ND photo-illustration with Elbit Systems, iStock images
6月にパリで開催された国際武器見本市ユーロサトリ(Eurosatory)で、軍が必要とする滞空兵器がワンストップで購入できる場所はホール6のアイルFのブースだ。
Uvisionブースでは、カミカゼドローンと呼ばれる6種類のサイズの無人機と、コントローラーやトレーニングシステムなどのアクセサリーが勢ぞろいしていた。
また、ブースの天井にはクアッドコプター無人機が吊り下げられていた。
弾頭を搭載した垂直離着陸型無人機を見たことがない記者は「あれも徘徊弾ですか」と同社担当者に質問した。
「いや、監視用です」と担当者は言った。
「でも、武装は可能なんですよね?」
「何でも可能です」。
ウクライナで同様の兵器が、まさにこの展示会の週に、ロシアからの侵略者に対抗するため配備されたようだ。
ドローンは、第二次世界大戦の戦術に根ざしている。基本技術は趣味用に開発されたもので、その進化はイラクでテロリストが即席爆弾を使用して拍車がかかった。
ナショナル・ディフェンスは2009年のIDEXで、東欧業者が作った最初の「非改造型」飛行弾を発見した。
それから十数年、この技術は防衛関連の展示会、戦場双方で拡散している。ユーロサトリには世界中の業者が集まり、最新の「徘徊弾」技術を展示していた。「徘徊弾」は、その名の通り、潜在的な標的を見つけるまで偵察用プラットフォームとして飛行する。ただし、爆発物は必ずしも必要ではない。
Elbit Systemsのマーケティング・ビジネス開発ディレクターYaniv Ben-Itzhakは、同社の中型ドローンスカイすtライカーSkyStrikerが時速200kmで戦術車両に激突し、爆発物を使用せず真っ二つにするビデオを見せてくれた。
「単なるデモンストレーション」として「弾頭は安全上の理由から取り外された」という。
イスラエルに本拠を置く同社は、モバイル・ロケット・ランチャーとスカイストライカーの相乗効果を狙い、オペレーターがどちらかを選択し、同じ筒から発射できるようにすることを目指している。
スカイストライカーの射程は約400km。高解像度のターゲットシーカーカメラと5キログラムの弾頭を誇る。
また、他の偵察用弾薬と同様に、偵察用プラットフォームとしての役割もある。ロケット弾を使いたい場合は、標的情報をモバイル・プラットフォームに送り返す。ターゲットが決まらない場合は、自律的に基地に戻り、パラシュートで地上に降り、再使用する。
このような戦術はウクライナでロシアの戦闘車両に対して使われているが、軍事アナリストがこのハイブリッド兵器に本当に注目したのは、2021年9月のアルメニアとアゼルバイジャンのナゴルノ・カラバフ紛争時だと、スペインでUvision無人機を販売するマドリッドの防衛契約企業SDLEのロボット・自律システム部部長ホルヘ・デ・レオン・リヴァスは言う。
スペイン軍予備役中佐でもあるリヴァスは、「戦場が変化した」と語る。
アゼルバイジャンは、アルメニアの戦車数百台を破壊する徘徊弾を効果的に配備した。「戦争の分かれ目になった」(リヴァス)。紛争中のニュースによると、無人偵察機はイスラエル製とトルコ製だという。
リヴァスにとって、弾薬がうろつくことの利点は明白だ。ミサイルは発射された瞬間に「捨てられる」。標的に当たるかもしれないし、不必要な死者を出す巻き添え被害が出るかもしれない。
その点、徘徊弾を使うオペレーターは、選択的に攻撃でき、最後の瞬間に民間人を発見すれば、攻撃を中止することさえできる。
「本当に必要なものだけ攻撃し、無駄に人を殺すことはない」(リヴァス)。
また、小型のものは音が静かで、防空施設に発見されにくいとも言われる。
リヴァスによると、米海兵隊は徘徊弾の戦術、技術、手順の開発でさらに先を行っているという。
米軍、そして今回のウクライナでは、AeroVironmentの「Switchblade」徘徊弾が使用されている。ユーロサトリで同社が営業したのは、射程10キロ、耐久時間15分の2.5キログラムのドローン「スイッチブレード300」と、射程40キロメートル以上、耐久時間40分以上の54キログラムの「600」モデルだ。いずれも地上に置かれた迫撃砲のような筒から発射される。
トルコのRocketsanも同展示会で、「スマート・マイクロ弾」のMAMシリーズの一部として、新しい武装ドローンを紹介したと、同社の特別エンジニア、Furkan Zeki Ayhanは述べている。
MAM-Tは95キログラムの固定翼機で、の射程距離は30数キロメートル。2016年登場したMAM-CとMAM-Lは、各8キロメートルと15キロメートルの射程を有する。
Rocketsanの3機種は中型ドローンや軽攻撃機から発射する設計だ。
ユーロサトリに来場したある潜在顧客は、同社製品の有用性を高く評価していると話している。
フランス軍司令部の計画責任者であるアモー・グジョンArnaud Goujon大佐は、同軍が徘徊弾を今年後半に調達する検討中と述べた。
「迫撃砲や砲弾と違うものが必要だ」とグジョン大佐は言う。「約3キロ先まで15分間飛ぶ迫撃砲の弾と同じ値段なら面白い」。同じ射程距離の迫撃砲や砲弾の10倍の値段なら、興味はない。30キロや50キロを飛んで、2〜4時間耐えられるなら、「それこそ別物だ」という。
