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ホームズ教授の見方。ペロシ訪台で中国は本当に戦争をはじめてもよいと考えているのか。

 U.S. Navy Aircraft Carrier

 

120118-N-QH883-003 INDIAN OCEAN, (Jan 18, 2012) ニミッツ級空母USSエイブラハム・リンカン(CVN 72) (U.S. Navy photo by Chief Mass Communication Specialist Eric S. Powell/ Released)

 

 

ンシー・ペロシは台湾に行く必要はなかった。しかし、アジア歴訪で、台北に降り立つ可能性を公言した以上、行かねばならない。そうでなければ、蔡英文総統を訪問するかもしれないというニュースが流れて以来、中国共産党が繰り返し出す大声に、米国下院議長が屈したように見えてしまう。

 

ペロシが譲歩すれば、面目を失うことになる。そして、アメリカは中国に対してだけでなく、同盟国や友好国に対しても面目を失う。インド太平洋におけるアメリカの地位は低下する。

 

北京は間違いなく、このような事態を引き起こしたいと思っている。中国共産党が、平時外交を別手段で行う戦争とみなしていることを忘れてはならない。中国共産党は24時間365日、絶え間なく心理的、メディア的、法的手段の「三戦」で政治的、戦略的環境を自らに有利になるように形成する努力をしている。喧伝することで、発言者の計画実行を抑止する。党所属の記者である胡志仁は、今回の訪中を中国への「侵略」と定義し、米軍戦闘機が台湾領空に侵入した場合には、暴力的な手段を用いるべきと主張している。

 

そして実際、ここ数カ月、人民解放軍は北京の思い通りにするため暴力を行使する傾向が一層強まっている。

 

5月下旬、中国のJ-16戦闘機が南シナ海上空でオーストラリアのP-8偵察機を迎撃した。中国軍のパイロットは豪州機の直前を横切り、エンジンに向けチャフを放った。チャフとは、敵のレーダーを欺くアルミニウムやアルミニウムでコーティングされた繊維などの反射材の散布だ。これを至近距離で使うのは大変なことで、飛行士なら誰でも知っている。例えば、航空母艦での飛行作業の前には、乗組員が飛行甲板に出て「FODウォークダウン」を行う。これは、超高速で回転する繊細なタービンに吸い込まれると「異物障害」を引き起こす可能性のある小さな破片を拾い上げる作業だ。

 

異物損傷は、最悪の場合墜落の可能性もある。この事件を武力攻撃と断定しても、オーストラリアには当然の権利だった。墜落させるような損害を故意に与えることは、より高次の侵略行為だ。中国の「グレーゾーン」作戦は、暴力によらないあらゆる手段を駆使し、地政学的な利益を少しずつ獲得していく。この不透明なアプローチは、中国の敵対勢力に、引き金を引かせ、戦争勃発の責任を負わせる。あるいは、中国の意向に逆らわずに権益を放棄させることがねらいだ。

 

PLA司令官は、武力行使に抵抗がないようだ。もしそうなら、重大な影響を及ぼすエスカレーションが始まる可能性がある。中国はグレーゾーンを脱しつつあるのか。

 

台湾訪問を実行する場合、議長一行はどのように行動すればよいのか。裏を返せば、筆者は胡錫錦の意見に賛成だ。1948年から1949年にかけてのベルリン大空輸で、飢餓に苦しむベルリンに貨物機が護衛機なしで向かったように、ペロシ乗機は戦闘機の護衛なしで行くべきだ。トルーマン政権は、人道的任務につく非武装航空機を撃墜するむき出しの侵略行為にスターリンがひるむと判断し、戦闘機を随行させない決定を意識的に下した。

 

しかし、習近平中国共産党総書記は、1948年のソ連と同じように、賢明な自制心を発揮する可能性が高い。つまるところ、米国議会と中華民国の結びつきは今に始まったことではない。ペロシ議長の台湾訪問が実現しても、これまでの慣行から大きく逸脱しないだろう。ニューポートにあるペル国際関係・公共政策センターに足を運べばいい。ペルセンターには、ロードアイランド州選出の故クレイボーン・ペル上院議員の執務室が再現されている。事務所に飾られた外国の賞や勲章を見るだけでも、ペルと台湾の関係がうかがえる。賞や勲章を全部同時につけていたら、ペルは立っていられないほどだっただろう。そして、ペルは議会内でも台湾との友好関係において、孤立していなかった。議員からの支持は超党派で、広く、そして明らかに誠実だった。

 

では、中国共産党は本当にペロシの台湾訪問で喧嘩を売っているのだろうか?そうでないことを祈るが、すぐに分かる。では、習に返す。■

 

 

WRITTEN BYJames Holmes

James Holmes holds the J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and served on the faculty of the University of Georgia School of Public and International Affairs. A former U.S. Navy surface-warfare officer, he was the last gunnery officer in history to fire a battleship’s big guns in anger, during the first Gulf War in 1991. He earned the Naval War College Foundation Award in 1994, signifying the top graduate in his class. His books include Red Star over the Pacific, an Atlantic Monthly Best Book of 2010 and a fixture on the Navy Professional Reading List. General James Mattis deems him “troublesome.”


Would China Really Start a War over a Nancy Pelosi Visit to Taiwan? - 19FortyFive

 

ByJames HolmesPublished3 hours ago


コメント

  1. ぼたんのちから2022年8月2日 20:59

    老いぼれバイデンの弱腰が、CCP中国の強い反発を招き、ペロシ訪台時にPLAのかなりの挑発を呼び込むことに恐らくなりそうだ。しかし、今回は紛争にはならない。
    バイデンは、ウクライナ戦争前の抑止を放棄したと同様に、今回も弱腰を見せ、ペロシの訪台を思いとどまるよう説得しようとしたようだ。習は、台湾侵攻前に強くバイデンを脅せば、米軍の介入は阻止できると確信したことだろう。すなわち、台湾侵攻は、老いぼれバイデン在職中に行うべきであり、そのように計画するだろう。そして残念なことに、米政権内に強く習、及びCCP/PLAを抑止できるメンバーや勢力は見当たらない。
    習の暴走を抑止できるのは、台湾人民の意志と、日本の介入である。日本は覚悟すべきかもしれない。しかし、想定する台湾侵攻が勃発するバイデンの残り2年余りの在職期間内に台湾と日本ができることは、強く抵抗することであり、台湾戦争に勝つことでない。やはり、米国の介入抜きで戦争は容易に終わらない。
    上記のように今回のペロシ訪台よりも、その後の展開が気になるところだが、ホームズ先生の記事には、米国、或いは米政権が何をすべきか記述されていないことに注意しよう。PLAなどに注意を払うまでもなく、米軍が強力であれば全く問題ないのだが。

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