実用新案では、ツボレフは機体内部のエンジンエアインテークを設計し、あらゆる飛行モードや迎え角の変化に対してエンジンに空気を供給できるよう、剛性と強度を確保することを目指した。
Credit: Tupolev
ツポレフPAK DAは、B-21レイダーへのロシアの回答
リーク文書によれば、開発は継続中
本格的な生産は困難と思われる
ロシアのウクライナ侵攻、その後の欧米諸国による制裁、航空宇宙部品の供給停止などを受けても、モスクワは次世代戦略爆撃機ツポレフPAK DA開発の手を緩めていないようだ。試作機の初飛行は2024年になるかもしれない。
5月、2022年から30年にかけけてのイリューシン航空コンプレックスIlyushin Aviation Complexでの生産計画を示す極めて興味深い表が、わずか数日間だが、インターネット上で発見された。表中の数字は、ウクライナに本格侵攻後の現在の経済状況の下で生産された新鮮なデータであることを表していた。
イリューシン航空コンプレックスは、ベリエフ航空機Beriev Aircraft Coの執行機関であり、ノースロップグラマンB-21レイダーに対するロシアの回答PAK DA爆撃機の部製造など、特殊用途の航空機を扱う会社である。流出した表によると、ベリエフは2023年と2024年に各2セット、2025年と2026年に各1セットの計6セットのPAK DA試験機用集合部品を2030年までに製造するとある。
他の情報源から、飛行試験機の製造が3機計画されていることが知られている。PAK DA爆撃機の最終組み立ては、ツポレフの支社であるゴルブノフ・カザン航空工場 Gorbunov Kazan Aviation Plantで行われる。
流出した文書にPAK DAが含まれていることは、戦時中でも計画を変えていないことを意味する。モスクワは同プロジェクトを放棄するつもりはない。
ロシアの新型戦略爆撃機の開発は、これまで何度も開始と中止を繰り返しており、長い間、紙の上のプロジェクト以上の進展はなかった。
現在のPAK DA計画は、2007年にミャシシェフ、スホーイ、ツポレフ3社による設計コンペが発表され、開始された。ロシアはツポレフを選び、2009年8月にコードネーム「Poslannik」で研究業務の3年契約を獲得し、同社は製品番号80の航空機の概念設計を開発した。Tu-160ブラックジャックは70だった。2013年春にロシア国防省からプロジェクトが承認された。
次の段階として、2013年12月27日、国防省はPAK DA の予備技術設計契約を交付した。2014年5月、当時のロシア空軍司令官ヴィクトール・ボンダレフは、PAK DA試作機の初飛行は2019年と発表した。「2023年に国家承認試験が完了し、軍への供給が開始される」と付け加えた。
クリミア併合後、ロシアが欧米の制裁を受け、世界の原油価格が大きく下落した2014年に、同プログラムは改訂された。その際、ロシアは優先順位を変更し、コストが低いと判断して、近代化されたTu-160Mの生産を再開した。ツポレフ設計局やカザン生産工場、そして資金が、Tu-160Mの近代化と生産再開に投入されたのである。一方、PAK DA計画はスローダウンした。
ロシアがPAK DAに復帰したのは、2017年末だった。2017年12月27日、ツポレフは、製品80の設計の完成と試験機の製造と試運転を含む、ポスラニク1研究開発業務を国防省から受注した。
契約によると、同機は2027年8月末までに受入試験を完了するとなっていた。また、契約締結の前日2017年12月26日、ツポレフはロシア産業貿易省から、エンジン含む基礎技術の開発と同機の連続生産の準備をカバーする「Tekhnologiya-80」プログラム契約を獲得した。
このような重要なロシアの軍事プロジェクトとしては珍しく、PAK DAは基本的特性を秘密にしていない。長距離航空司令官アナトリー・ジハレフは2014年8月、PAK DAは無給油で15,000km飛行できる亜音速飛行翼になるだろうと述べた。公式ではないが、信頼できるロシアの情報源によると、製品番号80爆撃機は離陸時重量が145トンで、最大30トンの兵器を搭載できるという。したがって、PAK DAはTu-160(275トン)のほぼ半分の重量で、124トンのTu-22M3と185トンのTu-95MSの間に位置することになる。
今年3月、ツポレフはPAK DAに似た航空機のエンジンエアインテークに関する特許を公開した。特許に添付された図面は、製造中の爆撃機を示す必要はない。PAK DAは、特許図面にあるように、一定の前縁角度を持つ翼である可能性が高い。
主契約後に、個々のPAK DAシステムを担当する下請け会社が選ばれ、合計で約100社と契約が結ばれた。そのほとんどが、ツポレフ社の伝統的なパートナー企業である。ロシア側はPAK DAを低リスクのプログラムにしようとしており、爆撃機に革新的な技術を期待していない。数年前、Tu-160の生産を再開する際、当時のユーリ・ボリソフ副首相はTu-160MとPAK DAについて「最大限の技術的オペレーションを共通化する」と発言していた。サブシステムや兵器の一部が両機で共通化される。
