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KC-46デパイロット1名、ブームオペレータ1名計2名での運行をねらうAMCの思惑とは

 


Single Pilot KC-46 Tanker Operations Eyed By Air Force For Major Conflicts

U.S. Air Force photo by Senior Airman Kimberly Barrera


米空軍KC-46Aで新コンセプトが承認されれば、パイロットとブームオペレーターだけでハイエンド戦闘を行う日が来るかもしれない。

 

 

空軍は、将来の中国との紛争など特定の戦時シナリオで、KC-46Aペガサス空中給油タンカーをパイロット1名とブームオペレーター1名の2名だけで運用する可能性を検討している。同給油機は現時点では、緊急事態を除き、戦闘活動に投入できない。このニュースはネット上で激しい議論と批判を呼んでおり、乗員の仕事量が増えることで安全性に懸念を呼んでいる。

 カンザス州のマコーネル空軍基地が、KC-46Aの2名運航の申請を提出したことを、空軍の空中給油タンカー保有部隊を統括する航空機動軍団AMC(Air Mobility Command)の広報担当、ホープ・クローニン空軍少佐Maj. Hope CroninがThe War Zoneに確認した。通常、タンカーはパイロット、副操縦士、ブームオペレーターの最低人数で飛行する。5月時点で、空軍はペガサス給油機を59機受領ずみで、うち20機以上がマコーネルの部隊に配備されている。

 最初の情報は、7月15日に空軍のamn/nco/snco Facebookページやr/AirForce Subredditといった空軍の非公式ソーシャルメディアチャンネルに掲載された。最初の情報の匿名情報源は、AMC司令官マイケル・ミニハンMichael Minihan大将が要請を受け、マコーネルでの採用と定着に関する懸念から検討しているとしたが、司令官は否定している。空軍はパイロット不足に陥っているが、これは過去にも問題になっていたことで、近年は解消に向け少しずつ前進している。ただパンデミック後の航空ブームと航空会社による採用で、再び状況が悪化する可能性もある。

 「AMCは、互角戦力を有する敵対国との戦闘に対応しようとする統合軍のニーズを満たすため必要な機動部隊としての準備を整えるため、リスク情報に基づき、迅速に前進している。AMC機材は通常、パイロット、副操縦士、そして機種によってはロードマスターやブームオペレーターで運行している」とAMC広報担当のクローニン少佐はThe War Zoneに語っている。「司令部は現在、将来のダイナミックな戦闘に向た新しい戦術、技術、手順(TTPs)を模索し、検証する中で、飛行乗務員の最小条件を再検討している」。

 「問題の放棄要求は、仮想的な互角戦力を有する敵国の戦いで使用する可能性のために、訓練シミュレーションと雇用の概念開発で評価されている探索的なTTPを安全に検証するプロセスの一部である 」と少佐は続けた。「AMCスタッフは現在、このコンセプト開発を検討し、この種の作戦を実行する権限がMAJCOM(主要司令部)レベルにあり、承認が出る前に十分な安全マージンの範囲内で実行できることを確認している」。

 

The War ZoneはAMCに、同様のTTPが空軍のKC-135やKC-10タンカーでも承認されたのか、あるいは現在検討されているのかに問い合わせた。KC-135とKC-10は、KC-46よりはるかに古い設計で、自動化の程度もに限られており、少ない乗員での運用が制限される可能性がある。また、KC-46の2クルー・オプションが承認されても、それが日常的に使用される承認の兆候はないことに注意が必要だ。

 KC-46Aを乗員2名で飛行させることは、大規模な紛争時に空中給油機の需要が非常に高いが、敵の行動による損失も含め、利用できるタンカーが少なくなる場合に有用となりそうだ。近年、空軍はタンカー能力の向上への要望と、大規模戦闘におけるタンカー機材の脆弱性への懸念を公にしている。KC-46Aは、貨物や旅客輸送、航空医療搬送の任務もこなせるため、大規模紛争時には任務計画や任務付与のプロセスが複雑になるだけであることを忘れてはいけない。

