スキップしてメイン コンテンツに移動

AIが空軍F-16トップパイロットに圧勝----DARPAのシミュレーションドッグファイトで

 


ヘロンシステムズのAIパイロットが空軍F-16教官パイロット「バンガー」を撃墜した瞬間。

 

DARPAのドッグファイト・シミュレーションコンテストでヘロンシステムズHeron SystemsのAI「パイロット」が空軍のF-16のトップパイロットに5対0で圧勝した。

 

「大きな一歩になった」とDARPAのジャスティン・モックが今回の試行結果を評した。

 

空軍の現役パイロットが操縦桿をAIへ譲るまではまだ道が遠いが、今回DARPAが主催した三日間に及ぶアルファドッグファイトで単純な一対一の空戦シナリオならAIシステムズで十分な操縦が可能と実証できた。わずか一年間の開発でAIエージェントがここまでの成果を見せたことが驚きだ。昨年9月に8チームがそれぞれAI開発を開始していた。

 

ヘロンは女性やマイノリティが中心の小企業でメリーランドとヴァージニアに拠点を置く。人工知能エージェント開発を業務とし、同社は競合各社を抑える出来栄えを示した。敗れたチームにはロッキード・マーティンもあり、同社は二位になった。

 

ヘロン社の開発チームがYouTubeのライブストリームで質疑応答に応じた。「一回目トライアルの一週間前時点でも、開発したエージェントではうまく操縦できなかった。そこでテコ入れして結果、一位になれた」と同社でプロジェクトを共同指揮したベン・ベルが述べている。チームは今年後半にAI学習機能の強化内容を公表するとも述べた。

 

トライアルはDARPAの航空戦闘進化(ACE)事業でリスク低減策をめざし、生身のパイロットとマシンパイロットで戦闘機材を共有しつつミッション成功を最大限にすることをめざしている。ACE構想でパイロットは自機の操縦に専念するだけでなく指示に従う無人機編隊の統制まで行う。「ACEによりパイロットはこれまでより広範囲のミッションをこなす。一方で搭乗する機体は無人装備とチームを組み、個別戦術任務をこなす」とACE事業のウェブサイトに説明がある。

 

ヘロンシステムズのAIはシミュレーション演習で終始活発に交戦し、AIパイロットは空軍現役パイロットが操縦するF-16を撃墜した。このパイロットはコールサイン「バンガー」でネリスAFBのウェポンズスクールの生え抜きである。AIは「超人的な照準能力」をシミュレーションで示したとモックは説明。

 

今回のトライアルでAIパイロットの能力が「決定的」になったわけではないものの、モックは「限定された空域での結果ではあるもののAIが十分機能することが分かった」と述べた。

 

DARPAは今回使用したシミュレーターによるシミュレーションをネリス基地に持ち込み、他の空軍パイロットでAIパイロットに勝てるかを試す予定だ。次の段階はAIパイロットで空中戦以外のミッションもこなせるかを試すことになる。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

AI Slays Top F-16 Pilot In DARPA Dogfight Simulation


"It's a giant leap," said DARPA's Justin (call sign "Glock") Mock.

By   THERESA HITCHENS

on August 20, 2020 at 6:03 PM


コメント

  1. 私など、格闘ゲームの対CPU戦でも勝てたためしがないので、このニュースは驚くにあたりませんw
    むしろ「今更」感もありますが、機械学習で成長させたというのがミソなんでしょうね。
    ヘロン社の動画を見ていると、格闘戦の最中に機首をちょろっと振って「KILL」判定が出ている、ように見える。記事にも「超人的な照準能力」とありますが、射撃の腕で人間が敵うわけわけない。

    シミュレーションのAIパイロットがどのような状況認識能力を与えられてたか、気になりますね。
    人間パイロットはVRゴーグルを被り、仮想空間のキャノピーを通して敵機を目視し、計器を読み、照準器を覗いているわけですが。
    AIパイロット側は、シミュレーション上のあらゆる情報をダイレクトに操縦・昇順にフィードバックできるのでしょう(たぶん)。この点においても人間に勝ち目はない。
    あれですね、早いとこ実機にAIを積み込んで、現実空間での実証を見てみたいですね。

    返信削除
    返信
    1. >あれですね、早いとこ実機にAIを積み込んで、現実空間での実証を見てみたいですね。
      もちろん米軍がそれを考えないわけもなく、以下のような記事をジェーンで見つけました。
      『米国防総省は2022年10月から、人工知能(AI)が操作する本格的な戦術戦闘機が参加する
      ドッグファイト大会を開催する計画だ。』
      当初はチェコ製の小型練習機L-39から始まるようですが、安全確保要員および実験(観察)対象として、人間のパイロットもコクピットに乗り込むというのが面白い。
      人間が乗り込むスペースは残すわけですな。
      自動空戦に必要なセンサー(カメラ)やアクチュエータの類は、操縦席には設置されないのでしょうか?

      削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

日本の防衛産業が国際市場でプレイヤーになれるか試されている。防衛面の多国間協力を支える産業が真の国際化を迫られている。

  iStock illustration CHIBA, Japan —  インド太平洋地域での中国へのヘッジとして、日米含む多数国が新たな夜明けを迎えており、軍事面で緊密化をめざす防衛協力が進む 言うまでもなく日米両国は第二次世界大戦後、米国が日本に空軍、海軍、海兵隊の基地を設置して以後緊密な関係にある。 しかし、日本は昨年末、自国の防衛でより積極的になることを明記した新文書を発表し、自衛隊予算は今後10年間で10倍になる予想がある。 政府は、新しい軍事技術多数を開発する意向を示し、それを支援するために国内外の請負業者に助けを求める。 日米両国軍はこれまで同盟関係を享受してきたが、両国の防衛産業はそうではない。 在日米国大使館の政治・軍事担当参事官ザッカリー・ハーケンライダーZachary Harkenriderは、最近千葉で開催されたDSEIジャパン展示会で、「国際的防衛企業が日本でパートナーを探すのに適した時期」と述べた。 日本の防衛装備庁の三島茂徳副長官兼最高技術責任者は会議で、日本が米国ならびに「同じ志を持つ同盟国」で協力を模索している分野を挙げた。 防衛省の最優先課題のひとつに、侵略を抑止する防衛システムの開発があり、極超音速機やレイルガンに対抗する統合防空・ミサイル防衛技術があるという。 抑止力に失敗した場合を想定し、日本は攻撃システムのアップグレードを求めており、12式地対艦ミサイルのアップグレード、中距離地対空ミサイル、極超音速兵器、島嶼防衛用の対艦ミサイルなどがある。 また、高エナジーレーザーや高出力マイクロ波放射技術など、ドローン群に対抗する指向性エナジー兵器も求めている。無人システムでは、水中と地上無人装備用のコマンド&コントロール技術を求めている。 新戦略の発表以来、最も注目されている防衛協力プログラムは、第6世代ジェット戦闘機を開発するイギリス、イタリアとの共同作業「グローバル・コンバット・エアー・プログラム」だ。 ハーケンライダー参事官は、日本の新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛予算の増強は、「時代の課題に対応する歴史的な資源と政策の転換」につながると述べた。 しかし、数十年にわたる平和主義的な政策と、安全保障の傘を米国に依存してきた結果、日本の防衛産業はまだ足元を固めらていないと、会議の講演者は述べた。 三菱重工業 、 川崎

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックIIAとSM