2022年8月2日、台湾に到着したナンシー・ペロシ米下院議長の写真に、中国の演習予定地の地図とPLAの装甲車や戦闘機を重ねた。Office of Nancy Pelosi / Taiwan Ministry of National Defense / Global Times / via Twitter
中国は、ペロシ訪台に対抗し、台湾領海に及ぶ可能性のある演習を命じた
数日前から予想されていたように、ナンシー・ペロシ下院議長は、アジア歴訪の一環として、議会代表団と台湾に到着した。中国人民解放軍はペロシのフライトを阻止するため直接介入はしていないようだ。しかし、中国当局は現在、一連の非常に挑発的な「標的型軍事作戦」を発表しており、国営メディアは、台湾周辺の6地域でミサイルその他を実射する演習になるとしている。
ボーイングC-40C、コールサインSPAR19がペロシ議長の乗機であると確認され、台北松山空港に着陸した。北京が領有権を主張している台湾を現役下院議長が訪れるのは、1997年にニュート・ギングリッチが訪れて以来のことである。米国では下院議長が政府高官として3番目に位置し、大統領と副大統領が職務を全うできなくなった場合に最高責任者を引き継ぐ。
ペロシは台湾到着後に発表した声明の中で、「われわれ代表団の台湾訪問は、台湾の活力ある民主主義を支援する米国の揺るぎないコミットメントを称えるものである。「台湾の指導者との話し合いは、我々のパートナーへの支持を再確認し、自由で開かれたインド太平洋地域の推進を含む、我々の共通の利益を促進するものである」と述べた。
ペロシはまた、今回の訪問が台湾に関する米政策と矛盾する、あるいは変更することを否定した。米国政府は台湾政府を正式に承認していないが、台湾の地位が正式に解決されるまで、外交、軍事、その他の問題で台湾当局と関与する権利を留保している。
中国外務省は、ペロシの訪問を「重大な政治的挑発」と断じ、「火遊びをする者は火で滅びる」と公式声明で述べている。また、中国政府はニコラス・バーンズ米国大使を呼び、正式に抗議した。
ペロシは台湾への移動で、南シナ海から遠く離れたルートを選択した。以前から、中国の南方戦域司令部が、ペロシが台湾に向かう途中に同司令部の管轄区域を通過する想定で、特別な動きがあったとする報道があった。
また、ペロシの台湾訪問が決定するまでの間、中国戦闘機がペロシ乗機を迎撃し、地域から追い出そうとするのではないかとの懸念があった。最近、中国機がアメリカ、オーストラリア、カナダの軍用機へ挑発的な交戦を繰り返していることも、こうした懸念が際立たせていた。こうした懸念のため、ホワイトハウスや米軍は議長に台湾訪問を全面的に中止するよう働きかけていたとされる。
ペロシの機が飛行中に友好的な航空機に護衛されたかどうかは、現段階では不明だ。台湾のF-16V戦闘機が台北まで同行したという憶測もあった。もう一つの可能性は、今日、沖縄の嘉手納基地から5機の空中給油タンカーとともに出発したとされる米空軍F-15C/D戦闘機8機による護衛があったということである。
空軍のF-15C/Dは、様々な事態に備え、警戒態勢で飛行していたのだろう。オンライン・フライト・トラッキング・データによると、台湾付近を飛行中の他の米軍機も追跡されている。米空軍のE-3空中警戒管制システム(AWACS)レーダー機、RC-135Vリベットジョイント偵察機、HC-130JコンバットキングII戦闘捜索救助機、米海軍P-8Aポセイドン哨戒機、EP-3EエリースII情報・監視・偵察機などが含まれる。
特にHC-130Jは、万が一フライトに何かあった場合、敵地でも捜索・救助を調整・実行する重要装備と考えられている。
さらに、西太平洋のフィリピン北端から台湾南端のどこかで、米海軍の主要部隊が活動していることが分かっている。超大型空母USSロナルド・レーガン(CVN-76)、水陸両用攻撃艦USSアメリカとUSSトリポリ、そしてそれぞれの航空団と護衛艦がここに含まれる。
米国防総省の報道官は、ペロシ訪台に米軍がどんなサポートを提供しているかとの質問に対し、「未確認または確認済みの旅行に関するセキュリティの詳細について話すことはない」と声明で述べている。「もちろん、議員の安全を確保するために、いつでもどこでもあらゆる適切な手段を講じている」。
ともあれ、結局、人民解放軍がペロシ氏の飛行機が台北に到着するのを阻止しようとした形跡はないようだ。しかし、台湾当局によると、その後、21機の中国軍機が台湾の防空識別圏(ADIZ)の南端に進入したという。台湾国防部によると、この部隊にはJ-11戦闘機8機とJ-16戦闘機10機、KJ-500空中早期警戒管制機、Y-9電子戦機、Y-8電子情報収集機が含まれていた。ADIZの大部分は国際空域だが、北京の政権は、台北のカウンターパートに圧力をかけ、過去数年の台湾に関する出来事に不快感を示すため、このような飛行をますます実施するようになっている。
台湾当局はまた、Su-35フランカーEが台湾海峡を飛行し、大陸との事実上の境界線であるいわゆる「中央線」に近づいた、あるいは越えた可能性があるとの中国国営メディアの以前の報道を否定している
