ホームズ教授のいう第二次大戦式の大量建造は夢にすぎませんが、平時から戦力を着実に増強することには賛成です。16隻だった潜水艦部隊を今後日本は増やして20隻超にもっていきますが、同数の米通常型潜水艦が加わり30隻-40隻になればその三分の一程度つまり10隻強が日本近海のどこかにあるわけで相当の抑止力になります。日米合同潜水艦運用体制の整備には軽く20年かかりますから実施するなら早いほうがいいですね。空母、原子力潜水艦共に米海軍で確立された価値観なのでこれを打破するのは大変な負担になります。
Pay Attention: These Are the Submarines the U.S. Navy Needs
この潜水艦が米海軍に必要だ
Go silent, go diesel.
by James Holmes
March 15, 2019 Topic: Security Blog Brand: The Buzz Tags: SubmarinesMilitaryTechnologyWorldSSKSSNChinaJapan
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米海軍がディーゼル電気推進潜水艦部隊を導入すべき理由は十分すぎるほどある。まずSSK部隊は西太平洋で抑止力になる。抑止力は艦の性能とともに明確な決意から生まれる。さらに大国として残ることになる。相手能力を打ち負かすのが困難とわかれば戦火を開いて敵は青ざめる。端的に言えば弾性を有する側が抑止力を発揮する。開戦となれば巧みに配置したディーゼル潜水艦が米国並びに同盟国、特に日本の立場を有利にするはずだ。
通常動力潜水艦の調達を再開すべきだ:SSK部隊は連合軍部隊の中核となる。艦体を海上自衛隊(JMSDF)と共通化し合同潜水艦部隊を編成し、問題海域に常駐させれば同盟国の防衛に米国がリスクを恐れていないと日本へ示せる。日本は常駐潜水艦部隊で米国への信頼を高め同盟関係が強化される。
言い方を変えれば米国が日本部隊と共同展開することで日本は孤立する恐れを抱かなり、太平洋で不穏な事態があっても米国が常にそばにいてくれるとわかるはずだ。同盟国友邦国を信頼する意味は米国にとって大きい。米国はアジアに領土がなく、戦略的足場がない。米海軍部隊の一部を多国籍部隊に編入すれば団結を強める効果が生まれ、米海軍は関係国の港湾アクセスが保証される。
戦略状況に適した潜水艦になる。各国の海軍戦略は中国やロシアの艦船活動を第一列島線内で抑えることが目的だ。原子力潜水艦推進派はディーゼル艦は海峡封鎖や狭い海域専用だとし、SSNの優位性を列挙してくるだろう。たとえば無制限の潜行や高速巡航性能だ。はい、証明終わりというわけだ。
だが実は違う。SSKでSSNと同じ性能を発揮する必要はなく、仕事を着実にこなし調達価格が安ければ良い。原子力潜水艦推進派にはディーゼル潜水艦が長く果たしてきた効果を低く見る傾向がある。米海軍太平洋艦隊の潜水艦部隊が第二次大戦中に日本帝国海軍を大いに苦しめたのがまさしく第一列島線が舞台だった。JMSDFも同様の戦術をソ連、中国相手に冷戦中に展開した。両国の海軍は列島線戦略で高い効果を上げ、しかも当時のディーゼル潜水艦は現在よりずっと初歩的な艦だった。史実を否定したSSK反対論には説得力がない。
連合軍潜水艦部隊にSSNの高速性能、無期限潜行能力は列島線防衛で不要だ。SSNが優れた性能を発揮するのは外洋での戦闘だが防御任務では過剰性能となり運用経費が高くつく。米日合同戦隊の潜水艦は水上艦と協調し封鎖線を引く。島しょ部にはミサイル装備の陸上部隊、上空は航空機が飛び、機雷敷設も計画的に行う。哨戒潜水艦はその中で静かに潜み、列島線沿いに姿を探知されずに攻撃の機会を待つ。
ディーゼル艦で上記全部がこなせる。連合軍に十分な数の哨戒艦があれば定期ローテーションで常時警戒待機できる。哨戒中の喪失艦の補充用に予備艦も必要だろう。米日合同部隊の潜水艦部隊に琉球諸島まで定期的配備できる隻数が必要だ。JMSDFは19隻に拡充する予定だが、本当はもっとほしいところだ。さらに十数隻の米国艦を加え合同布陣をしけば予備艦も含め十分な規模の潜水艦部隊が生まれ攻勢に転じても運用でき黄海や東シナ海、オホーツク海での水上艦攻撃を想定する。
