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次世代エンジン開発契約をエンジンメーカー以外にボーイング、ロッキード、ノースロップにも交付した米空軍がめざすのは競合状態の活性化か

 


ジェネラル・エレクトリックのXA100適合サイクルジェットエンジン。2020年テスト現場で。General Electric

 

先進エンジン契約を交付された5社のうち3社は、航空機メーカーで、戦闘機用エンジンは製造していない

 

 

 

空軍は次世代適応推進プログラム(NGAP)の関連業務で、各最高額10億ドル近い契約を5社に交付した。このエンジンは、次世代航空優勢計画(NGAD)の一環で現在開発中の第6世代の有人ステルス戦闘機含む機体の動力源に期待されている。ボーイングロッキード・マーチンノースロップ・グラマンがNGAPの契約者に含まれていることは、空軍が新しいエンジンサプライヤーに門戸を開いていることを示すとともに、新開発エンジンが搭載される予想の次世代有人航空機の全体設計で競争が続いていることを強調している。

 

国防総省の契約発表によると、オハイオ州のライトパターソン空軍基地の空軍ライフサイクル管理センターは、8月19日にNGAP契約を締結した。今回の受注額はそれぞれ9億7500万ドル。ボーイング、ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマンに加え、ジェネラル・エレクトリックプラット&ホイットニーもNGAP契約を獲得した。

 

NGADとして開発中の第6世代有人戦闘機(これはロッキード・マーティンのコンセプトアート)は、NGAPエンジンを搭載すると予想される. Lockheed Martin

 

各契約で共通する詳細は、ペンタゴン公示では次のように記載されている。

 

「設計、分析、リグ試験、プロトタイプエンジン試験、兵器システム統合を通じた技術成熟とリスク低減活動のために、プログラム上限9億7500万ドルの無期限納入/無期限数量契約を獲得した。この契約は、次世代適応推進プログラムの試作段階を実施するためで、将来の航空優勢プラットフォームに能力を実現する推進システムを提供し、推進産業基盤をデジタルに変換することに重点を置くものとする。作業は...2032年7月11日までに完了する」。

 

ペンタゴン通達にあるNGAPの項目には、NGADや実際の航空機に関する作業については一切触れていない。しかし、現在、戦闘機のエンジンメーカーはジェネラル・エレクトリックとプラット・アンド・ホイットニーだけだ。

 

ボーイング、ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマンの3社が契約を結んだことは、興味深い。特に、NGADの有人戦闘機型の機体部分を争っている可能性が高い三社と、GEやプラット&ホイットニーとの間で、エンジンをめぐる直接競合で生まれる潜在的な利益を空軍が探っているように見える。

 

6月、ケンドール空軍長官は、有人NGAD機の開発に関して「まだ競争が続いている」と明かしたが、詳しく語らなかった。その際、ケンドール長官は、このプロジェクトはこれまでの開発・取得プロセスで進められると予想しているとも述べている。このコメントは、NGADの有人戦闘機がエンジニアリング、製造、開発(EMD)段階に入ったという同月初めの発表に続くものであった。航空宇宙産業では、EMDは一般的に特定のシステムの開発を正式に開始することとされる。

 

NGAPもNGADの一部であり、新兵器、センサー、ネットワーク、戦闘管理機能、有人・無人航空機など、さまざまな次世代戦術航空戦闘能力を開発する各プロジェクトで構成される。第6世代有人戦闘機は、戦闘機と呼ばれることが多いが、これまでの戦闘機のデザインと異なる。ステルス性、航続距離、積載量を重視した設計で、機動性にも優れている。

 

ノースロップ・グラマンのプロモーションビデオのスクリーングラブに見られる、先進的な有人戦闘機のコンセプトのレンダリングなど。 Northrop Grumman capture

 

 

提案されているNGAPエンジンの具体的な詳細、あるいは将来搭載されるかもしれない機体の詳細については、やはり極めて限定的だ。NGADプログラム全体も高度に機密化されている。

空軍は過去に、適応型エンジン移行プログラム(AETP)とNGAPの間に直接的な関連性があると公表している。AETPでは、ジェネラル・エレクトリックとプラット&ホイットニーが、それぞれXA100、XA101と呼ばれる先進エンジンを開発した。設計の詳細は異なるものの、どちらも「第3の流れ」と呼ばれる気流を備え、状況に応じ燃費向上や性能向上を目的とするモードを動的に切り替えるのが特徴だ。

 

2018年時点の空軍のブリーフィングスライドでは、将来の先進戦闘機含む様々な航空機にAETPプログラムおよびフォローオンの取り組みを通じて生まれるそうな利点を示していた。USAF

 

 

AETPの焦点は、F-35統合打撃戦闘機に新エンジンを開発することだった。現状では、GEはF-35に同社のXA100、またはその派生型を搭載することを提唱しています。同社は、XA100によってF-35AやCの航続距離が30%程度伸び、加速も20~40%程度、燃費も25%程度向上すると主張している。もちろん、これらはすべて、特定の搭載物やミッション・プロファイルなどの要因に依存する。

