有志連合をつなぎとめるのは政治体制や価値観もありますが、技術同盟がこれから大きな意味を有するとのNational Defenseの主張です。
「潮位が上がればすべての船が浮く」A rising tide lifts all boatsとは、ジョン・F・ケネディ大統領が経済政策の説明で演説で頻繁に使った格言だ。
あるグループをターゲットにした政策やプログラムが、他のすべてのグループに利益をもたらすことを意味する。
このコラムでは、「a rising sun lifts all boats(昇る太陽はすべての船が浮く)」と表現する。「昇る太陽」とは、防衛予算の倍増を提案し、自国の防衛力を強化する新たな目標を掲げる日本をさす。
しかし、「すべての船」はぴったり当てはまるとは言えない。
日本の新たなコミットメント(オーストラリアや米国との最近の協定を含む)は、韓国、台湾、フィリピン、インド、ベトナムなどインド太平洋諸国とともに、これら2カ国を助けるものである。
しかし、日本の軍事的復活は、別の表現を借りれば、「中国の船を浮かせる」ことにならない。中国の経済的、軍事的な乱暴ぶりが日本を第二次世界大戦後の平和主義政策から脱却させているのだ。
日本がそのような政策を採用したのには、それなりの理由があった。アジアの人々にとって、「Rising Sun」という言葉は非常に重要な意味をもつ。第二次世界大戦中、日本帝国主義の支配下で各国は大きな被害を受けた。戦後、自衛隊として弱体化した日本の軍隊は、近隣諸国や米国にとって都合の良い存在であった。
一方、日本は戦後の焼け野原から立ち上がり、経済大国に上り詰めると同時に、米国が地域で展開する安全保障のブランケットを享受してきた。
しかし、それは当時のことであり、今は別である。日本には、アメリカやドイツ、その他の西洋諸国と同様、天皇が支配する軍事ファシスト政権に戻そうとする極右の、人種差別主義者の集団がいる。
私はかつて東京で、日本で2番目に大きな新聞社である朝日新聞社に勤めていた。過激派は、朝日新聞社が気に入らない記事を掲載すると、本社前に黒いバンを停め、雄たけびのスローガンを叫ぶのだ。
このような道化師たちが、今の時代に日本政府を乗っ取り、軍隊を使って近隣諸国を侵略できるという考え方は、馬鹿げているが。
また、1980年代から1990年代初頭にかけて、不動産バブルで経済が高揚していた日本が、アメリカの資産を買い占め始めたとき、アメリカの定期刊行物の見出しに「The Rising Sun」が頻繁に使われた。1989年、日本の不動産会社がニューヨークのロックフェラー・センターを購入して、アメリカ人は衝撃を受けた。
しかし、バブルは崩壊し、当時の経済的対立は米国が直面する今日の中国と比較すれば古めかしく見える。
ナショナル・ディフェンスは、アメリカが直面する軍拡競争において、中国が持つ優位性を相殺するために、技術同盟を提唱してきた。
中国は大量の現金、指令経済、中央集権的な計画、自国の利益のために他人の知的財産を盗む効率的な方法、より多くの工学部の卒業生などを有する。
しかし、アメリカには友人多数がいる。そして、その友人たちは中国に近いところに住んでいて、失うものも多いのだ。
中国には、西側諸国に対抗する主要な同盟国としてロシアがある。しかし、ロシアはウクライナで戦争を続けて日に日に弱体化している。
米国は、カナダ、台湾、オーストラリア、韓国、シンガポールなど、防衛産業基盤を持つ太平洋地域の同盟国を頼りにしている。
オーストラリアと日本への旅行に影響され、2021年12月のNational Defenseは、「クワッド」(日本、米国、オーストラリア、インドの緩やかな同盟)と、中国に対抗する技術同盟としての可能性について特集を組んだ。
それから1年以上が経過し、ホノルルで開催される全米防衛産業協会の太平洋運用科学技術(POST)会議に合わせて、本号のテーマは、オーストラリアに原子力潜水艦を取得するのを支援するオーストラリア、英国、米国の3カ国協定(通称AUKUS)である。
この協定には、量子物理学や極超音速技術など、他の新興技術における協力も含まれている。
インドが軍事同盟に消極的な今日、クワッドの意義は薄れ、AUKUSがインド太平洋における中国への防波堤となりうる真の技術同盟として浮上してきた。
将来はJ-AUKUSになるかもしれない。
日本・オーストラリア・イギリス・アメリカが、中国がインド太平洋に軍事的影響力を広げるのを望まない手強い「四角関係」として浮上する可能性もある。
日本はここ数カ月で、米国とオーストラリアと2つの強力な二国間安全保障協定を締結した。
10月にキャンベラで署名された「安全保障協力共同宣言」では、両国は軍事的相互運用性、情報共有、サイバーセキュリティ、宇宙、物流、法執行、エネルギー安全保障で協力することになっている。
北京はこれを快く思わない。
日本と米国は何十年も前から安全保障協定を結んでいるが、1月6日の防衛省首脳会談では、宇宙領域認識、人工知能、機械学習、指向性エネルギー、量子コンピューターに関する協力を深めると共同声明で発表された。
この会談は、日本がこれまでで最大の防衛費の急増を発表し、2027年までに防衛予算を倍増させる計画を立てて2週間も経たないうちに行われた。
北京はこれにも不満だったようだ。これは、同盟国が正しい道を歩んでいることを示す最良の兆候である。
3月のNational Defenseは、ホノルルでのPOSTの取材に加え、オーストラリアのエアショーと東京のDSEIジャパンのカンファレンスにも足を運び、これらの新興技術同盟について読者にもっと知ってもらう。ご期待ください。■
Editor's Notes: A Rising Sun Lifts All Boats
3/20/2023
AUKUSは、中国沿岸の東・南シナ海から遠く離れた、対中軍事同盟であるが、QUADは、インド洋・西太平洋での政治・外交面での民主主義国家による対中抑止同盟であり、軍事面での寄与を期待したものでない。それぞれ目的と意義があり、対中国で一括りにするのは暴力的な議論に思える。
返信削除日本の軍事増強は、直接的には中国の目に余る軍事増強と、それによる対外的な威嚇に対応したものである。それにロシアのような独裁国家が冒険的な凶暴性を示し、似たような独裁国家が近隣にあり、攻撃的な姿勢を示していることから、同様な問題行動を抑止し、対応しなければならない。これは当然なことである。
しかし、上記の状況だとしても、今のところAUKUSに加わってJ-AUKUSになるのは、安直過ぎであり、日本の国益になるか疑問である。むき出しの軍事的対立は、日本周辺での緊張を必要以上に高めるだろう。
日本は、先ずQUADのような民主主義を前面にした政治・外交的、それに必要なら経済を加えた紐帯により独裁国家群を締め付けるべきである。また、QUADは、アジア、アフリカの中後進国に影響を与えることができることにも注意を払うべきだ。
そうは言っても、将来、日本がAUKUSに参加することは有り得るだろう。それは、対中戦争前夜であり、台湾のみならず、日本も攻撃の対象とされた場合と推測する。