2017年12月24日日曜日

★★ドイツだけではなかった。英海軍も深刻な低稼働率に直面

心配になるニュースで、英独両国が負担すべき努力を怠ったためこうなったのか、産業構造に問題があるのか、政治家が悪いのかわかりませんが昨日今日始まった問題ではないようです。NATOが海軍力で欠陥を抱えたままだと米海軍の負担が増えて太平洋のバランスにも影響が出かねません。解決策としてNATOへの日本の加盟、あるいはNATOを拡大した「有志連合」として太平洋、大西洋をカバーする超同盟の樹立はいかがでしょう。



Almost All of the UK's Surface Combatants Are in Port While Germany Has No Working Subs

英水上艦ほぼ全隻が出動不能状態、ドイツには稼働潜水艦皆無

These already worrying developments reflect poor readiness overall and other larger issues within both of these NATO navies. 心配になる事態は両国海軍の即応態勢以外にもっと大きな問題がある証拠




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BY JOSEPH TREVITHICKDECEMBER 20, 2017
英独両国の海軍部隊の即応態勢がともにかつてない低さになっており、英海軍では駆逐艦フリゲート艦のほぼ全数が港内にとどまり、ドイツ潜水艦部隊では一隻も出動できない状態だ。両国で現状ではヨーロッパ内外の危険に対応できないとの主張に勢いがついている。
2017年12月20日現在で英海軍23型フリゲート13隻で稼働可能艦は一隻だけで、45型駆逐艦6隻は全て港内に留まっている。2か月前にはドイツ海軍のU-35潜水艦が事故で損傷し、212A型潜水艦6隻全部が港内で修理を待つ状況にある。
英海軍は「世界規模で作戦投入されクリスマス、新年関係なく国益を防護する」状態を保っていると報道官がテレグラフ紙に語っている。「水上艦潜水艦が13隻本国の内外に展開中で核抑止力も含まれる」
展開中の13隻のうち一隻は大型水上戦闘艦で深刻な問題に直面しており、ほかにも即応態勢や隊員の士気でも問題がある。英国防省が言っていた「英海軍の年」が大いなる失望の年になってしまった格好だ。
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45型駆逐艦HMSダイアモンドがポーツマス軍港で霧の中に佇む


2017年6月、HMSクイーン・エリザベスが英海軍初の超大型空母かつ建艦史上最大の艦として初の海上公試に臨んだ。2017年12月はじめにエリザベス二世女王自身が臨席し就役した。艦名は16世紀の初代エリザベス女王にちなみ、同女王がスペイン海軍を撃破した当時の英海軍に命令を与えた。
「本日は英海軍の重要な歴史を刻む日で将来の旗艦が女王陛下の艦隊に編入される」と英国防相ギャビン・ウィリアムソン Gavin Williamson が12月7日の就役式典であいさつした。「女王ご臨席のもと英海軍は多忙な年となり、二番艦HMSプリンスオブウェールズの命名、新型26型フリゲートの初号艦の建造も始まった」
ウィリアムソン国防相は述べていないがクイーンエリザベスの艦載機F-35Bの作戦機材はまだなく、艦隊航空部隊は運用機を確保できないままプリンスオブウェールズも就役し空母打撃任務につくことになる。また国防省は揚陸強襲艦二隻の廃止を検討中でその他艦艇も削減して空母運用経費をねん出する目論見だ。英海軍のヴァンガード級弾道ミサイル潜水艦では技術的な問題こそないが乗員の士気が低下している。
そのクイーンエリザベスのプロペラシャフトから浸水する事件が12月に発生したのは公試中だった。浸水は機関室にも及んだ。こうした事件は決して特異な出来事ではなく、各国海軍で建造したての艦艇は各種公試に出してから正式に就役させているとウィリアムソン大臣はBBC報道へ反応した。「これで同艦が海上に出ることができなくなるわけではないし、公試にも影響はない」と海軍報道部もコメントを出した。
だが批判勢力はこの機会をとらえ建造費用40億ドルの同艦が艦載機の有無と関係なく実際の任務に投入不可能な証拠だと攻撃をしかけ、政府は事実を隠し問題をうやむやにしようとしていると主張している。
艦の整備問題とともに乗員の離隊が増えて英海軍の精鋭水上艦が港内に留まっていることから海軍は作戦を遂行できるのか、新型空母を活用できるのかとの疑問が生まれている。23型、45型が全艦任務実施状態に復帰しても英海軍の駆逐艦フリゲート艦は不足して護衛任務と並行して別作戦を行うことができなくなりそうだ。
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23型エスコート二隻を護衛に航行するHMSクイーンエリザベス


ウィリアムソン国防相が言及したように旧式23型の後継艦となる26型フリゲートで初号艦の建造が2017年7月に始まった。シティ級と呼ばれる同型の最初の三隻が艦隊編入されるのは2020年代中ごろ以降と国防省は見ているが8号艦と最終号艦は未定だ。
現時点で23型と一対一の交換は想定しておらず、英国は戦力が劣る31型汎用フリゲート5隻の去就の決定を迫られる。
英国のEU離脱にともなう予算削減と経済状況の不確定さのため事態はさらに混乱している。2017年10月にBAEシステムズはクイーンエリザベス級空母の建造にあたる共同事業体の出資社ならびに26型建造所も運用する企業として英国内で2千名を解雇すると発表し、うち英海軍艦艇の運用支援要員数百名が含まれている。
このため英国防省がNATO他ヨーロッパ内同盟国に戦力不足で支援を求めてくる可能性がある。艦艇運用も他国と協調して不足分を補いたいとする。英国は米国と米海兵隊F-35Bをクイーンエリザベスで運用して艦隊航空部隊の不足を補う合意をしているが運用開始は未定だ。
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海上公試中のクイーンエリザベス、2017年6月。


ドイツ海軍の状況にも深刻な様子が見える。212A型潜水艦から海軍全体に広がる問題が見える。
同級は高性能かつ極めて静粛なディーゼル電気推進艦で大気非依存型機関に水素燃料電池を使い数週間の潜航が可能だ。潜水艦はNATOが想定するバルト海でのロシアとの軍事対決時に中核の役割を期待されている。
残念なことに同級潜水艦は保守管理上の悪夢で故障連続で修理も遅れている。
冷戦終結時にドイツ政府は東ドイツ復興に注力する一方でヨーロッパでの安全保障の懸念は大幅に減ったと見た。このため国防予算を大幅減額とし装備も削減した。ドイツ海軍は新型212A型潜水艦の予備部品を発注するのみだった。
BUNDESWEHR
ドイツ海軍の 212A 型潜水艦 U-32.


ドイツ海軍は補修部品を毎回特注扱いで確保しており非常に高額かつ時間も取られている。同時にドイツの造船業コンソーシアムには潜水艦技術を発展させる余地が減り、サプライチェーンも不活性で技能労働力も衰弱している。
U-35(212A型5番艦)が就役した2015年にはスクリュー音が大きく行動が制約される事態が生まれたとダーシュピーゲルが報じた。レーダーや通信装備も故障したうえに事故で艦の行動がさらに妨げられた。
匿名ドイツ海軍関係者がダーシュピーゲルに語ったのはU-31でも同じ問題が先に見つかり、主建造業者のティッセンクルップは補修策をなんら行なわず翌年に就役したU-36は姉妹艦運用のため部品取りに使われたという。
予算と補給面の制約でドイツが6隻すべてをいつ運用可能になるのか見えてこない。ドイツの造船所では212A型潜水艦すべてに必要な補修を同時に行えず、修理はさらに時間がかかる。
ドイツ海軍はU-36は2018年5月までに作戦復帰させたいとし、U-31は2014年から係留されたままで大修理がやっと完了したが、公試が残り、復帰は2018年中とする。
U-34の整備は2018年1月に開始し、U-33は翌月から作業を開始する。ただしこの二艦がいつ現役復帰できるか未定で、U-32は施設の空きを待つ状況にある。U-35はノルウェー沖で岩礁に接触し潜航舵を大きく損傷しこれも修理の順番を待っている。
各艦がすべて完全に作動してもドイツ海軍の訓練済み要員は三隻分しかなく、募集目標の達成が困難な状況が続いている。潜水艦部隊の即応態勢はさらに下がりそうだ。
BJOERTVEDT VIA WIKIMEDIA
212A型潜水艦二隻がキール港のHowaldtswerke-Deutsche Werft 造船所に休んでいる。2013年撮影。


