式記録はテロ集団の組織面での最新状況を見せてくれる。

キャッシュフロー問題

ISIS戦闘員への給与支給方法が詳しくわかる。戦闘員に配偶者、子供、性奴隷がいる場合は別途手当が支給されている。
平均すると戦闘員は「毎月50ドルに加え、妻一人あたり50ドル、子供一人35ドル、性奴隷一人50ドルが支払われている。さらに配偶者の両親は50ドルずつ、その他親族には35ドルが支給されている」と文書からわかる。
アルタミミによればこの金額はシリアでISISとつながる戦闘員から確認を受けたという。
内部通達でISIS戦闘員は電力消費を抑え、公用車を私的に使わないよう求めているのは組織が資金難に直面している表れだとアルタミミは見ている。
別の文書ではISISの首都とされるシリアのラッカに駐留する関係者は最高50%の手当減額を受けたとしている。

人員不足

だがISISに深刻なのは最前線に戦闘員を十分に確保することだ。
アルタミミによれば内部資料でシリア北東部アルシャダディでの敗戦後に戦闘員の追加投入に失敗したことがわかるという。またISISは昨10月に「脱走者への恩赦を発表」した。
人員不足の背景には偽の診断書で戦闘から抜けるISIS戦闘員が後を絶たないためだと一部文書が示している。
ただ診断書入手は困難になっているとアルタミミは指摘する。イスラム国の占領下で医師の処遇がひどく、多数の医師が逃走しているためだ。
それでもISISへの反乱が発生するとはアルタミミはじめ専門家は見ていない。「イスラム国の統治下で住民は劣悪な生活環境にならされて、長年の内戦状態が深刻でさらに生活水準低下を覚悟せざるを得ず、反乱を起こして無情に弾圧されるよりましと見ている」とアルタミミは分析している。
ガーステン中将は「有志連合軍はこのがん細胞と毎日戦っているが、この戦いには忍耐と時間が必要だと理解してほしい」と述べた。

なお、ISISの収入源は以下の通り。

  • 銀行差押え 5億ドルから10億ドル
  • 石油 年間4.8億ドル
  • 文化財転売 1億ドル
  • 税徴収 毎月48百万ドル
  • セメント 不明
  • 身代金 年間2千万ドル
出典:米財務省、RAND研究所、CNN取材



