2021年12月31日金曜日

中国海洋戦略の背後にマハンあり。米国生まれの戦略思想を中国が真剣に勉強した成果で大海軍が生まれた。

ホームズ教授の講義ですが、随所にあれと思う点があるのはエッセイが出たのが前の北京オリンピックのころのためです。そして時が巡り再び北京で冬季オリンピックが開かれる2022年ですでに中国海軍は規模の点で米海軍を追い越しており、変化があまりにも激しいのが気になります。

Naval History and Heritage Command

洋戦略思想家アルフレッド・セイヤー・マハン Alfred Thayer Mahan が死去し久しいが、今日でも世界を引き続き形成しているのがその根本思想だ。ただし、本人の予想と異なる形で影響を与えている。19世紀末のアメリカによるアジア進出を推進し、近代アメリカ海軍の祖の一人であるマハンの理論は、著作『The Influence of Sea Power upon History』や『The Problem of Asia』が伝えているが、中国などアジアの台頭で逆にアメリカが被害を被る可能性もある。

 

中国海軍にマハン思想が根付き、東アジアで米国の安全保障上の利益が損なわれる前に、ワシントンは北京と海洋戦略の議論を今すぐ始めるべきだ。

 

著者はこの問題を自ら体験した。北京でフォード財団主催の「シーレーン安全保障」会議で論文発表したが、中国のパネリストたちは数え切れないほどマハンに言及していた。また、必ずと言っていいほど、マハンの教えの中で最も好戦的に聞こえる、海上大規模交戦の想定を引用していた。

 

マハンの言う「海上指揮」とは、「敵の旗を追い払うか、逃亡させる海上での威圧的な武力」であり、「敵沿岸を往来する商業航路を閉鎖すること」だと中国側は指摘した。装甲戦艦は、この「威圧的な力」を具現化した。この力は、ライバル海洋国家の海軍を粉砕し、戦略的水路の支配権を奪うために使うべきだとマハンは暗示していた。

 

中国の経済力、軍事力が高まる中で、こうした思考は、南シナ海や台湾海峡など戦略的水路多数がある東アジアで緊張を煽りかねない。第一次世界大戦以前にも、新興ドイツが大英帝国にシーレーンの支配と帝国の「有利な地位」に挑戦したことがあった。

 

マハン理論は、世界大戦の勃発に間接的に貢献した。同様に、今日の中国の戦略家に武力行使を選択させている可能性もある。

 

影響力を及ぼすドイツ人ではカイザー・ヴィルヘルム2世、アルフレッド・フォン・ティルピッツ提督、そしてドイツ各大学の「艦隊教授」が、強力な戦闘艦隊整備を正当化するべくマハン理論を取り上げた。「私は今、マハン大佐の著作を単に読むのではなく、むさぼるように目を通し、暗記しようとしている」と、カイザーが言い放っていた。「この本は帝国海軍の全艦に導入し、艦長や士官が常に引用している」。

 

ドイツにとって困ったことに、ドイツ北部の港と大西洋を結ぶ「狭い海」、さらに1880年代から1890年代にかけ獲得したささやかな帝国にイギリス海軍が立ちふさがっていた。そこでドイツの海軍戦略は海上貿易に依存する島国であり、海上支配権を軽々に譲れないイギリスへの海軍戦略として戦艦建造を進めた。

 

英独海軍の軍拡競争は避けるべきだった。両国は友好関係を長く維持し、その海洋上の権益はほぼ一致していた。もしドイツがアフリカやアジアへのアクセスを確保しようと思えば、シーレーン警備に適した長距離軽武装の巡洋艦を大量建造したはずだ。これに対し、戦艦は燃料補給に縛られ、ドイツから遠く離れ活動できない。イギリスにとってドイツ戦闘艦隊は脅威にしか映らなかった。

 

そこで現在だ。今のところ、中国の戦略家がマハンをどう解釈したところで変わりは皆無に近い。中国は経済発展に夢中で、石油や原材料の自由な流れを危うくしたくないはずだ。中国の商船隊は急増し、新しい造船所が何十カ所も建設されている中で、海軍の拡張はこれからだ。

 