ドイツは2014年以来国防予算を確実に増やしてきた。当初はロシアがクリミヤを併合した同年のウクライナ危機が契機だったが、ロシアとNATOの緊張に非同盟諸国のスウェーデンやフィンランドも防衛費増額で応じている。
ドイツ首相アンゲラ・メルケルは2016年に国防予算を大きく増やすと約束したが、バラク・オバマ大統領の圧力を理由にあげていた。同時にドナルド・トランプ大統領候補が選挙戦でNATO加盟国の集団安全保障への分担水準が低いことを論点にしていた。トランプは当選し、就任後もヨーロッパ同盟各国へ防衛支出増を求めている。
ドイツでは直近の総選挙で多数党の中道キリスト教民主党(CDU)とキリスト教社会連盟(CSU)が連立政権作りに取り組んだままだ。長年の提携先の左翼寄り社会民主党(SPD)は反対党になってた。
ドイツ外相シグマル・ガブリエル Sigmar Gabriel(SPD)は2017年早々に国防予算の増加分では人道援助を中心にすべきと発言したため、そもそもドイツ軍の世界での役割は何かとの議論を呼んだ。このことも国防装備品の調達に影を落としている。
そこにドイツ海軍の最新水上戦闘艦バーデン・ヴュルテンベルグ級「フリゲート」が登場する。同艦は他国海軍の駆逐艦並みの排水量があるが火力は劣り、主任務は低脅威の海賊対策や人道救難活動しか思い当たらない。
BUNDESWEHR
FRG バーデン・ヴュルテンベルグ


だがなんといっても212A型潜水艦の問題はドイツ造船能力が不足していることを如実に示している。同様に運用科員の不足も頭が痛い。
英海軍、独海軍の状況はともに心配にさせるものがあるがロシアや中国の活動が全世界に広がりつつある中で高まっている緊張を鑑みると深刻さが分かる。バルト海、北海、黒海、地中海の各地でNATOが対処できるか不明だ。
各海域でロシア軍が着々と勢力を増強しており、統合防空体制や沿岸配備の対艦ミサイル、対潜哨戒活動の強化により危機発生時にアクセスが制限されかねない。ロシアは通信や航行の妨害能力も強化している。
両国それぞれ、あるいはNATOとして海軍兵力を投射する能力が必要な時に得られなくなりそうだ。英海軍の45型駆逐艦HMSダイアモンドはペルシア湾をパトロール中に2017年11月機関故障で修理のため帰国したが、代わりとなる英艦艇は手当できていない。
ドイツ、英国ともに状況の改善には時間がかかるが、現状はますます維持できなくなる方向に進んでいるのは明らかで両国海軍は優先順位の付け方を厳しく再検討し近い将来も戦力として意味がある形に維持する必要がある。■

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2017年12月23日土曜日

ボーイングがエンブラエル買収を交渉中、実現すると軍用機分野でどんな影響が生まれるのか

年末になり大ニュースがとびこんできました。ボーイングがエンブラエルの吸収合併をねらっているというもの。狙いは民間機市場でエアバスに対抗するものですが、エンブラエルも軍用機を製造しているため別の影響も発生しそうです。ブラジル政府が合併の可否を握っているようなので要注意ですね。


Here’s how a Boeing takeover of Embraer could play out

ボーイングのボンバルディア買収で生まれる効果とは


エンブラエルKC-390のロールアウト、2014年10月21日。(Nelson Almeida/AFP via Getty Images)

