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スカイボーグ製造競作始まる。実現すれば空の上の戦いの様相はどう変わるのか。

空軍は納期および納入数を特定しない形でノースロップ・グラマンボーイングクレイトスジェネラルアトミックスの4社競作で、スカイボーグの製造契約を交付した。各社は米航空宇宙企業で技術力の高い企業である。


スカイボーグとは
スカイボーグは「自律運航機能で低コストかつ有人機との共同運用を可能としつつ、制空権が確保できていない空域で敵に対し迅速かつ決定的な行動を実現する手段」と空軍は定義している。

同事業のねらいは無人航空装備にパイロット主体の作戦を支援させることだ。スカイボーグで「空軍パイロットは重要データを得て、迅速な意思決定が可能となる。スカイボーグは有人機に広範囲の状況認識を可能とし戦闘ミッションでの生存性を高める」という。

空軍の調達責任者ウィル・ローパーはスカイボーグで戦闘中に「集合インテリジェント」が生まれ、人工知能と有人機を統合し米国の航空優位性が維持できると語っている。

低コスト無人機の登場で空軍戦術はこう変わる。まず、無人機は長時間かつ単調な哨戒飛行に投入できる。詳細な状況認識以外にパイロットを解放し別任務に投入できるようになる。スカイボーグは高価値機材のF-22やF-35の防御にも投入でき、高リスクミッションでパイロットの生命を守る効果も生まれる。

「実現すれば、各種機材に発展し、情報収集の神経網を共有しつつ敵に対しマシンのスピードで対応できるようになる」とローパーは説明しており、マン-マシン統合に言及した。興味深い話だがスカイボーグには課題もある。

単純な事前プログラムどおりの戦術行動に加え、スカイボーグでは人工知能と無人機ネットワークで収集するデータを組み合わせて高度の意思決定が可能となると、敵無人機だけでなく敵有人機への攻撃も可能となる。

なかでも物議になりそうなのはスカイボーグ含む無人機にどこまでの自律性を認めるかだ。武装している場合は攻撃させていいのか。

ローパーも武装無人機に倫理上の落とし穴があるのを認めており、武装無人機でも米軍搭乗員が守る倫理基準を順守させると主張している。「自律型UAVsで選択の幅は広がるが、交戦規則は守る。プロとしての空軍隊員は空軍創設時以来この倫理基準を守っており、自律型UAVsだからといって、これを変えることはない」

これからの航空戦への影響は
もう一つの問題は低価格無人装備の登場で武力対立がエスカレートする危険だ。人命や財産への危険が下がれば戦闘の敷居も低くなる。この意味は将来の航空戦で明らかになるはずだ。■

この記事は以下を再構成したものです。

August 1, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-22F-35SkyBorgU.S. Air ForceMilitaryDefenseUAVs

Caleb Larson holds a Master of Public Policy degree from the Willy Brandt School of Public Policy. He lives in Berlin and writes on U.S. and Russian foreign and defense policy, German politics, and culture.

コメント

  1. >なかでも物議になりそうなのはスカイボーグ含む無人機にどこまでの自律性を認めるかだ。
    >武装している場合は攻撃させていいのか。

    この議論は、どこまで広げるor広がるのか…?
    CIWSの類も勝手に脅威度を判定して発砲しますし、対艦トマホークだって、敵艦を自分で捜索して突入するモードがあるわけで。既に、「人間が予め目標を指定しない攻撃」は存在している。
    理屈で考えるなら、「発射後ロックオン」式の誘導兵器全般に関わる問題だと思いますが…

    >スカイボーグは「自律運航機能で低コストかつ有人機との共同運用を可能としつつ、
    >制空権が確保できていない空域で敵に対し迅速かつ決定的な行動を実現する手段」と空軍は定義

    つまり、ある程度の自立機能があって、低コストで、有人機と連携できるぐらいの速度と航続と機動性があって…本当に成り立つのか?興味深いところです。
    グローバルホークやリーパーのようにグライダー並のアスペクト比ならともかく、「ちっちゃい戦闘機」型の無人機が積める燃料や兵器、電子装備はかなり限定されると思う。

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