だがこれは変わる。中国の経済成長は、帝政ドイツの経済成長が海軍整備を支えたように、強力な海軍を構築するだけの資源を供給し始めている。中国の海軍士官が今日、海洋戦略についてどのように考えているかによって、中国海軍の戦略が形成される。マハンの弟子たちは、アメリカの「脅威」に対抗するべく強力な海軍の建造を選択するかもしれない。

 

北京が帝政ドイツの破滅を繰り返さないためにも、ワシントンは以下のポイント3点を指摘する必要がある。第一に、西側の海洋戦略はマハンから自由になっている。つまり、北京は中国の裏庭での米海軍作戦を過度に心配する必要はない。第二に、終末論的な艦隊交戦と同様に平和的な通商を強調したマハンを、つまみ食いで読むのは危険である。

 

最後に、米中両国は、東アジア全域の海上貿易を脅かす海賊やテロなどの脅威の排除で利益を共有する。不必要な海軍の軍拡競争に乗り出すのではなく、海洋国家たる両国は共通の利益のため協力すべきなのである。■

 

Is Alfred Thayer Mahan Driving Today's US-China Naval Interactions? | The National Interest

by James Holmes


December 18, 2021  Topic: Chinese Navy  Blog Brand: The Reboot  Tags: ChinaChinese NavyU.S. NavyAlfred Thayer MahanMilitary

 

James Holmes is a senior research associate at the University of Georgia Center for International Trade and Security and an adjunct professor of strategy at the U.S. Naval War College.

This article is being republished due to reader interest.


期待高まる新技術、太陽光電力を無線に変換し地上送信する実証実験にAFRLが成功。軌道上太陽光発電施設の構築は2025年予定。実現すれば米軍の作戦活動に大きな変化が生まれる。

AFRL


KIRTLAND AIR FORCE BASE, N.M. (AFRL) – 

空軍研究本部(AFRL)がノースロップ・グラマンと開発中の宇宙太陽光発電段階的実証研究プロジェクトSpace Solar Power Incremental Demonstrations and Research (SSPIDR)の一部となるアラクネー宇宙機Arachne flight experimentの構成部品でエンドツーエンド実証実験に成功した。

 

新型構造部品「サンドイッチタイル」の地上実証で太陽光を無線周波数(RF)への変換に成功した。大規模太陽光発電を宇宙空間で行う道が開いた。


AFRLはノースロップ・グラマンに100百万ドル超の契約を2018年に交付し、試作型宇宙太陽光発電システムの中核構造部品の実証用ペイロード製作を求めた。サンドイッチタイルとはアラクネーのペイロードで重要な部材となり、今後の大規模実用システム製造の基礎となる。

 

サンドイッチタイルは二層構造で、まず高性能太陽光電池(PV)で太陽エナジーを集め、電力として第二層へ伝える。この第二層に配置したコンポネントで太陽光をRFへ変換し、送信する。


「太陽光をRFへ変換するのに成功し、軽量で拡大可能な宇宙構造物に一歩近づきブロック構造でアラクネーを実現する」とノースロップ・グラマン副社長ジェイ・パテルJay Patelが述べている。「世界各地に展開する米軍部隊に戦略的優位性を約束する機能の実現を今後も支援していきます」


関係者がノースロップ・グラマン社施設に集まり、大きな一歩となった今回の実証を見守った。


「SSPIDRプロジェクト室は今回の基本性能実証に大きく感動しています」とSSPIDRプロジェクト副主幹メロデイ・マーティネスMelody Martinezが感想を述べている。「太陽光エナジーをRFエナジーに変換できたことの意味は大きく、宇宙配備太陽光発電が大規模地表ビームで送信可能となります」


地上実証ではシミュレーターを使い、タイルのPV側が輝き太陽光-RF変換が進行中だとわかった。参列者はリアルタイムのRF出力データをモニターでフレキシブルプラスチック防護の後ろから確認した。 RFエナジーがピークに達すると太陽光RF変換が成功したとわかり喝采を上げた。


「SSPIDRで重要な場面に立ち会えて気分が高揚した。ノースロップ・グラマンのこれまでの奮闘が成果を生んだ」とアラクネー技術主任カイル・グレイクマンKyle Gleichmanが感想を述べている。「今後は中核となるペイロード打ち上げが控えており、さらなる一歩に踏み込みたい。軌道上でこの技術を早期に実現し、ニーズに答えたい」

