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空戦ゲームに登場する巨人機を荒唐無稽と笑ってはならない。ペンタゴンが構成技術を実際に開発中。

 

 

エースコンバット7 スカイズ・アンノウンは非現実的すぎる 

 
 

金入りの航空ファンなら、「デジタルコンバットシミュレーター(DCS)」のようなリアルなフライトシミュレーターにのめり込みやすい。だが「エースコンバット」シリーズのような、やや漫画的でも非常に面白いゲームは、航空戦の現実を探求するというより、娯楽を提供していると思われがちだ。 



 

しかし、シリーズ最新作「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」は、空戦の未来に対する極めて現実的な可能性を垣間見せてくれる。実際、ゲームに登場する荒唐無稽に見えるプラットフォーム、巨大なアーセナル・バードには、現在アメリカ国防総省で実際に開発中の技術が多数採用されているのだ。 

 
 



 

Ace Combat 7 

 

DCSでA-10操縦をマスターすれば、戦闘機操作の本当の複雑さに精通できるかもしれないが、エースコンバットの分析的価値は、もっと難解だ。 

 このゲームをプレイしていない人にはっきり言うと、現実的とはいいがたい。例えば、F-35Cが空対空ミサイル50発以上を兵装庫に積んで戦闘参加することは、そうそうないだろう。しかし、誇張した要素に目をつぶれば、『エースコンバット』は現実の技術がいつか実現するかもしれないことを創造的に見せてくれる。 

 『エースコンバット』をプレイしても、自分が操縦するジェット機やそれが運用うる弾薬、あるいは戦闘機運用の複雑さについて多く学べないかもしれないが、21世紀に人類が再び世界を股にかけた紛争を起こした場合にパイロットが直面しうる課題について、非常に有効な思考訓練となる可能性は十分にある。中でも重要なのは、敵の領空侵犯をいかに防ぐかだ。 

 

アーセナルバードは、どこまでリアルなのか? 



 

『エースコンバット7』のアーセナルバード via Acepedia 

 
 

エースコンバット7」のアーセナルバードは、正式には「エアリアルアーセナルシップ」としてゲーム内で知られ、ゲームの様々な場面でプレイヤーに立ち向かう、非常に巨大な航空優勢機である。ドローンと中距離空対空ミサイルの組み合わせで空域を支配し、攻撃から身を守るシールドを生成できる。 

 電動プロペラ式の全翼機は、全長3,600フィート(約1キロメートル)という驚異的な長さを誇る。アメリカの全翼機爆撃機B-2スピリットなら21機、あるいはアメリカ最大の貨物機C-5Mスーパーギャラクシー16機とほぼ同じ大きさだ。 

 





エースコンバット7のアーセナルバードをB-2スピリット、C-5Mスーパーギャラクシーと比較してみた。
 

(このグラフィックは私たちが作成したものですが、その他画像のアーセナルバードはSimplePlanes.comからのものです。) 

 

この巨人機は、空対空ミサイルを満載した工廠船と空中空母の両方の役割を果たし、ノースロップ・グラマンのX-47Bをモデルにしたと思われる「MQ-101」ドローン80機を搭載する。また、ミサイルや無人機に加え、レーザー砲塔で攻撃してくる。 

 

 

アーセナルバードのサイズが非現実的なのは、このような機体を空中に投入する難しさだけでなく、必要なリソースが膨大となることも理由だ。大量のミサイルを搭載し、他のプラットフォームの弾倉となる航空機・艦艇など、兵器庫機材に対する一般的な反論の1つは、重要標的となることだ。例えば、将来の兵器庫機に空軍の最新型極超音速ミサイルが20発装備されていれば、これを撃墜すれば、航空機だけでなく、ミサイルで20億ドルもの損失となる。 

 巨人機の後方支援も莫大になるが、実はこの機体が(ゲーム内では)空中に留まるように設計されている。エースコンバットwikiによると、「ライトハウス」と呼ばれる巨大施設(宇宙エレベーター)から無線送信されるマイクロ波エネルギーで駆動し、その他物資は空飛ぶ補給船で受け取るとのことで、空母の洋上補給作戦と全く同じだ。 

 ここまで巨大な航空機は、近い将来に出現しないかもしれないが、「アーセナル・バード」で空域を支配する方法は、実は現在進行中の開発構想と一致しており、アメリカの最も秘密めいた計画の一部にも通じるものがある。 


アーセナルバードを実現できる最先端技術 


 

エースコンバット7」の「アーセナル・バード」の大きさは、現在の技術では現実的ではないが、ゲーム内で見られるその他遠大な技術のいくつかは、読者が考えるほど遠大なものではないかもしれない。推進システムから回収可能無人機まで、アーセナルバードのようなプラットフォームが、侵攻してくる敵機と交戦する高機動迎撃戦闘機にいずれ取って代わる日がくるかもしれない。 

 ここでは、ゲーム内のアーセナル・バードで使用されているシステムの一部と、同様の機能を実現するために実際に行われている国防総省のプログラムを紹介しよう。 

 
 

マイクロ波ビームで航空機に電力を伝送する技術 


 

 



 

PowerLight Technologies社が開発したパワービームシステムは、2019年にシアトル港で行われたデモンストレーションで数百ワットの電力を伝達した。(Courtesy of Powerlight Technologies) 

