
2025年7月、ペンシルベニア州ルザーン郡での選挙集会で演説するJ・D・ヴァンス不k大統領。ヴァンスはトランプ大統領とイランとの間で結ばれた停戦合意に公然と反対したイスラエル指導部を批判した。(Shutterstock/Joey Sussman)
J.D.ヴァンスの誤解。イスラエルは通常の同盟国と異なる存在
JD Vance Is Wrong: Israel Is Not Just Another Ally
The National Interest
2026年6月20日
https://nationalinterest.org/feature/jd-vance-is-wrong-israel-is-not-just-another-ally
副大統領は、イランとの合意へのイスラエルの懸念を一蹴し、逆にエルサレムが盲目的に従わなかったと非難した
JD・ヴァンス副大統領のイスラエルへの見解は間違っている。
イスラエルを「他の同盟国と同じ存在」だと示唆するのは誤りだ。米国にとって中東で最も信頼できるパートナー、イスラエルへの懸念を、政治的な厄介事として扱うのも誤りだ。そして、「アメリカ・ファースト」の名の下に、イスラエルや湾岸諸国には公然と苛立ちを見せつつ、イランには外交的な寛容さを示すべきだと考えているのであれば、それも誤りである。
これは、大国が友好国を安心させるべき態度ではない。これは、米国が抑止力を維持すべき方法ではない。そして、イスラエル、アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェートの安全保障が危機に瀕する状況において、米国副大統領が取るべき発言の仕方ではない。
副大統領の言葉には計り知れない重みがある
筆者は、アメリカ・イスラエル双方の友人として、そして平和を信じる者としてこう述べる。米国には、終わりのない戦争を拒絶するあらゆる権利がある。アメリカ国民には、指導者たちに自制、慎重さ、規律を求めるあらゆる権利がある。しかし、自制と無関心はちがう。慎重さは、同盟国に公に叱責することではない。そして、「アメリカ・ファースト」が「同盟国は最後」を意味してはならない。
副大統領閣下、あなたは拍手数を競うポッドキャスターではありません。マイクやカメラの前で互いに張り合うコメンテーターでもありません。あなたはアメリカ合衆国の副大統領なのです。あなたの言葉は、メディアサイクルの喧騒の中に消え去るものではありません。それらは大使館、作戦室、諜報機関、王室、議会、市場、軍事司令部へ伝わっていきます。同盟国を安心させるか、あるいは不安に陥れるかのどちらかです。敵を牽制することもあれば、鼓舞することもあるのです。
米国副大統領がイスラエル、イラン、そして中東の未来について語る時、その言葉は国内の政治的な聴衆だけに向けられているわけではない。それは、安全が脅かされている人々、平和のためにリスクを冒してきた国々、そして米国のリーダーシップに信頼を寄せている同盟国に向けて語られているのだ。
危険な地域において、ワシントンからの発言は単なる意見ではない。それらは戦略的なシグナルとなる。
『エルサレム・ポスト』紙の最近の記事で、筆者は「イスラエルは米国との関係を損なわずに自国を守らなければならない」と書いた。その言葉の一つひとつは本気だ。イスラエルには、国民を守る権利と義務がある。しかし同時に、イスラエルは、長年にわたりその国家安全保障の中核を成してきた米国の政治的、道義的、戦略的、そして感情的な支援も守らなければならないのだ。米国との絆は、単なる形式的な同盟ではない。それは生きた資産である。それは尊重され、維持され、強化されなければならない。
米国とイスラエルは切っても切れない同盟国
筆者はその真実のもう半分を述べたい。米国は、同盟国の信頼を失うことなく主導権を握らなければならないのだ。
イスラエルは、一時的なパートナーでも、戦術的な便宜でも、官僚の机の上の書類でもない。米国とイスラエルの関係は、戦略的、民主的、文化的、道徳的、科学的、軍事的、歴史的なものである。イスラエルは米国の物語に織り込まれており、同様に米国もまたイスラエルの物語に織り込まれている。
アメリカのユダヤ人コミュニティは、アメリカの文化的・市民的偉大さの一部である。イスラエルは、何世代にもわたり、民主主義が稀で、危険が常態化し、誤算の代償が存亡に関わる可能性のある地域において、民主主義の同盟国として立ち続けてきた。イスラエルを単に「他の同盟国と同じような存在」と表現すれば、特定の政治的聴衆が喜ぶかもしれないが、この関係を特徴づける歴史の深み、犠牲、情報協力、共有された価値観、戦略的相互依存を反映していない。