 By: Valerie Insinna    

ーイングがブラジルの航空宇宙企業エンブラエル買収に乗り出した。両社が12月21日に確認した。
実現すればボーイングは新規にスーパートゥカーノ、KC-390輸送機など軍用機数種類を入手することになる。アナリストにはボーイングの軍用機事業でメリットを疑う向きもあるが製品構成に意外な効果が生まれそうだ。
両社はエンブラエルの株式評価額37億ドルに上乗せする形で交渉中とウォールストリートジャーナルが12月21日に特報で伝えており、交渉に詳しい筋の話としてブラジル政府の承認を待つ段階だという。
ボーイング、エンブラエル両社は「将来の合同に向け協議中だが内容は検討段階」とWSJ記事の後で発表。「ブラジル政府による承認次第であり、両社それぞれの役員会及びエンブラエル株主の承認が必要」
承認は簡単に下りないと見られる。ブラジル大統領ミシェル・テメルMichel Temerは本件を知ってエンブラエルがボーイングの完全支配に入るのは承認できないと語った。
成立すればエンブラエルへの効果の方が高くなりそうなのはボーイングの世界規模の営業力が活用できるようになるため、とブライオン・キャラン Byron Callan(キャピタルアルファパートナーズ)は見るが、ボーイングにも十分うまみがある。「製品群が相当拡大し他社にない内容がうまれます」
テメル大統領が心変わりしてもボーイングは金額で合意できなければ交渉を降りることもありうるとリチャード・アボウラフィア Richard Aboulafia(Teal グループ)が見ている。
Embraer, Boeing Hope KC-390 Will Have Long Payout
Embraer, Boeing Hope KC-390 Will Have Long Payout
「国防分野で一番興味を惹かれるのはボーイングがKC-390軍用輸送機を米国内外で販売することです。その意義は大きい」(アボウラフィア)
エンブラエルはKC-390のローンチカスタマーにブラジルを確保したがその後の買い手がない。ボーイングとエンブラエルは2016年に共同で同機の海外販売で合意形成したが、ボーイングは表に立っていない。
「ボーイングは同機を真剣に米国内で販売するつもりがあるのだろうか」とキャランはいぶかしる。「ボーイングの世界的営業力を考えれば世界を舞台にC-130Jへ十分競争できるのではないか」
KC-390の米軍採用は簡単ではない。米軍がロッキード・マーティンC-130ハーキュリーズを長年調達していることもあり、特殊作戦軍団に採用されれば道が開けるとアボウラフィアは見る。「大きなお墨付きになる」
企業買収が成功すればKC-390利用者はボーイングの世界規模の保守管理機能が利用可能となりこれも大きなセールスポイントになるとアボウラフィアは指摘。
Embraer expecting first international KC-390 sale in 2017
Embraer expecting first international KC-390 sale in 2017
ただしアボウラフィア、キャランともにエンブラエルの他の軍用機にチャンスがあるかで見方が違う。
「ブラジルの国防需要を考えるとボーイングの狙いは戦闘機だろう」とアボウラフィアは見ており、「しかしブラジルはスーパーホーネットは断りグリペンに注目している」
エンブラエルはブラジルでSaabグリペンE戦闘機用最終組立ラインを立ち上げようとしている。
エンブラエルはSaabとE-99他ビジネスジェット機に搭載用の早期警戒指揮統制システム エリアイErieyeでも提携しておりボーイングを交えれば可能性がさらに開ける。ボーイングはSaabと米空軍向けT-X練習機事業でも提携している。
「点を結べば別の可能性が生まれませんか。ボーイングにSaabを買収するつもりがあるか不明ですが、Saabへ出資するとどうなりますか。ブラジルにグリペンEの組立ラインを建設してその先はどうなりますか」とキャランは言う。
一方でエンブラエルのスーパートゥカーノにも新しい可能性が生まれそうだ。米空軍が低コスト攻撃機OA-Xの購入を検討中とキャランは指摘する。
スーパートゥカーノはA-29として米国内で営業展開中でエンブラエルとシエラネヴァダコーポレーションとの提携で8月にはホローマン空軍基地(ニューメキシコ)で各種実証を行っている。
A-29はOA-X選定で採用が有望視されており、すでに米空軍はアフガニスタンやレバノンでの運用に採用している。
アボウラフィアは同機が数百機販売されてもボーイングの最終利益への影響はわずかだと指摘し「ボーイングがどうしてこの機体にかかわるのか理解に苦しむ」とする。
合意形成になればこの数か月で二回目のボーイングによる大型買収となる。10月にオーロラフライトサイエンシズ買収を発表している。

エンブラエル買収はボーイングに民間機市場の最大のライバルたるエアバスへ対抗策となる。エアバスはボンバルディアCシリーズで提携関係を最近発表したばかりだ。■

★日曜特集:スターウォーズ映画と現実の航空戦の関係

The Real-World Air Combat Origins of “Star Wars:

The Last Jedi” 「スターウォーズ/最後のジェダイ」は

現実の航空戦から着想を得ている



 By Tom Demerly

 

実は小説より奇なり。「最後のジェダイ」の着想には驚かされる。


ご注意 以下には「スターウォーズ 最後のジェダイ」のネタバレが含まれています。映画鑑賞後に読まれることをお勧めします。


敵の巨大要塞装備に向かう主人公パイロットに攻撃チャンスは一回しかない。勝利すれば同胞の命が助かるが失敗すれば惑星全体の破壊につながる。一か八かでありこの攻撃に人類の存続がかかる。


これはライアン・ジョンソンが脚本監督した「スターウォーズ/最後のジェダイ」の一シーンではない。1981年6月7日に実際にあったイスラエルによるオペラ作戦でイラク・オシラクの原子炉と核兵器製造能力を攻撃した事例だ。


新作ハリウッド大作でもこれまでのスターウォーズシリーズと同様に実際の空爆作戦から着想を得ており、宇宙空間での戦いに史実が大きな影響を与えている。また空戦史がお好きなら、「スターウォーズ/最後のジェダイ」のシーンからどこかでみたことがあるとわかるはずだ。


ライアン・ジョンソン監督の「最後のジェダイ」の視覚効果には古典的な航空戦の原則が見られる。攻撃側はおとりミッションを実施し、主力の第二波攻撃の発進前に時間を稼ぐ。この戦術は以前から使われている。


現実世界ではヴィエトナムとイラクでの「ワイルド・ウィーゼル」SAM制圧任務を思い起こすだろう。また1967年1月2日に北ヴィエトナムでのUSAFのロビン・オルズ大佐の「ボロ作戦」が想起される。大佐のF-4ファントム編隊は護衛戦闘機なしの爆撃機のふりをして北ヴィエトナム上空でおとりとなりMiG-21戦闘機を出撃させ罠にかけた


「最後のジェダイ」では現実世界の戦闘機パイロット装備に着想を得たようだ (Photo: Lucasfilm) 


「最後のジェダイ」に見られる戦術でも敵(「ファースト・オーダー」)の防空装備全部を初回のおとり攻撃に振り向けさせセンサーの位置を割り出しながら弾薬を使い果たせてから大規模第二波攻撃隊を発進させるシーンがある。「最後のジェダイ」の冒頭ではXウィング戦闘機の一機が巨大宇宙戦闘艦を引き付けながら進行を遅らせてから攻撃を開始し防御兵力を制圧して攻撃本隊の侵入経路を開いた。


「最後のジェダイ」の視覚効果には各時代の実際の航空戦や航空映画から着想を得たものが見られる。ルーク・スカイウォーカーがデススターを攻撃した第一作のシーンは部分的に「633爆撃隊」のモスキート機映画にヒントを得ている。ミレニアムファルコンのコックピットは第二次大戦時のB-29爆撃機が原型だ。
「最後のジェダイ」の冒頭シーンは第二次大戦時の大型爆撃機のこうした写真がヒントか。 (Photo: Wikipedia)

噂ではジョージ・ルーカスは実際の訓練施設を低空飛行して着想を得たといわれ、ウェールズのマッハループやネリス訓練場そばのデスバレーにあるR-2508施設(現在は軍が「ジェダイ・トランジション」とか「スターウオーズ・キャニオン」と呼ぶ)を見たといわれる。


ライアン・ジョンソンは空戦からヒントを得ており、「最後のジェダイ」では物理法則や現実を自由に制御している。重力は映画中で都合よく使われており、無重力の宇宙で自由落下爆弾が機能し宇宙機が上下に動いているがそもそも宇宙空間には方向はなく、戦闘員は無大気の宇宙から与圧宇宙機内に自由に移動している。
「最後のジェダイ」の登場人物の一部には再訓練が必要だし、司令官の命令を自分勝手に選択して実施しているし、完全に無視することさえある。現実世界ではこのような不服従があれば「トップガン」の主人公のようにお目玉を食らうのは必至だ。現実遊離の例はまだあり、銃のように見える武器が長距離スタンドオフ兵器として使われている。だが厳格かつ正確無比な現実にもとづく筋書きと想像の世界は別物だ。例えばトム・クランシー作品では現実世界より厳しい形で終わることが多い。


ライアン・ジョンソンはF-22ラプターやスホイSu-35の映像をたくさん観たにちがいない。「最後のジェダイ」冒頭の宇宙戦シーンでポー・ダメロン操縦するXウィングがスホイのような水平テールスライドでファーストオーダー戦闘機の攻撃を避けている。


Xウィング戦闘機のコックピットに新技術の高性能兵装画面やサイドスティックと旧式技術のトグルスイッチを使っているのはF-35のタッチスクリーンより劇的な視覚効果があるとみたためだろう。


F-35で高性能状況認識とネットワーク機能が搭載されているがXウィングパイロットのポー・ダメロン機に同乗するBB-8ドロイドが実はF-35の高性能エイビオニクスの象徴で多機能高性能データリンク(MADL)、アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダー、分散開口システム(DAS)そのものだ。各システムでパイロットは戦術環境や機体状況を把握しながらコマンドシステム上で交信やシステム作動が円滑に進む。BB-8ドロイドではほとんどすべてを音声認識で行っている。


また「最後のジェダイ」冒頭の戦闘シーンで登場する抵抗軍の爆撃機大編隊には第二次大戦時のドイツ、日本空爆時の爆撃機編隊の記録画像を思い出させるものがある。映画では無防備の爆撃機編隊をXウィング戦闘機が援護するが大損害を受ける。爆撃機にボール状銃座が機体下についているのはB-17空の要塞のようだ。


ボール銃座の射手ペイジ・ティコが「最後のジェダイ」で最初に犠牲的な最期を遂げる。ペイジは自らの生命を犠牲にして最後の瞬間に一機だけ残った爆撃機からファースト・オーダー宇宙機に爆弾投下する。ペイジの姉妹ローズ・ティコがその後はヒーローとして描かれる。


遠隔操作銃座はB-29スーパーフォートレスがヒントだろう(Photo: Lucasfilm)


ファースト・オーダーの巨大戦艦マタドール-IV級にもどこかで見た感がある。「最後のジェダイ」美術監督ケビン・ジェンキンスは巨大戦艦の着想をあちこちから得たが、第二次大戦の日本海軍戦艦大和もその一つと明かしている。巨大戦艦には大型軌道砲二門があり、その他遠隔操作対空砲が24門つく。全長7,669メートルと巨大な艦体だ。


巨大宇宙艦は日本の大和からヒントを得ている(Photo: Lucasfilm)


ィクションの傑作はおしなべて現実世界から着想を得ている。「スターウォーズ/最後のジェダイ」では現実の航空戦の技術、戦術、戦史から観客に興奮感動を与える映像を作った。こうしてみるとこの作品はスターウォーズ各作品含め、過去現在未来の航空戦の叙情詩と言ってよく、現実政界で未来のジェダイ戦士を鼓舞させてくれる。■
Top image credit: Lucasfilm.

スターウォーズ第一作のデススター攻撃は「暁の出撃」Dambustersが元ネタと言われていますが....

北朝鮮に眠る鉱物資源10兆ドルは誰の手にわたるのか

 

そうですか、そんな宝が眠っているのですか。でも現政権がこれを活用できないようにするのが一番大切ですね。言い換えれば潜在的な富を活用できず、ミサイルや核を自分の延命のために開発するという価値観が全く間違っている指導者を仰ぐ国民が一番不幸なのでは。現在の状況が続く限り宝は埋もれたままでしょう。


North Korea's Secret Fortune: $10 Trillion in Minerals?

