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緊急 イラン情勢ではイスラエルの動向に注意すべきだ:開戦は不可避なのか

For Israelis, War With Iran Looms; Iran Denies Drone Downed

イラン開戦が近づいたと見るイスラエル、イランは撃墜された無人機は自国所属機ではないと否定

The Iranian seizure of a British tanker in the Persian Gulf sends a new jolt of tension through the Middle East as complications arise on multiple fronts. イランが英国タンカーをペルシア湾で拿捕したことで中東にあらたな緊張が走り多方面で状況が複雑化

on July 19, 2019 at 2:53 PM
Iran patrol boats in Persian Gulf Credit: Iran MoD.
週金曜日にペルシア湾で新たな危機状況が発生した。イラン革命防衛隊が英国船籍の原油タンカーを拿捕したと発表し、同船はイラン領ケシム島に移動させられたようだ。米海軍USSボクサーがホルムズ海峡で同艦に接近しすぎた無人機を撃墜した事件に次ぎ衝撃が走った。
近隣のイスラエルでは国政選挙が近づき、制裁解除を目指しイランが協議再開の圧力をかける中、新事態の発生で開戦が近づいたと見る向きがある。
「核ミサイルが落下しないとイランの脅威に目覚めない国がヨーロッパにある」とイスラエル首相ベンジャミン・ネタニヤフが7月16日発言した。
この痛烈な発言はイスラエル国内で米国がイラン制裁を緩和するとの危惧の広がりを反映し、欧州各国がイラン政治指導部の発言を真に受けて核合意を維持するのではとの懸念も背景にある。「あの国は甘言による欺瞞工作の達人だ」とイラン問題のイスラエル人専門家が語る。
「イランは核兵器用の濃縮ウラニウム確保へ加速している。核兵器能力の実現に向けた作業はしていないと大嘘をついていた」とヨッシ・クパワッサー准将(退役)がBreaking Defense に語っている。准将はイスラエル国防軍(IDF)の情報部門で研究部長のほかイスラエル戦略省の局長も務めた。
単独インタビューでクパワッサーはイランには核兵器開発を中止する意向はないと述べ、核合意は兵器級濃縮ウラニウムの確保を一年遅らせる目的があったと指摘し、「現時点で8ヶ月先に近づいており、更に短縮の可能性がある」と述べた。
またテヘラン政府には明確な戦略構想があり核軍備の整備に走っているとも指摘。「戦略を進めながらあらゆる手段で偽装していくだろう」
イスラエル政府がイラン制裁解除に向けた協議を警戒し不満に感じているのはあきらかでネタニヤフはEUに即座に対イラン行動に出るよう求めている。首相は自身のソーシャルメディアアカウントで第二次大戦前夜に英国がナチ・ドイツ宥和に失敗した事例を想起させている。
「イランの核合意違反への欧州連合の対応は1930年代の欧州各国を思い起こさせる」とネタニヤフは解説。「当時は危険が近づく中で見えない、聞こえないふりをしたものがいた」「イランの核ミサイルが実際に着地するまで目が覚めないものがヨーロッパにいるようだ。もちろんそうなってからでは遅い。いずれにせよ必要な対策をすべて実施しイランの核兵器入手を阻止する」
今月始め、イランから3.67%濃縮ウラニウムの300キログラム貯蔵制限を超え、4.5%純度までの濃縮作業を開始したとの発表があった。
核問題専門家はイランの濃縮作業継続で一年間を想定した期間が短縮され90%まで濃縮のウラニウムが生成され核兵器の実現につながると懸念する向きがある。
イランの動きは「非遵守の顕著なしるし」とは受け止められないとEU外交政策のまとめ役フェデリカ・モゲリーニは記者会見で述べた。EU各国外相が核合意維持のため協議で集まった際のことだ。
イラン外相モハマッド・ジャヴァド・ザリフは米国公式訪問中に米国による一方的政策は世界が拒否しているとし、米国に「国際社会への復帰」を求めた。
ザリフ外相は先週月曜日、イランは米国との戦争は望んでいないと述べ、トランプ大統領がイランへの厳しい制裁を解除すれば交渉に道が開けるとした。
これに対しイスラエルではイランの発言を深く憂慮して受け止めている。
エイモス・ジラッド退役少将はBreaking Defenseに「米国による制裁が理由で核爆弾作成が遅れているのであり、イランはこのまま続けて核爆弾を入手するだろう」と述べた。
ジラッドは国防省で政策・政治軍事問題部長を務めIDFで30年の経歴を有する軍事情報研究部門の長でもあった。
イスラエルはイラン核武装化は受入れられないと繰返し表明している。
イスラエル空軍が長距離ミッションの訓練を開始したとの外交筋情報がある。またIDFは高性能レーダーをガザの国境地帯に配備し、無人機攻撃に対応している。このレーダーはELTAのELM-2084多ミッションレーダー(MMR)だ。これはセンサーの各種情報を主要MMRに融合させ、アクティブ、パッシブをあわせた空中状況全体図(ASP)を作成する。イスラエル専門家から米軍とイラン軍の直接対決の場合、イランは武装無人機を数波にわたり投入するだろうとBreaking Defense に語った。
イスラエル専門家はイランの無人機は各国の安価なコピー版に見えるとしつつ作戦能力は向上しているとした。.
シャウル・シャイ大佐(退役)は南方司令部で対テロ部門や情報部門を歴任し、民間人として国家安全保障協議会(NSC)の次長も務めた。現在は国際対テロ研究所(ICT)の主任研究員としてイランは無人機の国産化に成功し偵察用ならびに武装無人機を保有していると解説。「ペルシア湾で戦火があがれば、イランが武装UASで米軍目標を攻撃するのは疑う余地がない」と話す。また「自殺攻撃用」無人機にクラスター弾頭をつけ多大な損傷を与えるという。
ただしイスラエルは無人機対策を開発している。なかでも高性能なのがラファエルの「ドローンドーム」で高性能レーダーでUASを探知しレーザーで撃破する装備だ。
イランは7月19日に強襲揚陸艦USSボクサーが撃墜したのは同国の無人機ではないと証明する画像を公開するとし、トランプ大統領の主張を否定した。同艦は同地域派遣部隊の一環とし第11海兵遠征部隊の2千名を収容している。
イランを取り巻く情勢には不確実な物が多いが、同国はアラブ首長国船籍のタンカー、リアを拿捕したと認めている。革命防衛隊は7月18日に同船は密輸に関与の疑いがあると述べた。英海兵隊がイランの超大型タンカーを7月4日にジブラルタル近郊で拿捕している。英政府はジブラルタル警察の命令にもとづき実行したと発表した。■

