スキップしてメイン コンテンツに移動

米海軍の艦載レーザー「HELIOS」が最新テストで無人機を撃墜に成功(The War Zone)―ただし、真の実用化にはまだ道は遠いようです。とはいえ艦艇の電気系統はこれまでより大幅に強化する必要がありますね

 HELIOS laser fired from the USS Preble.  

(DOD)


その他システムが遅延や中止に見舞われる中、海軍は艦載レーザー兵器の実用化を強く望んできた


海軍は、アーレイ・バーク級駆逐艦プレブルが、2024年度に空中標的無人機を破壊する高エナジーレーザー統合光学眩惑および監視(HELIOS)システムの試験発射に成功したことを明らかにした。これは、米軍の他のレーザー開発が近年、現実的な検証に直面している中、水上艦隊への艦載用レーザーの開発での最新の大きな成果である。

 プレブルの無人標的機へのレーザー照射は、HELIOSの機能性、性能、能力を「検証し、実証する」ことを目的としたもので、艦載レーザーを完全に実用可能な状態に近づける最新ステップは、金曜の夜に発表された国防総省の年次運用試験・評価局(DOTE)長官報告書で明らかにされた。

 プレブルがいつ、どこでレーザーを発射したかについて、DOTEレポートではほとんど明らかにされていない。同艦は、2024会計年度の終了を数日後に控えた9月に、母港をサンディエゴから日本に移した。  本誌は、このテストの詳細とHELIOSの現在の状況について海軍に問い合わせており、情報が入り次第、このレポートを更新する。


A rendering of the HELIOS system in action aboard a Navy destroyer. (Lockheed Martin)

海軍駆逐艦上のHELIOSシステムの作動中のレンダリング。(ロッキード・マーティン)


 いずれにしても、海軍上層部が特にここ1年、強く要望してきた能力だ。なぜなら、イランが支援するフーシ派反政府勢力が紅海とアデン湾上空に連日、毎時のように発射する無人機やミサイルを、海軍の軍艦が撃墜しているからだ。これらの戦闘やその他の世界的な紛争地域では、中国という新たな脅威が迫る中、限られたミサイル在庫を消耗してしまうとの懸念が絶えない。本誌は、フーシ派の無人機、対艦巡航ミサイル、対艦弾道ミサイルなど、フーシ派の兵器庫に対する400回以上の交戦で消費された兵器の集計を含む、海軍のフーシ派との戦闘のいくつかの側面について報告している。 

 「10年前に私がバーレーンにいたとき、水上作戦司令艦USSポンセにレーザーが搭載されていた」と、2024年初頭、水上艦隊協会の会議に先立って、海軍水上部隊司令官のブレンダン・マクレーン中将は記者団に語った。「10年が経ったが、我々は未だに実戦配備可能なものを持っていないのか?」

 確かに、60キロワットのHELIOSやその他の長らく約束されていた指向性エナジー兵器は、水上艦隊にとって待ちに待った装備だ。本誌が以前報告したように、2022年にプレブル級駆逐艦に初めて搭載されたのが最初である。そのデビューはフーシとの戦闘に先立つものだが、少なくとも同様の作戦におけるミサイル支出をある程度軽減するのに役立つと思われるタイプのシステムである。


A look at the new High-Energy Laser with Integrated Optical Dazzler and Surveillance (HELIOS) laser directed energy weapon installed on the Arleigh Burke class destroyer USS Preble, with an inset showing a rendering of the system. (U.S. Navy/Lockheed Martin)

駆逐艦プレブルに搭載された高エナジーレーザー統合光学眩惑および監視(HELIOS)レーザー指向性エナジー兵器。システムの外観を示す挿入図。(米海軍/ロッキード・マーティン)


 これまで本誌がHELIOSについて報じた内容から、無人機攻撃を阻止し、悪意を持って操縦される小型ボートや小型船舶を無力化または破壊するのに非常に役立つ理由が明らかになっている。

 また、ミサイルや無人機に搭載された光学追尾装置を眩惑し、視覚を奪ったり混乱させたりすることも可能だ。眩惑装置は、相手のセンサーが艦船を監視する能力を奪うことで、相手の一般的な状況認識を制限することができる。 HELIOSには独自の光学センサーも搭載されており、二次的な情報、監視、偵察(ISR)の役割を果たすことができる。

 プレブル級駆逐艦では、HELIOSは、アーレイ・バーク級駆逐艦の初期の派生型に搭載されていたMk 15ファランクス近接武器システム(CIWS)を収容していた艦の前方に設置されている。現在建造中のフライトIIA仕様の駆逐艦には、格納庫上にCIWSが1つだけ搭載されています。SeaRAMとファランクスを装備した「ロタ構成」に変更された少数の艦を除き、初期型にはCIWSが前方と後方に2つずつ搭載されている

 ロッキード・マーチンは2018年に海軍からHELIOSに関する最初の契約を受注したが、このシステムは同社における指向性エナジーの研究開発の長い歴史の上に構築されたものだ。

 同システムは、イージス戦闘システムと組み合わせると特に強力となる。ロッキード・マーチン水上艦ミッション・システム部門の責任者リッチ・カラブレスは、2021年の本誌とのインタビューの中で、HELIOSとイージスについて次のように説明している。

 「当社はイージス兵器システムのマルチソース統合注入能力を継続的にアップグレードしており、新しい兵器やセンサーを導入し、協調的なハードキルおよびソフトキルの実現を目指しています。指向性エナジー兵器…私たちは、ニュージャージー州にあるこのラボで、すでにHELIOSレーザー兵器システムをイージス兵器システムCSL(共通ソースライブラリ)と統合しています。実際、当社でレーザープログラムを管理している人物が... 先日、イージス兵器システム・コンピュータープログラムの制御下で、このレーザーを発射しています。ですから、私たちは、兵器の調整を行い、HELIOS兵器システムと連携して自動化された方法でハードキル、ソフトキルの調整を行う能力を構築しています」。


