日本が最近発表した「2022年日本の防衛」は、中国抑止をめざす自衛隊の能力を高めることに特化した、タイムセンシティブで重要な構想の概要を示している。
2022年防衛白書
同白書は、東シナ海・南シナ海でび中国の「威圧」と「現状変更」の努力について、特に懸念している。これは、米国、日本、そして多くの東南アジアの同盟国にとり長い間の懸念であり、ロシアと中国の協力関係の強化で、さらに悪化する可能性が出てきた。
「侵略国家ロシアとの関係は近年深まっており、日本周辺では中国とロシアの艦船や航空機による共同航行や飛行が行われている」(2022年版日本の防衛)。
確かに、ロシアと中国の訓練や協力の強化は、ロシアのウクライナ侵攻に照らし、新たな緊急性を帯びてきているのかもしれない。日本で最も懸念されるのは、ロシアと中国の協力関係が、日本に近いロシア東部で活発になっていることだ。
「日本周辺では、ロシア中国の爆撃機の共同飛行や軍艦の共同航行など、協力関係を強化する動きがあり、こうした軍事協力を『戦略的協調』と表現する動きもある。これらの動向は懸念を抱かせるものであり、今後も注意深く見守る必要がある」と白書は記述している。
地域内脅威に加え、日本側の文書では、ロシアの新しい極超音速兵器「ジルコン」が、ロシア東部から日本を脅かす立場になる可能性があるため、増大する非常に深刻な脅威と指定されている。
「米国に匹敵する核戦力を確保した上で、2022年から極超音速巡航ミサイル『ジルコン』の量産・配備を計画など新兵器の配備を加速させ、電子戦装備などによる非対称戦能力を向上させている」とある。
白書によれば、最近でも、中国とロシアの軍艦が合同で日本を包囲する「出撃」を行い、目に見える脅威と日本を懸念させる行動をとっている。
日本にとって特に懸念されるのは、中国が「尖閣諸島付近で威圧的に現状を変えようとする一方的な試みを執拗に続けている」こと、と白書は述べている。
中国は、尖閣諸島付近で力により現状変更の一方的な試みを執拗に続けており、重大な懸念事項となっている。
このような最近の動きが、日本の防衛大臣が、「防衛力強化加速パッケージ」呼ぶものを通じて2022年の防衛費増額の重要な理由の一つとして白書に明記されている。
日本の F-35 US Air Force/Tech. Sgt. Benjamin W. Stratton
白書は、どの兵器システムを増強するかという具体的な内容には触れていないが、同盟国の協力と訓練、情報収集技術、戦力態勢の要件、近代化加速などの重点分野を特定している。その中には、日本が数十億ドルをかけて購入するF-35、無人偵察機グローバルホーク、SM-3 IIA、イージス戦闘システム、進化型シースパローミサイル・ブロックII含む米軍との多くの共同兵器プログラムの継続が含まれる。
白書には、情報収集の加速と強化・改良の分野における一般的な重点分野も含まれている。白書によると、情報の領域における日本の進歩と近代化の努力には、「日本上空で送信される軍事通信電波、電子兵器、その他の電波の収集、処理、分析」が含まれる。さらに白書は、このような改良・拡大された分析には、人工衛星や警戒・偵察機、艦艇からのデータも含まれると明記している。
2022年版防衛白書で中国が大きく取り上げられているのは、驚くべきことではない。中国は、地域や日本周辺での攻撃的行動を加速させており、ロシアとの訓練や協力を強化し、軍事規模や高度化を大量に進めているように見える。
J-20 CCTV
中国の戦力
人民解放軍・海軍は拡大しており、核兵器に加え、J-31やJ-20といった第5世代航空機が急速に台頭している。しかし、これらの懸念に加え、AI利用の拡大や、日本の白書が「軍民双方向の資源移転を加速する」と呼ぶ中国の「民軍融合」の加速など、日本の白書に明記された分野が他にもある。
このうちAI活用は、日本の白書では「知的化された戦争」と呼ばれ、兵器システム、監視資産、データ処理の速度と能力のすべてが大規模改善されている。
「中国の軍事動向は、中国の国防政策や軍事情勢に関する不十分な透明性と相まり、日本含む地域と国際社会にとって重大な懸念事項となっており、この動向は近年ますます強まっている」と白書は述べている。
AIが実現する「インテリジェント化された戦争」は、当然ながら兵器システムや技術プログラムの広範囲に影響を与える。特に、予算や技術交流に関し、民生と軍事の隔たりがない中国においては、その影響が顕著である。例えば、衛星データの処理と伝送が高速化され、艦艇、ロケット、核兵器まで標的情報を受信して整理でき、飛行中の進路変更も可能になる。
基本的に重要なのは、中国のAIが、「センサーからシューターまでの時間」の短縮、軌道修正弾薬の進歩、マルチドメイン攻撃接続の実現、AIによる高速情報処理といった領域で、米国の最近の躍進にどの程度匹敵するかだ。中国がこうした分野を重視していることはよく知られており、重要な問題は、戦闘の「意思決定」サイクルを短縮することに関して、中国共産党がどの程度対応しているかだ。
