北朝鮮が本来の不良ぶりを堂々と示すようになり、米国も軍事オプションが現実になる事態を想定しているようですが、姿の見えないミサイル原潜とくにSSGNを使っての北朝鮮軍事目標の同時攻撃の可能性が増えるのではないでしょうか。SSBNも一次攻撃に投入可能と言うのはちょっと驚きですが。
The Navy Has 1 Nuclear Missile Submarine That Could Destroy North Korea 一隻で北朝鮮を壊滅可能な米海軍核ミサイル潜水艦
May 16, 2018
広島、長崎への原爆投下から9年後に封切られた映画「ゴジラ」は深海から目覚めた怪物が日本を襲う筋書きだったが、火を噴く爬虫類よりも恐ろしい怪物がその後登場した。現実の野獣が同時に海中に登場しそれぞれ複数都市の破壊能力を秘めていた。米海軍用語で「ブーマー」と呼ぶ弾道ミサイル潜水艦部隊のことだ。
現在海中に潜むのはオハイオ級弾道ミサイル潜水艦14隻で米国の核兵器の半分以上を搭載している。
オハイオ級各艦は人類史上最大の破壊兵器を搭載している。各艦が24発のトライデントII潜水艦発射弾道ミサイル(SLBMs)を海中発射し最大7千マイル以上先の標的を攻撃できる。
トライデントIIが大気圏再突入すると速度は最大マッハ24で独立再突入体8つに分離し、各100から475キロトンの弾頭になる。オハイオ級潜水艦一隻が全弾発射すればわずか一分間で最高192発の核弾頭で24都市が地図の上から消えることになる。まさに黙示録級の悪夢の兵器だ。
このオハイオ級に一番近い存在がロシアが一隻だけ温存するタイフーン級潜水艦で、艦体は大きく24本の弾道ミサイル発射管を有する。中国、ロシア、インド、英国、フランスの各国が弾道ミサイル潜水艦複数を運用し搭載ミサイルはそれぞれ異なるが、先進国の主要都市なら数隻で完全に破壊できる。
一国をまるまる破壊可能なこのような怪物の存在はどう正当化できるのだろうか。
核抑止力理論では初回攻撃で地上配備ミサイルや各爆撃機部隊が消滅しても、音もたてずに深海を遊弋している弾道ミサイル潜水艦の追尾は極めて困難なため、潜水艦まで全滅するとは考えにくいとする。弾道ミサイル潜水艦による核報復攻撃は阻止されないため、まともな国家なら第一次攻撃や核兵器投入をためらうはずだ。少なくともそういう期待がある。
トライデント搭載のオハイオ級潜水艦はこれまで一回も怒りに任せた発射をしないことで任務を成功裏に進めてきたのだ。
オハイオ級の供用開始は1980年代で5型式あった弾道ミサイル潜水艦41隻の代替だった。潜航時18千トンとなった新型ブーマーは現在でも米海軍で最大規模の潜水艦だ。また世界で三番目に大きな艦体を誇る。USSヘンリー・M・ジャクソン除き各艦には州名がつくが、これは過去の大型水上戦闘艦の命名方式を踏襲したものだ。
核兵器の応酬となれば超低周波通信でブーマーに発射命令が入る。各艦のミサイルは事前に目標設定されているが、座標再入力で攻撃目標を迅速に変更できる。オハイオ級の最初の8隻はトライデントI C4弾道ミサイル発射の想定だったがこれは先のポセイドンSLBMの改良版だった。ただし今日ではブーマー全艦により高性能のトライデントII D5が搭載され、射程が5割伸びて命中率が極めて高く、第一攻撃手段としても軍事施設を正確に撃破できる。
オハイオ級は21インチ魚雷発射管4門でマーク48魚雷も発射できる。だがあくまでも自艦防御用であり、弾道ミサイル潜水艦の役目は敵艦撃破ではなく、可能な限り深く静かに潜航して敵探知を逃れることだ。原子炉によりほぼ無限大の潜航が可能で20ノット巡航潜航してもノイズはほぼ出ない。
各軍ではその時の状況に応じ活動を展開することが多いが、原子力弾道ミサイル潜水艦は通常通りの哨戒活動を一貫して行い通信連絡も最小限にとどめ可能な限りステルスに徹している。オハイオ級各艦には154名からなる士官、下士官の乗組員チームがゴールド、ブルーの名称で交代で艦を70日から90日に及ぶ潜航哨戒に出す。最長記録はUSSペンシルヴェイニアの140日だ。平均一か月を哨戒にあて、物資再補給には艦にある大型補給用ハッチ三か所を活用する。
太平洋方面にはワシントン州バンゴーを母港の9隻、大西洋にはジョージア州キングスベイを拠点に5隻のブーマーがそれぞれ展開する。冷戦終結後の戦略兵器削減条約で米核戦力は縮小されたが、初期建造艦4隻は巡航ミサイル搭載艦に改装され通常型兵器で陸上水上の標的を攻撃することとなった。まずUSSオハイオが改装された。
他方で新START条約が2011年発効し、核兵器がさらに削減される。現行案ではオハイオ級は12隻とし、各艦にトライデントIIミサイル20発を搭載し、残るブーマーのうち2隻をオーバーホールすることとし合計240本のミサイルで弾頭1,090発を投入可能とする。これを聞いて心穏やかでなくなるタカ派も心配無用だ。これでも世界を数回破壊できる威力があるからだ。
オハイオ級は2020年代末まで供用され、それまでに追加音響ステルス改修を受けるが、最終的に後継艦コロンビア級に座を明け渡す。次期ミサイル原潜は単価40億-60億ドルとみられ、建造隻数は少なくなるが新型原子炉を採用し供用期間途中での高額なオーバーホールや燃料交換が不要となる。2085年までの供用が可能となる。■
Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
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