UCLASSなど革新的な無人機構想をことごとく廃案にしてきたのは海軍航空士官をトップとする組織内圧力団体であると判明しました。今回の記事の情報源はそのヒエラルキーに煮え湯を飲まされている向きなので多少割り引く必要がありますが、海軍の次期主力戦闘機がスーパーホーネットの焼き直しとなっては意味がありません。米海軍からステルス性重視はもうしないとの姿勢が示されていた背景にはこんな考えもあったのですね。そうなるとF-35Cを継子扱いするのもうなづけるところです。米空軍との共同開発など全く可能性がありません。
US Navy's Sixth-Generation F/A-XX Fighter: Just a 'Super' Super Hornet?
July 26, 2016
- 米海軍には2030年代以降の脅威環境の中で空母搭載戦闘機を運用構想で一貫した考えが欠乏しているようだ。National Interestが各種筋に聞いたところ海軍のF/A-XXでは接近阻止領域拒否A2/ADや新世代の敵側軍用機がいる中では対応できないことが判明した。その一方で海軍はF-35Cの効果には懐疑的なままだが、同機が時代の要求内容のほとんどに応える唯一の機体となる。
- 「将来の空に高性能地対空ミサイルのS-300やS-400が登場する予想の中で海軍航空兵力でこれまでの流れに固まった思考の先へ進む必要があるでしょう」と新アメリカ安全保障センターの国防戦略評価事業をまとめるジェリー・ヘンドリックスは述べている。
- 脅威は確かにあるが米海軍はロッキード・マーティンF-35C共用打撃戦闘機の空母配備は少数に留めて2030年代を迎える。海軍に近い筋の話では単発の同機の性能には海軍はもはや不安を感じていないが、ペンタゴンのN98航空戦部は海軍航空システムズ本部(NAVAIR)とともに同機の価格に高い懸念を示しているという。「あまりにも短絡的な見方だと思いますよ。価格水準が期待通りに下がっていないので気にしているのです」とその筋は語る。「新型機一個飛行隊は10機構成でホーネット飛行隊12機より少なくなるのは予算が足りないからだと言っています」
- ヘンドリックスによれば問題は単純だ。空母の予算項目が残っていても新型機が非常に高価になれば機体は多数導入できなくなる。「予算が増えない状況で追加の財源もないと機数を減らすしかないでしょう」
- F-35Cの機体価格が高いため、海軍もできることなら共用打撃戦闘機開発から抜けたいところだと消息筋も認める。理想的なのはF-35Cは避けて直接F/A-XX実用化を目指すことだ。「F-35Cが遅れればニーズに合わせて作れるF/A-XXが手に入ると海軍は考えている」と消息筋は語る。「だが今のところF/A-XXは絵に描いた餅で、しかもDOD(国防総省)上層部から却下されたのです」
- 外部専門家にはF/A-XXを超音速巡航、ブロードバンド全方位ステルスの第六世代戦闘機あるいは新型長距離無人ステルス爆撃機になるとの意見が多いが、海軍の考えるF/A-XXはもっと平凡だ。海軍はF/A-XXを有人機想定としてだけでなく、F/A-18E/Fと比べてもレーダー断面積、航続距離を除けば大きな性能差は想定していない。「海軍が目指すのはF/A-18そっくりの機体で若干きれいに近代化した機体です。スーパー・スーパーホーネットですね。S-300やS-400の配備地点では運用不可能です。RCSが対応していませんからね」
- この妙なF/A-XXコンセプトの背景にスーパーホーネットのパイロット、ウェポンズシステムズ士官の一団がF/A-18ロビー団体になっていることがある。「スーパーホーネット・ロビーは海軍航空隊の伝統を体現しているのです」と前の消息筋は語る。「ボーイングにも近く、結局ボーイング好みの設計に戻してしまうのです」
- 海軍の航空部門がDOD上層部のみならず海軍長官レイ・メイバスからも圧力を受けている理由に F/A-XX設計を極度に保守的に考えており、F-35Cより相当低い性能で想定している点があると消息筋は語る。国防総省特にロバート・ワーク副長官はメイバスとともに高性能の長距離ステルス爆撃機を想定していたのだが、スーパーホーネット・グループはこれが気に入らない。
- 同じ消息筋によればスーパーホーネット・グループはまず無人空母発進偵察攻撃機(UCLASS)構想を葬り去ったが消息筋は敵地奥深くまで侵攻できる無人機が出現すれば戦闘攻撃機部隊の地位が脅かされるためと解説した。「要は自分たちの地位を正当化しているのです」
