2020年5月19日火曜日

米次期フリゲート艦FFG(X)で注目すべき5項目

海軍が次世代フリゲート艦にフィンカンティエリのFREMM設計案を採用したが、ほぼ新型艦のため初号艦就役は時間がかかそうだ。
4月30日付で交付された契約では10隻までフィンカンティエリのマリネットマリーン造船所(ウィスコンシン)で建造する。海軍は少なくとも20隻を調達する。以下の5点は予め知っておく価値がある。
1) 価格 
研究開発調達担当の海軍次官補ジェイムズ・グーツによれば初号艦は12.81億ドルで、設計費用と造船所の対応作業費用を含む。レイセオンのAN/SPY-6派生型レーダーやロッキード・マーティンのイージス戦闘システム等の装備品は政府調達で搭載する。12.81億ドルのうち造船所に流れるのは7.95億ドルとなる。
費用は2号艦から大幅に下がる。海軍の目標は2018年価格で8億ドル、高くても9.5億ドル止まりとする。グーツ次官補はさらに下がると見ており、20隻建造の場合で7.81億ドルの試算がある。
2) 工期 
次世代フリゲート艦FFG(X)の詳細設計作業がまもなく始まるとグーツ次官補は述べ、建造は2022年4月以降になる。一号艦は2026年引き渡し予定で2030年までに就役するが、初期作戦能力獲得は2032年となる。
10隻建造の契約は2035年に完了する。20隻建造の場合、マリネット造船所以外でも建造になるかは不明だ。
Sailors stand watch on the bridge of the Italian FREMM Alpino, the parent design for the U.S. Navy's new FFG(X), underway off the Eastern Seaboard in May 2018. (David B. Larter/Staff)
米海軍向けFFG(X)の原型となるFREMMのイタリア海軍アルピノのブリッジ。 May 2018. (David B. Larter/Staff)
3) 計画遅延の可能性
海軍は今回の建造計画をしっかり立てたとするが、最近の建造案件には芳しくない結果が多い。
フォード級空母の事例もあったため上院軍事委員会委員長のジム・インホフェ議員(共、オクラホマ)が初号艦の実績達成に注意を示した。海軍がFFG(X)のリスク低減策で採択したのはアーレイ・バーク級フライトIII建造で証明済みの装備品を採用したことで、イージス戦闘システムの最新版やAN/SPY-6レーダーの小型版が例だ。
「SPY-6など技術が成熟しているので安心している」とケイシー・モートン少将(無人艦艇・小戦闘艦担当事業主幹)が述べている。
初期段階から産業界を参画させて初号艦のリスクが低くなったとモートンは説明。「各企業が要求内容に詳しくなり、性能諸元を理解してもらえればいっしょにコスト削減できる。初号艦で問題が多数見つかることが多いので先手を打って行く」
4) 拡張性 
FREMM案の採択では新装備とくに大量に電気を消費する装備の後日搭載を重視したと海軍は説明している。
競合中にフィンカンティエリは発電容量の拡張はすぐ実施できると強調し、艦体に穴を開けずコンピュータやエンジン装置が交換できるとも説明した。
The Italian FREMM Alpino, the parent design for the U.S. Navy's new FFG(X), is shown pierside in Baltimore, Md. (David B. Larter/Staff)
イタリア海軍のFREMM艦アルピノ。ボルチモア寄港の際に撮影。 (David B. Larter/Staff)

