スキップしてメイン コンテンツに移動

核抑止力を担うSSBNの最新動向について。中国の普級(JL3ミサイル搭載)、米国のコロンビア級(トライデントIID5ミサイル搭載)。

 

094型SSBN

中国の核武装型弾道ミサイル潜水艦は、技術や性能の詳細が不明で謎に包まれたままだ

2022年8月の "The Mirror"によると、人民解放軍・海軍(PLAN)は、最新の攻撃型潜水艦を台湾周辺に配備して軍事演習を行っており、直近ではナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問した際に実施したとある。

中国の新型潜水艦「Type-039C元級」については、ほとんど情報がないが、近年の国防総省の報告によると、中国が米海軍の海底の優位性に挑戦しようと激しく取り組んでいることは明らかだ。

2021年、ペンタゴンの年次中国軍事報告書は、当時、中国はJL-2ミサイルで武装した6隻の普級SSBN(核武装弾道ミサイル潜水艦)を運用していたが、人民解放軍ははるかに威力があり長距離の核武装弾道ミサイル変種JL-3の製造準備を進めていると述べた。

国防総省の2021年版「中華人民共和国の軍事・安全保障動向に関する報告書」には、「中国がJL-3含む新型で、より高性能、より長距離のSLBMを配備すれば、PLANは沿岸海域から米国本土を狙う能力を獲得することになり、したがって、海上抑止力の生存能力を高めるため要塞作戦を検討するかもしれない」とある。

JL-2では射程が限定されるが、開発中のJL-3は、5,600マイルもの射程で運用されると報告されている。つまり、普級潜水艦は、アメリカ大陸を危険にさらすため米本土に近い場所で活動する必要がなくなるということだ。

国防総省の報告書は、「JL-2の現在の射程距離の限界は、PRCが米国の東海岸をターゲットにする場合、普級がハワイの北と東の地域で活動することを要求する」と述べている。JL-3はこれを大幅に変更する。

中国は現在普級SSBN6隻を運用しており、最大12発のJL-2ミサイルを搭載できるが、射程距離のため、米国の高価値目標を危険にさらそうとする場合、作戦範囲が制限または限定される。中国の指揮官は地理的な柔軟性が低く、探知される可能性が高い状態で作戦を行わざるを得ない。

射程距離の拡大

JL-3の射程延長が非常に重要で、5,600マイルという数字が正確ならば、中国の新型潜水艦発射核ミサイルは、最大4,000マイルで作動すると報告されている米国のトライデントII D5を上回る可能性がある。地図を見ると、中国本土の内陸部は、カリフォルニアの海岸からおよそ1万キロほど離れている。単純計算すると、JL-3ミサイルは、中国の核武装潜水艦が太平洋上のほとんどどこからでもカリフォルニアや米国の他の地域を攻撃する能力をもたらす可能性が高い。

中国の潜水艦が発射する核武装弾道ミサイルは、米国の装備品を上回るのか。国防総省の延命計画でトライデントII D5のアップグレードが信頼性と性能を向上させていることを考えると、未解決の問題のままかもしれない。さらに、米国は核ミサイルを搭載した新型コロンビア級潜水艦12隻を運用する計画だ。これにより、主要な高関心目標を危険にさらすために、活動できる場所の地理的範囲は明らかに拡大する。

普級とコロンビア級の比較

中国の普級SSBNの正確な技術的構成についてはほとんど知られていないが、米国の新型コロンビア級潜水艦には匹敵しないかもしれない。開発中の新型コロンビア級は、これまでで最も静かな潜水艦であるかもしれない。静かで効率的な電気駆動装置や、X字型船尾などの技術が採用されている。

普級について分かっていることは、2020年5月の議会調査局による報告書「China Naval Modernization」で、極めて致命的な、射程5,600マイルの核武装弾道ミサイルJL-3で武装するとあり、中国海軍の近代化は、米国海軍の能力への影響が無視できない。さらに、2018年のCSIS報告書には、中国はすでに同兵器の試射を終えており、アメリカ大陸を大きな危険にさらすとある。

コロンビア級は、他国海軍の潜水艦で使用されている機械駆動の推進と対照的に、電気駆動推進を装備する。現行のオハイオ級では、原子炉プラントの熱で蒸気を作り、蒸気がタービンを回し発電し、艦を前進させる。この推進力は、タービンからの高速エネルギーを艦のプロペラを動かすのに必要なシャフト回転に変換する「減速機」で達成される。「電気駆動システムは、機械駆動システムよりも静か(すなわち、ステルス)であることが期待される」と、昨年のコロンビア級潜水艦に関する議会調査局報告書は述べている。

コロンビア級潜水艦は全長560フィートで、長さ44フィートのミサイル発射管から発射する16発のトライデントII D5ミサイルを搭載する。

X字型の船尾は、潜水艦の操縦性を向上させる。潜水艦が、プロペラの使用から静粛性を高める推進器に切り替わるにつれ、潜水艦は操縦性を低下させたと海軍関係者は説明している。

海軍の開発部門は、電気駆動推進技術は原子炉で熱を発生し、タービンを動かす蒸気を作り出す点で変更はないと説明している。しかし、発電された電気は、減速機でなく、電気モーターに伝達されプロペラを回転させる。

潜水艦の推進力として電気駆動装置が評価されていた頃のMITのエッセイによれば、電気モーターの使用は他の利点ももたらす。

『潜水艦用電気推進モーターの評価と比較』というエッセイによると、電気モーターを使用することで、機械駆動に比べ原子炉の電力を最適に使用でき、他用途に使える艦内電力が増える。著者ジョエル・ハーバーは、機械駆動の潜水艦では、原子炉の総出力の80パーセントが推進に使用されると述べている。

「電気駆動潜水艦では、潜水艦の原子炉出力はまず電力に変換され、次に電気推進モーターに供給されます。推進に使われていない電力は他の用途に簡単に利用することができます」。

コロンビア級潜水艦の研究、科学技術作業、ミサイル発射管製造は、数年前から進められてきた。チューブ&ハルフォージングと呼ばれる重要な演習では、溶接や建設方法を評価するため4パックのミサイルチューブを製造する。これらの構造物は艦のモジュールに搭載されることを想定している。

コロンビア級には、コンピューター駆動のジョイスティック・ナビゲーション・システム、フライバイワイヤ技術、光ファイバーペリスコープ技術など、ブロックIIIバージニア級攻撃型潜水艦で開発された技術も数多く組み込まれる。自動航行により、潜水艦は深度と速度を自動設定でき、一方、オペレーターは指揮・制御の役割を果たす。

トライデントII D5

潜水艦から発射される核武装弾道ミサイル「トライデントII D5」は、2040年代まで信頼性と使用を確保するため「ライフエクステンションプログラム」を国防総省が最終決定しているため、生き続ける。

「W76-1LEPは予算内で予定より早く完了し、弾頭の耐用年数を20年から60年に延長することで国家の安全と安心を強化した」と、エネルギー省の国家核安全保障局2021年備蓄管理計画は述べている。

海軍とロッキードによると、数十年にわたり使用され、しばしばテストされ、繰り返しアップグレードされた3段式トライデントII D5弾道ミサイルは、公称距離4,000海里を飛翔し、独立した標的再突入体複数のを搭載できる。

近年、海軍はロッキードと共同で、核兵器の近代化と維持のための重要な技術的アップグレードを数多く行っている。海軍関係者がThe National Interestに語ったところによると、一部は現在も進行中であり、また他のものは十分な進展を見せ、次の段階の持続的努力の基礎を築いた。核兵器の電子モジュールや、ミサイルのMk-6誘導システムの改良がここに含まれる。

アメリカ科学者連盟の核情報プロジェクトのハンス・クリステンセンは、数年前に本誌に、D5LEはナビゲーションに1つではなく、2つの星を使うことで精度とターゲティングを高めると語っています。「潜水艦の正確な位置に関する柔軟性を高めます」。

今後数十年に、トライデントII D5を新しい兵器に置き換える必要があるが、現行ミサイルの耐用年数延長が、開発者に時間と開発軌道の確保を与えるだろう。トライデントを搭載した米海軍の弾道ミサイル潜水艦は、海底の暗い深部を静かに密かに巡回して潜在的な敵対者を危険にさらし、脅威が高い目標の潜在的な攻撃範囲内で活動し、核攻撃時には大規模な破壊的反応を保証する。■

Undersea Threat: China Accelerates Type-039C Yuan Attack Submarines & Longer-Range Sub-Launched Nuclear Missiles - Warrior Maven: Center for Military Modernization

Kris Osborn is the Military Affairs Editor of 19FortyFive and President of Warrior Maven – Center for Military Modernization. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...