当面はこれが整備できれば適正規模であり、SSNと比べてはるかに安価に整備できる。単価の違いは隻数が増えれば高くなる。日本が建造した最大規模のディーセル艦そうりゅう級の単価はは米海軍の最新鋭ヴァージニア級SSNの五分の一、すなわち6.31億ドル対32億ドルである。ただし米海軍が議会と建艦にからむと価格の差は1対4になるだろう。つまり米海軍はヴァージニア級3隻分の予算で12隻のディーゼル艦部隊が整備できる。
あるいはSSKの建造でSSNを削るより沿海域戦闘艦がSSK相手に意味のある攻撃力を発揮できないので一対一で取替てもよい。最新のLCSは単価6.46億ドルでそうりゅうの6.31億ドルに近い。LCSを断念しても(今年の国防予算要求では3隻を計上している)海軍に悪い話にならないはずだ。
ディーゼル艦配備には同盟国との政治、戦略地図、予算執行での効果も期待できる。戦闘では戦闘力の迅速回復が戦勝につながる可能性が最も高い。海洋戦略の師アルフレッド・セイヤー・マハンやJ・C・ワイリーも同じ意見だ。両名は米国が大国間戦闘の開戦時に甚大な被害を受けてもその後逆転すると予言した。これはトランプ時代のペンタゴンが想定する戦闘の推移と同じだ。
その結果どうなるか。軍と国防産業部門は開戦直後の中国やロシアの猛烈な第一撃を乗り切れる量の装備を準備する必要がある。ノックアウトされては元も子もない。その後戦力を再整備し、しかも迅速に進める必要がある。これで米軍は反抗を展開できる。では米海軍の潜水艦部隊が緒戦で損耗したら補充できるのか。米海軍が潜水艦戦闘力を確保するには潜水艦の大量建造が必要だ。
ただし原子炉や格納用の船体は短期建造できず経費も高い。ヴァージニア級を年間二隻建造するだけで造船所に負担となっているのは旧式オハイオ級弾道ミサイル原潜の建造も進行中のためだ。その結果、SSNの隻数は増えず戦時喪失分の補充など期待できない。平時に建造規模の維持に精一杯ならSSNの戦時喪失が現実のものとなった場合、建造能力に余裕はない。
このため通常動力SSKにも外洋での戦闘任務を与える可能性がある。米海軍も新造通常動力潜水艦を短期間かつ大量配備する方法を模索せざるを得なくなる。米国内ではディーゼル艦建造は1950年代以降行っていない。したがって海軍当局は日本との交渉でが同国で建造した艦の調達を検討すべきで、そうりゅう級で完成の域に達した艦設計、熟練した建造施設を活用すべきだ。米国内でディーゼル艦を日本企業の参画で建造する選択肢もある。あるいは両方実施しても良い。米国第一を主張する大統領と議会を言いくるめ従来と違う方向にもっていくにはすぐれた交渉術が必要だ。説得を始めよう。
抑止力と切迫する情勢からも必要だ。米海軍および政治指導部は必要な戦力整備を継続ししかも迅速に進める必要がある。戦闘力整備を遅々としたペースで展開すると敗北は必至となる。第二次大戦時の教訓が役立つ。枢軸国打倒に必要な物量のため米海軍艦艇の設計はあらゆる点で最高性能を求めなかった。米国には普通の戦力でも大量かつ迅速に艦艇が必要だった。
つまり適度な性能で設計は簡素であればよく、多彩な業者を生産に巻き込んだ。デトロイトの自動車工場がB-24爆撃機を毎時間一機完成させていた。米海軍も戦時喪失分を早く補うことを最優先し、一部に目をつぶった。当時の議会とフランクリン・ロウズベルト政権の指導力に助けられ、新造艦艇や航空機生産が真珠湾攻撃前から始まっていた。1940年の両洋艦隊法案が後押しした。
事前に戦力補充分の整備を進めることを今後の米海軍で合言葉にすべきだ。これにより予備戦力整備が生まれるのが利点で、艦隊指揮官は開戦の諸端から兵力を積極投入できる。損耗を心配して中途半端な運用をしなくてもよい。補充艦艇や機材がやってくるとわかれば指揮官はリスクをいとわなくなる。チェスター・ニミッツ大将が真珠湾攻撃の残余艦で1942年に空母強襲作戦を展開したのは1943年になれば新造艦が来るとわかっていたからだ。予備戦力があれば今ある装備を活用して勝利をおさめる確率が高くなる。
ということでディーゼル潜水艦の調達が既存原子力艦部隊の補強になることが外交、戦略、予算、作戦、戦術面からおわかりになったはずだ。是非実現しようではないか。■
James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and coauthor of Red Star over the Pacific .
