Photo by Adri Salido/Anadolu via Getty Images)
―バイデン政権がなりふりかまわず路線変更してまでウクライナへの支援を強化しているのはトランプ大統領をにらんだというより、それだけウクライナ戦況がきびしくなっているからでしょう
地雷は、ロシアの"肉弾攻撃"を封じ込めるためウクライナに提供されているが、物議を醸し出している
米国防総省は木曜日、ウクライナに対人地雷を初めて提供すると発表した。
最大2億7500万ドルの最新の大統領権限パッケージ(PDA)が水曜日発表された。地雷について具体的な言及はなかったが、国防総省は、地雷が最新のPDAの一部であることを確認した。このことは、ウクライナが、敵軍の前方、上方、後方に地雷を撒くように設計された砲弾発射型地域拒否砲弾(ADAM)を与えられている可能性が高いことを示している。
ADAMを示唆する指標は他にもいくつかある。 ウクライナはに7万発の対装甲型地雷散布砲弾を受領しており、地雷散布砲弾の発射に必要な榴弾砲を保有している。ウクライナに供与される対人地雷能力の中に、リストに挙げられていない別のタイプがある可能性もあるが、上記の要因やウクライナの緊急の戦場でのニーズからすると、その可能性は低いと思われる。
155mm ADAM弾にはM692とM731の2種類があり、どちらも36個の地雷を内蔵している。この弾丸もまた同じように機能し、飛行中に設定された地点に達した後、後端から地雷を放出する。
米陸軍研究開発・技術軍団
M692とM731の違いは、中に入っている地雷の種類にある。 M692にはM67が、M731にはM72が入っている。M67は約48時間、M72は約4時間である。
それ以外の点では、陸軍野戦教範20-32によれば、M67とM72はそれぞれ「8本のトリップワイヤー(上部に4本、下部に4本)を備えており、地雷から12メートルまでの地面衝突後に展開する」。 「トリップワイヤーは極細の糸に似た外観で、オリーブドラブグリーン色をしており、自由端に重りが付いている。 トリップ・ワイヤー1本に405グラムの張力が加われば、電気回路が遮断され、地雷が起爆する。
M67とM72はそれぞれゴルフボール大の手榴弾のような爆薬を内蔵しており、陸軍のマニュアルによれば「爆風と破片の複合効果で敵兵を殺す」ように設計されている。「榴散弾は地雷から上方および外側に推進され、15メートルの距離で致命的な死傷者を出す」。
M67とM72のケーシングには、0.01グラム弱の劣化ウランが含まれている。
米陸軍研究開発・技術軍団
ウクライナ向けの直近の支援パッケージには、その他の米国製対人地雷も含まれている可能性があるが、明確には特定されていない。地上に設置された発射装置で散布できる対人地雷や対戦車地雷、ヘリコプターに搭載された地雷、空から投下されるクラスター弾などを含むゲーターファミリーの地雷は、少なくとも限定的に米国で使用されている。旧式の散布可能な地雷や、GEMSS(Ground Emplaced Mine Scattering System)のような地雷散布方法も、まだ保管されている可能性がある。
米軍はまた、朝鮮半島で紛争が再開した場合に使用するため、手作業で設置する対人地雷の備蓄を韓国に保持していると伝えられている。
一般に地雷、とりわけ対人地雷は、紛争が終わった後も民間人に潜在的な脅威を与える可能性があるため、議論の的となっている。M67地雷やM72地雷、ゲーター地雷のバッテリー寿命の制限は、その脅威を減らすことを意図しているが、地雷内の爆薬を不活性化するわけではないので、依然として深刻な危険をもたらす可能性がある。
1997年のオットーワ条約は対人地雷の備蓄と使用を禁止しているが、米国もロシアも批准していない。ウクライナは同条約の締約国である。 しかし、2022年現在、米国政府の公式見解は「朝鮮半島以外のすべての活動について、...政策と実践をオタワ条約の主要条項に合わせる 」となっている。
米陸軍研究開発・技術軍団
ウクライナへのADAM提供は、ロシアがいわゆる「肉弾攻撃」で陣地を攻撃する大規模な人員の波戦術に対抗するために決定された。こうした攻撃は何年も前から行われているが、特に現在はウクライナ東部とロシアのクルスク地方で行われている。ロシアはこの方法で徐々に地歩を固めつつあるが、人員や装備の損失という点で、信じられないほど高い犠牲を払っている。
