2017年12月26日火曜日

中国の大型水陸両用機AG600が初飛行に成功、今後の動向に注意

China's AG600 Amphibious Flying Boat Takes To The Skies On Its Maiden Flight 

中国のAG600水陸両用機が初飛行


It is the largest amphibious aircraft currently being produced and it's tailored to support China's extra-territorial claims.  

製造中の両用機では世界最大で中国の領土主張の一助となるよう設計されている

China's Homemade Amphibious Aircraft AG600 Makes Maiden Flight In ZhuhaiVCG—VCG VIA GETTY IMAGES
 BY TYLER ROGOWAY DECEMBER 24, 2017

国の野心的なAG600水陸両用機プロジェクトについては以前もお知らせしているが昨日同機が初飛行に成功したので改めてお伝えする。
ほぼ737並みの機体は珠海空港(広東州)から離陸した。初飛行には派手さがないが中国メディア、ソーシャルメディアが取り上げている。
ロイターは同機を新華社が「海洋島しょ環礁の守り神」と表現していると伝えた。その表現は事実とそんなに離れているわけではない。AG600は他機がまねできない機能を実現し中国本土から遠く離れた島しょ部の領有権主張を支える手段となる。特に南シナ海で構築された人工島の支援に投入されるはずだ。
VCG/VCG VIA GETTY IMAGES
The AG600's aircrew deplanes after a successful first flight.
2016年7月にWar Zoneは以下お伝えしていた。
「中国による公式説明では同機は消火任務・救難任務に投入するとあるが同時に広範囲な海洋哨戒飛行を南シナ海で行うだろう。
中国の巨大「沿岸警備」艦と同様にAG600は漁船やエネルギー採掘船の捕捉、監視、追尾に使うのではないか。権益がぶつかる海域で他国の動向も監視するはずだ。
AG600で中国は南シナ海各地の人工島とくに滑走路がない地点へのアクセスが手に入る。ハブアンドスポーク方式でフィアリークロス礁にできた滑走路からAG600は人員、燃料、その他補給品を別の島に送る。長距離飛行能力で本土にも飛び、輸送能力が強まる。人工島の戦略的価値や有用性が高まる。
AG600は新型両用機として多様な任務に投入され遠からぬ将来に同機を原型に別の機体が登場するだろう。
AG600の武装化も容易にできるはずだ。レドームに戦闘機並みの小型レーダーを搭載すればリアルタイムで敵艦船の位置を味方ミサイル部隊に伝えることができる。主翼下にハードポイントが将来追加されるかが注目される。その場合、AG600は強力な制海用両用機材や対潜機に変わる
VCG/VCG VIA GETTY IMAGES
AG600は最大の水陸両用機で中国政府は17機を発注中で、今後この原型から専用型が登場すれば生産数は大はばに増えるだろう。
新型機をゼロから開発するのは大変な作業だ。中国もこれを意識してAG600輸出の可能性を模索している。350mphで飛行時間12時間との性能が本当なら有益な機体に見る国も出よう。AG600が消火機になる、あるいは乗客50名と貨物を遠隔地に運ぶのであれば需要は少ないが訴求力を感じる顧客があるはずだ。
まもなくフライトテストを開始する同機には今後も注視する必要があるが、中国が航空宇宙産業を世界規模にで成長させようとする中で同機は機微性の高い軍用装備を搭載していないため中国報道機関が同機の将来の活躍をあれこれ書き連ねるのは確実だろう。■

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★プーチン機のシリア訪問にはSu-30が身を挺して護衛していた

技術の遅れは体力と気力で乗り切るロシア式のアプローチに感服です。中国とロシアは偏った技術体系になっているのでしょうか。しかし下のツイッター投稿にあるようにいろんなことに詳しい向きがあちこちにいるもんですね。

Su-30s Acted As Infrared "Heat Traps" For Putin's Arrival In

Syria Aboard A Tu-214PU

プーチン乗機のTu-214PUがシリア到着した際にSu-30編隊が赤外線の「ヒートトラップ」として飛んでいた

The Russian Air Force got creative with its shoulder-fired surface-to-air missile countermeasures for Putin's visit to Syria.

