2026年6月27日土曜日

カナダがGCAPへ関心を示している ― カナダの思惑はF-35調達を削減し、別の機種を導入する「分散調達」だ。

 Official rendering of the GCAP demonstrator for the Tempest future fighter.

BAEシステムズ

第6世代戦闘機GCAPへ関心を示すカナダ

Canada Throws A Curveball As It Signals Interest In Joining GCAP Sixth-Gen Fighter Program

この動きは、オタワが戦闘機の分散調達を検討するとともに、米国以外との防衛提携拡大を模索する中で行われたものだが、タイミングが課題だ

https://www.twz.com/air/canada-throws-a-curveball-as-it-signals-interest-in-joining-gcap-sixth-gen-fighter-program

ナダにおける新型戦闘機の導入をめぐる長い騒動に新たな展開が見られた。同国の国防相は次世代戦闘機「グローバル・コンバット・エア・プログラム(GCAP)」について「さらに詳しく知りたいと考えている」と述べた。GCAPは現在、英国が主導し、イタリアと日本が参加する3カ国による共同プロジェクトである。その中核をなすのが、有人戦闘機「テンペスト」だ。そのデモ機は英国のBAEシステムズ社によって開発が進められている。

カナダのデビッド・マクギンティ国防相は、東京で日本の小泉進次郎防衛相と会談した後、このように述べた。Breaking Defense の報道によると、マクギンティは小泉とGCAPについて話し合ったことを認め、同氏はこの計画を「有望な取り組み」と評した。「詳しく知りたい。持ち帰り検討してみる」と、マクギンティはロイターに語った。

これまで、カナダ高官がGCAPへの関心を公に表明したことはなかったようだ。しかし、この動きは、オタワが戦闘機の分散調達という選択肢を検討している最中に起こったもので、これには米国製F-35と、もう1機種の取得が含まれることになる。この考え方には、オタワとワシントンとに溝が深まっていることが背景にある。

しかし、カナダが「オブザーバー」としてGCAPに参加する可能性については、今年3月にすでに指摘されていた。『朝日新聞』によると、匿名の日本政府高官は、前回の会談でマクギンティ小泉両名がその取り決めを協議したことを明らかにした。

富士山を背景にした、テンペストの想定される構成を示す公式コンセプト画。MHI

カナダがオブザーバーとしてGCAPに参加すれば、同プログラムに関する情報アクセスが可能となり、より深い関与への足がかりとなる可能性がある。

今週初め、イタリアのグイド・クロセット国防相は他国のGCAP参加の可能性に言及し、そうなった場合、「全面的に歓迎する。参加国が増えれば増えるほど、何かを生み出し、コストを削減できる可能性が高まる」と述べた。

クロセットはカナダを「現時点で(GCAPに)最も関心を示している国」と指摘した。同氏は、カナダがオブザーバーとして参加することについて「全面的に歓迎する」と述べた。

しかしカナダにとって、GCAPへの参加は、新型戦闘機導入に向けた「分割購入」アプローチの再考を迫ることになるだろう。

これまで、サーブ・グリペンEが、F-35と並行して購入される可能性が最も高い候補機と見なされてきた。スウェーデンはオタワへのグリペン販売を強力に推進しており、サーブはカナダ国内製造を提案した。これは、以前の入札でロッキード・マーティンに敗れた際の支持を確保するための取り組みであった。それ以来、サーブは「グローバルアイ」を通じて、カナダの将来の空中早期警戒管制機(AEW&C)を供給する最有力候補としても浮上している。

今年4月、マクギンティは、オタワが88機のF-35を購入するという以前の計画は依然として検討中だと認めた。

「F-35購入の検討は継続中だ……戦闘機調達問題を極めて綿密に検討するために必要な時間を割いている」と、マクギンティは上院防衛委員会で述べた。

「分割購入」という選択肢が浮上したのは、カナダが老朽化したCF-18ホーネットの置き換えを開始するため、F-35Aを16機購入するという確固たる約束を交わしているからである。また、カナダ産業界もJSFプログラムに相当程度関与している。