プラット・アンド・ホイットニーは、XA101を推進するよりも、既存および生産中の統合戦闘機全機が搭載する同社製F135エンジンのアップグレードを提案している。

 

ケンドール空軍長官は、全交換オプションを支持すると公の場で表明しているが、個人的な意見であることを強調している。F-35統合計画室は選択肢を検討中で、コストと互換性が大きな要因になりそうだ。最も重要なことは、AETPエンジン設計のどちらも、少なくとも現状では、短距離離陸と垂直着陸が可能なF-35B型機には物理的に適合しないことだ。B型は、大きな垂直上昇ファンと多関節エンジン排気ノズルのため、内部構成に関して厳しい設計上の制約があり、新エンジンはこれらに統合する必要がある。

 

同時に空軍がAETPのどちらのオプションも追求しない場合、アメリカのジェットエンジン産業基盤に深刻な悪影響を及ぼす可能性が生まれると警告している。

 

Defense Newsによれば、AFLCMCの推進部門を率いるジョン・スネーデンJohn Snedenは、今月初めの記者会見で、「産業基盤の一部が崩壊し始める」と述べた。「もし、AETPを進めず、ベンダー一社で終わらせると、そのベンダーは、実質的に、先進推進産業基盤を縮小させる結果に我々を追い込むことになる」。

 

Air Force Magazineによると、ケンドール長官は7月のPotomac Officers Clu会合で、AETPについて質問され、「決断が必要で、それが今私がいる場所だ」と述べていた。「余裕がない、あるいは各軍間で合意が得られないプログラムにR&D(研究開発)資金を費やし、ぐずぐずしていたくはない」。

 

これらのことを考慮すると、空軍がエンジン・サプライヤーを広げることに関心を持ち、企業の競争を促進しようとしていることは驚くことではない。このことは、NGAPプログラム、空軍の将来の第6世代「戦闘機」、およびNGADプログラムのその他の要素に関し、NGAP契約社間、または他の企業間のさまざまな相互作用の可能性を排除するものではない。

 

ケンドール長官は、ここ数ヶ月で何度も、目に見えるものを生み出さない高リスクの開発サイクルから離れ、より伝統的な取得プログラムに戻したいと話しているが、同時にもっと斬新なアプローチへの扉も開いている。新しい企業にNGAPエンジン・オプションを提案させ、それに伴うサプライチェーンやその他の考慮事項を真剣に検討するよう求めるだけでも、米国のジェットエンジン産業基盤に長期的な利益をもたらす土台を築けるかもしれない。

 

NGAPのエンジンが搭載される航空機がどうであれ、勝者総取りの結果になる可能性は極めて低い。これらのプロジェクトで「負けた」企業が行う研究開発の一部は、より大きなチームの努力の一部として、最終設計に組み込まれる可能性は大いにある。そうすることで、エンジニアリングや買収プロセスを加速させ、コストやリスク負担を分散させることができる。また、ジェネラル・エレクトリックやプラット&ホイットニーは、たとえ自社設計が採用されなくても、重要な生産能力を提供できる立場にある。

 

後者の点については、NGAD の一環として、AETP エンジンのバリエーションや派生機の開発に資金を提供することは、空軍や海兵隊、海軍が F-35 のエンジン換装に関し最終的にどのような方針を取るかでヘッジを提供する。少なくとも過去には、統合戦闘機のAETPを進めるべきかの判断は、遅くとも2024年以降と理解されてきた。この時期は、空軍がNGAD有人型の設計を絞り込む時期でもある。

現在すべてのF-35の動力源となっているF135エンジンの試験運転。USAF

 

AETPが選択された場合、少なくとも一部F-35に2027年から2030年の間にエンジン供給を開始できる。これだとペンタゴンが契約通知で述べているように、NGAP作業の初期段階を2032年までに完了させるとの想定に沿うことになる。

 

結局のところ、NGAPの取り組みと、NGADプログラムの有人型を取り巻く幅広い競争から何が生まれるかは、まだわからないままだ。F-35に関するAETP決定がどんな影響を及ぼすかは、未解決の問題だ。空軍は過去に、AETP設計のバリエーションや派生型が、第4世代戦闘機にも搭載される可能性があると述べていた。

 

はっきりしているのは、NGADの「戦闘機」プロジェクトに関して、エンジン含み非常に活発な競争が行われていることだ。NGAPの契約は、NGAD戦闘機や他の戦闘機の動力源に関し、現状を大幅に打破する可能性がある。

 

次世代戦闘機にどのような設計案を選択するにせよ、米空軍は2030年代に次世代機を就航させる土台作りを着実に続けている。■

 

Air Force’s Next Gen ‘Fighter’ Engine Competition Shakes Up Status Quo

BYJOSEPH TREVITHICKAUG 22, 2022 3:18 PM

THE WAR ZONE

 

Contact the author: joe@thedrive.com


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