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★歴史に残らなかった機体 その3 YF-23



後世から見ればF-22およびF-35の採択が伝統的な単座小型戦闘機の時代の最後を招いたといえるのかもしれません。確かにYF-23の方が未来的な機体だったようですが、採択されていれば戦闘機主義が温存されるだけの結果になっていたかも。筆者は戦闘機が頂点の空軍戦力構造や組織構造には疑問を感じています。皆さんはどう思われますか。


A Look at the Plane that Lost Out to the F-22

ROBERT FARLEY
Yesterday at 3:27 AM


  1. 高性能戦術戦闘機(ATF)競合選定は冷戦末期に実施され、驚異的な戦闘機設計が二案生まれた。結局、選定に残ったのはロッキード・マーティンF-22ラプターで21世紀初頭では最高性能の制空戦闘機であるといわれる。敗れたノースロップ・グラマンマクダネル・ダグラスYF-23は現在はトーランス(カリフォーニア)とデイトン(オハイオ)の両博物館を飾っている。
  2. ではペンタゴンはどのようにF-22を採択したのか。その影響はどうあらわれているのか。内情を知ることは不可能だが、供用中のF-22ラプターがペンタゴンの苦境を数回に渡り救ったのは確かだろう。
  3. ATF競作の背景には1980年台初頭にソ連がMiG-29とSu-27の新型機を投入し米空軍の「ハイローミックス」F-15/F-16に対抗する動きを示したことがある。ATFは米空軍の優位性を改めて確立し、特にステルスでソ連を一気に引き離す狙いがあった。
  4. そのためATF候補のいずれにせよ成功をおさめることが支配観念となった。選考途中でソ連は崩壊し、ヨーロッパ大手は同じ土俵(ステルス、スーパークルーズ、センサー融合)で競合せず、F-22またはF-23が21世紀最高の戦闘機になるのは確実だった。問題はどちらが投資対象として残るかだった。それぞれ有利な側面があった。YF-23はスーパークルーズ性能が抜きん出ており、ステルス性能もF-22を凌駕していた。F-22はより簡易な構造で設計は手堅いものがあったが、機動性が優れ、高性能ドッグファイターになっていた。
  5. F-22選定の背後に政治と行政の要素がからみあっていたのはデイヴ・マジュンダーの指摘通りだ。B-2とA-12の両案件でノースロップ、マクダネル・ダグラス両社に振り回されたペンタゴンはロッキードを優遇した。米海軍はF-23を忌避し大幅改修したF-22の海軍仕様に期待していた。つきつめればF-22(およびある程度までロシアの対抗策PAK-FA)はジェット時代の制空戦闘機の究極の姿といってよい。想定される空戦場面でいかなる敵も撃破しながらステルス特性を活かして危険な状況でも交戦(あるいは退避)が可能だ。
  6. ATF選定がソ連崩壊と機を一つにしていなければ、YF-23に採択の可能性が十分にあったはずだ。同機の特徴は高度な内容で十分な性能と投資価値があった。さらにF-23をF-22と並行して生産していれば米国防産業基盤の温存には効果が高かっただろう。ロッキード採択でボーイングとマクダネル・ダグラスの統合に繋がったのは明らかだ。
  7. YF-23ではF-22ラプターを悩ませた問題とは無縁だった。コスト超過もなく、技術問題もなく、ソフトウェア不具合やパイロットを死に追いやった吸気配給装備の問題もなかった。対テロ戦が拡大する中でロバート・ゲイツ国防長官(当時)はF-22生産を187機で打ち切ったが、問題が山積する中の決断だった。理解できる決定とは言え、米空軍は戦闘機の機数不足をF-35だけで補う必要に迫られた。
  8. YF-23の開発が順調だったなら(大きな仮定の話だが)、同機の供用開始時にさほど困難な状況は生まれていなかったろう。だがYF-23の方が革新的設計(つまり高リスク)で、期待単価がやや高かったため、、問題なく供用開始になっていたか疑わしい。その結果、生産が滞れば米空軍にはさらに少ない機数しか使えない状況になっていたかもしれない。
  9. YF-23には第六世代戦闘機と言って良い特徴があり、空軍が想定する「長距離戦闘機」としてB-21レイダー爆撃機の護衛に同行できる性能があった。V字尾翼は初期のコンピュータ解析で次世代戦闘機として採択されたと言われる。ボーイングが新型戦闘機を設計する際にF-23の経験則をひっぱりだしてくるのはまちがいないだろう。
  10. YF-23試作機のうち一機はオハイオ州デイトンにある米空軍博物館内の不採択機格納庫(旧研究開発ハンガー)に鎮座していた。同機の隣にはXB-70ヴァルキリーが展示されており、同博物館の目玉となっており、両機とも最近新たにオープンした四号棟へ移動し、今後も違う未来の一部となっていたかもしれない機体として来場者の注目をあつめるだろう。同時に米航空兵力の産業面、組織面での現実を表す象徴でもある。■

Robert Farley a frequent contributor to TNI, is author of The Battleship Book .He serves as a Senior Lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky. His work includes military doctrine, national security, and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money and Information Dissemination and The Diplomat


コメント

  1. 空軍の主目的は制空にあり、戦闘機が頂点に来るのは有りだと思う。けれども対地支援や空輸なども重要性は高い訳で、戦闘機最重視を維持しつつ地上支援や輸送力に余力を注ぐのが、少なくとも侵攻作戦などを積極展開しない軍隊には最低限必要となる要素だと思う。

    アメリカなどは地上展開する部隊の増強・支援が多いので制空戦闘機は肩身が狭くなり、結果としてF-35にも問題として繋がるんでしょうけどね。

    返信削除
  2. >>YF-23ではF-22ラプターを悩ませた問題とは無縁だった。コスト超過もなく、技術問題もなく、ソフトウェア不具合やパイロットを死に追いやった吸気配給装備の問題もなかった。

    ↑これってF-22の全規模開発以降に発生した問題であって、全規模開発に進めなかったYF-23と比べるのはおかしいんだよなー。
    ライターも分かっていて書いているんだろうけど。

    返信削除

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