F-35プログラムにおけるカナダ産業界の参画状況を示すインフォグラフィック。ロッキード・マーティン

カナダは現在、CF-18A/B+を約75機保有しており、さらに18機の、オーストラリア空軍(RAAF)から引き継いだ改修済みF/A-18A/B、および予備7機を追加し、戦力の強化を図っている。

カナダが最初に導入するF-3516機のうち、4機について全額の支払いが完了しており、他の8機分の部品も購入済みである。カナダ向けの最初のF-35は、2026年にアリゾナ州ルーク空軍基地での訓練用に納入される予定だった。

2023年、カナダの自由党政権はF-35を88機購入する計画を発表し、この決定により、非常に長期化していたプロセスがようやく決着したように見えた。


カナダが将来導入するF-35Aの主な特徴をまとめたインフォグラフィック。RCAF

しかし、貿易摩擦の高まりや米国との舌戦を背景に、自由党のマーク・カーニー首相は、2025年春に就任しF-35プログラムの見直しに着手した。

購入を分割すべきという他の論拠もある。2019年当時、計画されていたF-35の88機購入費用は190億ドルと見積もられていた。現在では、兵器やインフラ費用を除いても、277億ドルへ急騰している。

昨年、F-35購入の見直しが開始された当時、国防相を務めていたビル・ブレアは、混合機体制の利点を指摘し、これによりカナダ空軍(RCAF)が様々な種類の脅威に対処する選択肢が増えると述べた。

「その空域で数ヶ月、数ヶ月、さらには数年もの間、任務を継続しなければならないとしたらどうなるか? 使用する装備は、その任務を遂行するのに適切な装備なのか?」とブレアは語った。「直面しうるあらゆる事態に対処するためには、極めて幅広い能力セットを備えておく必要がある。」

カナダがテンペストを調達する場合、2035年より遅くなることは確実だ――GCAP戦闘機がこの期日までに就役する見込みは極めて低い。カナダは主要パートナー国に次ぐ4番目の順番となるだろう。オタワは、当初の計画数の約3分の2、つまり約60機程度のF-35を追加購入するとともに、可能であれば、保有中のCF-18のうち状態の良い機体を長く運用し続ける必要があるだろう。ホーネットは老朽化が進んでおり、海外で退役が進んでいる。その維持支援はますます困難になるだろう。テンペスト導入が始まれば、ハイ・ロー戦闘機構成が逆転することになる。これは、現在F-35を運用している英国、イタリア、日本が採用しているアプローチと本質的に同じである。

BN2012-0408-02 November 22, 2012 Bagotville, QC A two-seater CF-18 flies over the Parc des Laurentides en route to Valcartier firing range. Photo: Corporal Pierre Habib, 3 Wing Bagotville © 2012 DND-MDN Canada ~ BN2012-0408-02 22 novembre 2012 Bagotville, Québec Le vol d'un CF-18 à deux places en route vers le champ de tir de Valcartier, au dessus du parc des laurentides. Photo : Caporal Pierre Habib, 3e Escadre Bagotville © 2012 DND-MDN Canada

ヴァルカルティエ射撃場へ飛行する2座型のCF-18B。DND-MDN Canada Négatif 2012; Négatif 2012

しかし、テンペストはカナダの戦闘機要件に特に適しているように見える。

同機の設計では、極限の航続距離と大きな搭載量――F-35Aの約2倍――が重視される。GCAP関係者は、この機体が空中給油なしで大西洋を横断できる内部燃料を搭載できる可能性があると述べている。

これらの特性は、インド太平洋地域における将来の紛争に向けて最適化されているが、戦略的に極めて重要な北極圏深くまで広がるカナダの広大な国土周辺で高まるロシアの脅威や、「距離の壁」に対処する上でも同様に有効である。

中国ロシアの両国は、はるかに高速で、より長射程の第五世代戦闘機および第五世代ミサイルを保有しており、これらが現時点で西側同盟国を脅かしている」と、カナダ王立空軍(RCAF)のジェイミー・スパイザー=ブランシェ中将は過去に述べている。

また、GCAPの3つのパートナー国がいずれも現在使用しているものよりも射程が長い大型の空対空ミサイルを「テンペスト」に装備する計画も明らかになっている。

カナダが、中国やロシアからの現在・将来の脅威に対処するため第6世代戦闘機を導入すると決定した場合、GCAPが唯一の現実的な選択肢となる可能性がある。競合する汎欧州のフューチャー・コンバット・エア・システム(FCAS)破綻した上、カナダがボーイングF-47を入手できる可能性はほぼない。

