2005年12月5日、北京での展示会で、中国の「英雄宇宙飛行士」フェイ・ジュンロンとニー・ハイシェンが神舟6号で着用した宇宙服に感嘆する来場者。 (Photo credit STR/AFP via Getty Images)
報告書は、産業界、専門家、国防総省の関係者が参加したワークショップに基づき、各国の枠を越えた人類の宇宙進出をリードする米国の「北極星」ビジョンの促進をめざしている
米国防総省の国防革新部門DIUが主催した宇宙産業基盤ワークショップの最新版報告書によれば、2045年までに宇宙開発の主導権で中国は米国を追い越す「軌道に乗った」状態とある。
ここまで悲観的な見解の理由として、米国政府と産業界に共通の「緊急性の欠如」と、官僚的な環境「規制の負担によって米国の商業的進歩を遅らせている」ことがあると、報告書「宇宙産業基盤の現状:持続可能性、繁栄、地球のための新たな宇宙レースを勝ち抜く」は述べている。
「米国が投資を増やさなければ、中国は宇宙の優位性において米国を追い越す可能性がある」と、DIUのディレクター、マイケル・ブラウンは、2022年報告書を発表する大西洋評議会主催のイベントで水曜日に述べた。
報告書は、毎年開催されているワークショップの第4弾で、今年は国防総省や情報機関を含む350人以上の産業界代表者や政府関係者が参加した。報告書の著者は国防総省の現役職員だあ、報告書は公式文書ではないと明示しており、同報告書で表明された見解は国防総省や米国政府の公式な方針を示すものではない。
報告書の著者は、DIU の Space Portfolio Director であるスティーブン「バッキー」ブトウ Steven "Bucky" Butow、宇宙軍トップ、ジェイ・レイモンド大将Jay Raymondの補佐官ジョン・オルソン少将 Maj. Gen. John Olson、空軍の Space Acquisition and Integration Office で Space Architecture, Science and Technology の Director である エリック・フェルト大佐Eric Felt、空軍研究本部 (AFRL) 宇宙装備局Space Vehicles Directorate で 主任科学者のトーマス・クーリー Thomas Cooley だ。編集は、米国外交政策評議会の主任研究員ピーター・ギャレットソンPeter Garretsonが担当した。全員が将来の拡大宇宙経済における「覇権主義」的な中国に対して、より積極的なアプローチを米国政府に提唱していることで知られている。
同ワークショップと報告書の目的は、参加者が考える、地球外への人類の宇宙進出をリードするアメリカの「北極星」“North Star”ビジョンを推進することであることは、報告書そのもので明らかだ。
参加者は、米国の経済リーダーシップを維持し、地球を保護し、国益を守るための永続的なビジョンとして、「経済発展と人間居住」を支持する、と報告書は述べている。「説得力があり、包括的で、明確に打ち出された北極星ビジョンは、議論の余地のない 宇宙のリーダーとして米国が存続するためのタイムラインを持ち、経済・産業、連合、軍事、情報、技術といった 国力のあらゆる手段に関わり、自由と繁栄を促す地上と同様の戦略に織り込まれなければならな い。
報告書では、宇宙は「資源と機会に恵まれた経済領域」であるが、潜在力をフルに発揮するために必要なインフラが未整備だ、と主張する。しかし、宇宙の経済的機会は「先発者が大きく優位となる」のである。
今年のワークショップの焦点は、アメリカの宇宙経済が、最終的にアメリカが支配する太陽系というビジョンにつながる最先端活動を含むよう進化するスピードにあった。報告書はこう説明している。
2022年の宇宙産業基盤の現状ワークショップでは、主に1つの質問に焦点を当てた。「われわれは、あるべき進歩を遂げているのか、もしそうでないなら、なぜそうではないのか?進歩していると信じる人々にとって、続く質問は、『私たちは十分に速く進んでいるのか?』で、一貫して答えは「ノー」で、参加者の大多数が『切迫感を持って動いていない』と答えている。『危機感とは何か』との問いに対し、大西洋評議会を含む多くの専門家は、現在のままだと、米国は2032年までに宇宙の優位性を失うかもしれないと主張している」。
中国の急速な宇宙進出の指標として、ランドコーポレーションのProject Air Forceによる2022年報告書で、軍事関連の特許数で中国が米国を追い越した(下図)とわかったと、ワークショップ報告書は指摘している。
報告書では、米国の商業宇宙部門は「驚異的な成長」を遂げており、宇宙関連の新興企業へのベンチャーキャピタルの投資も相当な規模であると認識している。しかし、ワークショップ参加者は、「サプライチェーン問題、インフレ、労働力問題は、宇宙の経済的な実行可能性を脅かし、また、強力な国家安全保障の宇宙態勢を維持する能力も脅かす」と懸念している。
また、米国政府による明確で一貫した投資の欠如や、特に国防総省における商業的な革新の促進に関する問題により、宇宙産業の発展が妨げられていると報告書は指摘している。
報告書は、米国政府全体、特に国防総省において、投資を行うに際して政策やプロセスの障害が多数あると指摘している。
「現代の宇宙時代の特徴となっているアジャイルなエンジニアリング生態系は、米国の政策と官僚機構内の調達慣行が国家宇宙戦略と整合していない、あるいは逆行しているため危険にさらされている」と、報告書は述べている。「国防総省は、米国と同盟国の戦闘員のために、商業的に調達された能力を迅速に取得し、構成するためのプロセスを必要としている」。
さらに報告書は、ワークショップ参加者が将来の宇宙経済の鍵となると考えた技術分野、すなわち打ち上げサービス、ハイブリッド宇宙通信、宇宙輸送と物流、次世代電力(宇宙太陽光発電を含む)、リモートセンシング、交通管理について、現在の米国の能力を 評価し、開発を早めるため勧告している。
また、宇宙システム開発に対する米国政府の政策、宇宙開発への資金調達のプロセス、宇宙労働力の状況、STEM教育についてもレビューしている。
報告書は要旨の中で、「宇宙における戦略的競争は依然として最重要課題である。 中国が米国との技術格差の縮小を加速しているにもかかわらず、国力のすべての手段において、我が国の宇宙空間でのリーダーシップを維持するため積極対策が前広に必要である」としている。■
China sprinting ahead as a space power while US lacks ‘urgency,’ new report frets
on August 25, 2022 at 12:02 PM
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