PAK DAは、ユナイテッド・エンジン(UEC)クズネツォフが供給する2基のターボファンエンジンを搭載する。このエンジンは、Tu-160に使用されているNK-32のアップグレードバージョンのようだ。実際、新エンジンはTu-160MのNK-32-02エンジンのコア(ホットセクション)をベースに、最大推力23トン(原型のNK-32エンジンはドライで14トン、アフターバーナーで25トン)を発揮する予定という。PAK DA用の補助動力装置TA18-200-80はアエロジルAerosila製だ。
注目すべきは、このエンジンプログラムのコードネームがMD-80、つまり 「80型機のための巡航エンジン」でもあることだ。この表現は、同機が他のエンジンも使用する可能性を示唆している。実際、別資料にはPAK DA用としてSD1C離陸エンジンに関する情報があり、これはおそらくロケットアシスト打ち上げに使用される固体推進薬タイプである。
統合エイビオニクス・システムは、ラメンスコエRPKBが設計している。レーダーシステムはTikhomirov NIIP Instituteが開発しており、他のツポレフ爆撃機のレーダーをTsNPO Leninetsが供給しているので、これは異例である。PAK DAには、スホーイSu-57戦闘機用ベースにしたアクティブ電子スキャンアレイレーダーが搭載される。また、メーカー不明だが光電子照準器も搭載される。
MNPKアビオニカは、KSU-80飛行制御システムを供給する。NO-80ナビゲーション・スイートは、モスクワのMIEA研究所が設計中。K36L-80の射出座席と乗員生命維持装置は、NPPズベズダが開発している。Tu-160とTu-22M3は4人、Tu-95MSは7人の乗組員で構成されているが、PAK DAも4人乗りのようで、試験機3機に12席の射出座席を発注していることから4人乗りのようだ。
KNIRTI研究所は、電子ジャマー、指向性赤外線対策(NII Ekran製)、曳航デコイ(NII Ekran)、チャフ/フレアディスペンサーシステムを含む自己防衛スイートを担当する。
データによると、PAK DA 基本型は 12 発の Kh-BD (長距離)亜音速巡航ミサイルを搭載し、おそらく Tu-160 と同様に機体内部の 2 つのベイに 6 発の回転式ランチャーで配置される。この新型ミサイルは、近代化されたTu-160M爆撃機の主装備にもなる予定だ。内部兵装庫から巡航ミサイルを発射する回転式ランチャーは、エカテリンブルクのNPP Startが製造する。
2013年8月28日、ラドゥーガRaduga Co.はロシア国防省から、Kh-BD(製品506)ミサイルの研究開発プロジェクト「ロマンズ」を受注した。契約によると、同ミサイルは2018年飛行試験を開始し、2020年に国家承認試験を完了することになっていたが期限は守られなかったようだ。スモレンスク工場が、Kh-BDの連続生産の準備に入っている。同施設では、Tu-160とTu-95MSが使用する空中発射式Raduga Kh-101/Kh-102(製品504)巡航ミサイルを、月に約3発の割合で生産している。
Kh-BDミサイルはこれまで公に発表されたことはない。また、その性能についても、射程が現行Kh-101/102よりはるかに長いということ以外、情報はない。Tu-160の内部武器庫の寸法を考慮すれば、Kh-BDミサイルの断面は、Kh-101/102の断面に近いと思われる。あとは、ミサイル本体を長くするだけである。Tu-160の武器庫は、1970年代に長さ10.8m(35フィート)の大型のKh-45ミサイルを搭載するため設計された。しかし、Kh-101/102は全長約7.4mなので、このコンパートメントにはまだ余裕がある。
ロシアで何かを予想することは、昨今ではリスクが高い。数ヶ月、ましてや数年先に何が起こるかわからない。
しかし、PAK DA計画を支持する2つの論拠がある。第一に、戦略爆撃機はロシア空軍の最重要の構成要素である。第二に、同計画は非常に進んでおり、数機の試験機の製造を完了する必要な労力は比較的少なくてすむ。
軍事的な意義に加え、PAK DAはロシアのパブリックイメージでも重要だ。2021年8月の陸軍展示会で、デニス・マントゥーロフ産業貿易相は、PAK DAとアメリカ空軍のB-21を比較するよう求められた。「我々は、能力的に他国の技術を凌駕する技術を生み出すことを課題としている」と答えた。
ロシアの気分は、中国の西安H-20で損なわれるかもしれない。西安H-20は、PAK DAよりも早く飛行可能な状態になる可能性が高いからだ。
PAK DAが量産・就役するかは、ロシアの航空業界内外の定量化しにくい要因に左右される。ロシアは、航空産業に必要なすべての材料や部品、特に電子機器の生産ができない。2月のロシアによるウクライナ侵攻後に導入された欧米の納入禁止措置が有効であれば、ロシアでの航空機生産が阻害される可能性がある。
もう一つの問題は、目に見えないが、ハードウェア、ソフトウェアともに、生産用工具がほとんど外国製であることだ。しばらくはメーカーのサポートがなくても使えるが、時が経つにつれ、難しくなっていくだろう。■
Russia Pushes Ahead with New Strategic Bomber | Aviation Week Network
Piotr Butowski July 29, 2022
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