しかし、いかなる形態の分割購入でも、「インフラや訓練の一定部分が重複することになる」と、スパイザー=ブランシェ中将は認めた。

ただ戦闘機部隊を混成編成することには費用対効果の観点からの利点があり、また、この種の戦闘装備を単一の供給源に完全に依存しない重要な要素もある。

また、少なくとも産業参加や運営要件の観点から、現時点でカナダがGCAPに参加することがどこまで現実的なのかという問題もある。後者については、各国の要件がすでに決定されており、作業分担協定の大部分もパートナー3国間で分割済みであるため、ほぼ不可能に近いと思われる。

同じことが、過去にGCAPへの参加を検討したインドにも当てはまる。

サウジアラビアが何らかの形でGCAPに参加する可能性について言及されており、さらに最近では、ポーランドも同機の購入に関心を示しているとの報道がある

こうした状況を踏まえると、カナダにとって最善の策は、産業面での思わぬ利益を期待するよりも、このジェット機を「既製品」として購入することかもしれない。

同時に、カナダと英国は、カナダ王立海軍の将来のリバーカナダ水上戦闘艦など、重要な軍事プログラムでもパートナー関係にある。同艦は、英国王立海軍向けのBAEシステムズのタイプ26設計を基にしている。

「テンペスト」に戻ると、GCAPプログラムは、今後待ち受ける技術的・政治的な多大な課題を乗り越えなければならない。

これまで何度も説明してきた通り、全く新しい戦闘機、特にステルス技術を組み込んだものを開発するプロセスは、非常に長い開発期間と多額のコストを伴う。

現時点で、BAEシステムズはGCAPプログラムの一環として実証機の製造を進めており、2027年末までに初飛行を行う予定だ。

実証機の最新レンダリング画像をこの記事の冒頭に掲載した。注目すべきは、タイフーンのEJ200ターボファンエンジンを、ステルス性のないノズル付きのまま採用している点だ。「テンペスト」には、全く新しい推進システムが搭載される。

これまで本誌が指摘してきたように、時間が経過すればするほど、またカナダがF-35との結びつきを深めれば深めるほど、戦闘機の分散調達を正当化することが難しくなる。テンペストの購入は確かに最も安価な選択肢ではなく、スケジュールを見直す必要も生じるだろうが、このことは、カナダが視野を広げ、高度な能力に注目し、米国以外との戦略的関係を深めようとしているという事実を浮き彫りにしている。■

トーマス・ニューディック

スタッフライター

トーマス・ニューディックはTWZのスタッフライターであり、軍用航空、防衛技術、兵器システム、国際安全保障を担当している。ドイツのベルリンを拠点とし、世界中の紛争、軍事近代化の取り組み、新興の航空宇宙技術について報道しており、特に空軍力と現代戦争におけるその役割に関心を寄せている。彼の報道は、現代および歴史的な空軍力、とりわけヨーロッパにおける深い専門知識に基づいており、大陸全域およびそれ以上の地域における軍用航空、空戦、航空宇宙技術の発展に焦点を当てている。

2026年6月26日金曜日

今年のRIMPAC演習が始まった ― 見ものは実弾による退役艦艇の攻撃演習SINKEXと台頭してきた無人水上艦艇の活躍ぶりだ

 

「RIMPAC 2026」がハワイで開幕(6月25日)

RIMPAC 2026 Kicks off in Hawaii


https://news.usni.org/2026/06/25/rimpac-2026-kicks-off-in-hawaii

国主導の「リム・オブ・ザ・パシフィック(RIMPAC)2026」演習が木曜日、ハワイで始まった。

RIMPAC 2026の統合任務部隊(CCTF)司令官兼米太平洋艦隊副司令官ジェフ・ジャブロン海軍中将は、木曜日にパールハーバー・ヒッカム合同基地で行われた開幕記者会見で、31隻の水上艦、5隻の潜水艦、197機の航空機、および1,100人の上陸部隊を含む3万人の要員が演習に参加すると述べた。