フィンカンティエリの上席役員リック・ハント退役海軍中将で、同社は性能改修の余地を残しながらコスト面の要求水準も満足させる内容で入札したと報道陣に説明。「柔軟度を残し、装備品が利用可能になればすぐ搭載する余地を残し、将来ニーズに対応可能とする要求がありました」(ハント)
ジム・キルビー中将からは海軍がミサイル対ミサイル戦闘から移行する中で将来の発展余地が重要な要素との発言があった。「相手の脅威が急速に進展する状況を把握することが重要」といい、「将来の姿を今決めたくない。指向性エナジーほかの装備の搭載余地を確保するのが重要だ」「海軍のレーザー開発は広範囲に進展中で、一部艦艇にレーザーを搭載している。今後の装備品として必須となり、ミサイル発射装備は攻撃用にとっておき、局地防衛には長期間供用可能な装備品をあてる。
5) 他艦種への応用
海軍の調達トップはFFG(X)選定手順に満足し、他の艦種のモデルになると見ている
「FFG(X)は海軍の調達業務の進化形で、調達計画、要求内容、技術部門と造船部門が共同開発を詳細設計・建造要求提案前に行えた」(グーツ)「要求内容、調達計画、設計作業を統合して従来から6年程度を短縮できた。コスト、調達、技術の各面に焦点をあわせ最高の結果を得られるようにしたためだ。チーム統合でここまでの成果は海軍にこれまでなかったと思う。これからの建造でもモデルになる」
ただし、FFG(X)には開発済み技術や原設計があり、全くの新型艦の場合にも応用できるか不明だ。
「全員を早い段階でまとめたのが時間短縮になった」と語るのがブライアン・マグラスで、駆逐艦艦長を経てフェリーブリッジグループのコンサルタントだ。「新型艦で同じ作業を採用し革命的な技術や未実証技術さらに開発中の技術を取りまとめられるか疑問だ。全く事情が異なる」
FFG(X)は戦力性能面で海軍に大きな前進だが、革命的な艦でなく従来と違う方法が必要な艦ではないというのがマグラスの意見だ。■
この記事は以下を再構成したものです。

5 things you should know about the US Navy's new frigate


By: David B. Larter    May 5

2020年5月17日日曜日

歴史に残る機体(25)サンダーボルトP-47とA-10の意外な共通点




ともに被弾しても飛行可能で、近接航空支援で不可欠な機材だ。

サンダーボルトが嫌いな人はいない。
今日のA-10サンダーボルトIIはウォートホッグとも呼ばれ、米軍機材でおそらく最も人気の機体だろう。少なくとも米地上部隊に。逆に空軍上層部にサンダーボルトは頭痛の種だ。75年前にもサンダーボルトの名称の機体があり、これも人気の戦闘機だった。

両機種の類似点は皆無に近い。P-47サンダーボルトは第二次大戦機で欧州上空でルフトバフェと戦う高速高高度戦闘機として開発された。A-10サンダーボルトIIは低空飛行の対地攻撃機としてソ連戦車を葬るのが狙いだった。

共通面もある。ともに空力学的に洗練されていない。P-47には愛情込めて「ジャグ」(ジャガーノートの短縮形)がついたが、太い胴体を見ればこの名称に異論がないだろう。P-51マスタングが5トン、スピットファイヤが3トンに対し、ジャグは機体重量が7トンと空を飛ぶトラックだった。A-10はエンジン双発を尾翼上に配置し、巨大な機関砲を機首に搭載したのはニキビを想起させる。

さらに双方のサンダーボルトは出自が共通する。P-47はリパブリックエアクラフトが製造した。リパブリックは1965年にフェアチャイルドが買収し、フェアチャイルド・リパブリックになり、A-10を製造した。

サンダーボルト兄弟は大火力で知られる。.50口径機関銃8門を搭載したP-47は圧倒的効果を上げた。A-10の30ミリ機関砲では劣化ウラン弾でイラク戦車を第一次湾岸戦争で破砕した。

両機種とも多少の被弾なら平気だ。P-47の頑丈で大型かつ装甲付きのコックピットで「機体と星型エンジンが相当の被弾を吸収したままで帰還できた」とコーネリアス・ライアンが「遠すぎた橋」で記述している。「炎上するサンダーボルトで機外脱出より安全と胴体着陸させたパイロットもいる。胴体着陸で樹木を倒し、衝撃を吸収させ怪我なく脱出したパイロットもいた」

P-47は敵弾が命中しても平気だったが、A-10では楽しむ余裕さえある。対空ミサイルや火砲の集中を生き残る設計で西ヨーロッパへ侵攻するソ連戦車隊を狩るウォートホッグはF-15やF-16なら墜落する命中弾を浴びても平気だ。コックピットはチタンで囲まれ機関砲弾に耐えるし、飛行制御の油圧系統は冗長性があり、油圧系統が使用不能となれば機械的予備系統を使う。エンジンは上部に搭載し赤外線や熱追尾ミサイルの捕捉の可能性を下げる。主翼を片方失っても帰還できる設計には恐ろしさを感じるほどだ。