 

アラクネー用のタイル機能実験に成功し、一平方メートルブロックを製造するめどがついた。これまでの太陽光-RF変換実験でもこの規模は未実施だ。アラクネー打ち上げは2025年の予定。■

 

AFRLとは

空軍研究本部(AFRL)は空軍省の第一線科学研究開発拠点で、導入可能な戦闘技術を空、宇宙、サイバー空間で開拓、開発、統合で重要な役割を果たしている。技術9分野で世界各地で40超の各種業務に11,500名が従事しており、AFRLが取り扱う科学技術分野は基礎研究から高度研究さらに技術開発へと多様にわたる。詳しくは以下へ。www.afresearchlab.com



AFRL, Northrop Grumman demonstrate solar to radio frequency conversion > Air Force Research Laboratory > News

AFRL, Northrop Grumman demonstrate solar to radio frequency conversion

 

  • Published Dec. 21, 2021

  • By Rachel Delaney

  • Air Force Research Laboratory


これはすごい。日本もオーストラリアで同様の実験を進めていますが、やはり安全保障がからむと真剣度、予算投入規模がちがうのでしょうか。軍事行動のエナジー供給で心配がなくなれば、兵たん活動が伸びる脆弱性から解放されるなど、大きな意味があります。民生用にも無限かつ安価な宇宙からの供給が実現すれば、今後増えるエナジー需要に応えるとともにいよいよ石油文明が終焉を迎えそうですね。

 

2021年12月30日木曜日

金正恩による北朝鮮統治が10周年を迎えたが、同国には崩壊、改革のいずれの兆候もない。2022年に何らかの動きを見せるのか注視したい。

 2022年は北朝鮮が国際社会の注目を集めようと何か悪いことをしそうです。中国の脅威の陰に隠れており、確かに中国の軍事力と行動原理と比べれば北朝鮮はスケールが小さいのですが、邪悪な思考にとらわれており無視することはできません。体制が地上から消える日が来るのが望ましいのですが.....

North Korean Leader Kim Jong Un. Image Credit: KCNA

2011年12月、北朝鮮の最高指導者金正日が死去した。実子の金正恩が後継し、最高指導者になり今月で10年となった。金正日も実父金日成の後を継いでいた。北朝鮮は三代続けて同じ家系が率いる王朝になっている。

王朝は珍しくなってきたが、サウジアラビアやブルネイと異なり、北朝鮮は思想上は「人民共和国」を謳い、「社会主義」を標ぼうしている。実務でみればオーウェル流の恐怖社会だ。同国が模範とするのはスターリン時代のソ連で、過激なまでの専制主義になっているが、巨大規模の軍組織、計画経済、イデオロギーを強調する北朝鮮は冷戦終結後にマルクスレーニン主義は放棄している。かわりに国家主義、個人崇拝、閉鎖経済を特徴とする。だがスターリン主義の構造として警察国家、強制収容所と「社会主義」が残ったままだ。

そこから生まれるのが封建時代にオーウェル流監視社会と混じり底辺に準共産主義が残る社会だ。このいびつな構造を覆すのが経済不振、汚職のまん延、世界経済からの孤立で、核・ミサイル開発を止めない同国への制裁が加わる。世界から見れば同国の状況は極めて不安定だ。北朝鮮崩壊の可能性を繰り返し話題にしており、北関連の会合では同国崩壊のシナリオがいつも出てくる。

崩壊はないが変化もない

とはいえ北朝鮮は崩壊していない。三代目が君臨し、王朝は極めて安定しているように見える。北朝鮮は門戸を開かず、自由化も行わず、統治体制に変化はない。国内で反乱も発生していない。1989年のヴェルヴェット革命、アラブの春(2011年)のような事態は発生していない。北朝鮮の行方の予測は続けるが、予測実現の兆候がない。

反対に金正恩の統治10年でもっとも顕著なのは北朝鮮にほとんど変化の兆しがないことだ。金正恩が改革を目指していると何度も耳にしたが、緩やかな経済変化以外にめぼしい成果がない。抜本的な経済開放改革として鄧小平の中国やゴルバチョフのソ連時代で生まれた動きは同国に関する限り発生していない。マルクス主義を脱したキューバやモザンビークのほうが国内運営はうまく行っており、世界とのつながりを実現しているが、北朝鮮はこれと逆だ。