240212-N-VJ326-1044 SAN DIEGO (Feb. 12, 2024) – Guided missile destroyer USS Preble (DDG 88), left, pulls into port alongside amphibious assault carrier USS Tripoli (LHA 7), Feb. 12. Tripoli is an America-class amphibious assault ship homeported in San Diego. (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Malcolm Kelley)

HELIOSレーザーシステムは、USSプレブルのブリッジ前方の台座に設置されている。(米海軍)


 ロッキード・マーチンは、アーレイ・バーク級駆逐艦に少なくともあと1基のHELIOSシステムを納入する契約を結んでいる。同社関係者は、システムの最大出力を150キロワットへ増強するなど、将来的な機能拡張も視野に入れて設計してあると述べています。

 ここまでの出力レベルであれば、HELIOSはより遠距離から小型無人機をより迅速に撃墜し、対艦巡航ミサイルや、比較的近距離ではあるが敵の航空機など、大型で複雑な脅威にも対処することが可能になる。

 海軍とロッキード・マーチンは、2022年にニューメキシコ州の米陸軍ホワイトサンズミサイル射場で行われたテストで、レーザー層防衛(LLD)システムと呼ばれる兵器を使用し、亜音速巡航ミサイルに見立てた標的無人機を固体レーザー指向性エナジー兵器で撃墜することに成功した。


 HELIOSは、海軍が指向性エナジー技術に抱く野望の一端を構成するもので、指向性エナジー技術には、最終的には高出力マイクロ波ベースのシステムも含まれる予定である。同型艦のUSS DeweyやUSS Stockdaleには低出力の光学迷彩装置(ODIN)を装備している。  HELIOSとは異なり、ODINのレーザーは眩惑装置としてしか使用できないが、二次的な監視能力も備えている。

 2021年後半、HELIOSがプレブルに配備される前年のこと、サンアントニオ級揚陸艦ドック艦USSポートランドは、アデン湾でレーザー指向エナジー兵器を用いて静止した水上標的を攻撃した。レーザー兵器システム・デモンストレーターMk 2 Mod 0として知られるそのシステムは、2019年後半にポートランドに搭載され、本誌が最初に報道した。その後、2020年に太平洋でのデモンストレーションで小型無人機を撃墜した。

 国防総省は、艦船、航空機、地上車両用のこのような兵器の開発に毎年平均10億ドルを費やしていると、ネイビー・タイムズは昨年報じた。

しかし、2023年の米国会計検査院(GAO)の報告書によると、このような技術で開発、調達、実用化の方法を見出すのは困難だと判明している。


The Navy amphibious transport dock USS Portland uses a laser to strike a static surface target in 2021. (U.S. Navy)

2021年、揚陸艦USSポートランドは、静止した水上標的にレーザーで攻撃した。(米海軍)


GAOによると、国防総省は「これらの技術を研究室から現場へ」移行させるのに苦労しており、その理由として軍が任務中にそれらをどのように使用するか決定するのが難しいことなど、数多くある。

 「早期の移行計画と移行合意の起草なしでは、海軍は運用ニーズと一致しない技術開発のリスクを負うことになる」と、報告書は警告している。

 また、実際に先進的なレーザー兵器を現場に配備し、維持していくことの現実性や、現時点での有効性も明確になってきた。こうした事実が明らかになったことで、国防総省は長年宣伝してきたレーザー兵器の主要なプログラムから撤退した。

 レーザー兵器システムは、特に主流メディアで過剰に宣伝され過ぎている。レーザー兵器は一度に1つの標的のみを攻撃でき、実戦配備中の低出力クラス装備は長時間にわたり標的に安定して照射し続けなないと効果を上げることができない。また、出力と熱の制限があるため、連続発射にも影響が出る。

 射程距離は限られており、大気条件の影響を受け、その部品は繊細で、軍事利用に向けた硬化は現在も進行中だ。そのため、海軍の観点から見ても、非常に魅力的な能力ではあるものの、当面は限られた標的セットに対する少数のポイント防衛用途に限られる。

 こうした現実にもかかわらず、海軍上層部は艦載レーザーの必要性を強く主張し続けている。米海軍艦隊司令部のダリル・コードル司令官は、先月開催されたSurface Navy Associationの年次シンポジウムで、レーザー開発の遅々としたペースを嘆いたと、Breaking Defenseのジャスティン・カッツ記者が報じた。

 「艦船搭載レーザーの開発については、これまでに多くの論文や学位論文が書かれてきましたが、ミサイルシステムを実際に破壊するのに許容できる方法として移行するには至っていません」と、カッツ記者はコーデル提督の言葉を引用して伝えている。

 「再生可能エナジーを基盤としており、システムを再充電することができます。指向性エナジーではペイロードや容量を心配する必要がありません。海軍にとって、これらはすべて魅力的な要素です。しかし、私たちはまだ、実用化できる段階には至っていません」。

 海軍がHELIOSのような艦載レーザープログラムを進めているとはいえ、広範かつ強力な能力となる時期は依然として不明だ。それでも、最近の出来事は、艦載レーザー兵器を米海軍で現実の装備にする圧力を高める可能性が高い。■



Navy HELIOS Laser Aboard USS Preble Zaps Drone In Latest Test

Service brass have clamored to get shipboard laser weapons operational, as other similar systems have suffered delays and cancellations

Geoff Ziezulewicz, Tyler Rogoway



https://www.twz.com/news-features/navy-helios-laser-aboard-uss-preble-zaps-drone-in-latest-test


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...