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ボルトン大使のバイデン外交評はただ一言、弱腰

 Joe Biden

韓国・日本訪問からワシントンに戻った直後、テキサス州ユバルデで起きた学校銃乱射事件について声明を発表し、反応するジョー・バイデン米大統領(2022年5月24日、米ワシントンのホワイトハウスにて)REUTERS/Kevin Lamarque

正国家、特にロシアと中国は、バイデン大統領の国際政治面での決意の欠如から危険な教訓を学んでいる。実質的に外交面で、政権は躊躇し、従順で、不安定である。モスクワとの囚人交換、2015年のイラン核合意への米国の再参加、ナンシー・ペロシ議長の台湾訪問など、さまざまな問題で、ホワイトハウスは圧力に屈する傾向を示している。一見無関係に見える事柄やその他の事柄に見える弱点や不確実性は、敵対国には心強く、友好国にとっては警戒すべきパターンを構成している。

米国の長年の超党派の政策は、テロリストであれ無法国家であれ、人質犯との交渉を拒否してきた。この方針は、イラン・コントラ事件のように、破られることもあったが、根本的な理由は明らかである。人質犯との交渉は、道徳的等価性の誤謬の象徴となり、犯人の地位を正当化し、公にする。また、資源を提供したり重要人物を返すことによって、犯行者の目的を推進していまう。

取引のため人質を取ることを奨励しているのではなく、正しい対応は、残虐行為を行う者に対して、状況に応じ経済的または軍事的に厳格な措置を取ることにある。取引はテロリストや権威主義国家にとって好都合だが、厳罰はそうではない。人質の友人や家族にとってはつらいことだが、大統領の責任は長期的なものであり、すべてのアメリカ人の将来の安全を守ることであって、より多くの人を危険にさらすことではない。イランコントラでロナルド・レーガンは過ちを犯した。2017年には平壌で人質のオットー・ワームビアへの北朝鮮による野蛮かつ最終的に生命を奪った扱いへの全く不十分な対応によって、米国は再び過ちを犯した。

テロリストやならず者国家と人質交換することは、戦争捕虜や、最近では諜報部員を交換する欧米の確立された慣行とは比較にならない。「法執行」を装う国家も含め、人質となるのは基本的に交渉材料を求める非合法な誘拐犯だ。さらに、異なるタイプの人材(例、一般犯罪者と武器商人を交換する)を交換することは、道徳的な同等性を認めて人質犯を助長し、根本的に容認できない行為をあいまいにしてしまう。

バイデンはこれらの原則をほとんど考慮していない。例えば、2021年にファーウェイ幹部の孟晩舟Meng Wanzhouに非常に有利な刑事上和解を認め、カナダでの身柄引き渡し手続きを取り下げた。引き換えに、中国は孟が2018年にバンクーバーで最初に逮捕された直後に、でっち上げ容疑で拘束したカナダ人2人を釈放した。孟案件でのバイデンの後退は、ペロシの台湾訪問を阻止しようとする中国の努力に間違いなく勢いをつけている。

孟案件での妥協は、4月の米国人トレバー・リードTrevor Reedとロシアの大手コカイン密売人の交換、そして現在進行中のブリットニー・グライナーBrittney Grinerとポール・ウィーランPaul Whelanの解放交渉の伏線となった。3人の逮捕はすべて政治的な動機によるもので(グライナーは薬物容疑を「自白」したが)、リードは現在、残る拘束中米人の件でバイデンに圧力をかけている。グリナーとウィーランの取引対象ロシア人のビクトール・バウト Viktor Boutは、コロンビアの麻薬テロリストへ武器を売った罪で25年の服役中だ。

興味深いのは、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は先週、囚人交換協議は6月2021年のジュネーブでのバイデン-プーチン会談に端を発しており、両首脳は「これらの問題を担当する代表を任命することに合意したが、外務省は含まれない」と述べたことだ。このタイミングは、孟事件の譲歩とロシアの囚人スワップに関するホワイトハウス審議と一致する。当初は外交ルートでなく、情報機関や法執行機関間で交渉が行われていたのではないかとのラブロフのコメントも非常に興味深い。

7月29日にやっと実現したブリンケンとの会話に、ラブロフは興味を示してこなかった。ロシアのマリア・ザハロワは、ラブロフは「実務で忙しい」とし、2人は「時間が許せば」話すと先に言っていた。さらに、ウクライナ侵攻後5カ月間ラブロフへ電話を避けていたブリンケンは、取引の内容を繰り返し公然と議論してきたが、ロシア側はそうしなかった。同様に、ホワイトハウスは、ドイツに拘束中の元諜報員の釈放を取引に含めるというロシア提案を「不誠実」と公然と非難している。

公の場でのこうした発言は、会談が遅々として進まない現政権の神経質さを反映していると言われ、外交手法の誤りである。ペロシの台湾訪問を阻止しようとしたバイデンも、同様に混乱に陥っている。暴言による中国の圧力は激しく、政権の不快感はあまりにも目に余る。大統領自身がペロシの安全に対する国防総省の懸念に言及し、バイデンが習近平との最近の 電話会談で同訪問について議論したと匿名当局者が確認している。北京は、習近平がバイデンに「火遊びをする者は火で滅びる」とい伝えたと平然と述べている。「米国がこのことについて明確な目を持つことが望まれる」と述べたのだという。

中国はペロシを人質に取ろうとしているのだ。米アナリストの中には、北京のプロパガンダを鵜呑みにし、「燃えやすい状況に火をつけ、軍事衝突にエスカレートする危機に陥る」と心配する向きもある。このようなパラノイアは、ホワイトハウスの不安を反映しているかもしれないが、ひどく見当違いである。習近平は、ペロシの身に危険があれば、ほとんどの米政権なら強力な対応を促すと十分承知している。福建省で軍事演習が行われたが、ホワイトハウスは本当の脅威を示す証拠はないとしている。

現実を明確に分析せず、中国の拳骨を恐れることは、バイデンがポーランドのミグをウクライナに譲渡する案を拒否し、ロシアのエスカレーションを刺激するのを恐れて、キーウに高価な武器を提供することをためらい、遅延させているのと共通の特徴を持っている。ペロシ渡航への政権の不安は、世界中に痛切に伝わっており、友好国を落胆させ、敵対国の食欲を刺激している。

テヘランでは、アヤトラがバイデンとの交渉で低姿勢になりすぎ、2015年核取引に米国を再加盟させる前にもっと譲歩を要求しなかったことで狼狽しているはずである。金正恩が核兵器による威嚇を再び行っても不思議ではない。

人質犯と交渉しないという確立ずみ政策をバイデンは放棄し、短期圧力を過大評価し、長期影響を過小評価し、中国やロシアなどに弱さと不確実性を繰り返し示すことで、アメリカへの信頼性を傷つけ、それによって脅威と挑戦をさらに招いている。当然だが台湾はペロシ訪問を望んでいる。■

Joe Biden's Foreign Policy Boils Down to One Word: Weakness - 19FortyFive

ByJohn BoltonPublished1 hour ago

 

WRITTEN BYJohn Bolton

Ambassador John R. Bolton served as national security adviser under President Donald J. Trump. He is the author of “The Room Where It Happened: A White House Memoir.” You can follow him on Twitter: @AmbJohnBolton


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