三代目の金は核ミサイル開発を急ぐことであえて世界との関係悪化を選択している。この結果で厳しい精査措置が2016年から続いており、これで同国は世界との経済上のつながりを絶つことになった。驚くまでもなく、北朝鮮は人権に関しては全く進展を見せておらず、国連は北朝鮮内の収容所をナチドイツの強制収容所になぞらえ、金正恩を国際刑事裁判に立たせるべきとまで提言しているほどだ。10年目にして何か有意義な成果があるとすれば、結局金正恩が改革主義者ではないと朝鮮問題専門家に納得させたことだろう。

北朝鮮が崩壊しない、変化を拒む理由とは

この記念すべき年を迎えた北朝鮮で最も顕著な特徴は、驚異的と呼べるほどの耐久性と変化への断固とした拒否感だ。この国は、わたしたちが政治学や経済学で「知っている」内容に違反している観があり、わたしたちは同国の崩壊が近いと予測したくなる。反対に、なぜ一度も内乱が発生していないかを調べる価値がある。可能性が三つある。

北朝鮮国民はイデオロギーを信奉している。同国国民は政権のとんでもないイデオロギーを見透かしているといわれるが、脱北者によればイデオロギーの重視と押し付けがましさは本物でその束縛から逃れようとしてきたという。指導者が半人半神と信じられていては武装蜂起など思いもつかないだろう。

必要なら金正恩は誰でも殺す。2011年、エジプトのホスニ・ムバラク大統領(当時)は、タハリール広場の抗議行動の鎮圧に軍の出動を拒否し、最終的に政権の座から降りた。東欧各国の政府は1989年に政権を維持するため自国民を虐殺することに同様に疑問を抱いた。金正恩にはそんな遠慮はない。1990年代末の北の人為的な飢饉では、変化や改革どころか、100万人もの国民を死なせて平気だった。民衆が反対しても圧倒的な武力で弾圧するだろう。

国内の対抗勢力が弱い。革命には通常、政権に反旗を翻し、街頭運動と手を組む内部関係者が必要である。しかし、北朝鮮では極端な弾圧のため、政府外に抵抗勢力は存在しない。不満を持つ内部関係者は、外部に頼ることができない。金正恩はまた、長年にわたり、家、車、その他の制限された外国製品など、贅沢品や快適な設備で国内のエリートを買収してきた。最後に、内部関係者は、金正恩の血生臭い支配に加担しているので、金王朝の崩壊で自身も厳しい裁きを受けるかもしれない。

以上は観測にすぎないが、金正恩による統治10周年の記念日に見逃していけない点がある。金正恩は改革主義者ではない。北朝鮮は基本的に変化がない国だ。オーウェル流の恐怖国家であり、貧困に苦しみ、カルト的信奉で極度に軍事化した社会だ。この状態は10年前と同じであり、今後10年たっても変化はおそらくないだろう。■

North Korea: How Kim Jong Un's Orwellian Monarchy Survives - 19FortyFive

By Robert Kelly

Dr. Robert E. Kelly (@Robert_E_Kelly; website) is a professor of international relations in the Department of Political Science at Pusan National University. He is a 1945 Contributing Editor as well.


ウクライナにJSTARSを投入した米国はロシア軍の動向に真剣に対応している。台湾とウクライナが2022年のホットスポットになる予感。

 

E-8C JSTARS aircraft US Air Force

  • ウクライナ上空に米軍情報収集機材が飛来した

  • 投入されたのはE-8C JSTARSでウクライナ投入は初めて 

  • ロシアがウクライナ国境付近に部隊増強を続け懸念が消えない中での飛行となった


国がウクライナ上空に偵察機を送った。ロシアが国境付近に大規模部隊を集結させ、ウクライナ侵攻の恐れが消えていない。


米空軍はE-8C共用監視標的攻撃レーダーシステム機(JSTARS)一機による地上情報収集を同国東部で12月27日に実施したと米欧州司令部EUCOMが12月29日CNNに明らかにした。