サンダーボルト2型式は対地攻撃機としての威力が共通評価だ。A-10は1日で戦車23両を破壊したことがある。P-47は枢軸軍の3千機を撃墜しているが上昇率は見劣りがしたし、低空操縦性も劣ったものの、大重量のジャグは急降下に入ればドイツ機をことごとく追尾できた。

だがジャグの真価は戦闘爆撃機としてヨーロッパで上げた戦果だった。爆弾や5インチ空対地ロケット弾を機関銃8門と併用したP-47はドイツ地上部隊を恐怖に陥れた。1944年6月のDデイから翌年5月のドイツ降伏までジャグは鉄道車両86千、機関車9千両、装甲戦闘車両6千両、トラック68千台を破壊した。

双方のサンダーボルトは地上では冴えない機体だ。P-47には航続距離、敏捷さでP-51の水準に至らなかった。米空軍は第二次大戦後にP-47を廃棄し、P-51を温存した。そこに朝鮮戦争が勃発し、F-86はじめとするジェット戦闘機が制空任務にあたり、マスタングは対地攻撃に投入された。だがP-51は頑丈な機体でなく水冷エンジンのため被弾すると墜落につながり、P-47なら生存可能な状況で多数を喪失した。

A-10の後継機はF-35ライトニングIIになりそうだ。だが機関砲弾一発の命中で主翼半分が損傷を受けるライトニングのパイロットになりたいですか。格好良く見える機体が優れているとは限らない。だが、サンダーボルトを雑に扱う者はいない。■

この記事は以下を再構成したものです。

May 16, 2020  Topic: History  Region: Americas  Blog Brand: The Reboot  Tags: P-47Air PowerA-10DefenseTechnologyMilitaryHistoryUSAFAir Force

Flying Tanks: How the P-47 Gave Birth to the Fearsome A-10

Now that's a legacy.

写真 Wikipedia



パンデミック後のPRC④ 中国はパンデミックを機会に世界トップの座をねらっているのか。(このままでは実現は無理だろう)

 中国はパンデミックを機会に米国を世界トップから駆逐するのか。

In this April 13, 2020, photo, a woman wearing a face mask drives her car by a Chinese flag placed on a street prior a curfew set up to help prevent the spread of the new coronavirus in Belgrade, Serbia.