「リム・オブ・ザ・パシフィック演習は、引き続き世界有数の多国籍海上訓練イベントであり、この地域の安全保障と安定の強化に尽力する同盟国やパートナー国を一堂に集めている」と、ジャブロン中将はプレスリリースで述べた。「複雑で現実的なシナリオ下での共同訓練を通じて、参加国は即応性を高め、戦闘能力を磨き、必要な時にいつでも、どこでも互いに効果的に連携して作戦を行うために必要な相互運用性を強化する。」

RIMPAC 2026の多国籍指揮部は、統合任務部隊副司令官としてチリ海軍のアンドレス・ハワード准将、統合任務部隊副司令官として海上自衛隊の小林拓雄海将補、 大韓民国海軍のキム・インホ少将が合同部隊海上構成部隊司令官を、カナダ王立空軍のJ.S.デイヴィス准将が合同部隊航空構成部隊司令官を務める。

訓練内容には、水陸両用作戦、砲撃・ミサイル演習、対潜戦、防空作戦、軍医活動、人道支援・災害対応、海賊対策作戦、機雷対策、不発弾処理、および潜水・引き揚げ作戦が含まれる。

「演習期間中、参加者は共同で訓練および作戦を行い、集団的な即応態勢を強化し、国際的なパートナーシップを固め、自由で開かれたインド太平洋を推進する」とプレスリリースは述べている。

RIMPACでは通常、沈没演習(SINKEX)が行われるが、2026年の演習では、退役した米海軍艦艇2隻が標的として使用される。ただし、海軍は演習中にどの2隻が沈没させられるかについては明らかにしていない。

空母「セオドア・ローズベルト」(Theodore Roosevelt)は、艦載航空団(CVW)9を乗艦させ、巡洋艦「チョシン」(Chosin、CG-65)、駆逐艦「ポール・ハミルトン」(Paul Hamilton、DDG-60)、「ディケーター」(Decatur、DDG-73)、 USS ウェイン・E・マイヤー(DDG-108)およびUSS カール・M・レビン(DDG-120)、強襲揚陸艦USSエセックス(LHD-2)、攻撃型原子力潜水艦USS シャーロット(SSN-766)およびUSS コロンビア(SSN-771)、 艦隊給油艦USNS ティペカヌー(T-AO-199)およびUSNS グアダルーペ(T-AO-200)、乾貨物船USNS ワシントン・チェンバーズ(T-AKE-11)、ならびに米国沿岸警備隊のカッターUSCGC キンボール(WMSL-756)で構成される。

3月、攻撃型潜水艦USSシャーロット(SSN-766)は、「エピック・フューリー」作戦の一環として、スリランカ沖でイランのフリゲート艦IRIS デナ(75)を撃沈した。エセックスは第15海兵遠征部隊(MEU)分遣隊と共同作戦を行っており、同分遣隊は6月18日にハワイ海兵隊基地(MCB)で上陸し、RIMPACの陸上段階を実施した後、水陸両用作戦段階に向けて後日再乗艦する予定である。

オランダは、RIMPACからオランダ王立海軍のフリゲート艦HNLMS デ・ルイター(F804)を外し、金曜日に同艦をホルムズ海峡へ再配備した。同艦は、ホルムズ海峡の安全な航行を確保することを任務とするフランス・英国の多国籍部隊に合流する可能性があるが、オランダは引き続きスタッフや専門要員を派遣してRIMPACに参加する。

過去のRIMPACでは、無人水上艇(USV)の試験、実証、運用が行われてきたが、海軍はRIMPAC2026におけるUSVの関与に関する詳細を明らかにしていない。4月、USVメーカーのSaildrone社は声明を発表し、防衛大手ロッキード・マーティンと協力して、Saildrone Surveyor USVにAGM-179共同空対地ミサイル(JAGM)発射装置を統合しており、RIMPAC2026で高速移動する水上目標への実弾射撃実証を行う予定であると明らかにした。JAGMは艦船や地上発射装置からの発射も可能。

全領域での協調自律技術を手掛けるHavocAIは火曜日、発表した通り、RIMPAC2026で、海軍大学校(NPS)の先進製造研究教育コンソーシアム(CAMRE)が実施する分散型先進製造実験に参加する。同社は、RIMPAC2026において、自律システムが航空および海上任務でどのように連携できるかを実証すると述べた。演習中、HavocAIの自律水上艇(AUV)は、フィリピンでの「バリカタン2026」への参加に続き、RIMPACへの参加を通じて、史上初となる多国籍自律兵站作戦として、米国および同盟国の水上艦艇への自律的な補給を行う予定である。

HavocAIは、演習にどの自律水上艦が配備されるかについては明らかにしなかった。同社は、サイズや能力がで各種のAUVを保有しており、最大規模のものは、PacMar Technologiesと共同開発中の全長100フィート (30m)の「Atlas 100」中型無人水上艇(MUSV)であり、同社はPacMar Technologiesと共同開発を進めている。本誌は同社が海軍がMUSVのプロトタイプ開発第1段階を支援する企業として選定した7社のうちの1つと報じていた。■

ジルハン・マハジル

ジルハン・マハジルは、マレーシアのクアラルンプールを拠点とするフリーランスの防衛ジャーナリスト兼アナリストである。1998年以降、彼が寄稿してきた、あるいは現在も寄稿している出版物には、『Defence Review Asia』、『Jane’s Defence Weekly』、『Navy International』、『International Defence Review』、『Asian Defence Journal』、『Defence Helicopter』、『Asian Military Review』、『Asia-Pacific Defence Reporter』などがある。


射程1000マイルの長距離AAMの実現を米空軍が模索―超長距離ミサイルは第一撃攻撃で敵の防空網突破を狙う手段となるが、センサーや指揮命令系統の高度化も同時に必要となりますね

 

このコンセプトアートは、米空軍が以前推進していた「長距離交戦兵器(Long Range Engagement Weapon)」と呼ばれる長距離空対空ミサイル計画に関連したもの。米軍提供(FlightGlobal経由)

米空軍は1,000マイル射程の空対空ミサイルを模索している

USAF Wants Air-To-Air Missile With A Whopping 1,000-Mile Range

米空軍は真の「キル・ウェブ」兵器で、自軍が保有する最新最強の空対空ミサイル能力をさらに向上させたいと考えている

https://www.twz.com/air/usaf-wants-air-to-air-missile-with-a-whopping-1000-mile-range



空軍は、最大射程が少なくとも1,000海里の新型空対空ミサイルに関する要件を共有するべく、防衛関連企業との機密会議を開催する予定だ。これは、最新型のAIM-120 先進中距離空対空ミサイル(AMRAAM)現在提供している射程の約10倍に相当する。これほど極端な射程を持つ対空ミサイルは、重要な空中早期警戒管制機への攻撃や、後方地域で活動する給油機およびその他の高価値な航空資産への攻撃に特に適している。また、空軍はこの新型兵器の空対地バージョンにも関心を示しており、「空軍長距離兵器(AFLRW)」と呼んでいる。

空軍ライフサイクル管理センター(AFLCMC)の兵器局(EB)は、AFLRWの業界説明会に関する通知を発出した。2日間の会議は、8月25日と26日にフロリダ州エグリン空軍基地の誘導兵器評価施設(GWEF)で開催される予定。空軍によると、このイベントは「シークレット」機密レベルで開催され、参加者全員に適切なセキュリティクリアランスが必要とある。

「AFLRWは、国防総省の優先事項に沿って、次世代の空対地スタンドオフ兵器の各バリエーションに取り組むことを目的としている」と、業界説明会のお知らせに記されている。「AFLRWは、初期作戦能力(IOC)に向けた空対空(A/A)ソリューションに重点を置きつつ、空対空(A/A)および空対地(A/S)の両バリエーションについて、複数のベンダーを選定する可能性がある。」

AIM-120 AMRAAMを発射する米空軍F-22ラプターのストック写真。USAF

「両方の[AFLRW]バリエーションは、最低射程距離が1,000NM[海里]で、防衛計画シナリオ2.1および7.1の環境下において、それぞれのA/AおよびA/S目標を迅速に攻撃できる能力を備える」と、通知は付け加えているが、これらのシナリオが何を意味するかは詳述されていない。

