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中国の露骨な経済安保政策を米国も追随すべきだと主張するNational Interestの記事をご紹介します。


包括的な安全保障体制に向けたビルディング・ブロックとして経済と安全保障の結びつきを中国は重視している。米国もそうすべききだ


国の中東政策は矛盾している。米国は、相互の脅威に対抗することを目的とした戦略的パートナーシップのシステムを維持し、米国と世界経済にとって不可欠な貿易ルートを守るだけでなく、複数のパートナーによる演習を日常的に実施する、この地域における強力な海軍プレゼンスを維持している。同時に、米国はインド太平洋に軸足を移そうとしている。

このため中国は、米国の同盟国であると同時に敵対国でもある地域のパートナーとの非同盟政策によって、その空白を埋めようとしている。当初、中国は開発を通じ安全保障を達成するために、純粋な取引ベースで各国と現実的な経済関係を育んできた。これは、2016年に中国・アラブ諸国協力フォーラムの李承文大使が「中東の根本問題は開発にあり、唯一の解決策も開発である」と宣言したことに象徴される。このような経済的な結びつきが深まるにつれ、中国は必然的に米国の利益と矛盾する安全保障上の結びつきを強固なものにしようとするだろう。

中東で米国に取って代わろうとする中国は、米国の長期的資産を中東に呼び戻す可能性が高い。米中央軍のマイケル・エリック・クリラ司令官は2023年3月、上院軍事委員会での証言で、米国は「中国がこの地域に完全に浸透する前に、パートナーと統合する競争に入っている」と主張した。このように、貿易関係や技術競争は、技術から安全保障への直接的な波及があるため、より広範な安全保障上の懸念と区別して、単独で扱うことはできない。クリラは、中国の経済的、政治的、戦略的懸念が有機的なものであることを指摘し、「中華人民共和国はこの地域での競争を選択した」と述べた。

 中国は、開発と貿易を同義語として認識している。そのため、中国の一帯一路構想(BRI)は、港湾や施設の接続、電子政府プラットフォームの採用など、物理的インフラとデジタルインフラの両方への投資に力を入れている。ファーウェイアリババは、先進技術で湾岸のデジタル分野を拡大することで、デジタル・シルクロードを支える湾岸地域のデジタル変革に積極貢献している。米国の対応は、第三国にファーウェイとZTEの5G機器の購入を思いとどまらせる「クリーン・ネットワーク」キャンペーンを実施することであった。さらに2022年7月、ジョー・バイデン大統領はサウジアラビアと5Gと6Gの協力覚書に署名した。とはいえ、中国はサウジアラビアにとって最大の貿易相手国であり、リヤドは500億ドルの対中投資を目指しているため、これはスタートに過ぎない。米国は、中国のデジタル・シルクロードに対抗するべく、次世代技術を探る必要がある。そうすれば、中国の電気通信や情報技術が、この地域で活動する米軍や同盟国にとって安全保障上の脅威となることを防ぐことができる。

 米国の先端技術がない場合、中国のBRIは、貿易・技術ハブ、製造・物流施設、人工知能、デジタル産業、スマートシティ・インフラの開発に取り組むサウジアラビアの「ビジョン2030」と一致する。サウジアラビアは外国からの投資を誘致し、大陸を結ぶ中心的なノードとなるため、経済の多様化を進めている最中だ。中国がイラン、アラブ首長国連邦、エジプト、アルジェリアを経由してヨーロッパとアフリカにアクセスできる経路上の重要な位置にあるため、サウジアラビアはBRIの至宝と位置づけられている。これが中東と包括的な戦略的パートナーシップの確立を目指す中国の基盤となっている。

 この地域への中国の関与は、純粋の経済から、地域の政治・安全保障問題への関与へ拡大している。2021年12月には、中国がサウジアラビアの弾道ミサイル計画を支援し、独自の武装無人機を製造していると報じられた。中国はアブダビにも軍事基地を建設しようとしたが、米国の圧力で断念した。中国が経済的・戦略的関係を深めていくにつれ、米国の同盟国が米国の圧力に屈しにくくなる分、中国が安全保障上の利益を高める立場になるリスクは存在する。その背景には、米国の圧力のかけ方に一貫性がなく、この地域の安全保障に非協力的だと思われていることがある。 あるイラン政府関係者によれば、中国はイラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)などを含む地域海軍連合の結成を監督し、海上航行と航路の安全確保を強化した。

 しかし、非同盟政策を維持しながら、安全保障関係の基盤として経済関係を確立する中国の戦略は、持続不可能だ。中国がイラン政権の怒りを買うことなく、サウジアラビアやUAEとの核協力を進めることは不可能だ。

 地域全体の米国の戦略的パートナーは、今後も米国の行動を反映し続けるだろう。米国がこの地域に戦略的に関与し、中国のデジタル・シルクロードに対抗するために湾岸協力会議加盟国の防衛力を先端技術で強化する意思があると認識されれば、中国の海軍や安全保障連合にヘッジをかけ、そちらを志向することはないだろう。このことは、中国がこの地域のインフラに食い込み、湾岸経済の多様化努力に組み込まれる可能性のあるクリーン・エナジーなど先端技術への投資を阻止しようとする米国の思惑と表裏一体である。中国が経済と安全保障の結びつきを包括的な安全保障体制に向けたビルディング・ブロックと見なしているように、米国もそれに従わなければならない。■


China Has a Clear Middle East Strategy. Does America? | The National Interest

by Harley Lippman

July 17, 2023  Topic: China  Region: Middle East  Blog Brand: Eurasia in Transition  Tags: ChinaGreat Power CompetitionSaudi ArabiaIranUAE


Harley Lippman is a board member of the United States Agency for International Development's (USAID) Partnership for Peace Fund.

Image: Shutterstock.


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