同機の飛行経路は明らかではない。また収集した情報の内容も不明だが、同機はウクライナ政府の承認のもと投入された。EUCOM報道官ラス・ウルフキール中佐Lt. Cmdr. Russ WolfkielがCNNに伝えた。


同機のフェイズドアレイアンテナは120度の視野で地上部隊の動向を20千平方マイルにわたり把握できると空軍は説明している。今回ウクライナ上空を飛んだE-8Cはロシア国境地帯の軍事活動を監視できたはずだ。


先週末にロシアは軍事演習が終了し10千名規模を撤収したと発表しているが、今もウクライナ国境に相当規模の部隊を維持している。


12月に入りワシントンポストがウクライナ国境地帯へのロシア軍展開を70千名(米評価)から94千名程度(ウクライナ側評価)と伝えた。ウクライナ国防省はその後120千名が集結しているとMilitary Timesに述べていた。


最近数カ月に撮影した衛星画像ではロシア軍戦術戦闘集団の軍用車両他装備がウクライナ近辺に展開している様子がわかる。


ロシアはウクライナへの軍事作戦展開を繰り返し否定しているが、懸念を消すには至っていない。


バイデン政権は12月初旬に報道機関に情報を公開し、「ロシアは2022年早々にウクライナ軍事行動を実施する前提で準備をしている」とし、「175千名規模の戦術連隊100個で装甲車両、砲兵、装備を動員する」可能性があると述べていた。


ロシアがウクライナ侵攻を決定した場合に備え、米国はその場合の結果について警告しており、ロシア向け経済財政制裁の強化も含むとしている。


今週に入り国防長官ロイド・オースティンが米海軍にハリー・S・トルーマン空母打撃群の中東方面展開を中止させ、地中海に留まらせ、欧州方面の同盟国協力国を安心させることにした。


同打撃群は米ロ及びロシアNATO間協議が終わるまで地中海に留まる。


さらにジョー・バイデン大統領は12月27日にウクライナ向け300百万ドルの軍事援助含む支出法案に署名しており、29日にはロシア大統領ウラジミール・バイデンと電話協議し「一連の問題を話し合った」とされる。■


US sends recon plane flying over Ukraine as Russian military activities nearby continue to cause alarm

https://www.businessinsider.com/us-reconnaissance-plane-ukraine-tensions-with-russia-2021-12

Ryan Pickrell


2021年12月29日水曜日

オーストラリア潜水艦調達で新提案? 海上自衛隊のおやしお級が退役するたびにオーストラリアが購入する?しかも安価に。いくら日豪関係が重要といえども、ちょっと虫が良すぎませんか。

 

 今回ご紹介する記事はオーストラリア国防記者によるものですが、かなり調子のいい話だと思いました。ただ、いくらAUKUSで原子力潜水艦を調達するといってもまだまだ先の話ですし、その間にオーストラリアの安全保障を考えるとプランBが必要なのでしょうね。しかし、この通りにおやしお級をオーストラリアに譲渡できるのか、オーストラリア海軍で同級潜水艦を運用できるのか、疑問はいろいろあるのですが....

Oyashio-class from Japan.

 

ーストラリアの潜水艦部隊を非常に安上がりに整備する方法がある。2020年代中にディーゼル潜水艦を整備しながらその先の原子力潜水艦を待つ方法だ。

 

答えは日本から使用済み潜水艦を購入することだ。実行に移せば問題に直面し、実現しないかもしれないが、オーストラリアが目指す目標が実現する可能性があるのはたしかだ。

 

突飛な発想だ、実施しても管理できないと簡単に決めつけるべきでない理由がある。

 

オーストラリア向けの原子力潜水艦を国内アデレードで建造すれば、供用開始は2040年になる。出来合いの原子力潜水艦を輸入すればこれを2031年いや2030年になりそうだ。だが、それでは現行の不十分な潜水艦戦力のままで危険だ。

 

原子力潜水艦運用には乗組員の確保も課題となる。今後潜水艦隻数が増えれば、ディーゼル動力艦であろうと乗組員確保しておけばあとが楽になる。そこで提案だが、つなぎ用に新造ディーゼル動力潜水艦を購入し、現行のコリンズ級を元とする艦なら最適だ。

 

