アラブ首長国連邦のダフラ航空基地に駐機するE-3セントリーAWACS (U.S. Air National Guard Photo by Staff Sgt. Colton Elliott)
国防総省予算について、議会の主要委員会4つがすべて議決し、各議員は軍事計画の運命を交渉する。Bradley BowmanとBrian Leitzke少佐は、代替に時間がかかっても、一部E-3を廃棄すべきとFDDで主張している。
議会は能力格差の発生を懸念するが、FDDの両名は、それはすでに存在している、と書いている。時間と予算は、E-3後継機に投入した方が良いとふたりは主張している。
空軍は、E-3「セントリー」空中警戒管制システム(AWACS)のほぼ半分を退役させ、次世代能力の導入を早め、残るE-3の即応性を強化するのに必要だが有限の資源を確保したいと考えている。しかし、先週発表の上院軍事委員会の2023会計年度国防認可法では、議会が空軍の計画により「空中指揮統制能力に大きなギャップが生じる」ことを懸念しているのが明らかにされた。
特に今後数年間は、北京が台湾を攻撃する可能性があるため、能力ギャップ発生を避けることは確かに称賛に値する目標だ。しかし、E-3に関して言えば、同機の一部売却を延期することは、すでに発生している能力格差を単に長引かせ、より能力の高い代替機E-7の配備に必要な時間、資金、人員などの希少資源を流用する可能性があることがよく分かる。
空軍のE-3は31機ある。空軍は来年度、オクラホマ州のティンカー空軍基地から15機を売却し、日本の嘉手納空軍基地に2機、アラスカ州のエルメンドルフ・リチャードソン統合基地に2機、ティンカーに12機を維持したいとしている。
しかし、空軍は最初のE-7は2027年会計年度まで配備されないと言っており、議会は躊躇している。
上院軍事委員会は、下院が可決したさらに厳しい文言に続き、空軍が当初5機以上のE-3を売却するのを制限すると票決した。空軍が詳細な取得戦略を承認すれば、上院の現行法案でさらに5機のE-3売却が可能になる。空軍がE-7を購入契約を結んだ場合、上院案ではさらに5機、合計15機の退役を認める。
そこに、空軍と軍事委員会間の押し問答の揉め事が加わる。
意見の相違の中心には争点が2つある。一つは、E-3処分をE-7調達と関連付けるべきか、もう一つは、空軍がE-7調達と配備をどの程度のスピードで進められるかだ。
E-3処分の反対派は、最初の質問でより良い議論をしているように見えるかもしれない。ターザンに喩えれば、E-7の蔓をしっかり掴む前にE-3の蔓を手放すと、ターザンにとって重大な問題(そして統合軍の能力ギャップ)を引き起こすからだ。
しかし、この比喩を続けるなら、空軍の反応は本質的に、E-7の蔓の状態に関係なく、E-3の蔓が切れている(ある意味、すでに切れている)、ということである。これ以上、固執しても良いことはない。この議論では、空軍が正しいと信じるに足る理由がある。
空軍は1977年に最初のE-3を受領したが、同機は飛行の継続が難しくなってきた。2019年から2022年にかけ、E-3の完全または部分的な任務遂行率は75%から59%へ低下し、完全な任務遂行状態を達成できたE-3は今年10%に過ぎない。
また、E-3のボーイング707プラットフォームが老朽化するにつれて、重要な交換部品のサプライヤーを見つけることが難しくなっている。民間航空会社はとっくの昔にボーイング707を退役させている。E-3の非ミッション・遂行率は、部品供給の問題から過去3年間で2倍以上になっている。
ケネス・ウィルスバックGen. Kenneth Wilsbach米太平洋空軍司令官のコメントによれば、太平洋に配備中のE-3の4機はすべて頻繁に飛行できなくなっているという。戦闘指揮官が機体の離陸を当てにできない場合、航空機の売却が新たな能力格差を生むと主張するのは困難であり、特に機材の一部を売却することで残りの航空機の即応性が高まるならばなおさらである。実際、E-3で保有機数が減れば、入手困難部品の需要が減り、弱体化している物流拠点が、より少数機の即応性維持に集中できるようになる。
残念ながら、E-3問題はメンテナンスに留まらない。ウィルスバック大将は、E-3の空中早期警戒管制(AEW&C)能力は「21世紀の戦いに役立たない」と言う。E-3は、中国とのハイエンド紛争でほとんど役に立たないだろう。
とはいえ、E-3の有用性がゼロというわけではない。戦闘指揮官からの要請は続いている。E-3は、ある環境では貴重な情報、監視、偵察の役割を果たし、通常の抑止に貢献し、先進国以外の敵に対し建設的なAEW&Cの役割を果たせる。
しかし、E-3が抱えるメンテナンスの課題やコストの増大、同レベルの敵との戦闘シナリオにおける陳腐化について、幻想を抱くべきではない。言い換えれば、能力格差はすでに存在しており、E-3機材の状態がさらに悪化し、北京がより高度な能力を保有し続ければ、時間と共に悪化する。
FDD の調査によると、15 機の E-3を退役させることで、5 年間で 30 億ドル近くを節約でき、この資金は、 E-7 を購入する資金になる。また、E-3を廃棄することで、現在E-3を運用しメンテナンスしている約1,500人の空軍隊員が解放され、うち一部はE-7訓練に回され、フル稼働を早めることができる。
そのため、E-3の少なくとも一部を退役させたいと考えるのは空軍にとって賢明なことである。つまり、空軍がE-7の取得をどの程度早め、2027年度までに実戦配備を開始できるかが重要な問題となる。
関連する点として、以下がある。空軍は9月末までに取得戦略を策定できるのか?来年初頭までにE-7の初期契約を締結することは可能か?
もしそうなら、上院軍事委員会で承認された文言の下でも、空軍は2023会計年度にE-3を15機売却できる。空軍の取得責任者は、E-7調達の「劇的な加速」は不可能と注意を促している。しかし、ボーイングの関係者がその後、E-7の早期配備を可能にする「多くのオプション」を示唆しているのは注目に値する。
いずれにせよ、調達プロセスの合理化やスケジュールの迅速化が不可能だと示唆する人物には、特にインド太平洋における利害関係が非常に深刻であるため、立証責任がある。
もちろん、調達の迅速化は「言うは易く行うは難し」だ。しかし、プーチンの無謀な侵攻を受け、米国はウクライナへ必要な兵器を提供するため、天地を揺るがすような行動に出ている。E-7を自軍に配備する際にも、同様の危機感を持つべきだろう。
E-3に関して空軍と議会間で進行中の会話は、複数のプログラムにまたがり、全軍に影響する、より大きな長年の課題の縮図である。予算は有限で、近代化ニーズの積み残しがあるため、各軍は既存システムの維持とあわせて次世代システムの獲得に苦心しているのだ。
売却により許容できない能力格差が生じることもあれば、既存システムがあまりにも古く、システムを維持しても能力格差がすでに存在している場合もある。E-3は後者の部類に入る。
より重要な問題は、空軍、議会、産業界、および米国の同盟国が、E-7の実戦配備を促進するためどこまで効果的に協力できるかだ。米軍はこの近代化能力を強く必要としており、無駄にできる時間はない。■
Let the Air Force let go of the E-3 ‘Sentry’ - Breaking Defense
By BRADLEY BOWMAN and MAJ. BRIAN LEITZKE
on July 29, 2022 at 12:29 PM
Bradley Bowman is senior director of the Center on Military and Political Power at the Foundation for Defense of Democracies. Maj. Brian Leitzke is an Air Force officer and visiting military analyst at FDD. The views expressed in this commentary are those of the authors and do not necessarily represent the views of the Defense Department or the Air Force.
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。