スキップしてメイン コンテンツに移動

奇抜で不可解な中国の新空母が出航した(The War Zone)―世界の「常識」が通用しない中国で、短時間で建造された同艦の用途や狙いがこれから西側で論議の対象となりそうです

 


A mysterious Chinese vessel with a large open flight deck, which TWZ was first to report on, looks to have made its maiden voyage.  

Chinese Internet capture via X



不思議な形状の空母は海上航行中で、その設計と目的について詳細が明らかになりつつある


誌が最初に報じた、大きな飛行甲板と3つの上部構造を持つ謎めいた中国艦船が処女航海を行ったようだ。現在のところ、軍事用というよりは商業用マーキングが施され、中国海軍の他のどの艦艇とも異なるこのフラットトップについての詳細はまだ不明だ。表向きは民間の研究船ということだが、世界初の艦である可能性も残っている。

 この船が自力で航行しているように見える動画と、舷側から撮影された静止画がネット上に公開された。どちらもソーシャルメディアへの投稿に見られるもので、075型水陸両用戦艦と誤って特定されている。

 この艦は、飛行甲板の右舷側に沿ってアイランド構造物が3つある特徴的な配置をしている。艦首の端に小さなアイランドがあり、艦橋と伝統的なマストがあり、レーダーやその他のセンサーと思われるものが設置されている。中央には、より長く背の高い多層構造のアイランドがあり、先端にはボールレドームがある密閉マスト構造がある。この種のマストには、スラブ側面に沿って追加のセンサーやシステムが設置されていることが多い。また、後方に向いた艦橋もある。これは、複数のアイランドを持つ空母のレイアウトで一般的に見られるもので、航行中の他の作業から飛行作業を切り離すためのものである。船尾に向かう最後のアイランド構造物には、一連の排気筒がついている。


3つの「アイランド」の構成とマストを示す謎のフラットトップの別の眺め。 Xによる中国のインターネットキャプチャ


この静止画では、艦尾にオープンスペースがあり、使用時に折りたためるゲートのついたウェルデッキの存在を示しているのかもしれない。 左舷の艦尾に向かって開いているスペースは、メインデッキと左舷の格納庫デッキの間で航空機やその他の機器を移動させるエレベーターに接続されているように見えるが、内部に救命ボートがあるのが以前に目撃されている。内部のスペースに格納された小型ボートやその他のペイロードを発進・回収するためのクレーンらしきものも見える。


左舷側をよく見ると、艦中央の側面のスペースに収納されたクレーンと思われるもの、さらに船尾に向かう船体側面のスペースには救命ボートが収納されており、一番艦尾にはオープンエリアがある。 X経由中国インターネット


以前公開された写真には、排気筒構造の左舷側に国営の中国国家造船総公司(CSSC)のロゴと、艦首の側面にラテン文字とその上に漢字で書かれた艦名と思われる「Zhong Chuan Zi Hao」が写っていた。 明らかな軍用マークはない。このフラットトップは、広州市の南東、龍雪島にある広州造船国際公司(GSI)の施設で建造された。 GSIはCSSCの子会社である。

 ドックから離れたフラットトップの新しいビデオと写真は、この船が非常に速いペースで製造されていることを示す最新の証拠である。   本誌が以前レビューしたPlanet Labsによる衛星画像によると、建造は今年5月以降に開始され、艦は9月10日から10月9日の間に進水した。


2024年10月23日に撮影された広州国際造船所の衛星画像。大きな飛行甲板を持つ新しいクラスの中国船が写っている。 photo © 2024 planet labs inc. 


 同艦の目的やオペレーターが誰なのかは、まだ明らかになっていない。 本誌が以前書いたように新クラスの軽空母、水陸両用強襲揚陸艦、あるいは海上基地型艦船は、PLANに追加作戦能力を提供する可能性がある。 

 商業基準に近いかたちで建造されたシンプルな設計で、有人操縦ヘリコプターやドローンを中心とした航空部門を持つ艦としても、特定の任務を支援する上で非常に理にかなっている。 

 特に台湾海峡や南シナ海周辺でのプレゼンス作戦が含まれるかもしれない。このような艦船は、対潜水艦戦や水陸両用作戦の支援にも役立つだろう。

 その他造船所でも建造できるというだけで、PLANは海軍航空やその他の能力の拡大をさらに加速させることができるだろう。

 同時に、大きな飛行甲板を持つ新型艦が広州に出現した背景には、中国独自の説明もあるかもしれない。少なくとも2022年以降、中国政府の入札資料とされるスクリーンショットがインターネット上に出回っている。中国語テキストを機械翻訳すると、「ダブル・アイランド型上部構造」を特徴とする何らかの飛行甲板を備えた、海洋調査やその他の試験・研究活動用の「大型特殊甲板作戦」船を求めていることがわかる。  また、「貫通型直線甲板」と船尾の「ドック・コンパートメント」の要求もあり、これは多くの水陸両用艦に見られるような浸水可能なウェル甲板を指している可能性がある。 全長200メートル、幅25メートルの飛行甲板、排水量15,000トン、最高速度16ノット以上、航続距離5,000海里(巡航速度12ノット)、最大洋上耐久日数40日、などが要求されている。

...

 強襲揚陸艦のように構成された非軍事船は、現在世界のどの国も運用していないが、科学やその他の民間任務を遂行するために、飛行ドローンや乗組員のいるヘリコプター、水上機(乗組員と非乗組員)を使用することができるだろう。同時に、もし要請があれば、先に述べたような軍事的任務を支援するためのデュアルユースプラットフォームとしての役割も果たすことができるだろう。


2024年9月10日に撮影された衛星画像で、GSIのヤードで乾ドックに入ったままの新型大型甲板ミステリーシップ。 photo © 2024 planet labs inc. 無断転載を禁じます。 許可を得て転載


また、この謎のフラットトップは、特注のトレーニング、テスト、デモンストレーション用の船舶である可能性もある。

 この不思議な "空母"が海上に出たことで、その設計と目的についての詳細が明らかになるかもしれない。現時点で、世界のどこにもないユニークな存在であることが示唆されている。■



China’s Wacky And Puzzling New Aircraft Carrier Has Set Sail

With the curious carrier now at sea, more details about its design and purpose may begin to emerge.

Joseph Trevithick

https://www.twz.com/sea/chinas-wacky-and-puzzling-new-aircraft-carrier-has-set-sail


コメント

  1. 素人考えでは、各種実験を行う船に思える。 巨大な中央艦橋は研究員が詰めるオフィスであり、電磁波・各種航空機類・水上と水中用の機器の試験をなんでもできる。 中国において「民間」が何を意味するか不明な部分があるが、この船を直接戦闘に使用するには洗練されていない様に見える。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...