中国への不信は拡大の一方だが、米国の無能ぶりも世界に露呈した。

ロナウィルスのパンデミックで中国の影響力が世界で強まり、逆に米国の存在感は減ると見る専門家が多い。
理由は明白だ。COVID-19感染者が米国に120万人超あり、4月18日現在で260万人超が失業中で失業率が20パーセント近くまで増える中、国際通貨基金予測で米経済は今年6パーセント縮小する。米国のパンデミック対応は無関心から不理屈なものへ変遷し、連邦・州双方の行政府は公衆衛生と経済活性化のバランスを取るのに苦労している。病院の医療従事者向け防護策提供に苦しむ現況には驚くばかりで国内の機能不全は悪化の一途だ。「グローバル規模の危機が発生しても、米国の指導力に各国が期待を示さないのは100年超の歴史で初めて」(ニューヨークタイムズ)との見方もある。
とはいえパンデミック後の米中間の戦略バランスでは次の二点を考察する必要がある。まず、中国が世界で米国に代わる主導的立場につこうとすると仮定しても、中国にその実力があるのだろうか。
中国では国内課題がコロナウィルス第一例の発生前から深刻になっていた。昨年の中国経済成長率は30年で最低だった。中国政府は国営企業支援を強化するが、各企業は民間企業より生産性が劣る。また経済活性化策で期待された「クレジットバズーカ」が2008年と違い今回は使えない。国の債務がGDP300%と大幅増のためだ。さらに、人口構成の暗い予測がある。昨年の出生率は歴史上最低で、労働力人口は2018年から2030年にかけ73百万人減る。またパンデミックで企業多数が生産拠点を国外に移しそうだ。
中国国内の政治地図も多難だ。台湾、香港の反抗的態度が収まらない。中国、台湾の経済統合があっても台湾の独立志向は強いままだ。台湾は中国の影から脱し新南方政策を希求している。さらにパンデミック対応から台湾に世界保健機関への正式加盟の資格があるとの意見が増えている。香港では犯罪者引き渡し法案への抗議、人民解放軍治安維持部隊による制圧、民主活動家で著名な15名の逮捕から「一国二制度」のもろさが露呈している。
対外面では中国を取り巻く民主国家インド、オーストラリア、日本、南朝鮮へ対抗が必要だ。中国は経済、軍事両面で各国より強大とはいうものの、各国が協調協力を強める中で、中国が各国から信頼を勝ち取るのは簡単ではない。さらに今の信頼水準では世界的な指導力が実現できない。ウィグル族の大量拘束、南シナ海の軍事化継続、フアーウェイ5G製品締め出し国への脅かしでパンデミック発生前から中国への信頼度は相当低下していた。国内パンデミックの制圧成功で自信を感じたのか、一ヶ月前から医療品や専門家チームを各国に派遣しはじめた。ただし、受入国から感謝の意思表示を強要したり、他国によるパンデミック対応を批判したりと逆効果も招いており、これは中国に伝統的に有効な各国向けでも例外ではない。
二番目に、中国が上述の困難を全て克服しても、そもそも米国に代わる座を希求するだろうか。答えはすぐに出ない。そのつもりなら国益上重要な対象に資源を振り向ける必要がある。The Economist は「中国には世界各地の危機に対応を迫られる第二次大戦後の米国と同じ立場に自らを据え付ける意図を示す兆候がない」とし、あくまでも経済力や技術力を既存秩序内で自国の影響力拡大に使う意図を中国は示している。トランプ大統領が資金供出を一時停止したWHOへの支援表明のように、中国は国連機関で影響力を増やしている。とくに一帯一路政策の実現を希求している。だが中国は新秩序で一貫したビジョンを示しておらず、現行秩序から恩恵を受けていることに加え、自身でも次の姿を明確にしていない。
パンデミックで中国が一気に世界のトップの座につく時代が来るわけではないとしても、米国との戦略バランスを中国が変えようとしないわけではない。とくに米国が政策転換しない場合これがあてはまる。中国への不信が強まっているが、米国の無能ぶりも露呈した。米国としては急ぎ同盟関係を補修し、WHO含む国際機関の改革で具体策を提示し、各国を取りまとめてきた定評を復活させるべきだ。同時に「超大国間競合」へ焦点をあわせるあまり、中国との協力の可能性を減らす、あるいは最悪の場合道を閉ざさないよう注意すべきだ。パンデミックでわかったのは脅威は国境を超え、戦略的ライバルでも協調対応しない限り単独で国益を守れないことだ。■
この記事は以下を再構成したものです。


MAY 5, 2020

2020年5月16日土曜日

USAFはアジア太平洋でこう戦う---沖縄演習で垣間見えた中国対抗戦略とは

Aviation Weekに注目の記事がありましたのでお伝えします。次期空軍参謀総長にPACAF司令官が横滑りするのはいよいよ対中国戦略の実施が現実になってきた証拠でしょうか。

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嘉手納基地のZZ記号を付けたF-15の2機が第909給油飛行隊のKC-135からウェストパック・ラムランナー演習で給油を受けている。
Credit: Sr. Airman Matthew Seefeldt/U.S. Air Force

