スキップしてメイン コンテンツに移動

沈没した中国潜水艦はハイブリッド原子力潜水艦だったのか(The War Zone)―小型艦に最適な小型原子力動力は深度が浅い中国沿海部での運用に最適となりそうだ

 


The Washington Times first disclosed on July 16, 2004, that China had developed a new Yuan-class conventionally powered submarine in secret.  

PHOTO © 2024 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION



中国の041型周級潜水艦の実験的推進システムについて、詳細が明らかになりつつある


年初めに造船所で沈没した謎の中国潜水艦は、原子力と通常技術のハイブリッド推進システムを搭載した新クラスの1番艦だった。 

 041型周級潜水艦にまつわる最新の進展は、同潜水艦に関するこれまでの不確実性を明らかにするとともに、中国が急成長する水中艦隊のために画期的な解決策に取り組んでいることを示唆しているようだ。 

 ワシントン・タイムズ紙は、無名の国防当局者を引用した最近の報道で、041型は「通常型と原子力推進の両方を採用」しており、具体的には、通常型の動力源に加えて「小型原子炉」を搭載していると指摘している。 

 041型が武昌造船所で最初に確認されたとき、それは039A型シリーズの1隻であると評価されていた。 


039A型は、中国初の空気非依存推進(AIP)システムを搭載した潜水艦で、従来の通常動力の潜水艦に比べ、潜水状態を維持できる時間が大幅に長くなり、探知されにくくなった。 via U.S. Navy 


 米当局者は問題の潜水艦が沈没していたと発表し、新型潜水艦の1番艦である041型周クラスであると特定した。 この潜水艦は原子力攻撃型潜水艦(SSN)で、武漢市郊外の比較的浅い長江にある武昌造船所で建造されていることはこれまで知られていなかった。同造船所は、国営の中国国家造船公司(CSSC)の一部だ。

 米国からの最新情報によると、041型は2種類のパワープラントを搭載しているという。未確認ではあるが、これはいくつかの理由から非常に理にかなったことであり、中国当局者のこれまでの発言とも一致する。  中国軍事アナリストのリック・フィッシャーがワシントン・タイムズに語ったところによると、2017年に退役した人民解放軍海軍(PLAN)の趙登平少将は、通常型潜水艦の補助機関として機能するのに十分な小型の低出力・低圧原子炉を開発する計画を発表した。 

 フィッシャー氏によると、この原子力発電装置は、1980年代後半にプロジェクト651ジュリエット級通常型巡航ミサイル潜水艦1隻で試験されたソ連のコンセプトに似ているようだという。元提督は、この新しい原子炉は7000トンの攻撃型潜水艦に搭載されるもので、先進的な兵器や電子機器も搭載される予定だと述べた。 

 また、039A型に採用されたAIPシステムに取って代わるものだとも述べた。 

 ハイブリッド推進システムのコンセプトは、バッテリーを充電するために原子炉を断続的に使用したり、より高い性能や長い航続距離が必要な場合に使用したりするもので、控えめに言っても興味深いものである。 

 ハイブリッド推進の可能性が提起される以前から、中国の潜水艦開発が、原子力と通常動力の両方を搭載する二本立ての道をたどっていることは注目に値する。 

 原子力潜水艦には、航続距離が実質的に無制限という大きな利点がある。また、従来型の動力式潜水艦と比較すると、より高速で、潜水状態を維持できる時間は艦内糧食とメンテナンスの需要に制限される。 

 最も先進的なAIP潜水艦、すなわち燃料電池技術を使用した潜水艦でさえ、燃料補給を含め、時折浮上する必要がある。潜水作業中にどれだけのエネルギーが必要になるかによるが、数週間単位かそれ以下である。 

 一方、従来型の潜水艦は、原子力潜水艦に比べて小型で、製造コストもはるかに安い。 最新のAIP型潜水艦は、原子力攻撃型潜水艦と類似した能力も備えている。特に、リチウムイオンバッテリーを使用することで、極めて高い潜航耐久性と非常に静かな運用が可能になり、関心が高まっている。 


 特に中国にとっては、沿岸や浅い海域で容易に運用できる小型の潜水艦が大きな関心事だろう。例えば南シナ海や台湾海峡などでの将来の有事にとって重要な意味を持つ。小型潜水艦に補助的な原子力推進力を持たせれば、ほぼ無制限に海上にとどまることができ、より長時間の潜航も可能になる。 

 また、041型が超小型原子炉とリチウムイオン電池を組み合わせている可能性もある。 

 通常、リチウムイオンバッテリーを搭載した潜水艦は、充電のためにシュノーケルを使う必要があり、燃料電池は航続距離が制限される。  原子力発電を搭載すれば、これらの問題を解決できるだろう。 

 一方、これらの能力をより小型の船体に搭載することで、コストを削減し、PLANの急成長する潜水艦戦力により貢献できるはずだ。 サイズ的には、041型は以前の攻撃型潜水艦(039A型など)より10%ほど長いと言われている。 

 039A型の全長は約250フィートで、093型原子力攻撃型潜水艦の全長は約360フィートである。 

 このため、041型はSSNよりも著しく小型化され、移動が容易になると同時に、これまで原子力潜水艦の建造に使用されていなかった武昌造船所での建造に適することになる。

  現段階では、041型がシリーズ生産を意図しているのか、それとも斬新なシステムを試すためのテストベッドなのかは明らかではない。 

 X字型の船尾が特徴であることもわかっている。 過去に議論したように、この特徴は、操縦性、効率性、安全性を向上させるために設計されており、潜水艦の動作範囲の重要な部分にわたって音響シグネチャを低減するのにも役立つ。また、沿岸や浅い海域での作戦に最適化されているようだ。 

 041型の計画がどのようなものであれ、米国防当局者によれば、最初の1隻が沈没したという事実もある。 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の9月26日付の報道は、無名の米政府高官を引き合いに出し、中国当局が事故を隠蔽しようとしていることを伝えている。 

 この潜水艦は、出航前の最終仕上げ中だったという。この事故で死傷者が出た可能性についての詳細は明らかにされていない。その可能性を最初に指摘したのは、シンクタンク「新アメリカ安全保障センター」(CNAS)の非常勤上級研究員で、元米海軍潜水艦戦将校のトム・シュガートで、同氏は今年6月に武昌造船所で異常な活動を確認した。 

 TWZはまた、同造船所に4隻のクレーン船が突如出現したことや、それまでバースにいた潜水艦が姿を消したことを示す衛星画像も調査した。 


2024年6月15日に撮影された衛星画像。4隻のクレーン船の群れと、武昌造船所でのその他の異常な動きが写っている。 PHOTOS © 2024 PLANET LAB INC.


 4台のクレーンの助けを借りて、潜水艦は引き揚げられたと言われているが、再び稼働させるのは一筋縄ではいかないだろう。内部空間が水で満たされている可能性が高く、電子機器やその他のシステムをすべて交換する必要がある。 

 中国当局はこの事故についてコメントしておらず、特に問題の潜水艦が新しい設計で、いくつかの先進的な、そしておそらくユニークな機能を組み込んだものであることから、コメントする可能性は低い。 

 しかし、041型に関する詳細が明らかになるにつれ、中国の潜水艦開発計画の非常に興味深い性質が浮き彫りになってきた。 

 一方では、新型潜水艦の明らかな沈没事故は、中国海軍の造船における安全性と品質管理の慣行について過去に提起された疑問を浮き彫りにしている。 

 PLANの艦隊規模が、水上・水中ともに、大型艦や複雑な艦船に関しても、非常に急速に拡大していることは間違いない。これを念頭に置くと、041型はまた、南シナ海や台湾、その他沿岸や浅瀬の潜在的な火種となりうる海域での活動を含め、自国の要件に最適化された潜水艦の実戦配備を目指し、先進技術を探求する中国の意欲を指し示しているようにも見える。■



Chinese Submarine That Sunk Had Exotic Hybrid Nuclear Powerplant: Report

New details are coming to light about China’s Type 041 Zhou class submarine and its experimental propulsion system.

Thomas Newdick

Posted on Oct 2, 2024 1:38 PM EDT

https://www.twz.com/sea/chinese-submarine-that-sunk-had-exotic-hybrid-nuclear-powerplant-report



コメント

  1. ぼたんのちから2024年10月4日 19:58

    041型は、通常型の039A型より10mも長くなく、原子炉を設置するとはかなり無理していないか?
    それに静音性能を考えれば、原子力なら逆効果かもしれない。それに近海用ならば、7000tの船体は大き過ぎ、また、原子力は特に必要ないとも思える。等々、記事の推測は、疑問が多くわいてくる。そもそも2系統の動力は、無駄だろう。
    そこでなぜこのような潜水艦を作ろうとしたか考えてみると、原子力は電池でないかと思う、これならば、AIP代わりに使える。中国は、2023年に電池を発表しており、軍事用に大型化した電池を作ったのかもしれない。潜航中に充電も可能かもしれない。
    話は変わって、041型は何故沈没したか考えてみよう。最も可能性があるのは、操作不良。次に機械的不具合、及び製作不良であろう。そして少なくない可能性があるのが、乗員の故意である。PLANの潜水艦乗員のかなりの割合で、精神的な問題が発生している。
    新型艦で出航を控え、かなりのプレッシャーをかけられ、心が折れた乗員が出たかもしれない。
    いずれにしても、041型1号艦は、1年以上出航が遅れることになるだろう。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...