2016年4月29日金曜日

中国の南シナ海進出>スカボロー環礁での基地設営を阻止すべき 日本も参加を期待される可能性



Pentagon Warns of Conflict Over Chinese Buildup on Disputed Island

Beijing asserts Scarborough Shoal is Chinese territory
April 29, 2016 5:00 am
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フィリピン付近で紛糾中の島しょ部分に中国が軍事施設を造成しようとしており、完成すれは域内対立をあおりかねないとアシュ・カーター国防長官が28日議会で発言した。
  1. カーター長官発言は中国がスカボロー環礁に軍事施設を追加すれば、米艦艇が拠点とするスービックベイ軍港から120マイル地点で中国ミサイルの射程に入るとの指摘に答えたもの。
  2. 長官はスカボローは「紛糾中の地点の一つであり、軍事衝突に発展する可能性はある」とし「フィリピンに近いことを憂慮している」とカーター長官は上院軍事委員会公聴会で述べた。
  3. 長官に質問したのはダン・サリバン上院議員(共、アラスカ)で同議員は公聴会でスカーボロがフィリピンの中心ルソン島を脅かす軍事三角形の頂点の一つになると述べている。地図は中国が軍事拠点化を進めるパラセル諸島のウッデイ島、スプラトリー諸島の三個の島を示した。
  4. 「中国はすでに三角形の二辺を整備した。スカボロー環礁から戦闘機やレーダーの行動半径が地図でわかる」(サリヴァン議員)
  5. カーター長官はこの地図は「全く正しい」とし、中国のめざす軍事三角形の姿を認めた。
  6. その後サリヴァン議員はWashington Free Beaconに対して中国がスカボローでミサイル装備や軍用機の運用をするとの報道に「非常に憂慮している」と述べている。
  7. 「この環礁はもともとフィリピンが領有を主張していたが、占拠の上施設建設で軍事拠点化が完成すればPRCはフィリピン北部のすべての離発着をレーダー監視でき、巡航ミサイルを沿岸防衛用に持ち込めば、米軍部隊は釘付けになりフィリピンでの作戦行動が危険になる」と議員は述べ、中華人民共和国の略号を発言で使った。
  8. その前にトム・コットン上院議員(共、アーカンソー)から中国軍がスカボローにレーダーとミサイルを展開すればフィリピン北部の航空機の動きが筒抜けとなり、スービックベイ、ルソン海峡、マニラ湾がミサイルの脅威にさらされると発言していた。
  9. カーター長官はだからこそフィリピンとの防衛関係が強化されていると発言。「フィリピンは条約上の同盟国であり、真剣に受け止めている。そのため作戦用の新施設を構築中であり、現地での装備展開も進めている」
  10. ペンタゴンは高度防衛合意によりフィリピンへ艦船、航空機を派遣している。
  11. 問題海域では中国の軍事活動で緊張が高まっているが法律対決が数週間以内に迫り、国際法廷でフィリピンに有利な裁定が出て南シナ海での中国の過剰な主張が退けられることになりそうだ。
  12. 北京では中国国防省の報道官が島しょ建設工事に反対する米国にいら立ちを隠せず、緊張を高めているのは米国の側だと発言。
  13. 報道官は人工島建設を「メディアの妄言」と片付け、スカボローは「中国固有の領土であり、中国には各種の脅威に対抗し、主権と安全を維持する権利がある」と述べたが同地に軍部隊が派遣されているのかとの質問の回答は避けた。
  14. 米太平洋空軍は4月19日、21日、26日にA-10三機をスカボロー付近まで飛行させた。各機はフィリピンのクラーク航空基地から発進した。
  15. カーター長官はジョン・マケイン委員長(共、アリゾナ)から厳しい発言を浴びた。長官が飛行の詳細は秘密と述べたためだ。
  16. 「これは二回目ですよ、長官、報道で広く知られているのに確認を拒んだのは。本委員会に対してその姿勢はいかがなものか。問題の島しょ付近で飛行したのは報道済みですよ」「わが艦船、航空機を国際水域に送っている事実を秘密扱いしているのは米国が国際法を尊重し遵守していることは世界で周知の中、誤解を与え当惑を呼ぶ行為です」
  17. 「なぜ事実を秘匿扱いにするのか。世界各国が当然すべきことを我が国がしているだけではないですか。なぜこれを秘密にしておくのか」
  18. 公聴会の前半でカーター長官は米海軍による「航行の自由」作戦を話題にすることを拒否したが、マケイン委員長から艦船通航の事実を確認するよう求められた。
  19. カーター長官は南シナ海での海軍、空軍の活動内容が秘密扱いになっている理由を精査したいと述べ、論評しないことで秘匿扱いルールを「尊重」しているとした。
  20. だが長官はハワイに本拠を置く太平洋空軍が先週の報道発表でスカボロー付近をA-10四機とHH-60ヘリコプター2機が飛行したと公表していたことは知らなかったようだ。
  21. カーター長官は域内各国は周辺地域の各国も含め皆中国の軍事活動に憂慮の念を表明しており、「だからこそ再バランスを進めている」と米軍のアジア展開に言及している。
  22. 長官は中国の活動により同盟各国との関係は強化されており、ヴィエトナムやインドのように新しい協力関係が生まれていると発言。中国の軍事拠点化は「再優秀な装備をアジア太平洋に展開している理由であり、今後も増強する理由だ」と述べている。
  23. コットン議員は米軍機の上空飛行三回では環礁から12カイリ以内は飛行しておらず、中国の領有権主張に真っ向から対抗しなかったとの報道を紹介。
  24. ジム・ファネル退役海軍大佐は以前太平洋艦隊の情報士官をつとめ、中国がスカボロー環礁の増強を図る目的はルソン海峡の制圧が狙いのようだと指摘する。「スプラトリー諸島の七個の島と組み合わせて北部に海軍基地を新設すればPRCには南シナ海の航行の自由を効果的に制御する能力が生まれる」
  25. そこで中国の動きに対抗するためにファネルは米太平洋艦隊はスカボローにも軍艦のパトロールを開始すべきだという。
  26. 「この『スカボロー哨戒任務』でPRCが人工島を造成するのを防ぎ、現場指揮官には柔軟な交戦規則を許し、物理的にPRCの建設工事を阻止すべきです」と述べ、日本、オーストラリア、インドも参加させるとべきという。
  27. 「何も行動をしないと南シナ海全部が中国のものになり、中国式の「航行の自由」が社会主義の観点で実現して今います。事は急を要し、大統領選挙の年ですが今から行動をはじめるべきです」■

★トランプが国防政策で考えていること≪考えていないこと



トランプの勢いはとどまるところを知らず、大統領選はトランプ対ヒラリーの様相に落ち着いてきました。毒舌は相変わらずですが、閉塞感のある中職業政治家にはうんざりしている層が熱烈に支持しているのでしょう。国防政策で具体的な内容がまだ見えてきませんが、どれだけ有力な顧問がつくのかもう少し時間が必要なようです。ヒラリーがどんな国防観を持っているのかも注目ですね。米国の有権者が外交安全保障を上位の重要事項と考えているのは健全なしるしでしょう。
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Trump promises to rebuild the military, make allies pay more

