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ロシア太平洋艦隊の再来:北方海域が新しい重心となり、日本は安全保障を再構築する必要に迫られている(東京大学先端科学技術研究センターの准教授小泉悠による寄稿―WAR ON THE ROCKS)

 


本がロシアの隣国だという事実が特に欧米で見過ごされがちである。実際、日本とロシアの間には79年間も陸続きの国境が存在しない。しかし、日本は常に日本海とオホーツク海を挟んでロシアと向き合っており、35年前まではアジアにおける冷戦の最前線に位置していた。そして今、ロシアと欧米の間の地政学的な対立が再燃する中、日本は再び最前線に立たされている。

 冷戦時と同様に、焦点は「海」にある。ロシア極東の地上軍の多くはウクライナの戦場に再配置されたと見られ、多くの駐屯地は無人となっている。一方、太平洋艦隊の潜水艦部隊は着実に増強されており、特に弾道ミサイル原潜の近代化に重点が置かれている。

 筆者は、日本政府と緊密に連携しつつロシアを20年にわたり研究してきたが、西側諸国は、ロシア極東における軍事的な現実に対する日本の見解を深く理解することで利益を得ると確信している。問題は、単に潜水艦の数が増加していることだけではない。衛星画像は、ロシアの核弾道ミサイル潜水艦艦隊が近年、著しく活発になっていることを示している。日本北部におけるロシアの潜水艦活動の活発化は、中国という脅威に直面する中で、日米同盟の抑止力を圧迫するリスクがある。 

 これには、欧米諸国が一致団結した対応が求められる。 

 米国と日本は、インド太平洋地域のパートナー諸国と中国の軍事力を均衡させることを目指してきた。 

 ロシアの活動が再び活発化している今こそ、この戦略を北方にも拡大すべきだ。日本とカナダの協力関係強化が、その第一歩となるだろう。

  

冷戦時の衝突

対馬は歴史に彩られた土地である。約1世紀前、史上最大の海戦のひとつが対馬海峡で繰り広げられ、日本海軍がロシアのバルチック艦隊を撃破した。

 しかし、冷戦時代に対馬海峡が果たした役割はあまり知られていない。対馬は、太平洋とインド洋へ向かうソ連艦隊にとって狭水道であった。日露戦争の折にロシア海軍のジノヴィイ・ロジェストヴェンスキー提督が対馬を通過しなければならなかったように、ソ連の潜水艦艦長たちも同様であった。

 原子力弾道ミサイル潜水艦も例外ではなかった。アメリカとソ連の潜水艦乗組員たちが証言しているように、ソ連の北方艦隊の潜水艦は水中聴音機システムを回避するためさまざまな努力をしていた。日本近海でも同様のことが起こっていた。ソ連潜水艦は通常、対馬海峡の海上自衛隊の警戒所手前でエンジンを切り、潮流に乗り東シナ海に無音航行で出ていた。ソ連のコルベット艦は対馬海峡に常に停泊して、原子力潜水艦が通過する際にエンジンを始動させ日本の水中聴音機を妨害した。

 一方、カムチャッカ半島からは、狭隘な海峡を避け太平洋に出ることが可能であった。そのため、太平洋艦隊の潜水艦部隊は徐々にこの半島を主な基地とするようになり、ほぼ毎月、アメリカ西海岸沖2,000~2,500キロの哨戒海域「ヤンキー・ボックス」に向けて、ヤンキー級潜水艦(プロジェクト667A)が出航するようになった。平均して、ヤンキー級各艦のパトロールは1.5ヶ月間続いた。

 1970年代半ばには、太平洋艦隊にデルタI級(プロジェクト667B)およびデルタIII級(プロジェクト667BDR)潜水艦が登場した。長距離弾道ミサイルR-29およびR-29Rを装備したデルタは、太平洋をこっそりと横断して米国本土の海域まで進む必要がなくなった。その代わり、友好国からの支援を受けやすいソ連近海に退避する戦略が取られたデルタ型にはもう一つの利点があった。ヤンキー型が沿岸に向かう際には15ノットという高速で航行する必要があったのに対し、デルタ型は4~8ノットという低速で航行することが可能であった。これは、その生存性を高めることに大きく貢献した。

