スキップしてメイン コンテンツに移動

ウクライナ戦の最新状況。ロシアのミサイル在庫減少は深刻。HIMARSが効果を上げている。ザポリージャ原発へのIAEA査察は実現するか等

 Ukraine Situation Report: Russia Running Low On Missiles Six Months In

 

 

ロシアのイスカンダル弾道ミサイル残数は20%と推定され、その他在庫も絶え間ない攻撃で減少の一途だ

 

 

 

6ヶ月に及ぶ空爆でロシアのミサイル不足が発生し、とくに重要な兵器システムの2つで大幅不足していると言われている。

 ウクライナ情報機関によると、ロシアが保有するミサイルの残量はせいぜい45%程度だという。ウクライナ国防省情報部は、3M14カリブルル対地攻撃巡航ミサイル(LACM)で「困難な状況」に直面しており、9K720イスカンダルM短距離弾道ミサイル(SRBM)の残りはせいぜい20%だという。

 ロシアはカリブルを対ウクライナ戦の目玉としており、長射程距離でウクライナ支配地域の奥深くまで攻撃できる。戦争の最初の映像のは、2月24日の日の出とともにウクライナの田園地帯の上空を滑空するカリブルであった。同様に、ベルゴロドからハリコフを目標に夜間発射されたイスカンダルMも同様に悪名高い装備になった。

 

 

 

短距離弾道ミサイル9K720イスカンダル-Mの装填作業。 Russian Ministry of Defense

 

不足はますます悲惨になっており、シリアからの最新のニュースが状況を示唆している。ロシアは、シリアに「贈与」したS-300地対空ミサイル(SAM)を撤回し(ロシアは管理権を維持している)、最終的に黒海のノボロシースクに移送している。

 ロシアの対地攻撃用ミサイル在庫が苦境に立たされているもう一つの兆候は、地上攻撃用ではないミサイルの使用が増加していることだ。対空用に設計・最適化されたS-300を、ロシアは対地攻撃用に使用している。これは、新型対艦ミサイルと冷戦時代の対艦ミサイルの両方を地上目標に使用したのと同様に、より正確で最新の陸上攻撃用ミサイルを温存するためだ。

 ロシアは制裁措置でハイテク兵器生産が制限されており、その多くが西側電子機器を搭載していることが判明しているため、陸上攻撃用ミサイルの早期増産ができないのだろう。ロシアがイランに大量の無人機を買い付けに行くのも、苦境ぶりを物語っている。

 大きな問題は、ロシア航空戦力が前線以外ではほとんど効果がなく、ウクライナ上空での制空権を獲得するまでに至っていないことだ。ウクライナ西部に到達して重要ターゲットを攻撃できるのは、スタンドオフ陸上攻撃ミサイルだけだ。このミサイルがなければ、ロシアは航空戦力を大きなリスクにさらさずに目標を攻撃する能力がない。イラン製の自爆無人偵察機も、イスカンダルやカルブル並のパンチ力はなく、場合によっては生存能力も低い

 

 

 

ロシア軍艦から発射される3M14カリブル巡航ミサイル。Russian Ministry of Defense

 

 

ロシアはウクライナ以外にも国防上の必要を抱える。ミサイル在庫を枯渇させると、数年にわたり大きなリスクを招く可能性がある。

 モスクワのミサイルの不足ぶりは時間の経過で明らかになるが、ウクライナの空襲警報がどれだけ鳴るかが唯一の指標になるかもしれない。

 

最新情報

ロシアとドンバスの分離主義勢力は、ドネツク郊外のウクライナ軍陣地に攻撃を続けているが、重く固められた前線に対して最小限の成果しか得られていない。英国国防省の最新情報によると、分離主義勢力は、廃墟となったドネツク空港の西にある塹壕とバンカーで爆撃された村、ピスキーの中心部に近づいている。

 ピスキー、あるいは同村の残骸は、2014年の最初の戦闘にさかのぼり、以前は静的だった前線に鎮座している。この遺跡とその守備隊は、今年2月のロシアの大規模な侵攻のずっと前から、分離主義勢力による数え切れない砲撃と襲撃に耐えてきた。6カ月にわたる本格戦闘の後、いまだにウクライナの支配下にある事実は、信じがたいとしかいいようがない。

 少なくともウクライナ国防省によれば、今回の戦争で新たな怪談がある。ロシアの弾薬庫や空軍基地など、燃えやすいものが夜中に爆発する傾向が強まっており、今夏初めにM142 HIMARSがウクライナに到着してから、その傾向が劇的に加速している。

 ロシアは爆発をウクライナの攻撃以外のあらゆるもののせいにしているので、不気味で燃えるウサギのようなものがロシアの基地に火をつけているとさえ述べている。

 だがもっとHIMARSがある! ウクライナは、NATOから供給されたロケットランチャー(HIMARSを含む)で、到着以来50箇所以上のロシアの補給基地を攻撃し、金曜日に新しいマイルストーンをクリアしたと主張した。また、アントニフスキー橋も再度攻撃され、ウクライナのHIMARS隊員にとっては、ダーツ盤のような存在になりつつある。

 ロシアが占領したウクライナ南部のザポリジャー原子力発電所(ZNPP)をめぐる武勇伝が続く中、ウォールストリート・ジャーナルは金曜日、国際原子力機関(IAEA)査察団が交渉の突破口を開いた可能性を受け来週初めにも同発電所の視察を許されるかもしれないと報じた。