イランの勢力拡大による影響に直面しているのは、イスラエルだけではない。イランとの最前線に立つ国々は、ワシントンの国内政治劇の観客などではない。イスラエル、アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェートは、イランを抽象的な存在として捉えているわけではない。各国は、ミサイル、ドローン、代理戦争ネットワーク、防空警報、海上航路への脅威、さらに「不安定化」を国家運営の手法としてきた体制による恒常的な圧力を通じて、イランの実態を肌で感じているのだ。
これら各国には、声を聞いてもらう権利がある。疑問を投げかける権利がある。自分たちの頭越しに交渉された合意の結果を甘受するよう求められる前に、明確な説明を求める権利がある。
「エイブラハム合意」は単なる広報イベントではなかった。それは戦略的な勇気の表れだった。各国が平和、近代化、共存、開放を選んだのは、米国のリーダーシップが新たな地域秩序の構築に寄与すると信じていたからだ。関係各国はトランプ大統領のビジョンと、平和が不確実性や見捨てられたものではなく、安全保障と繁栄をもたらすという約束を信頼したのだ。
その平和の枠組みは、式典だけでは維持できない。もし米国が、地域のパートナー諸国に、過激主義より穏健な道、拒絶より関係正常化、イデオロギー的な暗黒より近代化を選択してほしいと望むのであれば、ワシントンは、そうした選択が尊重、協議、保護の形で報われることを示すべきである。危険が迫った際、米国が敵よりも友に厳しい口調で接すると信じる国が、平和のためにリスクを冒すことは決してないだろう。
不信を抱くべきはイスラエルではなくイランだ
副大統領閣下、無視できない矛盾がここにある。
貴殿は誰も信用しないと述べている。結構なことだ。外交における慎重さは弱さではない。しかし、中東におけるアメリカの最も信頼できる同盟国イスラエルに対して、なぜ貴殿の懐疑的な姿勢がイラン政権に対するよりも鋭く表れているのか?アメリカの国益のために共に戦ってきた民主主義同盟国が疑いの目で公然と見られる一方で、代理勢力を武装させ、ミサイルを輸出し、湾岸地域の安全を脅かし、イスラエルの破壊を呼びかける独裁政権に時間とプロセス、曖昧さ、外交的な忍耐が与えられるのはなぜか?
最前線の同盟国に対し、「君たちの判断は重要ではない」と告げておきながら、「プロセス」を信頼するよう求めることはできない。
イスラエルが存亡の危機にさらされている状況で、「落ち着け」と言うことはできない。アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェートに対し、イランの力が外交の場で交渉されるだけでなく、ドローン、民兵組織、ミサイル、破壊工作、威嚇を通じて投影されていることを各国が知っている以上、「沈黙を守れ」などと言えない。そして、同盟国の人々の安全保障を、米国内の選挙で選ばれた少数派の感情の機微に左右されるものにしてはならない。
アメリカ国民が戦争に疲れるのは当然の権利だ。アメリカの指導者に対し、まずアメリカの国益を守るよう要求するのも当然の権利だ。しかし、真摯なアメリカ人は次のことも理解しなければならない。アメリカの同盟関係は慈善活動ではない。アメリカの力の手段である。
イスラエルの安全保障は、アメリカの抑止力の強化につながる。湾岸地域の安定は、世界のエナジー市場とアメリカの戦略的リーチを守る。「エイブラハム合意」で切り開かれた平和は、中東における近代化と共存に向けた最も有望な道の一つであり続ける。その道への信頼を弱めることは、米国をより強くすることにはならない。イランをさらに大胆にし、同盟国をより不安にさせ、地域をより危険なものにするだけだ。
副大統領殿、貴殿はイスラエル指導者に同意しないかもしれない。大統領の外交的選択を擁護するかもしれない。米国が中東の新たな戦争に巻き込まれることはないと主張するかもしれない。それらはすべて正当な立場である。
しかし、公の場で同盟国を辱めないでほしい。イスラエルの懸念を政治的な厄介事として扱うべきではない。「エイブラハム合意」を過去の成果に貶めてはならない。最前線に立つ国々に対し、あたかも各国がワシントンの国内論争の傍観者であるかのように話してはならない。
米国が最も偉大であるのは、恨みではなく自信をもって、見せかけではなく明快さをもって、友への忠誠と敵への断固たる姿勢をもって指導する時である。
米国の同盟国は観客ではなく、米国副大統領職はポッドキャストではないのだ。■
著者について:アーメド・チャライ
アーメド・チャライは『The Jerusalem Strategic Tribune』の発行者であり、アトランティック・カウンシル、国際危機グループ、戦略国際問題研究所(CSIS)、外交政策研究所(FPRI)、ナショナル・インタレスト・センターの各理事も務めている。
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