原子力潜水艦、ディーゼル潜水艦のそれぞれに良さがあり、適切な運用次第で大きな効果をあげることができるという主旨には賛成です。特に浅瀬の多い沿岸部とその周辺では、小型化できるディーゼル潜水艦が効果が大きいでしょう。
返信削除但し、米国海軍の戦略にはディーゼル潜水艦は入っていないことや、巨額な軍事費用を用意できる米国では費用面での制約は少ないため、その方向に進むかどうかは疑問ですが。。。
「SSK部隊は連合軍部隊の中核となる」
太平洋戦争時、「大日本帝国 連合艦隊」でしたが、今は米国との「連合軍部隊」ですか。言い回しの問題ですが、何となく胸が熱くなるものがあります。
日本の通常潜が評価されて嬉しい限りだけど、肝心の潜水艦ドックが神戸にある二つだけでは。
返信削除個人的には舞鶴か大湊に潜水艦ドックを建造して欲しいところなんだけど、まあ現実的ではないよねぇ。
アメリカさんはアメリカの西海岸にでも作る気なのかね。
ホームズ教授の言葉には多くの含蓄がある。記事は主に中国に対する戦略について述べているが、その主張の主な背景は、以下の認識があるようだ。
返信削除① 日米の潜水艦戦力は、将来、開戦となれば中露に対し不足する
② 米海軍は、SSNを年2隻建造するにしても不足分は補えない。日本も年1隻で同様
③ 戦争ともなれば、第一撃で相当数が戦力外となり、戦力不足分は現在の建造ペースのSSN、SSKで補いきれない
④ 不足分はSSNである必要は無く、日本製SSKで十分である。コストも安い
⑤ 日本は、米国が東アジアから手を引くことを危惧しており、米海軍の日本製SSK部隊の編制、及び常駐はこの状況を緩和する
よって、SSKの増産態勢を作っておくべきであり、米海軍のSSK部隊を編成し、日米SSK部隊で中国に対処すべきである、と言うのがホームズ教授の主張である。
日本にとって潜水艦は最も重要な戦略兵器であり、強力な抑止力であるものの、その隻数は限定的で、十分とは言えず、ホームズ教授の提言が現実化すれば日本、並びに米国の通常戦争に対する抑止力は強化できるだろう。また、日米海軍はその緊密化を著しく高めることにもなるだろう。
ホームズ教授は、オーストラリアがそうりゅう型を採用したならば、日本寄港による整備、補給により西太平洋での展開が容易となるため、記事の提案を行わなかったかもしれない。また、リチウムイオン電池搭載そうりゅう型の将来性を評価しているのかもしれない。電池の進歩は、1カ月をはるかに越える継続潜航と、SSN並みの、あるいはそれを越える速度を得る可能性がある。
いずれにしても、この記事のホームズ教授の論調が、あたかも近い将来戦争が起きることを前提にしているようなのが気になる。
この論文にも漂うアジアでの軍事衝突が起こりそうな最大の要因はロシアより、行動が想定し難い中国軍の無鉄砲さにあると思います。
返信削除ロシアは北方領土に軍備を増やしつつあるようですが、現時点ではウクライナ問題で欧州と対立しつつ、反対のアジア方面でも積極的に軍事紛争を起こす必要性が無く、過去の例をみても両面作戦は取らない可能性が高いと想像します。(プーチン政権が臨死状態になれば、無茶をする可能性もゼロでは無いですが)
一方、中国は南沙諸島の事例を見ても明らかなとおり、彼ら独自の行動規範を他国に押し付けますから、いつ、どこで何をしでかすか、政府や軍の行動が米国含めて誰にも予測しづらく、不安定要素になっていると思います。
日本は在日米軍との、より協調した具体的な行動指針を公に定めて、中国に示すことができれば、人員、装備、費用面で現実的な抑止力になると思いますが、それを米国とどこまで詰められるか?でしょうか。残念ながら、今、現実に直面している問題と思っていない方が、閣僚含めて多そうですので心配です。
急激に国際社会の主要プレーヤーになった中国ですから、調子に乗り過ぎて無茶しそうで、非常に危機感を感じています。
日本の潜水艦の数が有事に対して足りていない問題は、ソナーや魚雷を搭載した無人潜水艇の開発を進めることである程度カバーできないものかな、と思います。但し、AIを積んだとしても、有人潜水艦や有人水上艦との通信をどのように行うか、水中での長距離無線伝送技術に大きな進展がないと、現実的には使い辛いでしょうか?
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