ロシア空軍が独創的な対応で携帯型地対空ミサイルへの対抗策をプーチンのシリア訪問時に見せた

YOUTUBE SCREENCAP
BY TYLER ROGOWAYDECEMBER 20, 2017


シア大統領ウラジミール・プーチンが今月初めに中東を訪問したが危険な事態は生まれなかった。シリア反乱勢力からすればシリア独裁者バシャ・アル・アサドの最大の支援者として政権存続を図る同大統領は大きな獲物である。これを意識してロシア軍は異例なほどの注意を払いシリア沿海部ラタキア基地への離着陸時に大統領乗機を護衛した。ラタキアはロシアの恒久基地となっており、クレムリンはフメイミム航空基地と称している。
大統領が同基地を訪問した2017年12月11日、ロシアはプーチンが豪華なTu-214PU機内からSu-30SM編隊が機外を随行するのを見る映像を公開した。戦闘機は大統領機に接近したまま降下している。これは力の示威でも軍隊式歓迎儀式でもなくシリア領空内で警護体制を強化したのでもなく、「ヒートトラップ」としてTu-214PUの発する熱特徴を隠し、携帯型防空装備(MANPADS)として知られる熱追尾対空ミサイルから大統領機を守った。
準国営通信機関RTがSu-30パイロットのひとり「ユーリ」がこのミッションを以下述べているのを伝えている。
「今回の任務は大統領乗機に合流し着陸まで護衛することだった... こちらの機体で隠すことがあり...Su-30SMの排気ガス温度の方がはるかに高いので...飛行速度が違うためこちらは性能を目いっぱい使い、大統領機を両側から守ったまま飛行した」
プーチンも賛辞を送っている。
「パイロットたちを見ていた。着陸までぴったりと寄せて飛行しただけでなく、こちらの下に入っていた。...感謝したいので伝えてほしい」
Tu-214PUには赤外線妨害装置がなく、今回の措置ははじめてではない。同機は約18千フィートまで降下しMANPADの有効範囲に入っていた。シリア領土上空で機体を曝すことが最小になる経路を飛び、ソチからトルコ、東地中海上空を飛んでから空軍基地の南方で方向を変えて最終アプローチをとった。
Tu-214PUは空中指揮所でありVVIP輸送機としてクレムリンが使う。機体は米軍ではエアフォースツーとして副大統領が搭乗することがあるE-6BTACAMOやC-32Aに近い存在で大きさは757とほぼ同じでロシア大統領が通常使用する大型四発のIL-96-300PUと異なる。
ANNA ZVEREVA/WIKICOMMONS
Tu-214PU


Su-30SMにミサイル接近警報装置はないが乗員二名が煙を出す軌跡の有無に目を光らせ、必要なら一瞬でフレアを大量放出できるので貧者の対抗装備となる。またTu-214PUの赤外線特徴をSu-30が自機のAL-31FLエンジンの高温排気で隠すのは十分可能だ。ただ低高度ではミサイル攻撃に手動対応する時間余裕はほとんどない。
大型機をMANPADから守る赤外線対抗装置でロシアは米国から15年近く遅れている。米機材ではC-32、VC-25A、C-17、 C-5、C-130、CV-22、CH-53他で高性能かつ小型の指向性赤外線対抗装置(DIRCM)が搭載されており、フレアやBOL-IR対抗措置でも自機を守る。DIRCMは低出力レーザービームを飛来ミサイルの赤外線シーカーに照射し標的を喪失させる。この装置は機体から放出するおとりと合わせて自動制御で照準をあわせ監視センサーがミサイル接近の警報を出す。
ロシアは技術ギャップを埋めようと懸命に努力しておりプレジデント-Sと呼ぶDIRCM装備の配備を戦闘ヘリコプターに2016年からシリアではじめたようだ。ロシア製ヘリコプターの海外運用者も同装置を受領している。技術が小型化されており、ロシア製回転翼機への搭載が可能となった。さらにロシアは同様の技術で爆撃機に搭載しミサイル攻撃から防御しようとしている。
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スホイのSu-57戦闘機には砲塔式のDIRCMがつき、101KS-Oと呼ばれ、西側メーカーの製品とそん色ない。小型ガラスドーム内にレーザー銃座が入りコックピット後方と下方につく。ミサイル接近警報装置で作動する。だが101KS-Oの性能やいつ完全稼働するか不明だ。
同様のDIRCM機能は現在稼働中の西側戦闘機には搭載されていないが、高出力レーザーはミサイルすべてに対応可能と見られ、ペンタゴンが実用化を急いでいる。
Canopy inlets that were initially 6(3 each side) became 2
around Mar'15,then went back to streamlined 6 in late'15.
Note Atoll EOCM' 101KS-O pic.twitter.com/s4jziSQdj0

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Su-57には地味ですが101KS-Oってのがついてます
101KS-Oは先進的なレーザーベースのカウンターメジャ
ーシステムとなっていてミサイルの誘導システムを混乱
が可能。ヘリなどでは搭載が進んでいるけど戦闘機では
初めて。
今回のSu-30編隊を使った事例映像でなぜこの種の装置がでてこないかがこれでわかる。一方で基地にはその他戦術機がいたはずだが見当たらない。おそらく各機は空中で基地周辺を警戒飛行していたのだろう。
その他にも今回のような独創的な戦術運用からロシア空軍部隊が必要に応じ実に有効な結果を生んでいることがわかる。■