Paul McLeary contributed from Washington

コメント 中東、湾岸地区となると急にご関心の程度が低くなる方が日本には多いようですが、ホルムズ海峡は日本の「利益線」です。国境線でしかものを見られない向きには理解できないのかもしれません。今回の選挙戦中に最悪の事態が発生しなかったことが良かったのか悪かったかわかりませんが、選挙後の政局でこの地域の問題がのしかかるのは必至でしょう。イランとの友好もいいのですが、核武装したイランは絶対受け入れられません。ましてやイスラエル撲滅を公言するイランがイスラエルの生存に立ちふさがっている事態を正視すべきです。湾岸での有事は米イランの対決よりもイスラエルの先制攻撃で始まる可能性もありますね。ヨーロッパは結局何もできないまま指を加えているしかできないでしょう。

コメント

  1. ぼたんのちから2019年7月22日 13:12

    イランの英国船籍の原油タンカーの拿捕は、国家的海賊行為だ。この行為が拡大すれば、日本も介入しなければならなくなるかもしれない。ホルムズ海峡の安全は、日本にとってエネルギーの維持に不可欠な条件であることは明らかだ。しかし、日本やNATOが介入しても、イランの海賊行為を止めさせ、戦争を抑止できるとは限らない。
    イランが最終的に何を目指しているのか、全容は明らかでないが、核武装も含むならば戦争に至る可能性が高まることになるだろう。
    イランが核武装する前に、イスラエルがイランの核兵器製造設備の攻撃を行うのは間違いないだろう。過去、イスラエルはイラクやシリアの核設備を破壊した。イスラエルは、敵対するイスラム国家が核武装するのを特に恐れているが、それは核武装したイスラム国家が最初に狙うのはイスラエルであるからだ。しかし、イスラエルのイラン攻撃はリスクが高い。
    あるいは、米軍によるイランに対する限定的攻撃もあるかもしれない。また、イランが核武装すれば、サウジやトルコが核兵器を持とうとするだろう。
    イスラエルは既に核兵器を所有しており、イランの核兵器製造設備を破壊するために、核先制攻撃を躊躇しないかもしれない。イランもそのことを理解しているであろうし、核兵器開発後、その運搬手段を既に保有しているから、核ミサイルをイスラエルに向けて発射するかもしれない。よって中東の緊張度は、これから増々高まるだろう。
    イランは、北朝鮮の手法を使って核兵器を開発しようとしているように見える。西側等との合意、及び査察の間に核兵器開発の準備を秘密裡に整え、合意を破棄して一挙に核兵器を製造するということだ。すでに核兵器の原料を北朝鮮から中国経由で運び込んだ可能性もある。イランが半年後に核実験とともに核武装の宣言を行ったとしても個人的には驚かない。
    もう一つ見逃してならないのは、北朝鮮や次のイランによる国際的緊張を促す黒幕の存在である。それは中国であり、中国は、30年以上前から通常兵器のみならず、核兵器、及びその運搬手段、並びに生物化学兵器の材料や技術の流通を取り仕切り、北朝鮮やイスラム諸国との関係を深めてきた。対テロ戦争や北朝鮮やイランとの戦争危機の一連の流れは、この行為の果実であり、対応に追われる欧米等、西側国家の力を低減させ、中国のプレゼンスを高める結果になるのは偶然でない。
    中国は、現在、米国との経済戦争により経済成長が停滞し、西太平洋の覇権獲得に黄色信号が点滅し始め、その打開に迫られている。中東での緊張の長期化が、米国の中露主敵の国家戦略への変換を歪め、遅延させることは、米国の軍事力低下とともに「一帯一路」政策を推進しやすい環境を作り、これは中国の利益である。さらに中国は、北朝鮮に核実験やICBMの発射実験を働きかけるかもしれない。

    返信削除
  2. 馬鹿げた理想主義を掲げたクズ共が我が国にも多すぎますね。

    かつての大戦中期から高度経済成長までの惨状、そしてオイルショックの悪夢は腐り果てた50〜60代以上は直撃している筈です。

    ましてや、ハイファ港で空爆を受けたり、イランイラク戦争時のタンカー戦争で日本のタンカーもミサイル攻撃を受けている。

    救いようがないのは自衛隊関係者にもこのような人間がいる。

    はっきり言って、真面目な話で近代史を必須科目にするべきです。

    返信削除

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