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主張 安全保障環境の変化に対応し、日本はミサイル防衛の限界を感じ、核抑止力効果を米国と模索していくことになる。

 


ロシアのウクライナ侵攻と中国の日本列島周辺での積極的な軍事活動が安全保障面で日本の覚醒が進めている


京の国家安全保障の指導部は、防衛費を増やし、中国、ロシア、北朝鮮の侵略に立ち向かうため態勢を見直すことに真剣に取り組んでいる。日本は、包括的な新国家安全保障戦略によって、ロシア侵略が引き起こした新しい地政学的時代に断固立ち向かおうとしている。東京は自衛隊を増強するだけでなく、経済的な備えにでも、先進国として世界をリードしている。さらに、対中露連合を形成し維持するため必要な国際外交を主導している。

 経済面では、日本は半導体など重要産業で中国依存を減らし、起こりうる紛争に日本経済を備え、平時の経済的強制から守るための法律を実施している。外交面では、今年の日本はG7の議長国を務め、東アジアの安全保障上の懸念を国際化し、台湾海峡における中国への反発を後押しする支持を集めている。

 しかし、日本の変化で最も包括的なのは、国防姿勢だ。第二次世界大戦後のタブーを破り、東京は「反撃能力」、具体的には敵国の軍事目標を攻撃できる長距離ミサイルを獲得する。これは、純粋な防衛能力という日本の伝統的な姿勢を超えるものだ。日本のエナジーとイニシアチブが抑止力に貢献するのは歓迎すべきことだが、この決定は、日本の国家安全保障の進化の次の段階が必然的に困難になることを意味する。敵反撃能力を追求する日本は、核問題で議論さえ嫌がる歴史的アレルギーを克服する必要に迫られる。このような変化が必要とされる理由は、中国の戦略的勢力の拡大が日本の防衛戦略の変化に立ちはだかるからためだ。 東京とワシントンは、通常の軍事力と同様に、核抑止力の輪郭を再考しなければならないだろう。


ロシアのウクライナ侵攻へのアジアの反応: 朝鮮戦争へのNATOの反応に似ている

ロシアのウクライナ侵攻について岸田首相が表明した深い懸念に、日本国民はほぼ同意している。首相は「今日はウクライナ、明日は東アジア」という表現で国民の懸念を汲み取った。 

 ロシア侵略の衝撃は、他のアジア諸国より日本で深刻であった。東京は、日露協力の強化が中国を牽制すると期待し、プーチンと協力して領土問題を解決しようとしていたからだ。 しかし和解は実現せず、どんな核心的な問題でも独裁者をなだめることができないことが判明した。ウクライナ侵攻は、権威主義的な大国による侵略戦争の可能性を現実のものとした。日本の指導者たちは、1950年にソ連と共産中国の支援を受けて北朝鮮が韓国を侵略した後、ヨーロッパ諸国が自国の安全保障をより真剣に考えるようになったことを、内心では歴史的に類推している。どちらのケースも、世界大戦の悲劇的な歴史を思い起こさせる。大国の侵略者が戦争を始めると、ある地域から次の地域へと波及し、侵略の世界的な伝染が起こりうる。さらに、2022年2月22日の中ロ共同コミュニケで表明された、中国による侵略への断固とした支持は、東京も見逃さなかった。中国は主権国家への侵略にお墨付きを与え、一方でロシアの侵略をアメリカとNATOのせいにした。これは侵略的修正主義を容認しているに等しく、日本はこの政策を容認できない。

 確かに、日本は侵略のはるか以前から、中国の大規模な軍事近代化計画に対処してきた。数十年にわたる軍事近代化で、人民解放軍は現在、通常ミサイル、世界最大の海軍と沿岸警備隊、日本の防空識別圏に頻繁に侵入する高度な航空戦闘機など、強大な戦力を有するに至った。北京の防衛戦略は、「近海防衛」や「海洋権益保護」と呼ばれるものに重点を置いている。無機質な響きを持つこうした言葉は、実際には台湾海峡や尖閣諸島周辺、そして南シナ海における中国が自称し違法な領土において、これまで以上の侵略を意味する。しかしロシアの侵攻は、日本にとって、中国の厄介な「グレーゾーン」の脅威が大規模な戦争に発展する可能性があることを眼の前にみせた。


防衛の変化

これを受け岸田首相は、昨年より20%多い6兆8000億円(500億ドル)の新たな防衛予算を発表し、米国の国家防衛戦略策定を反映させるため、日本の防衛計画の指針を国家防衛戦略(NDS)に変更した。自国や同盟国の日本基地への空爆やミサイル攻撃から防御する能力を向上させるなど、特定の能力では議論の余地はなかったが、日本の防衛戦略で最も重大な変化をもたらす可能性があるのは、中国本土や北朝鮮の標的を攻撃する能力を提供する独自の長距離攻撃能力を米国から獲得し、構築する計画だ。一般的に言って、伝統的に日本を、対空・ミサイル防衛、対潜水艦・対地戦に焦点を当てた同盟の「盾」の役割に割り当ててきた。一方、米国は剣であり、中国の膨大な数の標的を攻撃し、中国の潜在的な侵略艦隊と戦争遂行能力を麻痺させることができた。現在直面する脅威を考えると、日本がもはやこの取り決めに満足していないのは当然である。日本が提案するすべての変更は、概念的作業と同盟内の協力の深化を必要とするが、自衛隊が核保有国の国土を標的とする可能性があるため、反撃の変更を獲得する願望は特に厳しいものとなる。まさしく今、中国が自らの核の再考を明確に示している。

   

日本の攻撃態度の変遷: ミサイル防衛の限界

日本の反撃計画は驚くようなものではない。故安倍首相は、日本の大戦略を画期的に変える一環として、防衛政策の転換に関する議論を始めていた。2019年、東京は「2019年度以降の防衛計画の大綱」という防衛計画文書を発表し、「スタンドオフ防衛能力」の調達に関心があると強調した。日本はJASSM-ERミサイルと、攻撃機から中国の艦船に対して使用されるLRASMを取得、または取得中である。このミサイルは、より長距離から中国の艦船を標的にする能力を日本に提供するが、それでも基本的には日本の伝統的な対艦任務と合致する。

 日本の長距離能力に関する議論の中心は、技術的に進歩した攻撃ミサイル、特に従来のミサイル防衛では迎撃が極めて困難な極超音速機や極超音速巡航ミサイル(HCM)に対抗が困難であることから、ミサイル防衛や基地・港湾の強化といった受動的防衛だけに頼ることの難しさであった。PLAは、不規則な軌道を描く低空飛行ミサイル極超音速兵器を運用する可能性が高い。また、無人航空機の群れを使用する可能性も高い。日本の新たな防衛戦略の一環として、日米はHGVの脅威に対処するための開発プログラムを進めているが、このような防衛的対抗措置には時間と費用がかかるだろう。 


長距離攻撃に共同投資がもっと必要

日本が米国のトマホーク・ミサイル購入や国産長距離巡航ミサイルの製造を検討する際には、軍事関係者が「キルチェーン」と呼ぶ、長距離の標的を発見、追跡、捕捉し、「仕留める」能力の開発も必要となる。この支援インフラは、たとえ限定的な攻撃能力でも高価で、高度なセンサー、衛星、長距離レーダーを必要とし、標的情報を射手に伝達するための高度な技術的能力も必要だ。何千マイルも離れた標的を攻撃するため、日本はより強固な情報監視・偵察能力を構築する必要がある。

 日本はその能力をアメリカに依存するだけでは満足しないはずだ。どの国でもそうだろう。とはいえ、中期的には、日本は米国に頼らざるを得なくなり、その結果、最高レベルでの指揮統制を含め、米軍との統合度をさらに高める必要がある。このような変化は、日本の防衛文化の難しい変革を必要とする。日本の反撃計画を成功させるためには、日米の作戦・戦争計画を調和させ、場合によっては統合する必要がある。

  

 中国核兵器の影

中国が、核弾頭数の増加だけでなく、核弾頭搭載ミサイル、爆撃機、原子力潜水艦からなるより強固な「三位一体」の戦略的脱却と、米国の核およびその他の戦略的戦力を担当する米戦略軍司令部のトップが呼ぶものに向かっているときでさえ、こうしたことが起こっている。これは習近平自身がしばしば強調する願望である。

 その根拠は少なくとも2つある。第一に、中国は米国の通常戦力の優位性と、中国が自国の自然な影響圏とみなす海洋周辺地域に介入する米国の継続的な能力を相殺しようとしている。第二に、中国は自国に逆らう国々に対する経済的、政治的、軍事的圧力の組み合わせで核の威圧を加えることで、強圧的外交の大戦略を強化する。核の威圧は、米国の同盟関係を覆すという中国の願望を実現する可能性を秘めている。北京の戦略家たちは、ジェームズ・シュレジンジャー元国防長官の「核兵器は毎日使われている」という言葉を理解しているようだ: 中国がこれまで以上に信頼性が高い核戦力を配備することは、その影にいるすべての戦略的アクターの思考を形成することになる。中国のこうした動きは、日本の限定的な通常攻撃能力の心理的効果を削ぐ可能性がある。

 中国の通常攻撃に対する日本の限定的な攻撃に対する核反応は、ほとんどのシナリオで信用できないが、核戦略に関する中国の脅威と意図的な曖昧さは、本土攻撃に関する検討事項の上に大きく立ちはだかるだろう。中国は、近隣諸国に対する「エスカレーション優位性」と呼ばれるもの、つまり敵対国よりも危機をエスカレートさせる力を保持する能力を維持したいと考えるだろう。そして、日本の通常軍事計画をめぐってアメリカが核戦争のリスクを冒すことを厭わないかどうかという疑問を日本の心に抱かせ続けることで、同盟力学に政治的分裂を生じさせたいのだろう。

 日本の目標や利益に対する中国の潜在的な攻撃にどのように対応するのが最善かをめぐる同盟内の意見の相違を悪化させるために、中国が核武力の脅威を利用する用意があるとするシナリオもある。この状況では、中国がDF-21、高精度のDF-26、HGVを搭載したDF-17など、戦域核オプションを近いうちに保有する可能性があり、米国を攻撃することなくアジア諸国を標的にする能力を提供するという事実で悪化するだろう。

 通常型のディープストライクを獲得しても、日本は核抑止力でアメリカに完全に依存することになる。日本が中国本土の標的を攻撃しようと躍起になる一方で、アメリカはより慎重である、あるいはその逆のシナリオが想像できる。こうした動きから、効果的な抑止と戦争遂行に必要な通常戦力と核戦力の組み合わせについて、より現実的で率直な日米の話し合いが求められる。東京は、いつ、どのように中国本土の標的を攻撃するかについて日米が対立するシナリオと、より伝統的な防衛戦略との対立を避けなければならない。米国が非核保有国に対して、自国に代わって核戦争の危険を冒すことを保証する「拡大抑止」以上に難しい戦略的課題はない。後者の脆弱性と依存は、しばしば関係を深刻に損なう可能性がある。東京とワシントンは、核抑止力協議を制度化しなければならない。 


結論   

日本はロシアと中国という軸に対抗する世界的な連合を主導している。 中国とロシアの脅威に対応するための日本の3つの動き、経済的弾力性、抑止態勢の強化、そして台湾海峡における不可侵に関する世界連合を強化するための強力な外交的リーダーシップは、歓迎すべき進展だ。しかし、非常に断固とした東京の動きは、日本の指導者たちが先延ばしにしたいであろう、核戦略に関する難しい会話の必要性を早めている。日本は論理的で根拠ある戦略を考えている。航空防衛やミサイル防衛の制限や、敵対国に反撃できることを日本国民に示したい指導者たちの政治的欲求は理解でき、日本をより積極的な防衛へ駆り立てる十分な理由となる。他の防衛戦略と組み合わせることで、日本の反撃は、中国の軍事的猛攻撃を低下させる作戦効果をもたらす可能性もある。しかし、中国の核の影が迫っており、中国は少なくとも戦略的な攻撃で日本を脅し、通常型の反撃を制限するだろう。日米関係の次の段階は、核抑止を計画することにある。 ■


Japan and Nuclear Deterrence 


By

Dan Blumenthal


About the Author 

Dan Blumenthal is a senior fellow at the American Enterprise Institute, where he focuses on East Asian security issues and Sino-American relations. Mr. Blumenthal has served in and advised the US government on China issues for more than a decade.

In this article:

Asia, China, featured, Indo-Pacific, Japan



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