 西側の分析家は、この結果として生まれたソ連の戦略を「要塞化」と呼んだ。最も有名な要塞は、北方艦隊の原子力弾道ミサイル潜水艦の拠点であるバレンツ海である。一方、太平洋艦隊の要塞はオホーツク海であった。1974年に最初のデルタI級が配備された直後、ソ連はオホーツク海周辺の強化に着手した。その第一歩として、地上軍が配備された。第18機甲砲兵師団(18 PulAD)が編成され、20年ぶりに南クリル諸島に派遣された。これらの諸島とサハリン島には、地対艦ミサイルと防空システムが配備された。さらに、シムシル島の巨大なカルデラが潜水艦基地に変えられた。


現代の課題

北大西洋に大きな注目が集まる中、このような話は、欧米では比較的知られていない。しかし、それは現在でも依然として重要な問題である。

 ソビエト連邦崩壊後、太平洋艦隊の原子力弾道ミサイル潜水艦部隊は困難な状況に直面した。国防予算の大幅な削減とハイパーインフレにより、ロシア軍は維持できなくなり、将校や兵士たちは毎日の食事に十分な食料さえ手に入らない状況となった。原子力潜水艦の原子炉は、核抑止のためのパトロールには使用されず、家庭への電力供給に利用されるようになった。1980年代後半から1990年代にかけて、ロシア海軍の潜水艦パトロールの数は減り続け、2000年代初頭にはほぼゼロとなった。

動かない潜水艦の維持に多額の資金が浪費されているという事実は、ロシア軍にとって喜ばしいものではなかった。1990年代、国防委員会書記のアンドレイ・ココシンは、カムチャツカ半島の潜水艦基地を閉鎖し、北方艦隊の原子力弾道ミサイル潜水艦を集中配備する計画を立てていた。2000年にウラジーミル・プーチン大統領が就任すると、参謀総長のアナトーリー・クヴァシニン大将がカムチャツカの潜水艦基地の閉鎖を提案したと言われている。

 しかし、プーチン大統領はこれを却下した。2012年の国防政策に関する論文で、プーチン大統領はそう主張している。論文が発表された当時、セヴマシュ造船所ではカムチャツカ半島に配備する新型弾道ミサイル潜水艦の建造が進められていた。

 ボレイ級(プロジェクト955)潜水艦2隻が2015年から2016年の間に配備されていなかった場合、カムチャツカ半島の基地は結局放棄されていた可能性がある。プーチン大統領が何を言おうとも、太平洋艦隊の原子力弾道ミサイル潜水艦部隊は、人員も艦船も老朽化していた。2010年代初頭には、老朽化したデルタIII型潜水艦は3隻しか残っておらず、その活動は非常に低迷していた。北方艦隊のデルタIV型潜水艦はすべて近代化されていたものの、太平洋艦隊のデルタIII型潜水艦には同じ機会が与えられていなかった。これは、建造されたセヴマシュ造船所がカムチャツカから非常に離れており、メンテナンスが困難であったためかもしれない。結局、専門家たちは、ロシア太平洋艦隊から原子力弾道ミサイル潜水艦が姿を消す日はそう遠くないと考え、そうなれば、太平洋艦隊は沿岸艦隊となり、小型水上艦と通常動力潜水艦で編成されることになるだろうと予測した。太平洋艦隊は、セルゲイ・ゴルシコフ提督が外洋艦隊の夢を追い求める前のスターリン時代の太平洋艦隊に戻ってしまうだろうと。

 しかし、ボレイ級の導入により、太平洋艦隊は戦略的な役割を継続することができた。さらに、改良型のボレイA(プロジェクト955A)潜水艦3隻が2022年以降に艦隊に到着し始め、旧式のデルタIII潜水艦はすべて退役した。太平洋艦隊の原子力弾道ミサイル潜水艦部隊は、規模と質の両面で大幅に拡大し、ほぼ北方艦隊のそれに匹敵するようになった。


ロシア潜水艦のパトロールの強化

問題は潜水艦の隻数の増加だけではない。活動レベルも高まっており、日米同盟の抑止力を脅かす可能性がある。まず、日本近海におけるロシア潜水艦の活動について説明したい。

 筆者は日本で初のマクスター・テクノロジーズのユーザーになった。「個人として衛星画像を購入したいのですが」と言ったときの営業マンの顔を今でも覚えている。とにかく、地上分解能30センチの光学衛星画像を利用できるようになった。また、日本企業が開発した合成開口レーダー衛星も利用できるようになった。

 それらを使って、ロシア海軍の原子力弾道ミサイル潜水艦の哨戒パターンを特定しようとした。カムチャッカ基地にどんな潜水艦が停泊しているのかも観察し続けた。

 2021年6月から観測を継続している。それによると、ロシア太平洋艦隊の原子力弾道ミサイル潜水艦の哨戒は、この3年間で頻度が増し、期間も長くなっていることが分かる。観測を始めた2021年から2022年頃までは、ロシアの原子力弾道ミサイル潜水艦は、1~3週間の比較的短い航海を数回行うほかは、1年に1~2回、1か月を超える航海(おそらくは核抑止パトロール)を実施しただけだった。さらに、2023年には、1か月を超える配備は一度も確認されていない。2022年から2023年にかけてカムチャッカに派遣された2隻のボレイ-A型原子力潜水艦は、配備後しばらくの間は「新人」として扱われているように見える。

 しかし、2024年1月から9月にかけては、すでに3回以上の1か月以上のパトロールが確認されており、うち2回は2か月以上続いた。さらに興味深いことに、これらの長期パトロールはすべてボレイ-A型によって実施されている。新人たちがようやく頭角を現し始めた。2024年には、アレクサンドル3世皇帝も3隻目のボレイ-Aとして配備された。さらに1隻か2隻が配備されるとみられる。

 また、ポセイドン原子力無人潜水機を搭載した特殊任務用原子力潜水艦ベルゴロド(プロジェクト09852)がカムチャツカに配備されたとみられる。国防省の深海調査本部指揮下で、海底ケーブルなどの重要な海底インフラの敷設場所の調査や、場合によっては損傷を与える任務を負う可能性が高い。深海調査本部の活動による脅威は2010年代から欧州で指摘されていたが、太平洋側には大規模な基地がないため、日本側の危機感は薄かった。しかし、おそらく短期的に、近い将来に状況は変化するだろう。


戦略的な影響

これは日本の安全保障コミュニティにとって憂慮すべき展開である。1980年代、陸上自衛隊は「北方前方防御」と呼ばれる戦略を採用した。オホーツク海はソ連の弾道ミサイル艦隊の哨戒海域であり、その海に大きく突き出た北海道は、攻撃の格好の標的であったに違いない。北方前進防衛戦略は、日本唯一の機甲師団を含む強力な陸上戦力を配備し、地対艦ミサイルを配備するというものであった。同時に、自衛隊は対潜戦能力を強化した。日本近海で活動するソ連潜水艦の数と能力が劇的に増加したため、対潜ヘリコプターを搭載した駆逐艦を中心とする対潜部隊が編成され、哨戒機P-3Cを100機配備することも決定された。これらは、筆者の故郷の空を飛び回っていた、目立つ「尾翼」の付いたうるさい航空機である。

 平和の配当を約15年間享受した後、中国の海軍力と空軍力が急速に強化され始めたため、日本の安全保障関係者は日本の南西地域に目を向けた。陸上自衛隊は「南西シフト」政策を採用し、北海道は最前線というよりも戦略的予備基地として見られるようになった。