- だが国防総省と海軍長官は繰り返し長距離攻撃能力整備の方向性えを示し、スティングレイ空母搭載自律給油機という隠れ蓑で結局実現することになった。「海軍航空部門は少なくとも二回、主張を拒絶されている。しかも同じ内容を提案して」と消息筋は語る。「F/A-XXはまるでスーパー・スーパーホーネットにしか見えません」
- 国防総省の反対意見を受けて海軍省は海軍航空戦力の将来像の決定をクリントンあるいはトランプ政権誕生後まで意図的に先送りしている。「現政権の任期が終われば予算割り当て増を期待し、F/A-XXを差し出すか、F-35の購入を終了して本当に海軍が欲しいものを手に入れるのではないか」と消息筋は述べる。
- その反面、空母航空隊主力は2030年代中盤まで第四世代のボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットのままだ。スーパーホーネットで2030年代の脅威環境に対応できるのかとの問いに海軍航空システムズ本部は「NAVAIRによる分析とNAWCが2030年代のA2/AD想定環境での課題、制約、作戦能力要求を定義しようといています。さらにOPNAVでは将来必要となる性能を優先順位付けしています」との声明文を送ってきた。「海軍は今後も空母航空部隊各機で必要な性能とともに敵装備の性能も併せて検討してロードマップ並びにフライトプランを作成し技術成熟化、導入、展開を目指し有効な戦力を2030年代でも確保します。NAVAIRはOPNAVと連携して機種別の将来投資計画を作成します。F/A-18、EA-18G、E-2C/D、JSFなどが対象です」
- ブライアン・マグラスはフェリーブリッジ・グループ海事コンサルタンシーの経営幹部で、空母航空隊は2030年でも現在と大差ない陣容にと述べており、少数のF-35Cが高度防空体制空域で飛行するのが違いと見る。「スーパーホーネットは今と大差ない任務についているでしょう。厳しい環境ではステルス攻撃機F-35Cの出番となり、航空隊はシステムとして機能する必要がありますので、グラウラー隊がジャミングでスーパーホーネット隊に活躍の機会を作るでしょう」「今後15年で精密長距離攻撃兵器が標準となるはずです。スーパーホーネットはスタンドオフ攻撃機になります」
- ブライアン・クラークは戦略予算評価センター(CSBA)の主任研究員で海軍統合火器管制対空(NIFC-CA)システムが2030年代以降の空母航空作戦でカギになると見ている。オプションの一つとして「F-35CあるいはBをステルスISR機材として投入しパッシブで敵目標を探り、安全なデータリンクでF/A-18E/Fの『ミサイルトラック』がスタンドオフ地点に待機しているところへ連絡する」ことがあるという。ただ「今日と同様にF/A-18E/FがE/A-18Gの保護の下にスタンドオフ兵器攻撃を行うこともあるが、F-35Cもジャミング機材として使えるだろう」と述べる。
- さらに海軍はMQ-21スティングレイ無人給油機を「ISR機材として標的情報を安全にデータリンクでF-35Cへ送り、F-35CはC2センターとして攻撃対象を各機に割り振ることもできるはず」とクラークは言う。もし海軍がF/A-XXをF/A-18E/F退役後の穴を埋める機材として見ているのであれば、スーパースーパーホーネットがNIFC-CAの仕様に適合した形になっていてはじめて意味が出てくる。NIFC-CAではE-2D高性能ホークアイからイージス巡洋艦駆逐艦まですべてを結ぶ。
- それでも問題は海軍が将来の空母航空部隊がA2/AD環境でどう戦うべきかの明確な答えをまだ準備していないことだと消息筋はいう。「海軍航空部門は長期的な視野で考えることを拒否し、脅威環境も同様に考えていないのです」と消息筋は述べ、「もう将来の脅威環境ではないですよ。現在の脅威環境です。もしロシアがA2/ADのバブルをシリアに広げたら、もしS-400をシリアに投入したら、F/A-18ホーネットでは対抗できなくなります。つまり海軍は東地中海から締め出されることになりますね」■
Dave Majumdar is the defense editor of The National Interest. You can follow him on Twitter @DaveMajumdar.
技術の進歩を自分たちの利益のために阻害する典型的かつ最悪な例ですね。
返信削除このスーパーホーネットのパイロットたちは全員不名誉除隊にでもしてやればいいと思います。