ただしこのやり方に深刻な欠点がある。コリンズ級派生型でも納入は2030年代になる。建造は相当の費用が必要だし、少数建造では経済性も劣る。オーストラリアは不適当と判定した艦をそろえることになる。

 

これに対し、日本で供用済みの艦を導入すれば早く、安く、しかも艦寿命が7年は残ったまま手に入る。

 

日本の海上自衛隊は毎年一隻の新造潜水艦を導入している。潜水艦が30年間の供用に耐えるとしたら、30隻の潜水艦部隊が生まれる。だがそれだけの隻数を運用する予算がないため、早期退役させているのが現実だ。

 

海上自衛隊潜水艦部隊は数年前まで18隻で構成していたが、今は23隻になっており、さらに24隻とし、訓練艦2隻をここに含む。

 

対象艦はコリンズ級と同世代のおやしお級で1998年から2008年にかけ就役している。

 

水上排水量2,800トンとコリンズ級3,100トンに近く、航続距離と作戦日数はオーストラリアの求めるミッションに十分だろう。静粛化とセンサー性能はまだまだ旧式と言えない。ただし、乗組員が70名と多い。

 

おやしお級がオーストラリアに移籍されれば、オーストラリア近海運用となろう。オーストラリアへのアクセスとなる海峡部分で敵を待ち伏せる。コリンズ級各艦は航続性能を生かし、遠隔地へ展開できる。

 

日本では最古のおやしお級二隻を訓練艦に改装している。あと9隻が第一線に残っており、完全な戦闘能力を備えたまま、艦齢23年目で退役となる。

 

このうち7隻は2018年に延命化改修を施し、そうりゅう級並みの技術を搭載することが決まっている。そうりゅう級は一度はコリンズ級後継艦候補になっていた。残るおやしお級二隻は同様の改装を実施している。

 

日本の潜水艦部隊は毎年一隻建造を続けているが、新造艦が就役してもおやしお級の退役は2022年には発生しないと見る。逆に最古参の現役艦うずしおが2023年に購入可能になりそうだ。

 

うずしお他8隻のおやしお級が毎年現役を離れるたびにオーストラリアは日本に購入を打診すればよい。購入価格はスクラップ価格を大幅に増えることはないだろう。

 

日本も中古艦譲渡を通じ両国間の防衛関係強化になれば喜ぶはずだ。

 

良い状態の中古艦を運用する国は多い。多くは元英米の海軍艦艇だ。オーストラリアも多くの中古艦を運用しており、最近はチリにフリゲート艦二隻を売却している。

 

オーストラリアのおやしお級部隊は2029年に7隻になり、そのまま2031年まですぎれば、艦齢が30年に達する艦が出てくる。その後、隻数は毎年一隻ずつ減り、原子力潜水艦輸入を待つ。一隻就役し、一隻退役させる。

 

この案でオーストラリアはディーゼル潜水艦13隻を25年間供用可能となり、取り消しとなったアタック級通常型潜水艦12隻で想定した供用期間より短くなる。

 

使用済みおやしお級の稼働率はコリンズ級を上回る。コリンズ級では二年間の大規模整備が前提となっているからだ。

 

なじみのない級の艦をそろえるのは魅力に乏しい選択肢といわれるかもしれないが、不可能なことではない。コリンズ級の装備品兵装も独特のものである。

 

日本が各艦で示した保守整備の熟達度を利用することで艦の整備維持問題は大きく緩和されよう。必要に応じ日本に送り、整備すればよい。同級を長年扱ってきた技術陣の手で信頼度は高まり、長期間運用に道が開く。

 

またこの方法なら大いに経済効果を上げる。オーストラリアは建造施設も乗組員養成でも投資不要で複雑な国内支援体制を構築する必要がない。軽微な整備なら日本国内の造船施設や支援企業がオーストラリアに人員を派遣すればよい。

 

この構想で日本が信頼に足るパートナーになるのは間違いない。両国には共通の戦略問題がある。中国だ。

 

この提案で不明なのは日本製潜水艦が艦齢23年以降に維持するのが困難な作業になるか不明な点だ。

 

海上自衛隊から退役した時点で艦の状態は問題にならない。日本は生産と合わせ保守管理でも定評がある。日下元大使は2016年に日本式の保守管理を実行すればそうりゅう級潜水艦は「長期間」オーストラリアで活躍できると発言していた。