北朝鮮の秘めたる富:鉱物資源が10兆ドル?
December 19, 2017


資源埋蔵量が10兆ドルあればロケットなど必要ない。北朝鮮の埋蔵鉱物資源の推定価値のことで、よだれをたらす業者が続出だろう。

制裁措置が適用される北朝鮮ではエネルギーや資源部門の開発に必要な資源がないが、制裁措置が解除されれば支援を申し出るものは多数あらわれるはずだ。

韓国の調査機関による2010年推定が10兆ドルで韓国の二十倍の規模だ。
こうした推計は簡単には生まれない。推定埋蔵量と商業的に採掘可能な埋蔵量に違いがあるからだ。例えば調査で月に十分な採掘資源があると分かっているが現状では採掘費用はとんでもない額になる。

にもかかわらず北朝鮮に豊富とあると見られる銅、金、鉄鉱石、亜鉛のほかレアメタル類とともに石油・天然ガスは貧困にあえぐ共産体制国家に貴重な資源だ。またマグネタイトは世界第二位、タングステンは六位と米国地質調査機関はまとめている。

現在の一人当たりGDPが1,700ドル(購買力平価換算)の北朝鮮は第215位と最貧国であり、ソマリアを上回るに過ぎない。同様に鉱物資源が豊かなモンゴルは人口が北朝鮮の八分の一だが一人当たりGDPは12,300ドルだ。

1970年代から鉱業に優先順位をおきながら、北朝鮮の採掘は機材不足、技術不足さらにインフラが未整備なため低迷している。

戦略国際研究所(CSIS)のロイド・ヴァセイLloyd Vaseyは北朝鮮鉱業は1990年代から「著しく低下」したと言い、既存炭鉱での採掘率は30パーセントを下回ると指摘する。「採掘装備が不足し経済状況の悪い北朝鮮では新規購入の資金のめどがつきません。エネルギー不足に経年変化が加わり電力網も劣悪な状況です」
それでも鉱業部門が北の経済で14パーセントを構成しているのが現状だ。

中国が北最大の顧客で鉱物資源が対中輸出の過半数を2016年上半期に占めた。特に石炭だ。

中国企業は茂山Musanの鉱山に5億ドル相当を投資したと伝えられる。その他オーストラリア、英国、マレーシア、シンガポール企業も北のエネルギー鉱物資源調査を実施済みといわれる。

中国投資によるブームの後で商品価格が下落したところに制裁措置が加わり資源をあてにした見通しは打撃を受けた。

今年8月に中国は北朝鮮からの石炭、鉄鉱石、海産品輸入を停止すると発表した。北がミサイル実験を繰り返したためだ。この前に2月から一年間石炭輸入を全部停止するとの発表もあり、国連安全保障理事会決議に合わせていた。

北朝鮮の海外貿易で中国が9割を占める中、制裁措置は最後の外貨収入源にも影響を与えた。

「北朝鮮としては資金を得るには武器を売るか、密輸するか鉱山資源しかありません」と北韓資源研究所所長のChoi Kyung-sooは解説する。「制裁で武器製造はおろか覚せい剤販売も難しくなり、唯一合法的な外貨獲得策は鉱物資源販売です」

それでも状況が変わればロシアに加え韓国も北の鉱物資源で一儲けを狙っているといわれる。

金正恩のもう一つの戦略的賭けが核開発を中止する見返りに国内鉱物資源とエネルギー整備の支援を国際社会から得ることだ。

同国は核開発の野望とひきかえに国際経済支援を得た実績がある。推定10兆ドルの資源が眠っているとあれば「この先何代も金なんとかが指導者になる」とガーディアンが評するほどだ。

一方で北の鉱物エネルギー資源は近い将来も手つかずのままに内装で平壌では急速な政策変更は生まれないだろう。

Anthony Fensom, a Brisbane, Australia-based freelance writer and consultant with more than a decade of experience in Asia-Pacific financial/media industries. You can find him on Twitter: @a_d_fensom.