空軍はこれからの航空戦に向け新しい対応策を検討中だが、その片鱗が嘉手納航空基地で見られたので紹介したい。
  • 基地防衛の試行
  • 攻撃下の補給活動とは
沖縄で1月に実施された演習はウェストパック・ラムランナー WestPac Rumrunner の名称で制空任務を想定した。ボーイングF-15Cの24機は嘉手納ABから100マイル東に進出し、「侵攻軍」の米海軍F/A-18E/F(岩国MCASより発進)を迎撃した。同時に特殊作戦部隊(SOF)所属の機材が沖縄へ侵入を試みた。
この設定から将来戦の片鱗が見える。嘉手納基地のF-15C4機は燃料と装備を普天間海兵隊基地で補給した。日本配備中のE-2Dが嘉手納のF-15C部隊を支援し、侵入を試みるF/A-18E/FおよびSOFに対応させた。空軍が進めるアジャイル戦闘展開 Agile Combat Employment(ACE)戦略構想を試す機会になった。さらに海軍のノースロップ・グラマンE-2D部隊と現地のMIM-104ペイトリオット部隊(陸軍)で防御側の戦闘統制を試した。
ウェストパック・ラムランナーではACEや統合全ドメイン指揮統制Joint All-Domain Command and Control (JADC2)のすべてを試していないが、中国東方に位置する第一列島線の各基地に大きな意味がある。
「アジャイル戦闘展開や基地防御の知見を演習から得たい」と太平洋空軍(PACAF)司令チャールズ・ブラウン大将がAviation Weekに2月に述べていた。PACAF隷下の航空部隊は新構想を試し、技術以外に考え方の変化も求められている。
「答えを全て得たわけではないが、フィードバックし実効性を試せる」「そのあとで『これを戦闘教義にどう反映し対応策を変えるべきか』を考える」(ブラウン)
PACAF内の各基地と補給線の防衛が課題だ。空軍首脳部が今年2月公表した予算要求では補給網が攻撃下にある想定で対応案を盛り込んだ。目標は補給再装填で重要拠点となる基地の破壊、弱体化を狙う敵の協調攻撃に対し十分な回復力を基地で実現することだ。
「ACEのカギは軽く、無駄を削り、敏捷さの実現」「補給活動に足を引っ張られては困る」(ブラウン)
新構想の細部は非公開だが、空軍上層部は遠隔地の飛行場に部隊を分散させること、基地防御体制の強化の模索を認めている。
ブラウンは指向性エナジー兵器含む新技術に加え、高性能運動性エナジー兵器たるTHAADやペイトリオットでも分散配備を狙う。ブラウンは次期参謀総長に内定しており、開発中の小型モジュラー核融合反応炉で高出力装備の電源を確保したいとする。
PACAFは貨物コンテナーに装備品を入れ、各地で事前配備したいとするが、受入国の承認を事前に取る必要がある。そこで人道援助用の補給物資の事前配備から始めたいとする。
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演習では嘉手納基地のF-15Cが普天間海兵隊航空基地で燃料補給を受けた。 Credit: Staff Sgt. Benjamin Raughton/U.S. Air Force


「人道援助災害救難から始めて各地に展開したい」「この地域では台風、火山、地震が多く発生しており、ここから始めたい」
軽く、敏捷にとの要求からも変化が生まれる。補給活動への脅威を減らすため必要な補給物資の量を減らし、空輸回数を減らす。ここから兵装装備品の軽量化や効率のよい運用につながるが、現時点の焦点は補給活動を必要最小限に絞り、ソフトウェアで効率良い決定を下すことにあてられている。
輸送機の防御も重要だ。航空機動軍団は無防備だったボーイングKC-135、ロッキードC-130Hの防御能力に予算を計上し、警告装置や赤外線/無線誘導式ミサイル対抗装備を搭載する。別の防御策は輸送機がどこを離着陸しているか敵にわかりにくくすることだ。
「各機材に防御装備を搭載するのは重要だが、同時に運用地にも注目している」「ここからアジャイル戦闘展開構想が生まれた。一地点で機材を分散させるのではなく、各地の飛行場に分散させる。防御策も各地で必要となる」
高額装備のTHAADやペイトリオットも各地に移動させる必要がある。「軽量で贅肉のない装備がほしい。銃弾数に制限がなく、今までと異なる費用曲線の装備があれば、高額装備は弾道ミサイル、巡航ミサイル、極超音速ミサイル迎撃に専念させられる。高出力マイクロ波や指向性エナジーで各地での柔軟対応へ道をひらく。この考えで意味のある検討が進んでいる。まだ先は長い」(ブラウン)
その第一歩が各地での演習で、ウェストパック・ラムランナーもその一環だ。嘉手納基地の第18航空団が防空効果を発揮した。第5空母航空団のF/A-18E/F「侵攻部隊」は沖縄周辺100マイルの防空圏内に一機も侵入できなかった。SOFチームは着陸地点に到達したが、第44戦闘飛行隊のF-15Cが即座に侵攻部隊の機材を「撃破」したと、同隊司令のライアン・キャリガン中佐が述べている。
沖縄のF-15C部隊にとり分散展開は新発想ではない。10年も前だが、嘉手納の飛行隊がアジャイルイーグル構想のさきがけ作成に関与し、輸送機・給油機を伴いF-15Cを迅速に各地に展開した。ここからラピッドラプター構想へ発展し、ハワイのヒッカムAFBのF-22に応用した。今回さらにACEに発展したわけだが、PACAF各部隊の考えはハブ中心の運用が色濃いため、実施は課題となっている。高エナジーレーザーで各地の飛行基地を飽和ミサイル攻撃から守る体制が実現するまで数年かかるが、無人機への対抗装備でレイセオンが空軍実験本部と共同で実験を開始した。
「標的にならないよう訓練で配慮している」「甘受できるリスクの上でし適正規模の支援パッケージを配備部隊に届ける方法を模索している。兵装搭載要員と給油要員の両方は連れて行かない。兵装搭載要員に給油方法を訓練している」(コリガン)■
この記事は以下を再構成したものです。

Okinawan Exercise Offers Glimpse Into Future USAF Air War Strategy

 


Steve Trimble May 08, 2020

2020年5月13日水曜日

コロナウィルス後のPRC③ 米上院が台湾支援の決議を全会一致で成立させました。

日本ではコロナウィルス(武漢ウィルスの方が本来ぴったりなのですが)を自然災害、通り魔被害と受け止めて、人災と取る向きは少数でましてや中国の責任を追及する動きは皆無ですね。欧米から見れば誠に奇異に映るでしょう。ましてや参議院で中国を非難する決議が全会一致で成立する可能性も皆無でしょう。日本が変なのか、米国が変なのか。いえ、おかしいのは中国共産党です。



上院は国務長官に「台湾に世界保健機関オブザーバー資格を再度与える戦略」を求める決議を5月12日全会一致で採択した。中国に痛い一撃となった。今回の上院決議では国務省に「台湾の公式非公式外交関係強化に関する定時報告を議会に」求めるつつWHOに台湾をオブザーバー出席させるとある。

コロナウィルス大量発生で中国政府と台湾の対立が加熱している。台湾当局は5月18日のWHOコロナウィルス予防会議へ出席を希望しているが、北京は台湾とは中国国内の反乱省にすぎず、外交権がないと主張している。▶台湾はオブザーバー資格で2009年から2017年まで「チャイニーズ・タイペイ」の名で参加していたが、5月の会合にはWHOは台湾を招く「権限がない」と説明している。▶米国や台湾には台湾が出したコロナウィルスへの警戒呼びかけをWHOが無視したのは中国の神経を逆なでしたくなかったためだとの批判が強い。▶台湾で1月21日のコロナウィルス上陸以来の死者はわずか7名だが、中国はほぼ同時期に4千名が死亡との報道がある。

「2017年から中国は台湾をWHOから締め出している」とジム・インホフェ上院議員(共、オクラホマ)が発言。「これは受け入れがたい。コロナウィルスのパンデミック状態で世界が対応する中、中国外交は弱いものいじめを一層強めている」▶議案はインホフェ初め21名の議員が発起人となり、対中強硬派のジョシュ・ホーリー(共、モンタナ)、進歩派の中核エド・マーキー(民、マサチューセッツ)、ボブ・メネンデス(民、ニュージャージー)の上院外交委員会の中心議員が名を連ねた。

マイク・ポンペイオ国務長官はウィルスは中国武漢が発生地で実験施設の事故を中国政府が隠蔽したと一環して主張している。▶5月11日に長官は「中国共産党はウィルスの発生地点、発生状況、ヒト感染の発生過程を情報統制しただけでなく、WHOを使い別の筋書きを広めた」と述べている。