また、通知では、モジュール式コンポーネントやオープンアーキテクチャシステム、様々な要素を統合して完全なミサイル(オールアップラウンド)を構成する「マスターインテグレーター」の選定に重点が置かれている。

通知によれば、「産業界は、本イベント終了後、両バリエーションについて上記の2種類のソリューションに焦点を当てた、迅速なホワイトペーパー形式の情報提供要請(RFI)が行われることを想定すべきである」としている。「AFLCMCは、優先度の高い空・陸・海の標的を遠くから迅速に攻撃する米国の能力を拡大する、次世代の空対地長距離兵器(AFLRW)のバリエーションを求めている!」

射程の基準値以外について、空軍が現在AFLRWに期待する要件に関するその他の詳細は通知に一切含まれていない。とはいえ、少なくとも1,000海里離れた目標を攻撃できる対空ミサイルが求められているという事実自体が注目に値する。

正確な数値は機密扱いだが、米軍で広く運用されている最新モデルAMRAAMのAIM-120D-3型は最大射程が約100マイル(約87海里)とされる。これよりもさらに遠くまで飛行できる可能性があるという示唆もあり、少なくとも特定の飛行条件下の目標に対してはそうである。AIM-120の長射程型現在開発中である可能性がある。新型AIM-260A ジョイント・アドバンスト・タクティカル・ミサイル(JATM)の主要要件の一つとして、AMRAAMを上回る射程が挙げられている。とはいえ、米海軍と空軍が共同開発中のJATMでさえ、AFLRWに求められる射程には到底及ばないと見られている。

AIM-260を搭載した米海軍のF/A-18Fスーパーホーネット。Jonathan Tweedy/ @flightline_visuals

注目すべきは、冷戦時代に空軍が、空中目標と地上目標の両方を攻撃するために設計された超長距離・高速ミサイルを、採用寸前まで進めていたことだ。しかし、その先進戦略空対地ミサイル(ASALM)の最大射程は300マイル(260海里)程度と見込まれていた。

B-52爆撃機から発射された直後のASALMの想像図。マクドネル・ダグラス

2000年代半ばから、空軍と海軍は共同で「統合二役制制空ミサイル(JDRADM)」の開発にも取り組んだ。これは、AIM-120およびAGM-88対レーダーミサイルの派生型に取って代わる単一兵器として構想されていた。その後これが次世代ミサイル(NGM)へと発展したが、表向きはコスト高を理由に、公的には2013年に終了した。当初はJDRADM/NGMと並行して進められていた機密性の高いトリプル・ターゲット・ターミネーター(T-3)計画は、その後も少なくとも一定期間継続された。2017年には、T-3の後継候補として長距離交戦兵器(Long Range Engagement Weapon)(LREW)が浮上したが、その計画の行方は不透明である。

2月、海軍は、空中および水上目標を攻撃可能な長距離対レーダーミサイルの新たな公募を行い、これを「先進電波抑制ミサイル(Advanced Emission Suppression Missile:AESM)」と名付けた。しかし、当時、海軍はこの兵器の目標射程について言及しなかった。海軍はすでに、多目的スタンダード・ミサイル6型(SM-6)の空対地型であるAIM-174Bの配備を開始している。本誌は以前、AIM-174Bが、大まかに言えば、冷戦時代のASALMと同じ射程カテゴリーに属する可能性が高いと評価していた。

How The Navy's New Very Long-Range AIM-174 Will Pierce China’s Anti-Access Bubble thumbnail

これらのプログラムのいずれに関しても、少なくとも公には、射程1,000海里に迫るものはこれまで議論されたことがないようだ。興味深いことに、空軍は2024年12月の議会への報告書の中で、射程1,000マイルに達する対空ミサイルの可能性について公に言及していた。しかし、同報告書では、これらは2050年までに形成されると空軍が想定する脅威エコシステムの一部として言及されていたに過ぎない。

「射程が1,000マイルを超える対空兵器は、宇宙ベースのセンサーによる支援を受け、これまで安全に運用されてきた給油機などを危険にさらすことになるだろう」と、空軍の2024年の報告書は述べている。これは、AFLRW計画を通じて自軍の兵器体系に追加しようとしている能力の種類を示唆している。