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2017年12月25日月曜日

★★ドイツ海軍:今度は最新鋭フリゲート艦を建造元へ返却

The German Navy Decided To Return Their Bloated New Frigate To The Ship Store This Christmas

ドイツ海軍が新型フリゲートをクリスマス前に造船所へ返却する
ARGE F125/LERSSEN-DEFENCE
 BY TYLER ROGOWAYDECEMBER 23, 2017



ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク級125型(F125)フリゲートについては先にお伝えしている。同艦の奇妙な任務想定と設計上の特徴以外に、引き渡し後にも面倒な問題が発生している。右舷へ傾く傾向や重量過重のため性能が出せず、運航経費が上がり、さらに深刻なのは兵装をわずかしか搭載していない同艦で将来の改修をドイツ海軍が行えないことだ。
そこでドイツ海軍は同艦の編入を断念し建造元ブローム+フォス(ハンブルグ)へ返品することとした。この決定の背景には「ソフトウェア、ハードウェア上の瑕疵」があるとドイツ報道は伝えている。特にソフトウェア問題は深刻で艦体の大きさは駆逐艦並みの同艦はわずか120名程度とブレーメン級フリゲートの半分で運行する前提のため、同級4隻では信頼性が最重要な要素で、ドイツをいったん出港後最大2年間もそのまま運用する構想のためだ。
Navaltoday.com によればドイツ海軍が引き渡し後の艦艇を建造元に返却するのはこれが初めてだという。バーデン=ヴュルテンベルクでは試運転でも工期を遅れた実績がある。
問題を複雑にしているのが最終四番艦のラインラント=プファルツの命名式が終わっていることだ。建造、試験調達を並行して進める方式としたため各艦が同じ欠陥を有していることになる。
この問題とは別にドイツ海軍には作戦運用可能な潜水艦が一隻もないなど困った状況があり苦難の連続である。
F125フリゲートでは事態が展開の都度お知らせすることとする。

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★ロッキードが開発するグレイウルフ巡航ミサイルはどこが違うのか

Aerospace Daily & Defense Report

Lockheed To Develop ‘Gray Wolf’ Cruise Missile

ロッキードが開発する「グレイウルフ」巡航ミサイルとは
ロッキード・マーティンのミサイル火器管制部が競合6社を破りAFRLの「グレイウルフ」巡航ミサイル開発実証契約を獲得した。
Dec 20, 2017James Drew | Aerospace Daily & Defense Report

空軍研究事件部門(AFRL)がロッキード・マーティンに開発させる巡航ミサイルは多数一斉発射し高度防空網を突破できる自律運用を目指す。
同社のミサイル火器管制部門(在ダラス)が競合6社を破り、5か年で納期数量未定の契約を110百万ドルで勝ち取り、AFRLが目指すグレイウルフGray Wolf巡航ミサイル実験に取り組む。
契約ではAFRLが2017年3月発表の仕様書の低コスト遷音速巡航ミサイル試作型の「設計、開発、製造、試験」を実施し、ネットワーク技術の応用で高度の航法性能と残存性を発揮しながら特定目標の攻撃を行う想定だ。
AFRLは110百万ドルを二社に執行させるつもりだったがロッキードが全額契約を勝ち取ったようだ。
国防総省の12月18日発表では前渡金2.8百万ドルを提供し発注時期は2022年まで延長可能としている。上記の仕様書は5月に改訂されグレイウルフ契約は二年延長可で2024年までとしている。
国防産業界はグレイウルフについてコメントを積極的に出していないが、米空軍文書から情報の一部が判明している。
AFRL仕様書ではスパイラル状に変化する開発形態を想定しており、目標は低コスト生産工程を駆使した生産方式と個体間で協同作動した形の攻撃をともに実証するものとある。
AFRLは産業界が消耗品扱いの巡航ミサイルを小規模納入かつ期限超過でも低価格にできるか見たいとし、現在の単価数百万ドルと比較する。また新方式の運用、戦術、技法、手順、規制方針が自律能力の付与兵器グレイウルフに適用できるか確認したいとしている。
ロッキードの巡航ミサイルにはペイロード多数が搭載され、運動性エネルギー攻撃、電子攻撃や情報収集監視偵察機能も試されるはずだ。
攻撃効果の実現にはネットワーク化したミサイルが統合防空体制の各種手段を使用不能にしながら突入する必要があり、敵の地対空ミサイル、レーダー、通信機能への対抗を想定している。
「低単価で調達しやすいミサイルは損耗を前提で敵には高コスト対応をさせる」とAFRLのプレゼンテーションで説明していた。「スパイラル状に本体を進展させれば迅速技術試作に繋がり一層多くの発展性が実現する」
これと似た方法をAFRLが以前実施している。低コスト損耗可能攻撃用無人航空機実証事業 Low-Cost Attritable Strike Unmanned Aerial System Demonstration がそれで2016年にクラトスディフェンス&セキュリティソリューションズKratos Defense & Security Solutions がXQ-58Aヴァルキリーで契約交付を受けている。DARPAにはグレムリン事業がありダイネティクスDyneticsジェネラルアトミックス両社が契約を獲得し、無人航空機をロッキードC-130ハーキュリーズでの発進回収する予定だ。

