Moon Jae-in, left, then South Korea’s president, with Yoon Suk-yeol in March, soon after Mr. Yoon’s victory in the presidential election. Credit Yonhap/EPA, via Shutterstock
1987年の民主憲法導入以来、クーデター対象になった最初の文民大統領として歴史に残る可能性が出てきた
「バイデンは韓国の不人気大統領を救えるか」と題した筆者の最近の記事は、韓国で軍部の反乱が起こりうるかどうかという議論を巻き起こした。1987年の民主化憲法で軍への文民統制が定着して以来、韓国ではクーデターが遠い存在になっているとの主張もある。
しかし、現政権を非合法と軍部が見なし、経済的に不当な扱いを受けていると認識すれば、クーデターの可能性は高まる。尹錫烈(ユン・ソクヨル)が歴史的なまで不人気な大統領として職を適切に処理できず兵士の福祉向上を怠れば、軍の反乱に直面する危険性がある。
まず、軍隊が国家元首を非合法と見なし、最高司令官としての能力に疑いの目を向けるのは珍しいことではない。米国では、ジェシー・ヘルムズ上院議員が、ベトナム徴兵を逃れたビル・クリントンは、ノースカロライナ州内の軍事基地6箇所に駐留する軍人の間で極めて不人気だと述べたことがある。韓国軍兵士の多くは、兵役逃れした尹を快く思っていない。さらに、統治開始から3カ月間、尹ほど不人気だった最高司令官はいなかったと、多くの兵士が認識している。
尹の不人気ぶりを示す材料として、まず米オンライン調査会社モーニング・コンサルトが韓国人の19%が尹を肯定的に評価し、72%が否定的な見方をしていると8月11日明らかにした。これは、尹が3カ月前に大統領に当選したばかりであることを考えれば、政権の非正統性を示唆している。6月15日、尹が「大統領になるのは初めてなので」、妻の政治に問題ある言動にどう対処していいか分からないと発言し、尹の任命権の乱用と無能なリーダーシップぶりを非難していた国民がショックを受けた。
第二に、尹が執務室を国防省に移すことを決めた途端、軍は20日間で司令部全体を空にしなければならなくなった。尹は移転が国家安全保障に及ぼす影響について、軍事戦略筋に相談せず、ただ迷信を信じただけであった。司令部を失った戸惑いに加え、迷信に基づく尹氏の一方的判断に、多くの兵士が心を大きく痛めた。
第三に、米国では戦争と平和の重要問題に関しては超党派の協力が当たり前だが、韓国でも国防に関して同じであるべきだ。韓国の軍事界は、政治的志向と無関係に、隊員全員が北の敵に統一戦線を張らなければならないことを理解している。ところが、尹の就任直後に、超党派の協力体制という原則が崩れ去った。
前任者が任命した高級将校は全員自分に忠実な若手将校に置き換え、国防省責任者に4つ星ではなく3つ星将官を任命した。心配なのは、新任者のほとんどが韓国陸軍士官学校の卒業生であることだ。陸軍士官学校卒業生は全将校の1割にも満たないが、主要職位を占めている。米陸軍では、大将の階級はウェストポイント卒業生以外にも分散しているため、このようなことは起こらない。
尹は、韓国陸軍士官学校卒業生を、能力や実績と無関係に一部だけ優遇しており、疎外された陸軍士官学校卒業生と非陸軍士官学校卒業生は、不満と怒りに満ちている。
しかし、不満や怒りだけで、政権に反抗する動機になるとは限らない。不満を抱える兵士が、自分たちは経済成長の恩恵を受けていると思えれば、昇進差別を我慢する可能性が高い。しかし、経済的な恩恵を受けられないと思えば、正統性がないとされる現政権を容認する可能性は低くなる。
尹は旧韓国国防総省内の執務室に移った直後に、軍事予算を120億ドル削減した。兵士多数が新しい制服、戦闘靴、防弾ヘルメットを受け取れず、安全性を低下させている。また、厨房や宿舎の改修予算も削減され、軍隊生活の質が低下する。
一方で総司令官は、新しい大統領府と邸宅改築に4000万ドル以上を費やした。この金額は、もし尹が旧官邸を使い続けていれば不要なものであった。兵士たちは、尹が軍事予算削減を実施する一方で、自らの生活の質や安全の向上を優先させるのを目の当たりにした。そのため、多くの兵士が経済的な差別を受けたと感じている。