 記事によると、査察団は原発事故を防ぐための継続的な取り組みの一環として、「予備部品、放射線監視装置、その他の重要な資材」を持参するという。

 ロシア軍が欧州最大の原子力発電所ZNPPに軍事機器や弾薬を貯蔵し始めたため、夏にかけ大惨事の恐れが高まっていた。ウクライナや国際社会は、ロシアが同施設を砲撃基地として使用しているとして、非難している。

 また、ウクライナの占領地に対するロシアの意図について、2つの不穏な報道がある。まず、キーウ・インディペンデント紙は、ロシアが占領地の学校近くに兵士を配置し、子どもたちがロシア支配下にある学校に行くようになると懸念されると報じている。

 ロシア軍に拘束された人々の拘留、尋問、処理に使われたキャンプについて、米国務省やエール大学公衆衛生大学院の人道研究ラボの研究者から厳しい情報が入ってきた。

 ロイターの調査報告によると、衛星画像とオープンソース情報で確認された21カ所の場所が示されている。調査ではさらに、ウクライナ人捕虜を収容していた不運なオレニフカ刑務所で掘られた集団墓地の衛星画像も確認された。

 ロシア(そして忘れてはならないのは、プーチンの友人スティーブン・セガール)は、ウクライナがHIMARSで刑務所を攻撃し、捕虜多数を殺害したと非難した。その後の調査で、この主張に重大な疑問が投げかけられている。

 今週のシャプリネ駅への攻撃は、ウクライナのインフラへのロシアの継続的な攻撃で、少なくとも22人が死亡、50人が負傷した。駅付近の映像では、木曜日に黒焦げの客車が映し出されていた。

 また、包囲されたマリウポリで部隊に物資補給する大胆なミッションの映像も新たに入手した。ビデオは、パイロットの吐く白い息から寒い朝に見えるマリウポリ港の近くで、部隊がウクライナのMi-8/17ヒップヘリコプターから物資を降ろしているところを映ぶりしている。ヘリが離陸し、低空飛行し、港湾施設の被害がはっきりとわかる。

 最後に、今回の戦争は比喩に事欠かない。最新のものは、ウクライナの爆発物処理(EOD)チームの継続的な作業によるもので、チームは、別の戦争の不発弾(UXO)を発見した。ナチス・ドイツの15cmネーベルヴェルファー41ロケット砲に使用されていた「ヴルフグランネート41ロケット」だった。赤軍とドイツ国防軍がウクライナの田舎で戦ったとき、連合軍は「スクリーミング・ミミ」と呼び、どれだけの数がウクライナの地に落ちたか、だれにもわからない。

 戦争がもたらす結果は、いつも当事者より長生きすることを示している。ウクライナの血にまみれた土地で、今回の戦争の砲弾がいつまで見つかるのか考えざるを得ない。■

 

 

Ukraine Situation Report: Russia Running Low On Missiles Six Months In

.

BYSTETSON PAYNE, TYLER ROGOWAYAUG 27, 2022 7:22 PM

THE WAR ZONE


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

日本の防衛産業が国際市場でプレイヤーになれるか試されている。防衛面の多国間協力を支える産業が真の国際化を迫られている。

  iStock illustration CHIBA, Japan —  インド太平洋地域での中国へのヘッジとして、日米含む多数国が新たな夜明けを迎えており、軍事面で緊密化をめざす防衛協力が進む 言うまでもなく日米両国は第二次世界大戦後、米国が日本に空軍、海軍、海兵隊の基地を設置して以後緊密な関係にある。 しかし、日本は昨年末、自国の防衛でより積極的になることを明記した新文書を発表し、自衛隊予算は今後10年間で10倍になる予想がある。 政府は、新しい軍事技術多数を開発する意向を示し、それを支援するために国内外の請負業者に助けを求める。 日米両国軍はこれまで同盟関係を享受してきたが、両国の防衛産業はそうではない。 在日米国大使館の政治・軍事担当参事官ザッカリー・ハーケンライダーZachary Harkenriderは、最近千葉で開催されたDSEIジャパン展示会で、「国際的防衛企業が日本でパートナーを探すのに適した時期」と述べた。 日本の防衛装備庁の三島茂徳副長官兼最高技術責任者は会議で、日本が米国ならびに「同じ志を持つ同盟国」で協力を模索している分野を挙げた。 防衛省の最優先課題のひとつに、侵略を抑止する防衛システムの開発があり、極超音速機やレイルガンに対抗する統合防空・ミサイル防衛技術があるという。 抑止力に失敗した場合を想定し、日本は攻撃システムのアップグレードを求めており、12式地対艦ミサイルのアップグレード、中距離地対空ミサイル、極超音速兵器、島嶼防衛用の対艦ミサイルなどがある。 また、高エナジーレーザーや高出力マイクロ波放射技術など、ドローン群に対抗する指向性エナジー兵器も求めている。無人システムでは、水中と地上無人装備用のコマンド&コントロール技術を求めている。 新戦略の発表以来、最も注目されている防衛協力プログラムは、第6世代ジェット戦闘機を開発するイギリス、イタリアとの共同作業「グローバル・コンバット・エアー・プログラム」だ。 ハーケンライダー参事官は、日本の新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛予算の増強は、「時代の課題に対応する歴史的な資源と政策の転換」につながると述べた。 しかし、数十年にわたる平和主義的な政策と、安全保障の傘を米国に依存してきた結果、日本の防衛産業はまだ足元を固めらていないと、会議の講演者は述べた。 三菱重工業 、 川崎

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックIIAとSM