2011年8月13日土曜日

不確実性に悩む英国のF-35導入計画

Vagaries Continue To Cloud U.K. F-35 Agenda

aviationweek.com Aug 12, 2011

大幅に開発日程が遅れた上にコスト超過も重なり、英国防省の定めた調達決定方針も財政の現実と計画の不確実さの前に頓挫しかけている。
  1. しかし、F-35B短距離離陸垂直着陸(Stovl)型に替えて空母運用型を調達する案が出たが、英政府はどうも運用コストをきちんと把握していないようだ。調達にこだわるあまり、計画の資金繰りの裏付けを軽視することで、財政再建の原則にも自ら反することになりそうだ。
  2. 英国防省は不確実な事項の数点については道筋を付ける努力をしているものの、今後の計画の作成が完全な形になるのは数年先の事になりそうだ。
  3. 空 母艦載型(CV)への変更により、国防省は万が一空母への回収が中断された事態を想定して空中給油能力の確保が必要となっている。英国からロッキード・ マーティンに対してF-35C同士の宮中給油モードの実現可能性の検討依頼が出されている。JSF開発の原則では関係国は独自の能力を開発する際には自国 資金を準備することになっている。米国はF/A-18E/Fスーパーホーネットに空母艦載給油機の役割を実現させているので、英国は自国仕様の技術検討は 自国で資金を供出する義務がある。
  4. 米 国の国防関係者によるとこの改修にともなう技術検討と費用見積りは「今年後半」に揃うという。だが英国が製作決定に要する時間はもっと長くなるかもしれな い。英国防装備調達・支援・技術担当大臣ピーター・ラフPeter Luffは国会で「将来の艦載機用の空中給油任務で最も費用対効果が高い実現手段」をいかにして実現するかの評価検討結果は2012年3月ごろに結果が出 ると発言している。
  5. も う一つ不明確なのがF-35Cを選択した場合の空母運用だ。F-35Cに切り替えるのはもともと運用性能を向上させるのが目的なのだが、実際には欠点もあ る。そのひとつがアムジャド・フセインAmjad Hussein海軍少将(空母攻撃任務担当)により議会証言で明らかになった。固定翼機の運用と強襲隊の水陸両用作戦の実施を両立することにリスクがある というのである。
  6. 同中将によると「航空機発艦とヘリコプター発進の間に相当の時間間隔が必要となる可能性がある」とのことで、「その結果、装備の機能発揮が限定されるかもしれない」
  7. その限定の度合いは不明だが、フセイン少将は強襲隊発進を犠牲にするわけにいかないという。
  8. 別 の進行中の話はJSFテスト用に購入の3機のF-35のうち一機をB型からC型に変更することだ。ただこれには米国議会の承認が必要だ。F-35Cの一機 は第六低率初期生産LRIPロット出購入予定の機体でこれを英国がLRIP4で資金を供出したF-35Bと交換することになるためだ。
  9. こ れについてペンタゴンは「今回提案されている案は両国にとって利益が生まれる内容だ。米国にはStovl型が予定より24ヶ月早く入手でき、技術成熟度運 用テストが実施できるし、英国にとってはCV運用テストの費用そのものを支出しなくてもいいので、LRIP6日程で完成形のCV機体による運用テストが充 実する」と論評している。
  10. こ の案が実施されても米国の納税者には財政上の負担は生じない。「英国がLRIP4Stovl機の改修費用を負担してLRIP6仕様にアップグレードする。 さらに英国はCV型機の飛行テスト用計器の装備費用も負担し、英国のみの仕様要求にともなう費用も支出する」とペンタゴンは言う。英国防省関係者は変更で 発生する費用はすでに予算計上してあると強調する。
  11. 英政府は先月に国防近代化予算の追加を計上している。30億ポンド(49億ドル)を2015年以降に支出し、その代償に配備部隊の削減を伴うが、F-35初期取得を実現する。これにより国防支出は実質1%増加する。
  12. 準 備する予算全額がF-35用ではないものの、リアム・フォックスLiam Fox国防相によると同機購入の頭金となるほか、予定で14機の追加CH-47チヌーク、3機のRC-135リベットジョイント情報収集機他の装備を調達 するという。この期間内で何機のF-35を調達sルウのかは発表されていない。また、この予算は空母クイーン・エリザベスの艤装にも使われる。国防省は 10年間にわたる調達計画を9月に発表すると公約している。
コメント 英国もかなり苦労しているようですね。F-35によりひょっとすると西側の空軍戦力整備は10年から20年遅れてしまうことになるのかもしれません。これでほくそ笑むのは誰でしょうか。

極超音速飛行へ挑戦


Telemetry Lost During Hypersonic Test Flight

aviationweek.com Aug 12, 2011

米空軍と国防高等研究プロジェクト庁DARPAは極超音速試験機(HTV-2)二号機にして最終機の実験失敗原因を調査する技術検討部会を設置する。同機は8月11日ヴァンデンバーグ空軍基地(カリフォルニア州)から打ち上げられて間もなく消息をたった。
  1. 同機との連絡が喪失されたのは飛行開始後約9分経過時点。信号消失時の対策手順に従ってHTV-2は破壊された。同機はマッハ20の滑空飛行を30分継続しクェジェリン環礁付近の目標地点に進む予定だった。
  2. 試 験飛行失敗直後にDARPAからは「打ち上げロケットは同機を予定軌道に乗せる事に成功。機体分離がロケット搭載カメラ出確認され、同機はマッハ20飛行 段階に移行した。この移行段階が重要であると理解されており、大気圏内極超音速飛行の制御で肝要でもある。その後9分間以上にわたりデータを受信したあと 異常が発生し信号が途絶した。同機は太平洋に激突したと判明したが、これは事前計画通りの飛行経路によるもの」との声明発表があった。
  3. HTV- 2計画責任者クリス・シュルツ米空軍少将からは「機体を近宇宙に打ち上げる方法はわかっていますし、大気圏内で極超音速飛行を実施する方法もわかっていま す。まだわからないのは大気圏内飛行中の機体制御方法であり、これが困りものなのです。ただ必ず解決方法があるはずですし、なんとしても見つけます」と発 言。
  4. HTV- 2は揚抗比を高くした空力特性設計と耐高温素材で極超音速飛行の継続が可能かを実証する意味で製作されている。また全世界度の地点に60分で到達する航空 機技術を立証する目的もある。今回の試験飛行は昨年4月に引き続き実施されたが、前回試験でも飛行のほぼ同じ段階で制御異常が発生しており、やはり機体を 喪失している。ただし二号機の失敗が全く別の原因によるものかは不明。
  5. 検 討部会のデータにより「政策、運用上の決定を将来の通常兵器高速全世界攻撃機Conventional Prompt Global Strike計画でする際の参考にする。同計画の目標は全世界度の地点にも1時間以内に到達すること」とDARPAは声明文で述べている。

2011年8月8日月曜日

リビア作戦でAWACSはこう運用されている

Air Superiority For NATO Over Libya

aviationweek.com Aug 2, 2011

NATO、 米国、英国、フランスから派遣のAWACS空中早期警戒管制機がリビアや地中海上空の攻撃ミッション、空中給油業務を週7日24時間体制で調整している。 合計8機が交代で管制指揮を行っている。NATO所属E-3Aセントリー3機、英空軍E-3D2機がシシリー島トラパニに先方配備されており、米空軍は2 機のE-3B/Cをクレタ島スーダベイ基地から運用しており、フランスもE-3D一機をフランス中部アボール空軍基地から投入している。
  1. DTI 記者は5月末にNATO所属E-3Aに同乗取材する機会が与えられた。夜間飛行は7時間で、シドラ湾上空で12マイルの周回飛行を行った。搭乗員合計18 名は各国所属で半分は米国人だった。操縦席にはカナダ人機長、オランダ人副機長、スペイン人航法士とイタリア人航空機関士が搭乗。指揮官はスペイン人でカ ナダ、オランダ、ノルウェー、ポーランドから派遣の乗組員を取りまとめていた。ミッション中に同機は約50機の飛行を統制し、目標への攻撃、28機の空中 給油を調整した。
  2. NATO 所属E-3Aと英空軍E-3D合同派遣隊の一番の任務は統合運用保護措置Operation Unified Protector (OUP) である。英空軍のAWACSはNATO空中早期警戒管制部隊の一部でありE-3A運用はすでに長期間にわたっている。分遣隊隊長のキース・パウウ中佐(オ ランダ空軍)によると連合軍AWACSは国連安全保障委員会決議1970号および1973号の内容三点を実施しているという。飛行禁止区域、空爆、海上封 鎖である。
  3. カ ナダ空軍エリック・ケニー中佐はカナダ派遣部隊隊長としてボーイングCF-18戦闘爆撃機6機、ロッキード・マーティンCC-130TおよびCC- 150T給油機をトラパニから運用している。同中佐によるとAWACSにより指揮命令、任務割り振り、無線中継が提供されて任務の柔軟度が高まっていると いう。パウウ中佐がAWACSのミッションで好んで使うのは「効率化」で数十機の戦闘機をミッションのあとで給油機に向かわせる際にAWACSは戦力を増 強させる効果があるという。空爆は事前計画の場合も現地状況で臨機応変に行われるが、カナダCF-18各機には空対空ミサイル、500または2,000ポ ンドのレーザー誘導爆弾の組み合わせが搭載され、航空阻止や武装偵察任務にあたっているという。
  4. NATO の合同航空作戦センター5号(CAOC-5)はイタリア・ポッジオレナティコから多様なミッションを統合する役目を果たしている。NATO所属のE-3A と英空軍E-3Dにインターネットによるチャット機能が可能で、軍用の保安措置付きでCAOC-5や地上地点とのメッセージ交換が可能だ。米軍のMIRC インターネット中継チャットとも互換性がある。パウウ中佐はこれにより無線交信が不要でより高速、静寂かつ安定度が高い通信手段が実現したという。メッ セージは暗号化され音声通話の際につきものの誤解はない。E-3Aにはチャット用の正副ラップトップパソコンがあり、給油および攻撃ミッションがリアルタ イムで表示されている。
  5. 2000 年に完了したレーダーシステム改良計画(RSIP)によりNATO所属E-3Aに航空機・艦船へ進路指示をする能力・目標を選別する能力がついた。パウウ によるとカダフィ政権側は今でもヘリコプターを運用しており、同機のレーダーの「低速低高度」抽出機能で探知が可能だという。
  6. 海 上封鎖もE-3Aの海上レーダーモードにより実施されており、最近自動識別機能が機内の専用ラップトップパソコンに加えられた。怪しい船舶はNATOの海 軍司令部(ナポリ)に通達される。これまでの近代化改修によりE-3Aの機能は最高レベル担っているとパウウは認識しており、その中身としてコンピュータ のアップグレード、レーダー表示機の追加、RSIPを上げている。
  7. 例 外はエンジンでプラット・アンド・ホイットニーTF-33-RW-100Aターボファンは英空軍E-3D・フランス空軍のE-3FのCFM56より燃料効 率が悪い。取材同乗したE-3Aはマルタ島上空29,000フィートまでの上昇で燃料を140,000ポンド消費していた。NATOのE-3Aにはミッ ションの完了のために空中給油が必要となることがあるが、フランス空軍のE-3Fはフランス中部から発進して空中給油なしに帰還するが、ミッションの滞空 時間は短い。

2011年8月7日日曜日

多様な中国の無人機開発動向に注意が必要

China Seeks UAV Capability

aviatonweek.com Aug 5, 2011

無 人航空機UAVに関して中国は1990年代末までは西側の技術開発を追随する姿勢だった。しかし台湾との軍事対立の可能性を意識した人民解放軍PLAが 90年代末から装備近代化を打ち出したなかで無人航空機は高い優先順位を与えられた。その結果、中国のUAVは飛躍的に進歩し、航空機、ヘリコプター、巡 航ミサイル各分野で主要航空機メーカー、大学、研究機関が成果を上げつつある。
  1. PLA のUAV開発意欲は各種とりそろえ、超小型から、戦術機、戦略機までカバーする他、まもなく高高度、準宇宙高度の飛行船、超音速機体まで登場するだろう。 UAV活用はPLAの戦略ドクトリンの「情報戦力化」の一環となっている。一方、中国の電子産業企業は高度に洗練された遠隔操作設備、ラップトップパ ソコンによるUAV運航を実現している。2010年代末までに配備完了となる中国製コンパスCompass航法衛星システムで全世界規模で中国のUAVは 運用可能となる。業界筋によると中国のUAVおよび無人戦闘航空機システムUCAVは将来においてセンサーから攻撃まで、地上兵員から宇宙空間までひろが る軍事力の一端を担うことになるという。
  2. 一 方、戦術レベルでのPLAのUAV活用は控えめな進展にとどまっている。PLAが90年代から使用しているのは西安ASN-206でトラックから離陸する 航続距離150Km、6から8時間帯空できるUAVだ。同機は各種演習で視認されることが多くなっており、主要な用途としてPHL03多装填発射ロケット 兵器による長距離攻撃を支援することがある。同UAVに円盤状の通信リンクアンテナを装着いているのも確認されている。
  3. こ れに対して2000年から導入が始まったのが南京シミュレーション技術研究院Nanjing Research Institute on Simulation Technique開発によるW-50で滞空時間4から6時間、重量100Kgの同機が陸軍演習でみられている。また、陸上兵員が投げることで飛行を開始 するASN-15は指揮統制機能を強化した89式装甲兵員輸送車に搭載される。
  4. さ らに小型UAVは模型飛行機がその原型となっているものがある。W-1は重量1.75Kgで滞空1時間で手動離陸するが原型はラジコンモデルだ。垂直離陸 UAVの実用化は遅れている。90年代に北京航空航天大学Beihang Universityは同軸ローター方式の小型垂直離陸UAVを海軍用に開発しており、南京航空航天大もソアーバード・シリーズを開発している。同大の LE-300(重量900kg)はノースロップ・グラマンのファイヤースカウトFire Scout.とほぼ同じ大きさだ。
  5. 中 国ヘリコプター開発研究院Chinese Helicopter Research and Development Institute,はZ-10攻撃ヘリを設計していることで知られるが、2006年にU-8E(重量220Kg)を公試しているが、PLAが採用したか は明らかではない。またヤマハ発動機のモデルをコピーしたRMAXのあとをうけて偵察用のラジコン無人ヘリを開発するメーカーがあり、警察用に垂直離陸 UAVが納入されている。
  6. 中 距離長時間飛行UAVに兵装を与えてUCAVとする開発も進んでいるが、PLAは配備に慎重だ。プレデターと同程度の大きさのプテロダクティル -1Pterodactyl は滞空20時間出2010年の珠海航空ショーで初めて確認されたが、中国北方工業公司Norinco BA-7 光学誘導ミサイルを搭載してる。同機開発は2004年開始といわれ、地上基地経由で画像情報を転送できるとされるが、PLAへの配備は不明だ。
  7. 2008 年の珠海ショーで初めて確認されたのがやや小さいCH-3で12時間滞空でき、米国のVariezeホームビルト機をコピーしたカナード翼の設計だ。 FT-5小型衛星航法誘導爆弾とAR-1光学誘導ミサイルを搭載。同ショーではCH-3による地上、海上支援の可能性が展示されていた。両機ともにPLA の第一線部隊には配備が確認されていないが、パキスタンはCH-3の共同生産を選択している。
  8. ター ボジェット、ターボファン動力UCAVの開発もされている。台湾ではPLA空軍がJ-6戦闘機をUCAVに改造してすでに300機以上が配備されていると指摘し ている。超音速のこれらUCAVは精密誘導ミサイル発射が可能なため台湾は地対空ミサイル防衛の拡充を迫られている。
  9. 2002 年珠海ショーでは杭州成都合作によるWZ-2000高高度長時間飛行(HALE)が可能なターボファンUAVが展示され、形状はノースロップ・グラマンの グローバルホークそっくりであった。2008年ショーでは洛陽光電子工業Luoyang Opto-Electronics Co.がWZ-2000と類似した形状のUCAVを展示しており、空対空ミサイルを搭載していた。
  10. PLA は戦略級UAV開発も進めており、今のところBKZ-05がHALE-UAVとして偵察任務に配備されている。同機の動力はレシプロあるいはタービンの推 進式でイスラエル航空宇宙工業のヘロンと寸法は近い。同機を運行する部隊は中央軍事委員会の国家戦略司令本部直属だといわれる。
  11. 成都航空機の天翼Tianyi はグローバルホークの三分の二程の大きさで2008年にテストが確認されている。配備されれば、中国が領海と主張する東シナ海、南シナ海を活動範囲に入れるだろう。.2006 年には瀋陽航空機がダークソードDark Swordの構想を珠海ショーで発表して波紋を生じた。無人空対空戦闘航空機との説明であったが、その後の展示はない。ただし、中国航空博物館でPLA航 空部隊設立60周年特別展示が2009年にあった際に同機モデルが展示されていたことから同構想はまだ開発が継続されているのではないかとの観測が生まれている。また中国製第5世代戦闘機として超音速無人機が攻撃、防空任務につく可能性もあろう。
  12. さ らに超高空飛行UAVが偵察、エネルギー兵器運用、大量兵員輸送の各種任務に使われる可能性を米国は注視しており、実際に中国航空宇宙工業並びに各大学研 究センターがこの構想を研究中だ。研究の中心は高高度運用の飛行船でとりあえずは監視・通信中継が目的で太平洋上空出の運用が想定されている。
  13. ま たPLAは多額の研究開発努力を極超音速で準宇宙高度・低周回軌道を飛行するUAV/UCAV開発で続けており、2007年に成都の神龍Shenlongが ボーイングX-37Bと同サイズの小型宇宙機として存在することが判明している。すでに同機が準軌道飛行を2010年ないしそれ以前に試験実施しているとの報道 がある。また未確認報道だが成都が極超音速技術試験機をテストした可能性がある。米空軍の構想では同じような性能の機体の運用開始は2030年としている が、中国が先を越す可能性はないか。

2011年8月6日土曜日

F-35テスト飛行は全面停止中

JSF Force Grounded

aAug 3, 2011

共用打撃戦闘機JSFはすべての飛行運航、地上運航を停止している。これは米空軍配備テスト機材AF-4で二次出力系統に不良が発見されたためだ。
  1. 不良は8月2日にエドワーズ空軍基地での地上エンジン点検用の稼働時に発生している。JSF開発室によると「エンジンを即座に停止し、パイロット・地上係員双方は無事だった」としている。
  2. JSFのテスト過程で飛行停止措置や飛行制限はこれまでもあったが、地上での運転が停止になるのはこれまでなかった事態だ。
  3. 今回の不良で機体やシステムに損傷があったのかについては発表がないが、「故障原因をつきとめるための措置」ということだ。
  4. 不 良が発生したのは一体型動力パックIPPで、F-35だけにしかないハネウェル製のシステムとしてエンジン始動、緊急時補助動力、機内環境維持、予備発電 機としても機能する設計だ。3月にエンジン取り付け発電機が2つとも故障した際にはIPPは設計通り機能している。この際も短期間ながら飛行中止になって いる。
  5. F- 35のフライトテストはここまで改訂後の計画よりも先行していた。3月の飛行中止措置は5日間と短く、当時は7機が飛行可能状態であったが、発電機の問題が判 明し設計変更がその後の機体に応用されている。2010年10月にはソフトウェア不良のため全機が飛行中止になっている。

2011年7月30日土曜日

空中給油機需要が高まる中、勝者はエアバスミリタリーか

Asians, Europeans Seek Aerial Refuelers

aviatonweek.com Jul 29, 2011

ボーイングKC-46A空中給油機を米空軍が採用したことは同社にとっては同機を海外販売することを逆に阻害し、各国の空中給油機需要はエアバスミリタリーが大きく獲得する可能性が出てきた。
  1. 米空軍からの受注獲得は通常なら朗報なのだが、2017年までに設計、開発、生産を完了しKC-46A18機を納入することはボーイングのエヴァレット工場(ワシントン州)のラインを大幅に使用する事になり海外向け生産の余裕がなくなるのだ。
  2. 米空軍はKC-46Aの発注179機に加え追加発注の検討もしている。KC-46AはボーイングKC-135ストラトタンカーが1950年代から就役していたものを代替する。
  3. ボー イングはKC-46Aの海外向けスロットがいつ利用可能となるかの予定を公式には明らかにしていない。「当社は顧客側と協力してKC-46を国際市場に近 い将来に納入開始できる日程をまもなく決定します」と同社スポークスマンは発表。ただし、別のKC-46計画に関与する同社関係者によると海外向けの納入 は2018年以降だという。
  4. そ れでは遅すぎるかもしれない。欧州防衛局(EDA)のローラン・ドネLaurent Donnetは情報開示請求(RFI)を5月に通達しており、EU加盟国の深刻な空中旧能力不足解消策としてこの回答に基づきEDAが方策を立案するとい う。締切りは8月だ。目標は本年11月に加盟各国に対策を発表し、2012年から空中給油能力の取得努力を開始することだ。
  5. ドネによると欧州の以前の空中給油能力拡充努力は2003年、2005年ともに失敗しており、資金不足と新型機のみを検討対象としたためだという。今回の情報開示請求は新型機にこだわらない点でこれまでとは切り口が違うという。
  6. 給油機を多数取得する以外に既存の給油機の活用に加えて輸送機に給油装置を装着する、民間機(例 Omega Tanker)をリースすることがあるという。各国は資金がないのだからこそ協調するべき、とドネは語る。
  7. 欧州各国は米空軍の給油機部隊に大きく頼り切っているとドネは見ており、米国は欧州により独立性を求めてきている、とする。fリビア作戦の空中給油の8割は米空軍が実施している。これは米空軍の好意からでなく、単に欧州各国に給油能力が不足しているからに過ぎない。
  8. アジアではシンガポールが現在運用する4機のKC-135Rの後継機種を積極的に検討している。業界関係者によると入札は来年になり、2013年初頭に機種決定となる。
  9. その際の重要な性能要求はシンガポール空軍のボーイングF-15SG隊のマウンテンホーム空軍基地(アイダホ州)への海外展開を支援することだ。同空軍はロッキード・マーテインF-16C/Dもルーク空軍基地(アリゾナ州)へ展開している。
  10. シ ンガポール空軍が米空軍と密接な関係を維持していることから通常はボーイングが有利となるとみるのが通例だが、今回はエアバスミリタリーA330MRTT が優位であると見られる。エアバスミリタリー以外にはイスラエル航空宇宙工業(IAI)があり、シンガポールはイスラエルとも強い防衛面での関係があり、 IAIはボーイング767を給油機に改装する案がある。
  11. これ以外にインドには給油機6機の導入案があり、A330MRTTとイリューシンIl-78がまず候補に上がっている。ボーイングは早々とインドの競合には加わらないことを決定している。

2011年7月23日土曜日

米財政危機で国防予算も削減は免れられない見込み

Vice Chief Nominee Hints At Program Cuts Ahead

aviationweek.com Jul 22, 2011

米財政危機を念頭に国防予算の大幅削減が避けられない方向にあり、これまで以上の数の計画が取り止めになる予想だと、次期就任予定の制服組次席が上院で7月21日に発言した。
  1. 「財 政圧力や上層部による決定次第だがなかには途中で放棄される計画もでるのではないか」とジェームズ・ウィネフェルド海軍大将Adm. James Winnefeld(統合参謀本部副議長就任予定)が上院任命公聴会で発言している。「決定はあくまでも戦略的視点でなされるよう期待します」
  2. 合わせて同大将は予算削減で軍事力の骨抜きがないよう、また国防産業基盤力が回復できない打撃を受けないよう上院議員に伝えた。
  3. 国防予算削減は上院軍事委員会においても大きな議題になっていた。同委員会の公聴会は「六人組」と言われる有力上院議員が債務上限額の引上げの一貫としての赤字削減提言に同意した翌日に開催された。
  4. 提 言内容では安全保障関係で9000億ドルが盛り込まれる見込みで下院軍事委員会の共和党議員は大統領に反対を訴える動きを見せている。「強固な国防基盤を 守り、一方で連邦政府による広範囲な各種計画の財務規律を追求するべき」との内容の書簡をすでに大統領に送りつけている。.
  5. 赤 字削減の話し合いが続く中、国防族の中でも最もタカ派と言われる上院議員連もペンタゴンにメスが入るのは避けられないと認め始めている。ジェフ・セッショ ンズ上院議員Jeff Sessions(共和、アラバマ州)は国防政策の強力な推進者であり上院予算委員会のメンバーであるが、1ドルの支出に対して40セントの借金をしてい るのが今の国の姿だという。そこで国防支出は国の支出の半分近くなので、「削減努力の中で国防総省も当然努力すべき」と語る。
  6. 今 回の予算削減提言には具体論がない、というのが批判の中心だ。そこで「常識を求める納税者連合」はより具体的な対案を提案して今後十年間で6000億ドル を安全保障予算から削減することを提案している。中には奇抜な案もあり、海兵隊、海軍の統合打撃戦闘機はF/A-18E型 F型で代用せよとしている。
  7. 防衛契約企業の側は政府が債務不履行宣言を擦る可能性を危惧しており、大統領と議会が合意形成に失敗すると取り返しの付かない事態になると警告している。
  8. 債 務上限をめぐる議論は超党派で合意形成ができなくてもいいはずだと、航空宇宙産業Aerospace Industries Association会長マリオン・ブレイクリーMarion Blakeyは考えている。政府が債務不履行に陥れば自然に合意ができるのではないかというのだ。ただし「全ては正常に戻らないでしょう」.
  9. 専門サービス協議会Professional Services Councilは多数の国防契約業者を代表することから、会員企業に対して政府のキャッシュ・フロー問題を見越して先に代金の支払を請求することを勧奨している。
  10. 同協議会によると国防関連企業はペンタゴン予算の削減回避に議会工作をすでに開始しているが、先が読めない状況には動揺が隠せないようだ。
コメント 米国が債務不履行に陥るタイムリミットは8月2日です。

2011年7月19日火曜日

震災復興需要で機体調達に動く日本



Japan To See Flurry Of Aircraft Orders

aviationweek.com Jul 19, 2011

東日本大震災で被害を受けた仙台空港、松島基地の航空機の代替需要で日本が各メーカーとの商談を始めた模様だ。

  1. 津波被害で塩水をかぶった軍用機、民間機が存在する。航空自衛隊、海上保安庁、海上自衛隊、航空大学校が特に大きな被害を出している。
  2. 松島基地には大震災当日に合計18機の三菱F-2B練習機があったが、全機が海水を浴びている。防衛省の見積もりはこのうち6機から9機だけしか復帰可能とみているが、業界筋では海水によるエンジン、電気系統への腐食被害から修復は全機不可能と見る向きもある。
  3. 同省は機体修復には予算支出の承認を必要とし、今日の厳しい財政状況ならびにF-Xを合計42機調達する予定を考えるとこれはかなり難易度が高いと言わざるをえない。
  4. ただし、同省は補正予算で航空自衛隊向けにヘリコプター3機分の予算を獲得しており、UH-60Jとなる見込み。政府は三次補正予算の準備も始めている。海上自衛隊も補正予算によりキングエア喪失分の補完を期待しているという。
  5. 松島基地ではF-2以外にUH-60Jが5機、川崎T-4ジェット練習機5機、ホーカー800XPが2機、それぞれ海水の被害をうけていると航空調査会社アセンドAscendがまとめている。
  6. 今回の津波で松島基地のような沿岸部に立地する基地の脆弱性が浮き彫りになったが、航空自衛隊は同基地を放棄する考えはなく、むしろ同基地に津波被害を最小限に抑える扉付きの格納庫の設置を検討しているという。
  7. 一方航空大学校はビーチクラフト・キングエアおよびボナンザ数機を仙台空港で喪失している。
  8. 海上保安庁もキングエア数機とヘリコプターを失っているが、各機はジェムコで保全中だった。.
  9. 同 社によると震災の津波が襲った時点で同社仙台施設内に12機が預けられていたが、全機破損したという。仙台市消防局も三機のヘリと固定翼機一機が被害を受 けている。海上保安庁はメーカーとの接触を開始しており、接触を受けたメーカー幹部によると保安庁は予算の面で自衛隊よりも恵まれていないが、日本各地の 航空機配備数を一定程度に保つ政策の恩恵で航空機調達には積極的なのだという。

2011年7月16日土曜日

磨きがかかるF/A-18ホーネット


Hornet Buffs Up

aviatonweek.com Jul 13, 2011


ボー イングF/A-18E/Fが当初これほど長寿の機体になるとは予想されていなかった。だが、ロッキード・マーティンの統合打撃戦闘機JSF開発が遅延して いることから、また世界規模で戦闘機部隊の経年化が進む中で、ボーイングは同機の生産規模を1,000機まで拡大し、生産ラインを2010年代一杯稼働さ せる検討をしている。現在までの累積生産機数は700機近くになっており、最近ではJSFの遅れの影響を緩和すべく米海軍が追加41機の発注をしている。
  1. 進 行中の商談にはブラジル、デンマークがあり、名前を伏せている中東国、おそらくクウェートも関心を表明している。スーパーホーネットは日本の次期戦闘機候 補でもある。その他オーストラリアもJSF遅延で第一線戦闘機の不足が生じるためスーパーホーネットを検討しており、ボーイングによるとJSF共同開発国 複数からも同機の情報開示請求があったという。
  2. ボー イングの戦略はJSFとの比較を避けることだが、一方同社は「納期と明確な価格」をまず指摘してからスーパーホーネットとグラウラー両機種が予定価格内か つ納期前倒しで納入されている実績をあげる。さらに同社はJSFはその高価格ゆえに国際市場では「すき間需要の戦闘機になるかも」とまで発言している。
  3. 同 機の「国際市場ロードマップ」の詳細が明らかになりつつある。そのなかで目を引くのが一体型燃料タンク(CFT)を機体上部に搭載することとレーダー断面 積(RCS)の縮小をめざす兵装ポッドで、今年中に風洞実験を行い、その結果で飛行実証を実施する。CFTは3,200ポンドの燃料を格納する。ボーイン グによると巡航速度では抗力は発生しないという。その理由としてトリム抗力が減り、機体前面面積の増加を打ち消すためだ。その結果、CFT搭載し、中央線 にもタンクを付けると現在の増槽三基搭載と同じ飛行距離を実現できるという。兵装ポッドにはAIM-120ミサイル4発、2,000ポンド爆弾一基、ある いは500ポンド級兵装なら二発を搭載できる。
  4. スー パーホーネットは就役当初から亜音速加速性能、出力余裕が難点と批判されてきた。そこでロードマップでは性能向上型エンジン(EPE)としてジェネラルエ レクトリックF414の派生型をオプション設定し、20%までの推力アップができるとしている。EPEでは26,500ポンドとなり、推力重量比では他に 追随のない11:1を実現する。ただし、インドはこの内容で採択しなかった。
  5. ロー ドマップではミサイル接近警告システム、赤外線探索追跡(IRST)システムを機首ポッドに搭載することも入っている。ボーイングとロッキード・マーティ ンは1980年代にグラマンF-14D用に開発されたAAS-42IRSTの性能向上改修を開発中で、海軍のホーネット各機への搭載をめざしている。ボー イングは海外向けに同システムの改修のオプションもありとしている。例えば日本には独自開発のIRST技術があり、F-15改で使われている。
  6. 操縦席周りでは新しいオプションは11インチx19インチの大画面ディスプレイで来年実戦検証される。デジタルLCD投影を利用したヘッドアップディスプレイによりこれまでの制約がなくなる視野を実現する。
  7. ボー イングからは以前の展示会でも大画面付きの操縦席モデルを公開しており、パイロットからの反応を見る一方、ディスプレイ内容のコンセプトを宣伝している。 これはブロック2機体にも後付け装備が可能で、この全機が米海軍所属だ。改修型ホーネットはF-35Cの水準には至らないが、RCSと航続距離でギャップ を埋めて、一方軽量化がすすみ、より協力な動力性能かつ現時点の見積では購入・運用ともに費用を節約できるとしている。

2011年7月13日水曜日

F-35 機体引渡し目標を達成できず

JSF Misses June Goal For Eglin Deliveries

aviatonweek.com Jul 8, 2011


F-35共用打撃戦闘機の引渡しでまたもや予定が遅延している。
  1. C.D.ムーア少将(JSF計画副責任者)は先月パリ航空ショー会場にてF-35の初の納入はエグリン基地に6月中に実施されると発言していた。
  2. だが書類作業の遅れで機体はまだフェリーされていないとペンタゴンのJSF報道官が明らかにした。
  3. AF8および9の二機は最初の生産型F-35だが計器を一部取り付けない形で来週中にもエグリンにフェリーするのが目標だと同報道官は言う。
  4. ロッ キード・マーティンは声明文で「AF8およびAF9はともに最初の低率初期生産ロット2からの納入となりますが、地上モニター用のテスト機材が取り付けら れておりません。両機ともに納入前検査に合格しており、契約どおりのミッション能力、訓練、保守点検を実現できることが確認されております」
  5. ロッキード・マーティンは同機は引渡しまで「数日前」の状態だと表現しているがAF8と9用の書類作成は若干複雑だと認めている。
  6. 両機はエグリンで初期保守点検訓練用に地上で使用される間に今年秋後半の飛行許可を待つ。
  7. 一方、ペンタゴンとロッキード・マーティンはAF6および7の「完熟飛行」をエドワーズ基地で実施する件で協議を続けており、その後のエグリンでのパイロット訓練につながる準備の一端と理解されている。
  8. エグリン基地には合計6機のF-35通常型が納入されて飛行訓練が開始される予定だ。AF10と11の初飛行は6月29日、7月1日それぞれ完了している。AF12と13は初飛行前最終段階で数日間のうちに初飛行を敢行する予定だと同社は明らかにしている。

2011年7月11日月曜日

UCAS-Dの自動着艦モードをF/A-18で実施に成功

F/A-18 Shows UCAS-D Can Land On Carrier

aviationweek.com Jul 8, 2011

.
ノースロップ・グラマンX-47B無人戦闘航空機実証機 (UCAS-D) のソフトウェアおよびシステムがF/A-18により代理テストされ、同機は「手放し」で米海軍空母に着艦した。
  1. X-47Bで使うのと同じエイビオニクスとソフトウェアを使いF/A-18テスト機は7月2日空母エンタープライズに58回の離着艦アプローチを実施し、うち16回はタッチアンドゴー、6回は着艦フックを使っている。
  2. この成功でX-47Bの空母運用試験は予定通り2013年に実施の可能性が高まった。一号機はすでにエドワーズ空軍基地で初飛行に成功しており、2012年にパタクセントリバー海軍航空基地で陸上基地からの運用テストを開始する。
  3. 代理テスト機F/A-18は艦からの操作のもとで自律的な着艦が可能なことを証明した。母艦から8マイル地点で無人機が自律的に制御する計器飛行アプローチ(Case 1)が28回実施された。r.
  4. それとは別に30回の有視界アプローチ(Case 3)だったという。
  5. 飛 行には高精度GPSおよび戦術目標ネットワーク技術の高速データリンクにより母艦への航法ならびに実験機への指令を送信している。海軍は分散制御コンセプ トを提唱しており、空母内のミッションオペレータはどの時点でも無人機の制御ができる一方、母艦の航空管制官、艦橋内のエアボス、着艦信号士官も指令を有 人機の時と同じように送る事ができるのが特徴だ。
  6. 一方エドワーズでは同機の性能限界を広げるテストが完了すればパタクセントリバーへ移され、陸上からカタパルト発進テスト、着艦フックテスト、空母運用を想定した飛行テストを2012年一杯続ける予定だ。
  7. 代理機のテスト予定はさらに来年にもあり、空母トルーマンを使用し、X-47Bをクレーンで搭載し、飛行甲板上での同機の取り回しを評価する。
  8. その後空母への着艦実験を2013年に行い、2014年に自動空中給油を含む飛行テストに入る。この実験の前準備で今年後半からリアジェットを同機に見立てて試行を開始する。

2011年7月9日土曜日

イスラエル向けF-35は海外販売の突破口になる技術公開となるかとなるか

Israel, U.S. Strike F-35 Technology Deal

aviationweek.com Jul 6, 2011

イスラエルによるF-35統合打撃戦闘機購入の前にふさがる最大の障壁が解消しつつある。米国がこれまでJSF技術輸出でとってきた強硬な姿勢を緩和していることがうかがわれ、さらに海外販売へのはずみがつくかもしれない。
  1. 米 国はF-35先端技術の提供に慎重だったが、共同開発国から、また日本はじめとする海外での商戦で公開の圧力が高まっている。そこで共同開発各国が正式に 同機購入の決断をする今がその突破口になる。ただし、新規受注となっても同機の生産コストにさほど影響はでないみこみで、各国の調達数全部合わせてもペン タゴンの導入規模より小さいことがその理由だ。
  2. そ の中でも熱い論争相手がイスラエルで、同国は国産電子戦(EW)装備を搭載することを望んでいるためだ。一次は強く拒絶した米国もイスラエル向きF-35 の機内配線を変更し、同国製EW兵装の搭載を合意した。これによりイスラエルは機体を受領後、順次EWセンサー類、電子対抗措置
  3. 装備を充実することができる。
  4. イ スラエル空軍とロッキード・マーティンは総額27億ドルでF-35Aを19機ないし20機導入の契約を来年早々に締結する方向で交渉を進めている。イスラ エル向け一号機の引渡しは2016年の見込み、とロッキード・マーティンF-35計画主任トム・バーベジは本誌に明らかにしている。イスラエル空軍もこの 日程で合意しているという。
  5. イ スラエル空軍はJSF装備で特殊かつ高価な搭載の希望を数多く提示していたが、結局搭載されるのはイスラエル製指揮統制コンピューター通信情報収集 (C4I)システムだけになりそうだ。イスラエル製EW装備の追加、空対空・空対地兵装、外部燃料タンクの追加も原則で認められたものの、予算管理と納期 日程を優先するため先送りになっている。
  6. これまでイスラエルはシリアに配備されているSA-17やSA-22対空防衛装備のような同国を取り巻く防空脅威を配慮してイスラエル製EWの搭載を強く主張していた。ただし、F-35の受領した仕様で対応は可能とイスラエル空軍は見ている。
  7. 全体生産日程から見てイスラエル向けF-35は低率初期生産(LRIP)の第7ロットと第8ロットの中間で生産される見込みだ。イスラエルは初の国際顧客としてJSFを受領することになる。
  8. イスラエル空軍要員の訓練は2016年開始見込みだが、訓練用の機材の選択はペンタゴンが決める事項とされている。
  9. 地 域内の状況変化に応じてイスラエル国防軍は対応計画を変更しようとしており、状況分析ではこれまでイスラエルに比較的友好的だったエジプト、ヨルダンと いった周辺国が敵性国家に変化することを想定している。その結果、国防軍は装備の拡充、対応の柔軟性を増やすことで全方位に対応する能力の確保をめざす。 その中でイスラエル空軍は2030年までにF-35部隊を75機まで拡充することで柔軟対応を実施する能力の獲得が必要と主張している。
  10. 今後数年のうちに同空軍はF-16A/B、F-15A/Bといった旧型機を退役させるが、新型F-35が20機だけとなると戦闘機部隊の規模はかつてないほど縮小してしまう。
  11. ただし国防軍内部では強力なエジプト陸軍が敵となる可能性から機甲師団の拡充が必要とする陸軍の主張も強く、メルカバ戦車から派生のネイマー装甲兵員輸送車の生産は米本土のジェネラルダイナミクスが米軍事援助予算を使って行う。F-35取得にもこの予算が使われる。
  12. ただし、今回の米・イスラエル合意をもって米国がJSF技術の公開を各国に行う決定をしたとは言い切れない状態だ。関係者は海外向けには米国仕様より低いステルス性能の機体を提供するとしている。
  13. で はどこまでの技術移転度まで許容される様になったのかを図る試金石が日本だ。日本は高度の技術移転および国内生産の実現に高い意欲を示している。米政府は ロッキード・マーティン、プラットアンドホイットニーと協議しどこまで日本にとって魅力的な提案ができるのかを見極めようとしているところだ、とC.D. ムーア米空軍少将は語る。日本の技術力は同機関連技術の提供元として高い可能性があると同少将は付け加える。
  14. オーストラリアとイタリアがその次にJSF購入に踏み切る国と見られている。おそらく来年のLRIP6の内数として発注になるのではないか。トルコがその後に続くものと見られる。ノルウェーはとりあえず4機の購入を承認したが、契約締結には三年かかるかもしれない。
  15. デンマークも次期主力戦闘機選定をまもなく開始する予定で、総選挙の結果いかんで作業日程が加速する。ここでもF-35にはボーイングF/A-18E/F、サーブ・グリペン、ユーロファイター・タイフーンとの競り合いとなるだろう。