海軍がAESMの契約公告を発表した後、本誌も重要な空中早期警戒管制資産を標的とする上で、このようなミサイルの価値を強調した。これはしばしば「AWACSキラー」の役割と呼ばれ、E-3セントリー空中早期警戒管制システム(AWACS)機を指している。以前本誌は以下指摘していた:「とはいえ、『AWACSキラー』ミサイルの価値は明白だ。AEW&C は極めて重要な監視・戦闘指揮資産である。これらを撃墜すれば、敵はそれらの能力を失い、必然的に航空資産を効果的に運用する能力や、地上・海上、さらには空中の他の拠点との間で重要な情報を共有する能力が低下する。高い位置から低空を飛行する脅威を検知するのに特に適したこれらの『空飛ぶレーダー基地』を無力化することは、敵の全体的な状況認識を阻害することにつながる。」

もちろん、問題は、AEW&C機が通常、戦闘の最前線よりかなり後方で巡回しているため、標的を特定するのがさらに困難になる点だ。ここで、AESMのような兵器が活躍の場を見出す可能性がある。この種の兵器は、敵が放出する無線周波数に照準を合わせることで、他の空中目標を攻撃できる。これには電子戦機や、場合によってはその他の空中目標も含まれる。AESMは、アクティブレーダーやイメージング赤外線シーカー、さらにはネットワーク化された標的データを利用可能なデータリンクを追加することで、より汎用的な対空任務を担えるようになるかもしれない。[AGM-88E] AARGMおよび[AGM-88G] AARGM-ERは、いずれも逃走する地上目標を攻撃可能にするアクティブミリ波レーダーシーカーを搭載しているが、同様のコンセプトを空対空用途に適用することも可能である。

「海軍をはじめとする各軍にとって、これは将来、中国とのハイエンド戦闘が発生する可能性という文脈で特に重要な意味を持つ。中国は自国のAEW&C艦隊および電子戦機に多額の投資を行ってきたからだ。中国人民解放軍(PLA)もまた、射程がますます長くなる対空ミサイルの開発を進めており、その中には米国のAEW&Cプラットフォームを標的とできるものや、その他の重要な支援機を標的とできるものも含まれている。」

その記事では、AIM-174Bが、米軍が求める「AWACSキラー」ミサイルの要件を満たす可能性にも触れた。空中および地上の標的を、少なくとも1,000海里の距離から攻撃できる能力を備えたAFRLWは、AIM-174Bを遥かに凌駕するだろう。

太平洋地域には、こうした射程が何を意味するのかをよりよく理解するための実例が数多く存在する。沖縄にある米軍基地と台湾との距離は約390海里である。グアムのアンダーセン空軍基地と台湾との距離は約1,500海里である。東シナ海南シナ海の北端上空を飛行するAFLRWを搭載した航空機は、適切な標的データさえ入手できれば、中国本土内の標的に対して数百発のミサイルで攻撃することが理論上可能となる。AFLRWの射程は、世界中の他の潜在的な紛争地域でも重要な意味を持つだろう。

AFLRWは、空軍に対し、空中早期警戒管制機(AWACS)や給油機、爆撃機、その他の監視・偵察機、さらには警戒を怠っている戦術戦闘機まで撃墜する手段を提供する。このミサイルは、少なくとも逃げるには手遅れになるまでは、標的となっているという事実を相手に気づかせず、任務を遂行することができる。これほど長距離の標的を追撃できる空対空ミサイルを保有すれば、少なくとも紛争の初期段階において、対空任務のために戦術航空戦力や支援機を前線深く、危険な地域にまで展開させる必要性が低くなる。長距離兵器を用いて戦力を増幅させる重要な航空機を排除することで、従来の対空戦力パッケージの生存性を高める条件が整うことになる。

AFLRWは、後方地域にある高価値目標を脅威にさらす新たな手段を提供するだけでなく、空軍機に対し、戦術的最前線に近い目標を攻撃するためのさらなる柔軟性を与えることになる。ただし、必ずしもその時点で機体が飛行している場所の近くにある目標を攻撃できるとは限らない。前述の太平洋シナリオにおいて、空中および海面での活発な戦闘地域は、数千平方マイルに及ぶ広範なゾーンに点在する可能性がある。