ポンペイオの意図はトランプ政権としてWHOに代わる組織を米主導で作ることにある。▶今回の上院での全会一致採択はポンペイオによる批判を党派を超えて支持しているあらわれだが、ポンペイオの目指す方向を無条件で承諾しているわけでもない。

「中国は初期にウィルスの被害を隠蔽した行為への責任、さらにワクチンや治療方法の確立に必要な科学情報の流通を妨害したことへも責任がある」とクリス・マーフィー上院議員(民、コネチカット)がNational Interest インタビューに答えている。▶「WHO脱退が正しい対応と言えるか。WHOが中国の過大な影響力を受けているに不満としても、米国脱退は問題を悪化させるだけだ」「中国への不満に現政権は何ら対応していない」と述べた。

この記事は以下を再構成したものです。

May 12, 2020  Topic: Security  Blog Brand: Coronavirus  Tags: Tby Matthew Petti 


Matthew Petti is a national security reporter at the National Interest. Follow him on Twitter: @matthew_petti.

2020年5月12日火曜日

超音速飛行に制限がついたF-35C....問題の山はいつ解決される?


ひとつひとつ問題を解決しているようですが、それだけF-35では各種の問題が発生しているのでしょう。しかし、同機はこうして実戦で本来の性能を発揮できるようになればいいのですが....
 

攻撃戦闘飛行隊VFA101所属のF-35CライトニングIIの初号機がエグリン空軍基地を離陸している。設計上の問題のため海軍、海兵隊のF-35で超音速飛行に制限がついている。 (Samuel King Jr./U.S. Air Force)