 

それでもおやしお級各艦は退役の日までまだ活用されることを前提に整備計画が組まれているはずとはいえ、各艦が王立オーストラリア海軍に編入されるまでに再整備が必要だろう。

 

ひとつ障害になりそうなのは建造後30年たっても艦内の電子装備やソフトウェアでサポートが得られるかだ。ひとえに各艦の近代化改修にかかってくる。アップデートで解決するとしても、その費用と艦価格を比較する必要がある。

 

運用開始にあたり、日本に乗組員全員の提供を依頼すればよい。英語力が前提だが日本側乗員がオーストラリア側を訓練し、段階的に現地の理解が深まれば日本へ帰国する。日本側には潜水艦多数があるので、訓練要員の確保はむずかしくないはずだ。

 

各種マニュアルも英語翻訳が必要だが、電子系はあえて翻訳が必要だろうか。不必要にややこしくなるだけな気がする。

 

オーストラリア側が見守る中で日本語表示の戦闘システムメニューを理解するのはやっかいだが、世界各国の軍組織要員は英語を使い輸入装備品を使いこなしている。オーストラリア海軍人員が簡単な日本語を学んでもいいのではないか。

 

おやしお級が2023年ごろからオーストラリアに到着しても訓練にあてる時間は短い。ただし、各艦の到着予定をにらめば、訓練の習熟が遅くても許される。

 

オーストラリア政府は急いでこの構想の可能性を検討すべきだろう。その際はオーストラリア海軍、国防省ともに日本から使用済み潜水艦を導入する際の困難点に着目すべきではなく、解決策を真剣に検討すべきだ。■

 

 

How Australia Could Expand Its Submarine Force: Buy Used Japanese Subs? - 19FortyFive

ByBradley PerrettPublished2 days ago

 

Bradley Perrett is a defense and aerospace journalist. He was based in Beijing from 2004 to 2020. This first appeared in ASPIs the Strategist. 

In this article:AUKUS, Australia, Collins-class, Japan, Oyashio-class, Submarine



2021年12月28日火曜日

2022年度の防衛政策の焦点は台湾になるのか。日米で緊急時に備えた対策が立案済み。日本の防衛予算は5.4兆円だが米国はその16倍超を国防に投じる。

 

 

 

田文雄内閣が令和4年度防衛予算の概算要求を12月24日に承認し、総額は5.4兆円(470億ドル)の史上最高規模となった。

 

前年比1.1%増とし、中国の軍事行動強化に呼応し自衛隊の戦力整備に努める。

 

 

今回の予算要求には基本研究開発分野で38%増とし、25億ドルを投入する。これと別に8.7億ドルをF-X第六世代ステルス戦闘機開発に使う。F-Xは現行のF-2戦闘機の後継機となる。ともに三菱重工が製造するが、F-2は米F-16ファイティングファルコンを原型としている。F-Xが実現すれば、40年で初の国産設計製造戦闘機となる。

 

新型機開発とは別に日本は米製機材の供用を今後も続ける。11億ドルをF-35ステルス戦闘機12機の購入に計上した。とくに短距離離陸垂直着陸型のF-35Bが海上自衛隊が整備を進めるヘリコプター空母に必要だ。

 

新年度予算で10年連続して日本の防衛支出は増加することになり、米国の圧力で日本は東アジア方面の安全保障に一層の貢献を求められている。米国と日本はともに中国が台湾へ強圧的な態度に出ていることを警戒しており、独立して機能している台湾を中国は自国領土の不可分な一部だと主張している。米国、日本の軍事部門は台湾有事を想定した緊急対応策を策定ずみと見られる。台湾に両国部隊が到着する日が来そうだ。

 

予算は国会両院での審議可決で成立する。

 

今回の日本の動きの直前に米議会は2022年度国防予算を承認仕手おり、総額は7,770億ドルと日本の16.5倍の規模となっている。■

 

Japan Proposes Increased Defense Spending Over Taiwan Concerns | The National Interest

by Trevor Filseth 

December 27, 2021  Topic: Japan  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: JapanTaiwanDefense SpendingMilitaryWeapons

 

Trevor Filseth is a current and foreign affairs writer for the National Interest.

Image: Reuters