スキップしてメイン コンテンツに移動

クルスク侵攻はプーチンへの信頼を内外で低下させる―中国の動きが要注意だ(The Hill)

 



プーチン大統領はクルスク侵攻で内外の支持を失う 



ウクライナによるクルスク侵攻で対処を迫られるウラジーミル・プーチン大統領は、侵攻の重要性を軽視したまま、時間を稼いでいる


クライナがロシアの防衛線を突破し、約450平方キロメートルを奪取して3週間以上が経過した。

 米国情報当局の高官は、ロシアがクルスクで反攻を開始することは「確実」だと述べているが、アナリストによれば、プーチンは時間をかけているという。

 ワシントンのシンクタンク、戦争研究所のロシアチーム副リーダーでアナリストのカテリーナ・ステパネンコは、「プーチンは非常に計算高く、政権の健全性に具体的な影響を与えそうな軽率な政治的決断を下したがらないことが多い」と語る。 

 ステパネンコによれば、プーチンはウクライナによる侵攻の重要性を軽視しようとしている。「自国領土が侵攻を受け、20日以上も続いているのだから、それを機に戒厳令を敷き、動員を宣言し、ウクライナに宣戦布告すると思うだろう。そうなっていない最大の理由は、プーチンがシナリオを軽視しようとしているためだ」。 

 プーチンはロシア国民からの圧倒的な支持を維持しているが、8月6日のウクライナによるロシア侵攻が国民感情の最低点となった。人工知能を使い幅広い指標から国民感情を分析する調査会社フィルターラボのジョナサン・テューブナーCEOは言う。 「何が起こっているかというと、外部からの衝撃がロシアのシステムに加える瞬間があるということだ」。

 ロシアは8月26日、ウクライナへの壊滅的な空爆作戦を開始し、100発以上のミサイルと無人機で、エナジーインフラを標的にした。少なくとも4人が死亡、10数人が負傷し、攻撃は家屋、電力網、水道施設に損害を与えた。 

 ロシアで活動する数少ない独立系非政府組織レバダ・センターが金曜日発表した世論調査によれば、ロシア国民に動員をめぐり懸念が高まっている。世論調査は8月2日から28日まで、1600人を対象に実施された。レヴァダの世論調査によれば、ロシア人の絶対多数はウクライナのクルスク侵攻を知っており、懸念している。 

 しかし、プーチンはそのような不安を軽視し、ロシアの損失から注意をそらそうとしている。プーチンは、志願兵の愛国心に焦点を当て、ウクライナの都市ポクロフスクで得たロシアの軍事的利益を誇示している。「プーチンは、ロシアがウクライナの戦場での主導権から目をそらすほどクルスクは重要ではなく、動員で社会を内部から不安定化させるほどクルスクは重要ではないと社会に伝えている」とステパネンコは語った。   

 レバダは、プーチンの支持率を85%とし、これは過去1年間ほとんど変わっていない。 

 しかし、フィルターラボのトイブナーは、ロシアが兵士を募集し、軍需生産が増加している地域のメディアで、プーチンへの否定的な感情がここ数週間高まっていることを追跡した。「こうした重要な地域でプーチンの威信と人気が落ちれば(特にロシア人が戦争が悪い方向に進んでいると感じれば)、クレムリンの兵員補充が難しくなるかもしれない」とフィルターラボは8月22日の分析で書いている。 

 「ロシアの権力システムが実際にどのように機能しているかについては、多くの憶測や不明点があるが、プーチンが民衆の不満に敏感であることはわかっている」。 

 フィルターラボは、ウクライナのロシア攻勢に対する中国とイランのメディアの反応も調べた。中国とイランはプーチンの最も重要なパートナーであり、ウクライナでの彼の戦争に拍車をかけている。 

 ロシアはウクライナでイラン製の爆発物付き無人機を使用し、イラン製ミサイルを調達していると伝えられている。モスクワとテヘランは「包括的協力条約」を10月までに調印する予定だ。  

 しかし、ロシアが戦争を継続できるかの真の生命線は中国である。モスクワは、軍事用に再利用可能な中国製商業製品の輸出に依存しており、北京は米国と同盟国による制裁対象のロシアの石油の数少ない買い手のひとつである。 

 「イランでも中国でも、ニュースは政府の見解を色濃く反映しており、プーチンとの結びつきを強く意識している」とトイブナーは解説している。 

 フィルターラボは、クルスク侵攻の直後、ロシア指導者への否定的なシナリオをイランと中国で追跡したが、その後、反動が起きていることに気づいた。中国は、自国の目的のためにロシアの脆弱性をどのように利用できるかを注視しているようだ、と外交問題評議会の欧州担当フェロー、リアナ・フィックスは言う。 

 「中国の立場からすれば、ロシアが中国に依存すれば、有益だろう」。ウクライナによるロシア侵攻に対する中国の公式反応は、"全当事者"にエスカレーションを緩和するよう呼びかける決まり文句を繰り返したが、フィックスは、北京が声明を強調せざるを得ないと感じた事実は、中国が今回の出来事を深刻に見ていることのあらわれだと述べた。 

 「中国が反応し、ウクライナによる侵攻への非難を明らかにする必要性を感じた事実は、それだけ深刻な問題であることを示している」。■


Putin’s support at home and abroad dented by Kursk invasion

by Laura Kelly - 08/30/24 4:31 PM ET


https://thehill.com/policy/defense/4856240-russia-ukraine-counter-offensive/


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...