さらに、尹は大統領選挙運動中に、「就任後すぐに兵士の給与を2倍以上にする」と公約した。多くの兵士は、即座の大幅昇給を期待し尹候補に投票した。しかし、尹は公約を破り、多くの兵士が大統領に経済的不満を持つようになった。
筆者は、韓国で史上最低の支持率を誇る不人気大統領であるだけでなく、軍事予算削減により兵士の経済的不満がかつてないほど高まっていることから、軍事クーデターが起こる可能性があると考える。この2つの政治的・経済的条件は、尹が在任中に軍の反乱に遭遇する運命にあることを意味しないが、尹の下で軍の反乱が起こる確率が、前任者のいずれより高いことを示唆している。
韓国史上初の軍事クーデターを起こしたのは、当時少将だった朴正煕(パク・チョンヒ)である。1961年5月16日、張勉(チャン・ミョン)が率いる文民政府に反旗を翻し、1979年10月26日に側近に暗殺されるまで国を支配した。朴は張の統治が違法であると考えた。北の共産主義者から国を守ることに成功した兵士たちが経済的困難に苦しむ一方で、腐敗した政治家が贅沢な生活を楽しんでいると、朴はたびたび不満を口にしていた。
朴正煕の後を継いだ崔圭河(チェ・ギュハ)から権力を奪い、2年制ではなく4年制の韓国陸軍士官学校を最初に卒業したことを誇りとする全斗煥(チュンドゥファン)が朴の後を継いだ。崔は朴政権の首相として、親朴派で構成される韓国の選挙人団によって大統領に選出された。崔は朴軍事独裁政権の象徴に過ぎず、文民大統領を朴後継賭しては正統性が欠如しているとして見ていた。クーデター当時、全は国防安全保障司令部(DSC)の少将だった。国防安全司令部は、国内治安を守り、政権への忠誠心を維持し、破壊行為を抑止・調査する主要な軍事組織として機能しなかった。崔は軍人の血が流れていないので、軍の経済的な利益を守ることはできない」とも考えた。
後継者の盧泰愚(ノ・テウ)も軍部を後ろ盾にした政権を発足させた。盧泰愚は、1979年に崔文民政府に対するクーデターを成功させた共犯者である。盧武鉉以降、1987年の憲法改正で大統領の任期を1期5年に制限し、将来の独裁政治から国を守るようになった。
民主化論者の金泳三が盧泰愚の後を継いだ。金泳三は就任早々、1979年の軍部反乱の元凶となった士官学校内の悪名高い秘密結社を解体し、国民の熱狂的な喝采を浴びることになる。一夜にして権力を失った軍部は再起不能となり、反乱を起こすことなど夢にも思えなくなった。
金大中が金泳三の後を継いだ。二人の金は、韓国民主化のために絶え間ない闘争を続けたことで有名である。金大中はアジア通貨危機のさなかに政権を握ったが、そこから韓国を救い出した。金大中は韓国と北朝鮮の平和的和解への道を開いたとして、2000年にノーベル平和賞を受賞した。また、任期最後の年に息子2人が汚職で逮捕されるまで、幅広い人気を誇っていた。軍部は、金の国への献身と軍人の福利厚生への配慮を評価し、金に逆らう動機は少なかった。特に、軍部の経済的不満の代弁者である一般政府支出に占める軍事費割合は、金政権下で高くなった。
金大中の後継者である盧武鉉は、民主主義の原則と価値に根ざした、権威主義的でない指導者として知られていた。盧武鉉以外の歴代大統領は、大統領としての権力が憲法の制限を超える独裁体制、あるいは帝政を確立した。一連の政治・経済スキャンダルのため、盧武鉉の支持率は5年平均で30%を切っている。軍部は盧の国家運営に不安を抱きながらも、民主化政府を倒そうとしなかった。その決定的な理由としては、軍部が経済的な配当を評価した事が大きい。政府支出に占める5年間の軍事費の割合は、尹現大統領の初年度の軍事費も大きく上回っていた。
盧武鉉は李明博にバトンタッチした。李は韓国経済の再生に全力を尽くしたが、選挙戦の結果には遠く及ばなかった。米国産牛肉の輸入を一方的に決めたことや、兄の汚職事件などが原因で、平均支持率は35%程度だった。軍部は李による統治に不満を持ちながらも兵営にとどまった。李政権が前任の盧武鉉政権より国防費を増やしたことが重要な理由であった。