 
 

巨大なアーセナルバードは、航空機の整流アンテナ(電磁エネルギーを直流電流に変換するアンテナ)にマイクロ波エネルギーを直接ビームとして伝えることで、タンカーによる燃料補給を不要とし、空中に留まり続けることができる。通称「パワービーム」と呼ばれるこのコンセプトは、SFではなく科学上の事実だ。 

 2022年4月、米海軍研究所の「Safe and COntinuous Power bEaming - Microwave(SCOPE-M)」プログラムの研究チームが、メリーランド州ブロッサムポイントの米軍研究フィールドで1.6キロワットの電力を1キロメートル伝送するのに成功した。もちろん、1.6キロワットでは巨な航空機を飛ばし続けるには十分な電力ではないが、実験はコンセプトを証明する重要な意味があった。将来的には、国防総省はこの方法で世界中の受信機に衛星経由で電力を送り、ディーゼル発電機の代わりとなる実現可能なものにしたい、と考えている。 

 現在のシステムは90%以上の効率で電力をRF波に変換しており、現在の整流アンテナ(またはレクテナ)技術は86%の効率で直流電力に変換することができるので、このコンセプトはいずれ完全に実現可能となってもおかしくない。 

 

空飛ぶ空母が現実に近づいている 


 

空飛ぶ空母を実現する取り組みは、過去にもあった。ボーイング747 AAC(空中空母)や、巨大なB-36ピースメーカーを改造してXF-85ゴブリンのような「パラサイト」戦闘機を発進・回収した取り組みだ。 

 しかし、過去の取り組みは、常に有人戦闘機に依存しており、運用可能と証明されていない。しかし現在では、高度な無人機技術により、航空機から航空機を展開するコンセプトが再び主流となってきた。 

 



リパブリックYRF-84F(S/N 49-2430)と飛行中のコンベアGRB-36F。 (U.S. Air Force photo) 

 

C-130やC-17などの貨物機から低観測性のジェット動力巡航ミサイルを大量配備するラピッドドラゴンRapid Dragonのようなプログラムは、ある意味で空飛ぶ空母と言えるかもしれない。結局のところ、AGM-158B JASSM-ER含む巡航ミサイルは、それ自体が事実上の自爆ドローンだ。しかし、DARPAのグレムリン・プログラム含む取り組みは、さらにその上を行くものだ。「グレムリン」プログラムでは貨物機からドローンを展開するだけでなく、飛行中にドローンを回収する。 

 グレムリンなどの取り組みは、ラピッドドラゴンと連動して、低コストのドローンと武器で敵空域を完全に飽和し、防空システムを破壊し、さらなる作戦のため道を開くことがいずれ実現するかもしれない。 

 

戦闘機に代わり大型機が作戦投入されレーザーを発射する日が来る

 

この記事を書いている間も、アメリカの次世代戦闘機の開発は進行中だ。空軍の次期主力戦闘機はF-22ラプターの後継機として次世代航空優勢計画(NGAD)と呼ばれる。この新型戦闘機が、航空優勢戦闘機として必要な速度、高度、航続距離を提供する可能性は非常に高いと思われるが、どの程度の機動性があるかは、まだ不明のままだ。同コンセプトに関連するほとんどの公式画像は、垂直尾翼のような一般的な戦闘機デザインの特徴がないジェット機として描いており、従来の戦闘機よりもかなりステルス性が高いことを示唆している。しかし、このステルス性の向上は、F-22やロシアのSu-35のような推力偏向型戦闘機で見られる極めて高い機動性を犠牲にしている可能性がある。 

戦場上空を支配するアメリカのアプローチに、より大きな変化が起こる兆しなのかもしれない。2022年6月23日に更新された米国議会調査局の評価では、空戦の未来は、実はエースコンバット7のアーセナル・バードに似ているかもしれない(明らかに機体は小さくなるが)。 

 「NGADは、単体機および/または、有人、無人、オプションで有人、サイバー、電子など、従来の戦闘機とは似て非なる補完的なシステムの形態をとることができる」と報告書にある。 

 「B-21のような大型機は、戦闘機のような操縦はできないかもしれない。しかし、指向性エネルギー兵器を搭載し、その兵器のために大量の電力を供給するエンジンを搭載した大型機は、大量の空域で敵の飛行を否定できる。これで制空権を握ることができる」。 

 

エースコンバット7のアーセナルバードが飛ぶのを見られなくても、近い将来、その要素が見られそうだ 



はっきり言って、『エースコンバット7』で描かれたアーセナルバードは、将来の姿そのものではない。しかし、非常に現実的な技術、しかも現在活発に開発中のプログラムの仮想的なアプリケーションの一端が見られる。 

ドローンの大群を展開・回収する大型機、ミサイルや航空機を迎撃するレーザー兵器、地上や宇宙からのマイクロ波送信による電力供給など、今後数十年でSFから実際の運用に移行する可能性はますます高まっている。 

 そして、その頃には、F-35に50発のミサイルを搭載する方法も確立されているかもしれない。■ 

 
 

THE US IS DEVELOPING TECH USED BY ACE COMBAT 7’S ARSENAL BIRD 

Alex Hollings | August 3, 2022 

Feature image of Arsenal Bird from Ace Combat 7 via Acepedia. 

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University. 

 
 

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