ロイド・オースティン米国防長官は、こうした進撃を鈍らせる兵器がウクライナに必要だと言う。
オースティン米国防長官は水曜日、ラオスで記者団に次のように語った。「ロシア軍がこれまでの戦い方であまりにも失敗したため、戦術を少し変えたということだ。機械化部隊に道を開くために、接近して行動することができる歩兵部隊を率いている」。
ウクライナは「ロシア側の努力を遅らせるのに役立つものを必要としている」と同長官は見ている。
ウクライナは国産で地雷を作っているが、オースティン長官は、アメリカから提供された地雷は「非永続性」と呼ばれるもので、理論的には一定時間で作動しなくなるため、ウクライナ製地雷より安全だと指摘した。
オースティン長官は、ウクライナはこれらの兵器を「責任を持って」使用すると約束しており、ウクライナ国内でのみ使用されるものだと主張した。 また、オースティン長官は、米国はすでにこれらの弾薬の対戦車バージョンである遠隔対装甲地雷システム(RAAMs)弾を提供していると指摘した。
国防総省の最新の統計によれば、300万発以上の通常型155mm砲弾に加え、米国は7万発以上のRAAMをウクライナに発送している。
しかし、ウクライナがADAMをどのように配備するかについて、アメリカは限定的な監視しかできないだろうと、ペンタゴンの副報道官は木曜日の午後に本誌含む記者団に語った。
「しかし、民間人を保護するためにADAMを使用するという確約は得ている」とサブリナ・シン副報道官は説明した。「彼らは自国の領土内で地雷を使用することを確約している。そして、人口密集地では使用しないと付け加えている」。
ウクライナは、地雷をできるだけ安全に敷設することに関心がある、とシンは指摘する。
戦後、ウクライナはロシアが設置した地雷のほか、戦場で使用されたあらゆる不発弾を除去するため、大規模な地雷除去作業を行わなければならなくなる。
ロシアの地雷が散乱している広大な戦場の大部分で、ウクライナはすでにこの作業を行っている。ウクライナが2023年の反攻に失敗した際、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ウクライナの領土の20万平方キロ(77,220平方マイル)にロシア軍が地雷をおいたため、前進を遅らせていると述べた。
「ロシア軍が奪還した領土の一部で、このような作戦を実施しているのを我々はすでに目にしている」とシンは指摘した。「米国は除去作業を援助することを約束する」。
英国国防情報局によれば、先月はロシアにとってこの戦争で最も犠牲者の多い月だった。
ウクライナ軍参謀本部の統計を引用し、1日平均のロシア軍の死傷者数は1,354人だったという。一ヶ月の死傷者数は41,900人で、5月の39,100人を上回った。11月はさらに血なまぐさいスタートを切っており、11月12日現在で一日平均1,498人が死傷している。
これらの統計によれば、ロシアは70万人以上の死傷者を出している。なお、死傷者数は情報源で大きく異なるため、本誌が独自に検証することはできない。
これらの死傷者数は、兵士の損失に対するロシアの寛容さと、戦場での目標を達成するために兵士を犠牲にする意思を示している。そのため、ウクライナ軍に多大な負担がかかっている。
このことを念頭に置いて、ウクライナにADAMを提供する目的は、ロシアの死傷者数を増やし、ロシアの部隊の自由な作戦行動能力を低下させ、削り取られるような前進を減速させることである。これらはすべて、ロシア軍が前線沿いの一触即発の地点でかけている圧力を軽減するのに役立つだろう。
ドナルド・トランプが2カ月後に大統領に就任するため、何らかの交渉が近づいている可能性は高い。ただし、ウクライナは失ったものは一寸たりとも取り戻すことはできないだろう。
それでも、対人地雷をウクライナに供給する動きは、アメリカにとっても前例のないものであり、紛争の不安定な状態を浮き彫りにしている。■
Anti-Personnel Landmines Included In U.S. Aid Package To Ukraine For First Time
The controversial landmines are being provided to Ukraine to help contain so-called Russian "meat wave" assaults.
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