李明博の後を継いだのが朴槿恵である。朴は、暗殺された軍事独裁者朴正煕の娘である。2011年の韓国ギャラップ世論調査では、韓国有権者が大統領候補として朴を支持した理由は2つあった。女性候補であること、そして亡き父が国を経済的に豊かにしたことである。4年目の弾劾前、朴の平均支持率は約42%だった。軍部は、名付け親である朴正煕(パク・チョンヒ)の後継者と目されていたため、朴に好意的であった。朴の長年の腹心で私人の崔順実(チェ・スンシル)による大統領権限濫用で始まった弾劾手続きで、朴を排除せず、政権を維持するため軍がクーデターを企てたという証拠さえあった。
朴大統領の弾劾後、次の大統領に選ばれたのは文在寅だった。在任中の平均支持率は約53%で、歴代大統領の中で最も高い。経済の先行きが不透明であるにもかかわらず、人気の高い大統領に軍部が対抗する理由はなかった。しかし、経済が低迷しているにもかかわらず、政府支出に占める軍事費の割合は、5年間平均で文大統領時代の方が尹よりも高い。軍はいくらでもお金を受け取ることができたので、文に経済的な不満はあまりなかったのである。
「公正・良識」を選挙スローガンに掲げた野党候補の尹淑烈は、2022年3月9日、与党候補の李在明を破った。李は元京畿道知事であり、有権者の多くは、元検事総長の尹が汚職撲滅に良い仕事をすると確信していた。しかし、当選後、尹は公約に掲げた「公正で良識ある政治を実現する」(高い倫理観のある公務員を登用し、法の支配の下で権力を行使する)を棚上げにした。検察の、検察による、検察のための政府を作り上げたのである。
検察の支援をうけた尹政権は、文と当時の政権関係者を対象に全面的な犯罪捜査に乗り出した。しかし、ニューヨーク・タイムズが指摘するように、8月11日現在、文の平均支持率は尹の約3倍であるため、「前任者を追及することは尹にとって政治的賭けになりかねない」のである。疎外された兵士たちは、尹が現在、国を統治する政治的正当性を失っているだけでなく、兵士たちの経済的福祉を向上させることも怠っていると自覚している。最も重要なのは、尹の低い支持率と軍事予算を兵士たちがどう認識しているかで、実際の数字(支持率19%、軍事予算13%)よりはるかに重要である。もし尹が兵士の間に浸透している否定的な認識を速やかに改善できなければ、1987年の民主憲法導入以降、軍の反乱に遭遇した初の文民大統領として歴史に名を残す能性がある。■
It Could Happen: A Military Coup Against Yoon Suk-yeol Is Possible | The National Interest
August 20, 2022
Seung-Whan Choi teaches International Relations and Korean politics at the University of Illinois at Chicago. A retired Army officer, he is the author of several books, including Emerging Security Challenges: American Jihad, Terrorism, Civil War, and Human Rights (Santa Barbara: Praeger).
この記事は、火のない処に無理やり煙を立たせようとする意図があり、典型的な観念社会に住む南朝鮮人の議論であるように思える。即ち、結論が先にあり、それに理由をくっつけた記事である。その理由も、筆者の主観的な理解によるものである。
返信削除南朝鮮でクーデタが起きるかと言えば、軍は、クーデタを恐れる文の政策により不能化状態にされてしまったから、可能性はごく低い。娘の方の朴は、混乱時に戒厳令を施行する権限があったが、それを使わなかった。もし使っていれば、その後のクーデタがあったかもしれない。
南朝鮮は、民主化されて日の浅いいびつな民主主義国家であり、クーデタの芽さえも出ない状況になるまで、また、国家間の約束を遵守するようになるまで何十年もかかるかもしれない。そして南朝鮮人の精神的自慰行為である反日行為もまた何十年も続くことになる。やれやれ。