グジョン大佐は、フランス軍はスイッチブレード小型版の調達から始めると示唆した。
シンクタンクNew America主任研究員で、ロボット工学と戦争に関する著者ピーター・W・シンガーPeter W. Singerは、近い将来、戦場の上空そして海上に、うろつく軍需品を含め、これまで以上に多くのドローンが登場すると述べている。
「未来の戦場は、文字通り弾薬で埋め尽くされた空域となる」と付け加えた。
Uvisionのブースでは、同社会長ヤイル・ラマティYair Ramatiが、同社技術を「戦場のゲームチェンジャー」と称し、恥ずかしげもなく語っていた。
同社は、キャニスター発射装置付きで重量7.8キロ、航続距離15キロのHERO-30から、重量155キロ、レール発射式の航続距離200キロ以上のHERO-1250まで、6機種のシリーズを展開している。
イスラエルのティラに本社を構える同社は、ほぼすべての大陸、NATO諸国、海兵隊など米国の顧客にそのモデルを販売しているとし、ウクライナで、この技術が日々その価値を証明しているという。
ロシアの輸送船団への攻撃はその一例だ。ジャベリンなど対戦車ミサイルは、スイッチブレードなどの徘徊弾と同じぐらい宣伝されているが、こうしたミサイルは兵士が3〜5キロ離れた視線内に近づく必要があるとラマティは述べた。
「長さ20~30キロの輸送隊がどこにいるのか正確に分かっていても、(もしかしたら50キロかもしれない)それを攻撃するには、その近くにいなければならないのです」。
迫撃砲や間接砲を受けたときなど、攻撃したい目標があることは分かっていても、正確な位置が分からない場合に、徘徊弾は有効な武器になる。シーカー能力で、ターゲットを見つけることができる。
典型的なシナリオは、50〜100kmに及ぶ道路のどこかに車列があると情報部が知った場合だ。このような場合、安全距離を保ちつつ、標的を探すせる。
さらに正確さがある。「先頭の補給車両を狙うべきか?橋に着く前か、橋の上か、橋を渡った後か?」とラマティは尋ねた。
「だから、この種の兵器には今、ものすごい需要があるのです」とラマティは付け加えた。
訓練も問題だ。プレデターのような中高度・長時間飛行無人航空機の操縦を学ぶ際の6〜9カ月もかける必要がない。
Uvisionでは、数時間で飛行の習得を目指している、とラマティは言う。HEROシミュレーターを提供し、受講者の入門を促す。
ターゲットや弾頭の種類によって、高角度、中角度、低角度のどれで攻撃するかなど、時間をかけて学ぶべき細かいポイントがある、のだという。
また、同社はクアッドコプターの垂直離着陸徘徊弾は提供していないが、ユーロサトリのカンファレンスではブルガリアのソフィアに拠点を置くハデス・ディフェンスシステムズHades Defense Systemsが展示した「Spark vertical attack programable kamikaze quadcopter」は、秒速5メートルで上昇し、時速47キロで飛行し、航続距離7キロを有する。
同社は、静かなプロペラ、レーダーを回避する低反射面、アンチジャム機能をアピールしていた。また、フラグメンテーション弾頭を搭載している。
「正確な高度で目標上空に位置し、プロペラの向きを反転させ、速度を上げ(下降しながら)上空から攻撃する」と同社文書には書かれている。
ハデスのコマーシャル・ディレクター、マヤ・パンガロヴァは、同社は手打ち式徘徊弾以外にも大きな野心を持っていると語った。ジェット推進式カミカゼドローンも開発中だ。
「Nemesis Kamikaze Attack Jet Drone」は、社内の研究開発資金で開発中で、会社のファクトシートでしか見ることができない。
同社は、時速600キロで飛行し、地形マッピングと様々なアンチジャミング装置、レーダースポッティングシステムを使用し、発見されない想定としていると、同社文書にある。カタパルトで打ち上げ、航続距離は190km、最大高度4,500m、遠隔操作または自動操縦で飛行する予定だ。
同社は、2023年初めにアブダビで開催されるIDEX会議で展示できるよう実物を用意したい、とパンガロヴァは語った。
シンガーは、ハデスなどの企業が、民生用の無人機を初歩的な徘徊兵器に変えることができると信じて疑わない、と語った。
シンガーは、自らを爆弾に変えるジェットエンジン式のドローンについて、「浮遊弾薬と巡航ミサイルの間のあいまいな定義に入り込む」と述べた。
その軍事的有用性とともに、大量破壊兵器を運搬する可能性のあるミサイルの売買を防止する国際法についての疑問もある。
一方、徘徊弾の拡散に伴い、軍事戦略家が考えなければならない課題は多い。米軍が過去10年間に実施してきた主要な軍事計画とドローン戦の間に断絶がある、とシンガーは言う。
「米軍の目玉である主要な軍事プラットフォームにとって、大量の徘徊弾が存在する未来は何を意味するのだろうか。それは、陸、空、海にも言えることです。そういうつながりがまだ十分にできていないのです」。■
Loitering Munitions Proliferate As Tech Changes Battlefield
8/9/2022
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