2017年12月22日金曜日

米空軍長官の杞憂は宇宙と予算

What If We Lost GPS? That's One Thing Worrying the Air Force Secretary  

GPSが使えなくなる事態も心配する空軍長官


Newly sworn Secretary of the Air Force Heather Wilson thanks family, friends and colleagues during her ceremonial oath of office as the 24th secretary, at the Pentagon event, May 16, 2017. (U.S. Air Force photo/Wayne A. Clark)
ヘザー・ウィルソンは2017年5月16日に第24代空軍長官に就任した。 (U.S. Air Force photo/Wayne A. Clark)
The Los Angeles Times 21 Dec 2017 By Samantha Masunaga


宇宙空間が米産業界、米軍双方で重要度を上げている。
打ち上げコスト低下と技術小型化で従来より多くの国や企業が宇宙を目指しており、宇宙は早晩「人類活動の共通舞台」になると空軍長官ヘザー・ウィルソンは見ており、地上では米軍が道を拓いたGPS技術の産業利用が増えている。
GPS衛星を管理運営するのは米空軍であり、次世代の衛星群も企画中だ。GPS機能は民間にも提供されている。
「空軍首脳部はセンサーと武器をネットワーク化すれば空軍戦力は増大すると考えている」とローレン・トンプソン(レキシントン研究所軍事アナリスト)は解説している。「宇宙により地表の観測や見通し線を越えた通信で大きな利点が生まれる」
本紙はウィルソン長官に取材機会を得た。長官はロサンジェルス空軍基地(宇宙ミサイルシステムズセンター)で空軍にとって宇宙の意義とは何かを語った。以は発言をまとめた。

宇宙はもはや平和な場所ではない

かつて宇宙空間は無害な場所で自由に観測したり報告できていた。今は違う。2007年に中国が対衛星兵器を打ち上げ軌道上の衛星を破壊する能力を実証した。中国はそこでとどまらずロシアも打ち上げた衛星を他衛星修理用と説明しているが、問題はどこの衛星を修理しようというのかだ。
我が国は宇宙関連で世界最強国だが同時に宇宙に大きく依存している。敵勢力や敵に回りそうな国はこの事を理解している。そこで今ある能力を防御しながら攻撃を受けても機能維持できるようにしたい。言ってみれば大きな温室を先に建てたところに石が新発明されてきたので防衛にまわるようなものだ。

「GPSがなくても行動できるか」

軍事ミッションで宇宙に依存しないものはない。軍事だけでもない。GPS信号がある前提の産業が多数存在する。
GPS III衛星の提案要請を発出する。次世代衛星であり、迅速に調達したい。新型衛星は強靭にしジャミングや妨害に強くする。
空軍としてGPSがなくても行動できるようにしたい。GPSがあって当前にしているが、妨害されれば国の経済にも大きな打撃が生まれる。
GPS衛星だけではない。北朝鮮のミサイルテストのテレビ報道は米空軍が探知しているのではない。ミサイル発射の探知能力や軍の指揮命令通信機能が妨害されれば緊張が高まる中で大変なことになる。これまではこのような事態は想定の必要がなかった。

国防予算がなかったら「大変なこと」になる

国防予算で上限措置は撤廃の必要がある。国防予算認可法があり同時に継続決議の適用も受けている。
過去10年間で9回も同じ状況になっており年度当初に継続決議の影響を受けている。昨年度並みの活動を維持しているが強制削減措置は残っている。強制削減をそのまま残せば空軍は大変なことになる。ここまで大規模に展開中の組織なので影響は壊滅的だ。
議会には国防予算上限措置の撤廃をしたうえで予算をいただきたい、と言うのが今から1月中頃までの予算面での優先事項だ。また空軍の即応体制を回復する上でも国防予算認可法で空軍の人員構成を4千名増員したいし、全般的に装備近代化と即応態勢の整備で待ったなしの事項に手を付けたい。■
--This article is written by Samantha Masunaga from The Los Angeles Timesand was legally licensed via the
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