Military helicopters fly over National Day celebrations in Taipei on Oct. 10. (Chiang Ying-Ying/AP)
現在の我々は過去の足跡の上を歩いているに過ぎない。
冷戦初期に米中両国が開戦一歩手前まで進んだのは中国沿岸の小島をめぐってのことだった。1955年、1958年と二度にわたり中国と米国は金門島Quemoyと馬祖島Matsuをめぐり危険な事態に進展した。ともにPRC本土沖の小島で1955年の危機は台湾が占拠する両島をPLAが大規模砲撃して発生した。これに対し米国は核兵器使用を脅かした。アイゼンハワー政権は台湾領土の一部分でも喪失すれば中華民国政府は崩壊につながると恐れた。
二回目が1958年で前回を上回る危険度となった。中国は凍頂烏Dongdingの占領を狙ったものの撃退され、PLAは怒りにまかせ台湾軍500名を殺害した。ここに航空部隊も投入され中国MiGと台湾F-86セイバーが対決した。ミサイル技術でまさる台湾が15対1のキルレシオを達成した。同年10月に米国が対象島しょ部分の防衛に関与する意向を表明するとPRCは引き下がった。台湾と中国は砲撃を気まぐれに展開し、これが1970年代まで続いた。
新アメリカの安全保障センターが行ったウォーゲームでは中国が台湾の島しょ部を占拠する事態を想定し、金門島馬祖島でなく東沙諸島Pratas/Dongsha Islandsを強襲するとした。南シナ海で台湾の南西に広がる地点だ。中国の海軍空軍力の大幅拡充によりこの作戦実行が十分可能となっている。ウォーゲームでは中国海軍が占領し、守備隊500名を降伏させ、既成事実とした。
法と政治の観点ではこの占領に有利な点がある。同島しょ部はすでに中国領だからだ。PRCは長期にわたり同島しょ部の領有を主張し、台湾による占拠を非難している。また領有を主張する国は台湾以外にない。このため南シナ海周囲の各国さらに世界各国は中国による同島占領を消極的とはいえ受容しそうだ。
政治面での優位性もある。ワシントンは台湾防衛に真剣になっているが、どこまでの防衛に踏み切るか疑問だ。米国は外縁部の島しょ占領に反応しても冷静な態度のままだろう。台湾住民17百万人には戦う価値があっても、南シナ海上の小島に犠牲を払う価値はない。同センターのウォーゲームでは日本の介入も想定したが、日本政府も比較的重要度が低い領土をめぐる紛争に巻き込まれるのを歓迎しないはずだ。
1950年代の台湾海峡危機に際し、米国は中国へ軍事優位性がある想定だった。ソ連はPRC支持に熱心でなく、アイゼンハワー大統領も蒋介石政権存続を願う国内圧力に直面していた。当時の中国と米国の間に経済、外交両面で接触が皆無だったため軍事面以外の結果が発生する可能性はなかった。このため、米国は軍事作戦実施に移りやすく、毛沢東が引き下がるまで強硬な態度を取った。
今日の状況は全く異なる。そのため今回のウォーゲームが関心を集める。米国に海上空中での優位性は消え、PRCとの対戦で勝利を収める保証もない。中華民国は国内体制を固めており、崩壊の兆しはない。外縁部島しょをめぐる戦闘を米国は真剣に考慮していない。確かにPRCには危険な賭けになるが、ワシントン、東京ともに経済上の代償を北京に払わせるはずだ。だがPRCが状況を一変させようと動けば、米国に予防策はなく、事態の逆転も困難だ。■
The Taiwan Crisis You Are Missing: A Chinese Invasion of Quemoy and Matsu
Now a 1945 Contributing Editor, Dr. Robert Farley is a Senior Lecturer at the Patterson School at the University of Kentucky. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), and Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020).
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