Leo Shane III, Military Times 4:32 p.m. EDT April 27, 2016

US-VOTE-REPUBLICANS-TRUMP(Photo: Brendan Smialowski/AFP via Getty Images)
共和党大統領候補でトップを走るドナルド・トランプが「アメリカ第一」の外交政策の基本方針を27日発表し、米軍を拡充する一方、同盟各国へ防衛支出増を求めている。
  1. 「冷戦終結後の米外交政策は大きく進路を誤っている」とワシントンDCで演説し、「時間の経過とともに我が国の外交政策はずれを大きくしている。論理の代わりに愚かで傲慢な態度が表に出ており、次々と失態が生まれている。外交政策は全くの失敗だ。構想力がない。目的意識がない。方向性がない。戦略がない」
  2. トランプは国際関係や安全保障で自らの考え方をちりばめた総論を述べたが財政支出や外交では各論を避けている。選挙戦で詳細を避ける傾向が批判の的となっているが、今のところ有権者に悪影響は出ていない。
  3. 例外として詳細に踏み込んだのはオバマ大統領の軍事支出戦略方針で、トランプは民主党でトップを行くヒラリー・クリントン候補に関連付けようとした。
  4. 「我が国の常備軍は1991年の二百万人が今や130万人にまで減っている。海軍は500隻が272隻へ同時期に縮小した。空軍は1991年の三分の一規模だ。B-52が戦闘任務に投入されているが、聴衆の皆さんよりも古い機体だ」
  5. 解決策は軍に「十分な予算を与える」ことだが同時に「節約すべきところは節約して予算を賢く使う」ことだとし、国防総省だけでなく「貿易、移民、経済政策すべてで米経済を再び強力にする」のだという。
  6. トランプはNATO同盟各国は自国防衛に十分支出していないと強い調子で批判し、各国に公平な負担と責任をさせると約束した。
  7. 「こちらが守ってやっている各国は相応の自国防衛の費用負担をすべきであり、従わなければ米国は各国に自分で防衛させる。選択の余地はない」
  8. またオバマ大統領とクリントン候補は外交政策への国民の信頼を損なったと批判した。イラン核合意は安全保障に悪影響を与え国の尊厳を傷つけ、中東各国で米国の信用が下がったと述べた。
  9. トランプは最高司令官になればNATOやアジアの同盟各国を集めたサミットを開催し、「財政負担の仕切り直し」を討議し、「共通する課題の数々に新しい戦略をどう活かすかを新しい視点で見る」という。
  10. 課題のひとつがイスラム国で、トランプはそのせん滅を確約している。「イスラム国へのメッセージは簡単明瞭だ。彼らに残さされた時間は少ない」とし、「その方法や攻撃対象を伝えるつもりはないが、彼らは消え去る運命だ」
  11. ここでもトランプは戦略方針の内容を伝えず、軍の動向や戦略案は教えるつもりはないとだけ述べた。
  12. 「動きを察知されないようにする。すべて伝える。軍を派遣する。そのほかも送る。報道会見は行う。だが手の内を読まれないようにする。予測不可能にすることは今から始める」
  13. CNBCの世論調査が今月初めにあり、「外交とテロ対策」は有権者の考える二番目に重要な争点と判明している。最上位は「経済と失業問題」だった。■


★★F-117Aナイトホークの全機廃棄処分を米議会が認める方向へ



F-117Aはまだ保存していたのですね。技術が進んで同機は陳腐化してしまったとはいえ、廃棄するのはもったいないと議会が保存させていたのですが、さすがに保存の意味がなくなったと認めざるを得なくなったのでしょう。歴史に残る機体ですから数機は保存してもらいたいものです。

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Congress appears ready to let the Lockheed F-117A Nighthawk go

27 APRIL, 2016
BY: JAMES DREW
WASHINGTON DC
下院軍事委員会が米空軍にロッキード。マーティンF-117Aナイトホークの廃棄処分を許す措置を検討していることが分かった。
  1. 同機は公式に空軍から2008年4月をもって退役しているのだが、議会の要求で全機モスボール保存されており、現在も「将来必要となった場合に復帰できる」状態を維持している。
  2. 各機はネリス空軍基地(ネヴァダ)のトノパ射爆場(別名エリア51)で特別に空調された格納庫内に保存されている。2008年以降も同型機が飛行している姿を目撃されており、空中給油もしていたという。
Asset ImageUS Air Force
  1. 米軍ステルス機の出発点となった同機は「絶望のダイヤモンド」の形状が特徴的で、1981年初飛行だが1988年までその存在は秘密にされてきた。
  2. ロッキードのスカンクワークスが1990年までに計59機を製造したが、ステルス技術とともに敵のレーダー装備も急速に進歩し、低視認性で進歩したロッキードF-22、ノースロップグラマンB-2、さらにF-35やB-21が登場している。
  3. F-117A保存条項が成立して10年が経過し、米議会も同期をアリゾナの航空宇宙機材保守再生施設への移動を認めるようだ。施設内で各機は分解されるが、貴重な一部部品がリサイクルされる可能性は低い。
Asset ImageUS Air Force
  1. F-117では砂漠の嵐作戦の記憶が一番鮮明だろう。このとき初めてステルス機を本格的に投入した。同作戦ではF-117は合計1,299ソーティーをこなし、作戦成功率は80%で機体喪失あるいは大きな被害は一件もなかった。ジェネラルエレクトリックF404双発で亜音速飛行するF-117の主要兵装は機体内部に搭載したレーザー誘導ペイヴウェイ爆弾で1991年のイラクでは9,300発以上が投下されている。■
Asset ImageF-117As of the 37th Tactical Fighter Wing, Tonopah Test Range, Nevada US Air Force