 これがロシアの潜水艦活動が活発化している背景であり、それが懸念される理由である。ボレイA型潜水艦の配備数がさらに増え、1隻あたり平均2カ月間の哨戒活動を行うと仮定すると、常時1隻の原子力弾道ミサイル潜水艦がオホーツク海に配備されることになる。しかし、自衛隊と米太平洋艦隊の限られた資源は、すでに厳しいローテーションで運用されている。台湾海峡の情勢が悪化したら?中東で大規模な戦争が勃発したらどうなるのか? ロシアの潜水艦に鐘を装備する担当者が一時的に不在になる可能性もある。

 さらに、ロシアが中国をその地域に受け入れたという事実が状況を複雑にしている。15年前であれば、ロシアは中国艦隊にオホーツク海や北極海での活動など決して許可しなかっただろう。実際、2011年に中国艦隊が許可なくオホーツク海を通過した際には、ロシアはミサイル発射演習を実施して不満を表明した。しかし、この10年間で状況は大きく変化した。欧米から孤立したロシアは、軍事面を含め中国との関係を深めてきた。中国人民解放軍はロシアの戦略レベルの演習に参加し、両国の爆撃機や艦隊が合同パトロールを開始した。さらに、2023年には中国とロシアの艦隊がオホーツク海で初めて合同演習を実施した。ロシアはついに、オホーツク海における中国海軍の存在を公式に認めた。2024年には、中国とロシアの爆撃機が北極圏のチュクチ海でパトロールを実施し、両国の艦隊が再びオホーツク海で演習を行った。


結語

日本の北方海域でロシアの潜水艦の活動が活発化しており、平時における重要な水中インフラへの脅威がある。さらに、中国とロシアは日本の北方海域における軍事協力の強化を進めている。日米同盟の資源は限られており、中国、北朝鮮、ロシアからのすべての脅威に対応することは不可能かもしれない。

 岸田政権下で決定された日本の防衛費を国内総生産(GDP)比2%に増額する方針は、資源の制約をいくらか緩和するだろう。岸田の後任である石破茂は、同様の路線を継続すると見られている。ジェット推進のP-1は、筆者の故郷である松戸上空を飛行するP-3Cに代わるもので、さらに騒音がひどい。

 しかし、それだけでは十分ではない。ユーラシアで複数の軍事大国を同時に抑止することは、非常に困難な課題である。日米同盟だけでできることには限界がある。その意味で、日米韓の3カ国による安全保障協力や、豪英米の枠組みは正しいアプローチである。

 今後は、すでに構築されている安全保障協力のネットワークを拡大、強化し、相互に連携させていくことが課題だ。日韓が豪英米の枠組みに加わる構想は以前から議論されている。カナダを加えてはどうか。カナダは北太平洋と北大西洋の両方に面している。日本もカナダのヴィクトリア級潜水艦の更新事業への参加の意向を示しているが、これは商業的な理由だけではない。もう一つの目的は、北太平洋における勢力均衡を維持することである。また、日本と韓国が、韓国海軍と空軍の監視・警戒能力を活用し、対馬海峡や東シナ海での活動を分担することも考えられる。

 ロシアと欧米諸国との間で繰り広げられる海軍ゲームは、年々厳しさを増している。しかし、このゲームに参加するプレイヤーの数に制限はない。これは欧米諸国の同盟国に有利に働く可能性がある。■


Russian Pacific Fleet Redux: Japan’s North as a New Center of Gravity

Yu Koizumi

October 22, 2024

Commentary


 

は東京大学先端科学技術研究センターの准教授小泉悠。

Yu Koizumi is an associate professor at the Research Center for Advanced Science and Technology at the University of Tokyo. After receiving his master’s degree from Waseda University, Yu worked as an analyst for the Ministry of Foreign Affairs and as a think tank researcher, conducting research on Russian military affairs. Since 2020, he has also been vice chairman of ROLES, a diplomatic and security think tank established at the University of Tokyo with funding from the Japanese Ministry of Foreign Affairs. He is known to be a lover of cats and beer.

Image: RIA Novosti archive, image #326075 / Vitaliy Ankov / CC-BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons


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