J-31 Chinese Internet
中国の衛星は、戦争交戦中の第5世代航空機や地上発射機に、ほぼリアルタイムで標的の詳細を送ることができるのか?急成長中の極超音速兵器は、飛行中に進路を変更し、次世代の目標データ処理と誘導技術で運用できるのだろうか?J-20やJ-31の第5世代ステルス機はどうか?しかし、米国のF-35に匹敵するような「センサー融合」データ処理を、中国空軍のステルス戦闘機がどの程度有しているかは、あまり知られていない。
具体的には、これらの戦闘機は、航法データ、照準情報、武器誘導、脅威の特定など、別々の領域からセンサー入力を受け取れるのだろうか。このような特性は、スタンドオフレンジからの致死的な攻撃を可能にするセンシングとAIによる情報およびターゲットデータ処理に関し、F-35を世界でもユニークな存在にしている。事実上、F-35は自分たちの姿を見せることなく敵目標を破壊する能力を実証している。この能力は、あらゆる空中戦で決定的と思われる。このような状況から、中国のJ-20とJ-31は、特殊なコンピューティングの分野でどれほど進んでいるのかが問われる。
太平洋における中国の敵意と米国との訓練強化への意欲の高まりにより、自衛隊の大規模な軍備増強を支援するために、大量のF-35、誘導ミサイル、ドローン、艦載兵器システムなどを急速に調達している。
防衛力強化加速パッケージ
「防衛レポート2022」は、「防衛力強化加速パッケージ 」と呼ぶ新たな防衛予算戦略の概要を示している。本文では、2022年の予算計画が前年より553億円多いことが説明されている。
「日本の防衛費は10年連続で過去最高を記録した」と、2022年度防衛白書に書かれている。
予算には興味深い規定があり、防衛白書が「米軍再編」と呼ぶ在日米軍関連であれば、さらに多くの予算が割り当てられる。長年にわたって日米間の兵器開発協力が成功し、実質的な成果を上げてきたことを考えると、これは非常に重要だ。
日本は、イージス艦を自国で運用する搭載する米同盟国の一つである。同盟国の相互運用性を大幅に拡大するだけでなく、ソフトウェア、レーダー、射撃管制、ミサイルの統合システムにより、日本の海上弾道ミサイル防衛と海上での航空・巡航ミサイル防衛の範囲と能力が大幅に拡大される。太平洋に広がる広大な海洋と、中国大陸から日本に到達する可能性のある中国の弾道ミサイル攻撃から日本の海岸を防衛する必要性を考えると、これは極めて重要なことだ。
「技術的優位性を確保するために、日本はゲームを変える可能性のある技術への投資を大幅に増やすことを決定し、研究開発費を過去最高に増やした」と、2022年度防衛白書は述べている。
F-35B Lockheed Martin
海上自衛隊艦艇は高感度、長距離、脅威を探知するイージスレーダーを運用するだけでなく、駆逐艦からF-35Bの運用成功したと防衛レポート2022は説明している。F-35での相互運用性は、本が新たにF-35を大量購入することを考慮すれば、日米の防衛面のつながりで更に画期的な前進を意味する。
駆逐艦からF-35Bを垂直離着陸させれば、日本は海上環境における第5世代ステルス機の優位性を明確にできる。中国は陸上の第5世代機J-20を限定的に運用しているが、海上発進第5世代機はまだ保有していない。新開発のJ-31は空母運用に作られており、第5世代航空兵力を小型艦に配置するため必要な垂直離着陸はできない。
日本は近年、米国と協力し、SM-3ブロックIIA迎撃ミサイルのような最先端兵器を開発している。SM-3ブロック IIA は、SM-3 ミサイルの後続または改良型として設計され、先行機種より大型で、より長距離、より高性能な兵器となる。SM-3ブロック IIA は、海上での ICBM迎撃と、迎撃距離および精密誘導技術を統合する可能性を秘めている。
Global Hawk Drone Northrop Grumman
また、日本はオスプレイー、進化型シースパローミサイル・ブロックII、グローバルホーク無人機などのシステムを調達している。■
Kris Osborn is the President of Warrior Maven - Center for Military Modernization and the Defense Editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.
コメントです。なんで自国の防衛白書の解説を米国発の記事で読まなくてはならないのか。防衛デスクが日本にも必要ですし、国防分野に通暁した記者を大手メディアに育ててほしいと思うのですがいかがでしょうか。その場合、白書を解説するだけでなく広範囲の国防関連知識が必要であり、なんといっても日本が目指す方向を理解できるセンスが必要です。お決まりの防衛費にこれだけ使えば、社会福祉でこれだけの効果になるのに、といった記事はもう結構です。
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