前述の通り、空軍は対空脅威の射程が拡大中と見ている。発射プラットフォームへのリスクを低減するためには、一般的にスタンドオフ型兵器の射程をさらに伸ばす必要がある。AFLRWの射程に関する提言は、米軍が敵の「アクセス拒否・領域拒否(A2/AD)」の防護圏を突破する上で、特に中国が確立し、拡大を続けている中で、ますます大きな課題に直面すると暗に認めている。また、これは、持続的な空中戦闘作戦に必要な味方の空中早期警戒管制機給油機、その他の支援航空資産に対するリスクが高まっていることも浮き彫りにしている。中国の空対空ミサイルはすでに米国の同種ミサイルを上回る射程を有しており、米国は現在、AIM-174やAIM-260などを通じてこの状況を打開しようとしている。

1,000海里の射程を持つ実用的なAFLRWを開発するには何が必要か、また、そのような射程を持つミサイルを搭載できる機体にはどのようなものがあるかについては、疑問が残ったままだ。留意すべきは、空軍が将来、B-21レイダー爆撃機空対空戦闘で大きな役割を担う可能性について公に言及している点である。これには、対空ミサイルを満載した「武器運搬機」としての役割も含まれる可能性がある。前述のASALMもまた、主に爆撃機からの運用を想定して設計されたものである。B-21含む爆撃機にとって、AFLRWは、目標地域に到達する数時間前から、空中および地上の脅威に対処する貴重な手段を提供することにもなるだろう。

空中給油試験中に撮影されたB-21レイダー爆撃機の試作機。USAF

AFLRWは、時間的制約のある標的や、その他一過性の標的を攻撃する上で有効であるためには、非常に長い飛翔距離を、少なくとも比較的迅速にカバーしなければならない。これには多段式あるいは空対地弾道ミサイルのような設計、あるいはさらに斬新な設計が必要となるかもしれない。

また、これほど極端な距離での標的捕捉という課題もある。これらの兵器は、発射元のプラットフォームが生成するセンサー情報や標的情報に依存することはない。何よりもまず、AFLRWは、デフォルトで、広大なネットワーク層にわたって三次センサーやその他の支援要素を統合する高度にネットワーク化された「キル・ウェブ」の一部となる。その「ウェブ」は、空・陸・海・宇宙、さらにサイバー空間の各領域にまたがり、空軍以外の米軍の資産も組み込まれることになるだろう。

何よりも、この兵器の実用化において、宇宙ベースの航空機追跡層が極めて重要となる。空軍が2024年に発表した将来の脅威に関する報告書も、この点を確認している。米軍自身も、まさにこうした長距離キルチェーンを念頭に置き、世界規模で「ゲームチェンジャー」となり得る持続的な空中および地上移動目標検知(AMTI/GMTI)能力を提供するため、新たな分散型衛星コンステレーションの配備に積極的に取り組んでいる。潜在的な標的と視線内の前線で活動する極めてステルス性の高い航空機も、これらの兵器を運用するもう一つの手段となる。米空軍もまた、まさにそのようなプラットフォームを保有している。

AFRLWの空対空および空対地バージョンに関する空軍の計画や、同軍がこれらのミサイルに求めるその他の要件については、まだ解明すべき点が多い。8月に予定されている「インダストリー・デイ」の会合では、どのような選択肢がどの時間枠で利用可能になるかについて、空軍にさらなる情報が提供されることになるだろう。

いずれにせよ、空軍は1,000マイル離れた場所にある航空機を撃墜できる解決策を求めていることを公に明らかにした。これは、今後数年間において敵の防護圏を突破する能力について極めて強い懸念を抱いていることを示す、国防総省がこれまで発信してきたあらゆる兆候と一致している。そして何よりも、これは「キル・ウェブ」が真の王となる、ネット中心型戦争の新時代を予告している。■

ジョセフ・トレヴィシック

副編集長

ジョセフはTWZの副編集長として、同サイトの経験豊富で献身的なチームの統括を支援するとともに、有益かつ影響力のある防衛・国家安全保障に関するコンテンツを執筆している。彼はその最前線であるワシントンD.C.エリアに在住している。