F-35で超音速飛行を続けると機体後部に破損が発生するリスクがあるが、運用面の条件変更で対応可能だとF-35共同事業室(JPO)がDefense Newsに伝えてきた。
この欠陥はDefense Newsが2019年に初めて報じ、米海軍・海兵隊仕様のF-35が高高度で超音速飛行すると機体構造の損傷あるいはステルス性の喪失につながるというものだ。
この問題のため海軍のF-35Cは超音速迎撃が実施できなくなる。
「この問題は2019年12月17日時点で特に対応不要かつ米軍での供用で発生していないと判明」とF-35JPOの回答文書にある。「欠陥報告は『修正作業不要』と分類され、複雑な作業による費用増加を正当化するだけの内容ではないと判断した」「解決しようとすると素材表面の塗装が長時間の飛行に耐えられるのか、同時に制御面の重量増ほか要求水準に合致するかの長期にわたる開発、飛行テストが必要となる」
空母運用仕様のC型、短距離離陸垂直着陸のB型で修正せずミッションは実施可能とJPOは述べた。
高速飛行を継続した場合に発生する可能性がある損傷のためF-35の機体以外に低視認性用の塗装に影響が出るだけでなく、機体背面の各種アンテナも損傷に弱いとDefense Newsが独自入手した文書に記述がある。
JPOではB型、C型の問題をそれぞれカテゴリー1の欠陥と分類し、重要ミッションの実施で障害になりうるとしている。カテゴリー1とは深刻度が最大の欠陥を意味する。
配備済みの機体で超音速飛行を続けて障害が発生すれば深刻だが、実はF-35では超音速飛行の頻度は低い。
F-22で超音速飛行は普通だが、F-35の超音速飛行は「緊急時対策」と、ハドソン研究所のブライアン・クラーク(退役海軍士官)は述べている。「超音速飛行はF-35では重要機能ではない」「実施はできるが、F-35パイロットからは超音速飛行は限られた場合のみで、その性能はなにかから高速で退避する場合に必要となるが、通常の戦術では必須ではないと聞いている」
実際に超音速飛行ではF-35の優位性が犠牲になるとクラークは解説する。「F-35の長所を捨てるようなものだ。ステルス性が下がり、燃料は急速に減り、アフターバーナーまで使えば、機体周囲の温度を上げるだけだ」存在を知らせる特徴を敵に発見させるだけとクラークは言う。
だがある退役海軍航空士官はアフターバーナー使用を制限すれば近接戦闘の場合に不利だとDefense Newsに話してくれた。
F-35運用のコンセプトは相手に探知される前に敵機を撃破することだが、長距離での攻撃には海軍航空部隊は歴史的にも文化的にも不信の目を向けている。ベトナム戦争では航空部隊はミサイルを過信し機関砲を廃止したことで空中戦での損失を急増させた。
海軍航空部隊が得た教訓は最新技術に依存し基本条件を犠牲にしないことで、このためトップガンが50年前に結成され、海軍攻撃戦闘機の戦術開発訓練教程が生まれた。
「解決策は『アフターバーナー使用は一分未満に』すること」と別の退役海軍航空士官は語っている。「機体が高性能でも深刻な制約になる」
機体がミサイル攻撃を回避する場合やドッグファイトで生き残るために高速飛行を迫られると深刻な問題になる。
この問題は海軍にとって複雑で、前方配備で機体を数ヶ月も連続稼働させると塗装や機体構造に重整備対応が必要となる。また損傷を受けた機体が発生しても運用艦が母港に戻るまでは修理できず、航空戦力の低下になりかねない。
「8ヶ月の海上運用で第一週に損傷機材が発生したら、以後損傷機材のまま残るんです。そうなると該当機材は完全修理が終わるまで戦力外ですよ」(上記退役海軍航空士官)
その他の欠陥
カテゴリー1の欠陥はその他3点あるがJPOはすべて公式に「解決済み」としており、改良されたか、現状のまま受容しているという。
緑色の発光問題といわれるものは昨年7月に解決済みとなった。ヘルメット搭載ディスプレイのLEDからの発光を指す。空母甲板の照明の視認を妨げる問題が夜間で発生していた。
この問題については「改良型有機発光ダイオード(OLED)のヘルメット搭載ディプレイ(HMD)で解決した」とJPOはDefense Newsに説明している。
「第三世代のF-35用OLEDヘルメットディスプレイユニット(HDU)では夜間の緑色発光を大幅に減らしている。米海軍、海兵隊向けのOLED式HDU第一次分をJPOは受領ずみで、第二次発注も行っている」(JPO)
F-35A、F-35Bでタイヤ破裂が発生した問題は油圧線の切断につながり、まだ解決に至っていないとJPOは記述しているが、タイヤ品種を変更してからは再発していない。
「DR(不良報告)は『修正予定なし』の分類で解決済みとされており、降着装置の設計はF-35の安全要求をすべて満たすもの」と文書にある。「初期に発生したタイヤ破裂問題は初期開発段階での設計変更で解決し、二重油圧系統の低下がタイヤ破裂で発生した問題は以後見つかっていない」
A U.S. Air Force F-35A sits on the flight line before testing and evaluation on Jan. 23, 2018, at Eielson Air Force Base, Alaska. All three variants of the F-35 were brought to Eielson to test their ability to operate in an extreme cold-weather environment. (Airman 1st Class Isaac Johnson/U.S. Air Force)
米空軍向けF-35Aがイールソン空軍基地(アラスカ州)のフライトラインで待機中。2018年1月23日。F-35の3型式はすべてイールソンで超低温環境での機能を試している。(Airman 1st Class Isaac Johnson/U.S. Air Force)

寒冷気候でバッテリー不調のまま着陸を迫られた事例が発生したがこれも解決済みとJPOは説明。この問題は超低温で機首の降着装置扉を開放した際に警告ベルが鳴って発生したとDefense Newsが独自に入手した「内部資料」に記載がある。
冷気が機内に入り、バッテリーを包むヒーターブランケットを圧倒した。28ボルトバッテリーを最適条件に保つためにヒーターブランケットがついている。バッテリーは停止しなかったが、冷気のため想定どおりの暖房ができず、警告ライトが点灯し、バッテリーが停止寸前と伝えてきた。
この問題ではソフトウェアを改良したとJPOは説明。
「この問題は2019年7月22日に解決した。バッテリー充電器のファームウェアを改良した」とある。「ファームウェア改良はバッテリーチャージャーのメーカーが担当し、ロッキード・マーティンが統合の上、JPOとともに実証した」■
この記事は以下を再構成したものです。

The Hidden Troubles of the F-35