ゾンビがついに退治されたようだ。ここでのゾンビとは、退治が難しい考え方のことだ。あるコメンテーターや組織からのアイデアを撃墜しても、別の10人、100人が繰り返す。ヘッドショットを食らっても、ゾンビはしぶとく生き続ける。今回は、海軍の艦艇総トン数が海戦で決定的な要因だとする誤りである。艦船の隻数は実は重要ではない。
隻数の多い海軍が勝つとするこの死語は、造船に資金と資源を割くことを嫌う人々の間で特別に好まれている。だが、これは一種の修辞的なごまかしで、懐疑論者は米海軍は敵対勢力を上回っているため、勝利する運命にあるのだと主張させる。すべてはうまくいっている。
QED(証明終わり)。
いや、違う。ありがたいことに、中国人民解放軍(PLA)海軍が艦船数で米海軍を上回り、その差は今後数年でさらに広がる。隻数とトン数は、最終的に中国の優位となる可能性がある。海軍力のバランスに関して、節制が定着したのかもしれない。問題があることを認めることは、解決策を見つける第一歩だ。
この古くて切実な問題が今、頭をよぎるのは、先週の『The War Zone』で米中の造船能力の格差にスポットを当てた記事があったからだ。ジョー・トレビシックは、海軍情報局(ONI)が太平洋を越えた戦略的競争の将来について発表したスライドを熟読した。スライドは、中国がトン数換算で米国の200倍以上の船舶を製造できると示している。
つまり、中国は軍艦だけでなく商船でも米国を凌駕する能力を蓄えており、その差は歴然だ。海軍の面では、現在のトレンドから推測すると、PLA海軍は2030年代半ばまでに400隻をはるかに超える艦船を配備する一方、米海軍は300隻台前半で足踏みする。さらに、中国は大量の造船能力を有しているため、戦闘で損傷した艦船の修理が、戦争で戦闘力を回復させることはおろか、保有する艦隊の維持にも苦労している米国よりもはるかに容易であることを意味する。
中国が有利である。
また、中国の商業用船舶の大量生産能力も見逃せない。歴史家アルフレッド・セイヤー・マハンが描くように、シーパワーは自国の生産と海外の港を結ぶ鎖だ。海軍と商船はともに、シーパワー・チェーンの中心的かつ不可欠なリンクを構成する。それを断ち切れば、全体がばらばらになる。商船は平時には貨物を運び、外国貿易を行い、国家を豊かにし、海軍の維持資金を援助する。戦時には、商船は貿易を維持しつつ、艦隊向け補助船として活動し、兵員や軍用品を移動させる。
中国のシーパワー・チェーンの中心的なリンクは頑丈に見える。対照的に、腐食がアメリカのシーパワーの中心を攻撃しており、手を緩める気配はほとんどない。アメリカ政府、社会、軍隊が造船に新たに投資するという意識的な政治的選択をするまで、腐食は止まらないだろう。
結局のところ、トン数は海軍力の重要な尺度だ。それは競争相手の指導者に、多くの船体を製造し、維持し、修理し、ニーズに合った種類とサイズを選択する選択肢を与える。だが大きければ大きいほど良いというわけではない。トン数は、艦隊の戦闘力を示すというより、海洋産業の潜在力を示すものだ。船舶の戦闘力を測るには、その技術的特性を詳細に検討する必要がある。トン数は重要な変数のひとつである。大きな船体は、多くの弾薬、燃料、貯蔵品を運ぶことができる。容積が大きければ、多くの火力を放ちながら、長い間海上で待機することができる。
しかし、軍艦の戦闘能力を判断する基準は他にもある。艦隊戦術の賢人ウェイン・ヒューズ大尉は、戦術の成否を決定する重要要素として、偵察、指揮統制、兵器の射程距離を挙げた。重戦闘艦に比べれば、軽戦闘艦の方が優れたセンサー、より長い射程の兵器、あるいはセンサーと兵器の使用を調整する優れた能力を備えているかもしれない。あるいは、重戦闘艦が誤った任務に武装しているかもしれない。例えば、米海軍は長い間、水上艦隊を防空とミサイル防衛に最適化し、水上対水上の交戦を軽視してきた。PLA海軍は、敵の水上艦隊を撃破するために艦隊(とそれを支える陸上火力)を最適化してきた。
トン数が重要であることは論を待たないが、トン数の盲信は死語になりつつある。相対的な艦艇数を語るようになったのは当然である。重要な利害関係者がこの問題を認めた今、どのように解決すればいいのだろうか?武力問題においては難しい。
まず、米国は国内の造船業を活性化させ、シーパワー・チェーンの中心的なリンクを再構築する必要がある。そのためには、より多くの税金が必要になるのは間違いない。しかし、米国は絶対額で見れば多額の防衛費を費やしているかもしれないが、相対的な支出は多くない。国内総生産(GDP)に占める割合は、1982年の半分以下である。余裕がある。
それ以上の支出を断念することは、海上で中国に対抗を断念する戦略的決断に等しい。
幸いなことに、海軍のインフラ整備を一からやり直す必要はない。例えば、マサチューセッツ州クインシーにあるフォア・リバー海軍工廠だ。この造船所は1986年に閉鎖されるまで、ほぼ1世紀にわたって戦艦を生産してきた。この造船所を再び稼働させることの是非を調査する価値はあるだろう。他のインフラも存在する。海軍のドクトリンでは、海上で戦闘力を分散できる小型戦闘艦の群れを配備するとあるる。
海軍上層部、国防総省、議会は、全員が忠誠を誓う戦略的アイデアに基づき行動すべきである。
第二に、アメリカは外国を買うべきである。中国は世界最大の造船国かもしれないが、それに次ぐ造船大国は米国の同盟国である韓国と日本だ。これは我々が利用できる資源だ。ワシントンは、同盟国やパートナーがF-35ステルス戦闘機のような米国製の兵器システムを購入する期待が高い。特に極小の商船隊を再建するために、バイ・アメリカン(アメリカ買い)の反射神経を抑えて、それに応えるべきだ。日本国内の造船所で米海軍艦船を改装する最近の動きは、理にかなっているとしか言いようがない。
外国政府や造船所と協力すれば、短期間でもっと多くができるだろう。そしてそうすべきだ。
そして第三に、米国の戦争立案部門が中国の海運産業を注視していることを望む。ワシントンで最大の茨の道となっている問題に、大規模紛争の際に中国領土へ攻撃を行うかどうかがある。ホワイトハウスの答えが「イエス」なら、中国の造船施設は標的の上位にランクされるはずだ。そのインフラを劣化させれば、PLA海軍の戦闘ダメージを修復する能力を低下させ、海軍力と回復力のバランスを正すことにつながる。
もし、両軍が今ある艦隊で戦争に臨み、両軍とも容易に損失を出せないのであれば、互いに痛みを伴う戦いではあるものの、互角の戦いのように聞こえる。
政策論争でゾンビが死んでも、すでに時は遅い。アメリカのシーパワーの回復へ政治的決断を下そう。■
China's Shipbuilding Capability: A Threat to the U.S. Navy? - 19FortyFive
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About the Author of This Article
Dr. James Holmes, a 19FortyFive Contributing Editor, is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and a Nonresident Fellow at the University of Georgia School of Public and International Affairs. The views voiced here are his alone.
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