 同時に、空軍の現職・元職員を含む多くのソーシャルメディア上のコメントですでに指摘しているように、KC-46Aやその他のタンカーをたった2人の乗員で運用する考えは、安全性や乗員への負担で疑問を投げかけるものでしかない。空中給油は複雑で危険な作業であることが多く、特に大規模戦闘中は、タンカーの乗組員間、およびタンカーと給油を受ける機体の人間で、かなりのコミュニケーションと調整が必要となる。

 パイロットとブームオペレーターが1人しか搭乗しないKC-46Aは、ミッション中に予期せぬ医療事故などの理由でどちらかが機能しなくなった場合、バックアップ要員がいなくなる。食事や睡眠、トイレなどの基本的な生活の質への影響も、代替要員がいないと悪化する。

 米国連邦航空局(FAA)が、どのような民間機や商業機をいつ、どのようにパイロット1名で飛行させるかについて制限を設けているのには理由がある。特定の軽量ジェット機や小型機のみ、しかも特定の状況下でしか飛行できない。KC-46と同サイズの民間航空機が、パイロット1人飛行を許可されている例は、世界中どこにもない。

 航空史家で作家、『The War Zone』の寄稿者でもあるロバート・ホプキンスは、空軍在職中、C-135派生型を飛ばしていた。Twitterで、2人乗務のコンセプトが、従来のタンカーの脆弱性を認めると同時に、タンカー多数を危険にさらす解決策になるように映ると強調している。確かに、空軍は将来のハイエンドな戦闘で相当数のタンカーを失う想定で計画を立てているように見える。

 原理的には、KC-46Aが搭載する自動化システムにより、懸念のいくつかを緩和または軽減できる。2名搭乗のペガサスタンカーも、大規模な紛争の中で、リスクの低い環境に割り当てられる可能性がある。しかし、空軍のペガサス・タンカーは、給油ブームと、航空機に誘導するリモート・ビジョン・システム(RVS)に関する根強い深刻な問題に悩まされている。

 これらの問題は非常に深刻で、「我々は現在、緊急の必要性がない限り、(KC-46Aを含む)戦闘部隊の完全な配備は行わない」と、AMC広報担当のクローニン大佐は先月The War Zoneに語っている。

 現状では、空軍がKC-46Aで初期運用能力(IOC)を達成するのは、RVS修正が最終的に完了する予想の2024年以降と見られている。RVSの修正範囲と、全フリートへの統合が必要となるブームを考慮すれば、この日程は楽観的と思われる。ペガサスの最終的な運用形態が、2人の乗員だけで運用する空軍の決定にどのような影響を及ぼすかは、まだわからない。

 しかも、空軍は新型タンカーの追加取得を再評価している。空軍の最高指導部、特にフランク・ケンドール空軍長官は、以前に発表した新型タンカー競争を中止することを強く検討していると明らかにした。昨年、空軍ライフサイクル管理センターは、現在予定される179機のKC-46A購入の終了と、未想定の将来の新型タンカー(通称KC-Z)の取得との「ギャップを埋める」方法を検討する際に、複数案を検討すると発表た。空軍はKC-Zの要件を確定していないが、過去にステルスや無人プラットフォームが可能な選択肢として提示されたことがある。

 つなぎタンカー計画に関しては、ロッキード・マーティンはその後、エアバスと提携し、ペガサスの代替として、人気の高いA330 Multi-Role Tanker Transport (MRTT) の米国専用版、LMXTを提供すると発表している。A330MRTTは、KC-46Aの選定につながったコンペを含め、以前から何度も空軍に提案されている。

 

 

ロッキードマーチン・エアバス社のLMXTタンカーの想像図。 Lockheed Martin

 

 

KC-46A の 2名運用コンセプトは、最終的に空軍がどのように導入するのか、また、どのような状況下で2名での飛行が許可されるのか、非常に注目されるところだ。■

 

Single Pilot KC-46 Tanker Operations Eyed By Air Force For Major Conflicts

BYJOSEPH TREVITHICKJUL 18, 2022 4:34 PM

THE WAR ZONE


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