下院議長ナンシー・ペロシ。米空軍C-40輸送機。gillfoto via Wikicommons / Nathan Howard/Getty Images
米空母打撃群が台湾付近を航行中、下院議長が「あえて」台湾を訪問すれば、中国は「待機している」と表明
ナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問の可能性はまだ確認されていないが、訪問の予想だけでなく、間近に迫っているという報道が相次いでいる。バイデン政権も、ペロシが台湾訪問を怖がる必要はない、と新たな見解を示したようだ。中国当局は、ペロシが台湾島に「行く勇気」があれば、人民解放軍が「傍観する」と発言するなど、異常なまで強い脅しをかけ続けている。
CNNは、米国と台湾の匿名当局者の話としてペロシ議長の訪台は事実で、一晩滞在すると報じた。これは、ペロシがマレーシアに立ち寄った後、火曜日の夜か水曜日の朝に台湾に向かうかもしれないという、過去24時間以内の他の報道を受けてのことである。台湾はすでに8月2日火曜日だ。
下院議長は現在、議会代表団とともにマレーシア、日本、韓国を訪れる予定の地域ツアーの最初の訪問シンガポールに滞在中だ。本稿執筆時点では、ペロシ事務所、米国政府、台湾政府のいずれも、台湾訪問を正式に認めておらず、可能性があるとも言っていない。ペロシ議長の日程表を引用した以前の報道では、先週時点では「暫定的なもの」と見られていた。
ペロシと他の代表団がどのように台湾に到着するかは不明。この地域の空域で何が起こっているのかについて、非常に優れた情報と一般的な状況認識を持つ中国当局を、確立された飛行計画から外れて台湾に向かうことによって、驚かせる可能性は低いように思われる。
過去1年ほどの米国議会関係者の台湾訪問では米空軍のC-17グローブマスターIII貨物機を使っていた。これまでのところ、ペロシは空軍のC-40C(ボーイング737シリーズの軍用機)を使用しており、彼女と他の代表団は台湾に向かう前に防御性能の高い機体に乗り換える可能性が出てきた。C-40Cには安全な通信システムや熱探知ミサイル対策が施されている。
中国政府は、ペロシが台湾を訪問しないよう警告する脅迫状を次々と発表している。米国では、議会議長が台湾を訪問するのはごく普通のことだが、北京当局にとってペロシは特別な存在である。米国では下院議長が政府高官として3番目に位置し、大統領と副大統領が共に死亡するなどして職務を遂行できなくなった場合、次席の最高責任者に就任する。下院議長が最後に台湾を訪問したのは1997年、ジョージア州選出のニュート・ギングリッチだった。この危機は米中関係における重要な出来事で、その後数十年にわたる人民解放軍の大規模な近代化努力、特に空母戦力整備の野心を支える重要な推進力となった。
中国外交部の趙立堅報道官は本日、定例ブリーフィングで記者団に対し、ペロシ議長の台湾訪問は、米国政府内での立場から「深刻な政治的影響」を及ぼすと述べたばかりである。また「中国人民解放軍は決して傍観することはない」とも述べた。
「中国は主権と領土を守るため、断固とした対応と強力な対抗措置を取る」と趙は続けた。「どのような措置を取るかについては、もし彼女があえて行くのか、様子を見ましょう」。
数週間前から、中国の軍用機がペロシを台湾に運ぼうとする飛行機の進行を妨げようとしたり、嫌がらせをしたり、もっと悪いことをするのではないかと懸念されていた。このため、ホワイトハウスと米軍は、議長が台湾に向かうのを思いとどまらせるために水面下で動いてきたと伝えられていた。米中関係は、台湾をはじめとするさまざまな地政学的・経済的問題をめぐり、すでに低調な状態に陥っている。しかし、最近その立場はかなり軟化しているようで、ペロシが本当に台湾に向かうという証拠をより多く示している。
「ペロシ議長が近い将来、本当に台湾に向かうという確証を得ました。中国の暴言には何の理由もない。行動を起こす理由もない」。国家安全保障会議の戦略的コミュニケーション担当コーディネーター、ジョン・カービーは、本日、CNNの朝の番組「ニューデイ」のインタビューで、「議会指導者が台湾に旅行することは珍しいことではありません」と述べた。「私たちは国として、中国のレトリックや潜在的な行動に脅かされるべきではない。これは議長にとって重要な旅であり、我々は彼女をサポートするためできることは何でもする」と述べた。
カービー報道官は、ペロシ議長が台湾に行く予定であることを肯定も否定もしなかった。同報道官はまた先週、週末に行われた演習にもかかわらず、PLAが台湾の反対側で積極的に軍備を増強している兆候はアメリカ政府はつかんでいないと述べている。中国軍はすでに台湾海峡沿い含む地域に空軍、海軍、陸軍の広範な部隊を配置している。