ADIZ侵入は、中国の対応の一部に過ぎない。もっと心配なのは、中国国防省が発表した計画で、公式声明の機械翻訳では、台湾周辺の6つの明確なゾーンで「標的軍事作戦」と呼んでいることだ。
中国人民解放軍は厳戒態勢にあり、一連の標的軍事作戦を開始し、国家主権と領土保全を断固として守り、外部からの干渉と『台湾独立』分離主義の試みを断固として阻止する」と、この声明は述べている(機械翻訳)。
国営メディアは、実弾演習と説明しているが、台湾への介入を想定したPLAの既存作戦概念を反映している可能性は十分にある。訓練と称するものの、実際の侵略に至るまで繰り返し行われることが予想される。例えばロシアはウクライナ侵攻の前、同国付近で大規模演習を何度も行い、その準備も一連の訓練だと主張していた。
専門家やオブザーバーは、問題地域の一部が、冷戦後の米中関係の決定的瞬間となった1996年の「第三次台湾海峡危機」で中国軍が演習を行った場所と重なると指摘している。
しかし、今回発表の区域は、台湾の領海や内水面区域を含んでおり、はるかに挑発的である。
ネット上でも、中国軍が台湾の東部・南部沿岸地域に向かい移動する様子とされる映像や写真が出回り始めていた。南部の廈門の海岸に水陸両用装甲車、台湾海峡に面する福建省の鉄道車両にDF16とみられる道路移動型短距離弾道ミサイルを搭載した映像などである。
その他にも、中国軍の大規模な動きの可能性が指摘されている。今日、台湾海峡を臨む福建省で、国内の航空交通に混乱が生じたとの報道が出た。これは、大規模な軍用機の移動が迫っていることを示唆しているのかもしれない。
さらに、南シナ海を管轄し、台湾関連の有事には戦時的な役割を担うPLA南方戦域司令部では、周辺2カ国の軍関係者の話として、軍部が厳戒態勢に置かれているとFinancial Times紙が伝えている。
また、台湾の北にある東海、黄海、渤海でも、急な演習が行われる見込みだ。ここ数日、台湾の東海岸沖でより定期的なパトロールが行われるなど、各地でPLA海軍の活動が活発化していることが報告されており、中国の現用空母2隻がそれぞれの母港から出港したことも含まれていた。
7月から8月にかけて中国が展開中の軍事演習の場所、日程を示した資料。Global Times
昨日、国家安全保障会議のジョン・カービー戦略通信調整官は、ペロシ訪台の可能性に対し、中国政府が「さらなる措置を講じる可能性がある」との見解を示したが、具体的な内容は明らかにしていない。カービーは、ペロシ訪台に対し北京当局が取り得る行動として、実弾演習、ADIZ侵入やメディアとの交信などを警告している。
また、台湾政府は本日未明、サイバー攻撃を受けていると発表した。台湾総統府発表によると、本日夕方から20分ほど公式サイトがダウンした。中国の行為については言及されていないが、同事務所はこの事件を「海外からのサービス拒否攻撃 」と表現している。
ペロシが台湾に滞在するのは1日程度とみられ、出発便がPLAから何らかの挑戦を受ける可能性はまだ大いにある。また、新たに発表された演習区域を通過しなければ、出られないという問題もある。
ペロシ訪台がどのような影響を及ぼすかは未知数だが、中国共産党がすでに取っている行動と、中国当局の過激な言動は懸念材料としか言いようがない。とはいえ、今回の訪台は、台湾の支配権奪回を目論む攻撃的な中国へ反対する米国の態度を示すものとなった。■
Chinese Military Drills Will Surround Taiwan As Punishment For Pelosi Visit
BYJOSEPH TREVITHICK, THOMAS NEWDICKAUG 2, 2022 3:44 PM
ヤクザならばまだ理屈が通る余地がある。しかし、CCP/PLAは、お盆に近いせいか、もっと陰湿な、情念の世界に近い対応を行っているように見える。これはメンツを潰した習の地位にお迎えが近いことを意味しているのかもしれない。なんまいだぶ、合掌!
返信削除PLAの演習は、90年代の台湾危機時を焼き直し、米海軍の対応に悔しい思いをした時のPLAと今は違うことを主張したいのかもしれない。あるいは単なる嫌がらせの拡大版かもしれない。台湾の物産の輸入を停止し、20機余りの中古軍用機を繰り出したが、しょぼいいじめと、腰の引けた威嚇行為でしかない。台湾侵攻演習の映像を見る限り、過去の映像か、米韓の上陸演習程度のお遊び程度のものでしかない。
むしろこれからが本番であり、ペロシを直接威嚇する戦争行為を避けつつ、盛大な火遊びを行うのだろう。今回の演習は、急遽決まったものであり、参加する兵士は多くの不満をかかえているだろう。どのような規模と練度で演習を行うかは、興味のあるところ。
本ブログの「ホームズ教授の味方…」(8/2付)で述べたように、習は、バイデン在職中に台湾侵攻を行う可能性が最も高いと予想する。しかし、CCP/PLAが敗戦のリスクが高いと考えれば、台湾周辺の島嶼、金門・馬祖島や東沙諸島、あるいは太平島を占領しようとするリスクもまた高いのかもしれない。PLAによるこれらの島々の占領なら、老いぼれバイデンは見て見ぬ振りを決め込む可能性が高いと推定する。