NASA保有のWB-57Fがアジア夏季モンスーン化学気候インパクト調査プロジェクトの支援に投入されている NASA
NASAのWB-57Fが東アジアに現われ話題を呼んでいる
NASAのWB-57Fは、様々なペイロードベイ、ノーズエクステンション、翼下ポッドに多数のセンサーやその他のシステムを搭載でき、米軍のミサイル実験の支援すにしばしば使用されているが、本日早朝、韓国の烏山基地に着陸した。昨日、日本を通過し、この地域での同機の存在は、ソーシャルメディア上で大きく注目を集めた。北朝鮮の新たな核実験への懸念や、台湾をめぐる米中間の緊張の高まりなど、東アジアに火種がある中で、同機は現在、純粋に科学的な任務についているという。
WB-57Fは、米国民間登録N926NAで、7月21日にテキサス州のエリントンフィールド共同予備基地を出発し、朝鮮半島に向かった。ワシントン州のルイス・マッコード統合基地、アラスカ州のエルメンドルフ・リチャードソン統合基地、アラスカ州のアリューシャン列島にあるアダック空港、日本の三沢基地に寄港し、朝鮮半島へ移動した。
N926NAは、ACCLIP(Asian Summer Monsoon Chemical and Climate Impact Project)の一環として、金曜日から飛行を開始する。また、NASAのガルフストリームVビジネスジェット(N95NAとして登録されており、様々な研究・試験目的に投入可能)もACCLIPに参加している。このプロジェクトは、NASAと全米科学財団(NSF)がスポンサーとなっている国立大気研究センター(NCAR)が主導する共同作業。米海軍の海軍研究局(ONR)、米商務省の米海洋大気庁(NOAA)、さらに欧州とアジアの組織もチームに加わる。
NCARが今月初めにウェブサイトに掲載したニュースでは、「研究用2機によって、科学者の国際チームが、世界最大かつ最も重要な気象パターンの1つであるアジアの夏のモンスーンが、大気化学と地球気候にどのように影響するかを研究する」と説明している。「モンスーンといえば、アジア大陸に降る大量の雨を連想しますが、ACCLIPの研究チームは、雨に注目しているわけではありません。その代わり、モンスーンの強力な循環が引き揚げるものに関心がある。モンスーンは世界で最も大気汚染がひどい地域で発生するため、各種汚染物質が大気中に吸い上げられる可能性があると科学者は考えている。その結果、化学物質の再分配が起こり、相互反応しって、気候に大きな影響を与える可能性がある」。
エリントンフィールドでACCLIPの準備をする NOAA
NCARの科学者でACCLIPの主任研究者ローラ・パンLaura Panは声明で、「ここ数十年、衛星はモンスーンが地球の約10マイル上空に明確な化学物質の層を作ることを明らかにしましたが、その組成と進化についてはほとんど分かっていません」と付け加えた。「ACCLIPはそこにあるものを採取する機会を与えてくれますが、その組成が何であれ、気候に関係していることは分かっています」。
ACCLIPの飛行を実施するために、N926NAには現在、様々な科学機器とインマルサット衛星通信一式が搭載されている。計16の観測機器は、機首、胴体中央部のペイロードベイ、主翼の一部、翼下の4つのポッドに搭載される。高度6万フィートまで飛行可能な同機は、大気中の化学物質や大気の状態に関するデータを収集する。
2021年6月24日時点のN926NAへの各種観測機器の大まかな搭載計画を示す図。 NASA
観測装置の大部分は、黒い外装のモジュール式パレットに搭載され、機体のペイロードベイに差し込まれるため、ほとんど見えない。しかし、空気中の粒子を分離し、化学組成を分析するParticle Analysis By Laser Mass Spectrometry(PALMS)システムは、前面に突き出たプローブを使うため、機体の外観が非常に特徴的になっている。
N926NAに搭載されたPALMS搭載ノーズのクローズアップNASA
搭載されている観測機器の一覧と、その機能の基本的な説明は以下のとおり。
NASA
ACCLIPフィールドキャンペーンでの飛行は、当初2020年に予定されていたが、COVID-19パンデミックのために延期されていた。そのため、WB-57Fを構成する実作業と、安全かつ健全な動作を確認する試験飛行が、昨年から開始された。ヒューストンのNASAジョンソン宇宙センターの監修のもと、エリントンフィールドで行われた。
2021年、ACCLIP飛行設定を行う前のN926NA。エリントンフィールド。 Joe Katich / NOAA / CIRES
N926NAはこの科学的な取り組みを支援するため、今後数週間にわたって韓国から飛行するが、今回の飛行構成は、NASAのWB-57Fが高度なまで再構成可能である点を強調している。機体は、1960年代からジェネラル・ダイナミクスが旧型B-57を大改造したRB-57F高高度偵察機としてアメリカ空軍に配備されていた。
すでに述べたように、NASAのWB-57Fは過去に米軍のミサイル実験やミサイル防衛などの任務を支援している。うち1機は、空軍の戦場空中通信ノード(BACN)通信ゲートウェイのテストベッドとして採用されていた。
ACCLIPは、NASAのWB-57Fが過去に支援した数多くの科学的取り組みの一つ。太平洋地域への移動は、今回が初めてではない。2016年には、同型機の1機が、ACCLIPに類似したプロジェクト、「Pacific Oxidants, Sulfur, Ice, Dehydration, and Convection」(POSIDON)プロジェクトを支援し、西太平洋の米領グアムから飛行して 「上空への化学物質の輸送 」に関するデータを収集した。
NASAによると、N926NAは9月6日まで烏山から飛行を行う。その後、米国に戻り、次のミッションに対応できるように「分解」される。■
This Is Why A NASA WB-57F Canberra Jet Is In South Korea | The Drive
BYJOSEPH TREVITHICKJUL 27, 2022 7:53 PM
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