ペロシとアジア歴訪に同行する代表団が台湾に立ち寄るかどうかはわからないが、現在、議会ではそのような訪問に幅広い超党派の支持がある。米国政府は台湾と複雑な関係にある。北京政権は台湾をならず者国家として扱い、米国当局は台湾を技術的に独立した国とは認めていない。法律上、米国当局は、台湾の地位が最終確定するまでは、台湾のカウンターパートと外交的に関わり、台湾の軍事支援を行う権利など留保している。
さらに、今日の国家安全保障会議のカービー報道官発言は、バイデン政権が、アメリカの議員にできること、できないことを中国当局に指図させていると公に見られることに関心がないことを明確にしている。バイデン氏自身、これまで何度も、米国政府は中国の侵略から台湾を守るために積極的に軍事的な準備をしていると公言してきたが、その後、北京からの反発を受けて、政権は何度も水を差すような発言を繰り返してきた。
懸念されるのは、ペロシが台湾に行こうとすれば、中国政府が異常なまで攻撃的な行動を取らざるを得なくなるという、パーフェクトストームが発生していることだ。米軍や台湾軍がペロシ議長らの台湾訪問をどのように保護するか(戦闘機の護衛など)によっては、何らかの小競り合いが発生する可能性があり、さらなるエスカレーションを引き起こす危険性がある。
米海軍の超大型空母USSロナルド・レーガン(CVN-76)が、フィリピン北東で西太平洋を航行しており、ここ数日、台湾へ移動しているように見えると報告されていることは、注目に値する。USNI Newsの報道によると、同空母打撃群には、海兵隊のF-35B統合打撃戦闘機を積む揚陸強襲艦USSアメリカとUSSトリポリが随伴している。これは非常に有能な航空・海軍部隊で、どのような危機が発生しても対応できる態勢を整えているように見える。
もう一つの選択肢は、ペロシがC-17のような機体ではなく、より目立たない機体を使うことだ。例えば、空軍のC-146Aウルフハウンド特殊作戦輸送機は、民間風の塗装が施され、政治的な敏感さのために注目を集めたくない任務に使用される。昨年、台北の松山空港でC-146Aが飛行しているのが目撃された。その際、地元メディアは、嘉手納基地から台湾に飛んだ同機が、台湾のアメリカンインスティチュートのディレクターで事実上のアメリカ大使であるサンドラ・ウードカークに小さな荷物を運んできたと報じた。
同時に、ペロシや議員連がC-146Aで台湾に入ると見られると、中国当局からアメリカ高官に忍び足を強いるというジャブを受け、アメリカ国内でも政治批判を受ける可能性がある。
また、民間機で移動する可能性もあり、その場合、乗機への行動は、象徴的なものであっても、中国にとり複雑なものになる。ペロシ一行が今週、実際に台湾を訪問するかどうか、また訪問した場合、どのような行動に出るかは別として、米中両国は、この問題をめぐり、外交上で衝突コースにあるように思われる。
その結果、米中両国の瀬戸際外交がどのような形をとるか、米中双方の当面の対応と長期的な展望は、時間が経たなければ分からない。
更新:午後2時35分
国家安全保障会議戦略広報調整官のジョン・カービーは本日の記者会見で、先週の公式見解から大きく変わり、中国軍がナンシー・ペロシ氏の台湾訪問に対抗して「さらなる措置を講じる可能性がある」兆候を米当局が把握していると述べた。また、米当局はこれに対し「囮になることも、妨害行為をすることもない」と付け加えた。
中国軍がどのような手段を準備しているのか、詳しく聞かれたカービーは、可能性を提示した。台湾海峡での各種ミサイルの発射、台湾の防空識別圏(ADIZ)内の国際空域への大量の軍用機の飛来、大陸との事実上の海上国境であるいわゆる「中央線」の横断、PLA演習の増加、海峡に対する中国の完全主権という法的に疑わしい主張をさらに主張しようとする、などが考えられる。これらはすべて、中国当局が過去に台湾政府および米国の支援者との緊張が高まったときにとった行動である。
カービーは、「北京の行動は意図しない結果を招きかねない」と警告し、状況をエスカレートさせる可能性があるとし、「我々は威嚇されることはない」と述べた。
カービーは同日、CNNのインタビューで、ペロシ議長に台湾を訪問する権利がある、米国政府はペロシの安全な旅行を確保する責任がある、米国の対中・対台湾政策は変わっていないことなど基本点を繰り返した。また、ペロシが台湾に向かう予定があるか確認は避けたが、米軍機に乗っていることから、「いつかは分かるだろう」と述べた。■
China Makes New Threats As Rumors Swirl That Pelosi's Taiwan Visit Is Imminent
BYJOSEPH TREVITHICKAUG 1, 2022 1:54 PM
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