スキップしてメイン コンテンツに移動

日本のイージス駆逐艦向けスタンダードミサイル6売却を米国が承認(The Aviationist)


Japan SM-6 FMS

2014年6月27日、アーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦USSジョン・ポール・ジョーンズ(DDG53)がスタンダード・ミサイル-6(SM-6)を試射した (画像クレジット:USN/Courtesy Photo)


日本が米国製含む装備品の大規模増強を行っている中で、SM-6は弾道ミサイルの脅威に対する戦略的能力の象徴となる


国務省は、太平洋におけるBMD(弾道ミサイル防衛)の一環として、日本に9億ドル相当のSM-6ブロックI(Standard Missile-6 Block I)150基の売却を承認したと、2025年1月31日にDSCA(国防安全保障協力局)が発表した。SM-6は、海上自衛隊のイージスシステム(AWS)艦に配備することができ、「日本と地元の同盟国陸上部隊を守り、インド太平洋地域における統合的な航空ミサイル防衛への日本の貢献を大幅に向上させる」とDSCAが説明している。9億ドルの内訳はスタンダードミサイル-6ブロックIミサイル150発と関連機器・サービスだ。SM-6の単価は400万~800万ドルで製造元はRTXだ。

 FMS(Foreign Military Sale)の他の品目には、MK 21 Mod 3 VLS(Vertical Launch System)キャニスター、部品、サポート、テスト、ハンドリング機器が含まれる。日本は、F-35B、AGM-158 JASSM、F-15Jイーグルのアップグレード、AIM-120 AMRAAMsを含む米国の兵器で大規模な軍備増強の過程にあるが、SM-6購入は、北朝鮮(そしてある程度は中国)の弾道ミサイル兵器の増加に対抗するための戦略的能力を表している。

 「この売却案は、インド太平洋地域の政治的安定と経済的進歩の原動力である主要同盟国の安全保障を向上させることにより、米国の外交政策目標と国家安全保障目標を支援するものである」とDSCAは付け加えた。 

 SM-6の新たな重要性は、米海軍が同ミサイルの空中発射バージョンAIM-174Bの取得を進めている事実からもわかる。AIM-174BがVFA-192「ゴールデン・ドラゴンズ」とVX-9「ヴァンパイア」飛行隊のF/A-18Eスーパーホーネットに搭載されていることが、The Aviationistが大々的に報じている。

 米海軍とMDA(ミサイル防衛局)は、太平洋で定期的にBMD演習を実施している。直近の演習はパシフィック・ドラゴン24で、2024年7月から8月にかけて実施され、新型のIAMD-T(統合防空ミサイル・ターゲット)が初めて使用された。

 豪州も太平洋における広範なミサイル防衛活動のパートナーでもある。 同じPD-24演習で、オーストラリア海軍(RAN)の艦船HMASシドニーが2024年8月初旬、SM-6を初めて試射した。


日本のイージス艦とSM-6搭載ASEV

現在、海上自衛隊は合計8隻のイージス駆逐艦を運用している。ここには1990年代に就役し、2007年から2010年にかけてイージス・システムをアップグレードされたこんごう級4隻、2007年から2008年に引き渡され、2019年にイージス・システムをアップグレードされたあたご級2隻の、2020年と2021年に就役したまや級2隻が含まれる。

 海上自衛隊が建造中の2隻のASEV(イージスシステム搭載艦)が完成すると日本のBMD(弾道ミサイル防衛)対応艦隊が10隻になり、弾道ミサイル攻撃に対する強力な盾として注目されている。コンセプト・デザインは2024年7月に防衛省の予算文書に掲載され、1隻目は2028年3月までに、もう1隻は1年後の2029年に就役する予定だ。これら2隻のASEVには、ロッキード・マーティンのSPY-7レーダーが搭載される。SPY-7レーダーは日本向けイージス・アショアBMDシステムのためのものであったが、2020年に中止された。

 ロッキード・マーティンは2024年4月4日、ASEVを想定した初のライブ・トラックのデモンストレーションに成功したと発表した。SPY-7レーダーはAN/SPY-7(V)1とも呼ばれ、"戦術的なハードウェアとソフトウェアシステムが宇宙空間の物体を追跡する"。同社によると、試射で "レーダーシステムの成熟度を検証し、包括的テストの始まりとなった"。

 2025年1月15日、ロッキード・マーティンは海上自衛隊のASEV用レーダーアンテナAN/SPY-7(V)1の1号機を防衛省に納入したと発表した。 アンテナはその後、ニュージャージー州ムーアズタウンにあるプロダクション・テスト・センター(PTC-2)でASEV戦闘システムとの最終的な統合が行われた。


 建造中のASEVは、まや級の96個のMk.41 VLSセル(前部64個、後部32個)に対し、VLS(垂直発射システム)セル128個を搭載する。主要な能力はSM-6ミサイルとSM-3ブロックIIIAで、どちらも艦首、主砲の後ろに配置される。 ASEVはまた、現在開発中の日本の将来のHGV(極超音速滑空機)や、アップグレードされた12式SSMを発射することも検討されている。

 また、SM-6(水上攻撃用に調整されている)とトマホークLACM(陸上攻撃巡航ミサイル)は、タイフォン・システムと呼ばれる米陸軍のMDTF(多領域任務部隊)の構成要素のひとつであることも重要だ。もうひとつは、LRHW(長距離極超音速兵器)とロッキード・マーティンのPrSM(精密打撃ミサイル)だ。

 日本のSM-6が水上攻撃や対艦攻撃に再利用されるかどうかを言うのは時期尚早だが、デンマークのボーンホルム島での米陸軍のSM-6訓練が海上戦域で行われ、バルト海のロシアが潜在的な標的であることを示唆していることを考えると、その可能性も否定できない。

 レイセオンが開発したSM-6 Blk IとBlk IAは、地対空ミサイルシステムの進化版で、SRBMに対する海上ベースの終末弾道ミサイル防衛能力を提供する。このミサイルは、発射後のセミアクティブなレーダーシーカーと終末段階でのアクティブシーカーによるデュアルモード誘導を備えている。この兵器はまた、艦艇のAWSからコースの中間更新を受信し、自律的な終末段階は艦からもサポートされる。


グアムからの弾道ミサイル防衛

SM-6は移動する艦艇から使用することができるが、米軍の主要施設を抱えるグアムのような静止的も、弾道ミサイルへ迎撃ミサイルを発射するハブとして使用することができる。この取り組みで、2024年12月10日にグアムで初の弾道ミサイル防衛の実戦テストが行われた。SM-3はMk.41 VLS(垂直発射システム)の傾斜可能なバージョンから発射された。

 SPY-7シリーズのレーダーは、アラスカのLRDR(長距離識別レーダー)から派生したもので、米国の地上配備ミッドコース防衛ABM(対弾道ミサイル)システムの一部だ。SPY-7の技術は、スペインのF-110フリゲートとカナダの水上戦闘機プログラムにも提供されているが、ロッキードは当時、「LRDRとSPY-7のために開発された同様の技術は、将来グアムで利用されるかもしれない」と述べていた。


U.S. Approves Standard Missile-6 Sale for Japan’s Aegis Destroyers

Published on: February 1, 2025 at 10:11 PM

 Parth Satam

https://theaviationist.com/2025/02/01/standard-missile-6-fms-japan/


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...