グレイウルフは空軍にとって使い勝手の良い兵装になる見込みで爆撃機や輸送機以外に戦略能力室提案の「兵器庫(重武装)」機からも発射することになるかもしれない。■

2017年12月24日日曜日

Saabが韓国KF-XのAESAレーダー技術開発を支援へ

AESAレーダー技術の提供を米政府が拒否し、国産開発を目指した韓国ですが結局Saabの援助を得ることにしたということですか。単体の技術だけでなく各種システムを統合していくことが大切ですね。韓国はどう扱うつもりでしょうか。

Saab to Support S Korean KF-X Fighter Jet’s AESA Radar Development
韓国KF-X戦闘機のAESAレーダー開発でSaabが支援へ

Our Bureau
12:07 PM, December 23, 2017

KF-X fighter jet illustration by South Korean Air Force
- A +


韓国の国産KF-X戦闘機用のAESAレーダーのアルゴリズム開発でSaabが支援要請を受けている。

レーダー開発の主体は韓国国防開発庁 (ADD) でSaabはLIG Nex1へ協力する。契約金額は25百万ドル。LIG Nex1(本社ソウル)は高性能電子製品の開発製造を行うメーカーだ。

韓国は国産戦闘機開発を長期間にわたり勧めておりAESAレーダーの国産化も狙う。Saabにとって今回の契約は重要な一歩となり今後長期間にわたり韓国での事業を狙う。

「機内搭載AESAレーダー開発に加われ嬉しい。最新戦闘機へ搭載する技術開発の一員となりサブシステムまで含め関与するトップ企業としての当社の役割が評価されたものだ。「韓国政府、産業界とともに国産戦闘機開発を支援していく」とSaabは語っている。

韓国はKF-X開発をロッキード・マーティン支援で当初進めていたが米政府がAESAはじめ重要技術提供を拒否した経緯がある。AADはそのため独自開発するとしていた。■


なぜ米韓で意見が食い違うのか。韓国が主導権を奪回すればどうなるのか

原著者は大学の先生で政策立案者ではないのすが、こんなこと言われて韓国の人たちはどう思うでしょうね。 AllianceではなくPartnershipのことばをつかいアメリカとして韓国を価値共有する相手とは見ていないようですね。韓国があちら側に行っても怖くないということでしょうか。米韓で意見が全部同じである必要はないのですが、この通りになれば韓国は日米とは一線を画しチームにはなれないですね。もちろん中国にとっては好都合なのでしょうが。文大統領については親北派と日本は見ているので発言にいちいち目くじらを立てかねないのですが、構想力はあるようです。ただし方向性が間違っていると思いますが。ともかく今年は開戦を避けられそうですね。


5 Things South Korea Can Do to Wrest Control from Washington

ワシントンから主導権をねじり取るため韓国にできる5つのこと


朝鮮半島の地図を見れば米韓両国が予防戦争を巡り意見が異なる理由がわかる

U.S. President Donald Trump and South Korea's President Moon Jae-in hold a joint news conference at the Blue House in Seoul, South Korea November 7, 2017. REUTERS/Jonathan Ernst
The National Interest Rajan Menon December 21, 2017




国の文在寅大統領には会ったことがなく、その機会もないだろう。いつか機会があれば握手して調子のいいことだけお座なりにいうのだろう。大統領から外交政策の助言を求められることもないはずだ。韓国には外交専門家もたくさんおり、大統領はそちらの意見を求めるはずだ。最終的に同国の政策は自国で決めるべきだ。

朝鮮半島の危機が過熱する中で韓国内の友人や関係者へ会話を試みたところたくさんのことが分かったが、韓国政府がとるべき対応については自分の意見は述べないようにした。また言うべきでもない。韓国側は北朝鮮が核兵器を入手することで生まれる意味を筆者より詳しく理解しており、頼まれてもいないのに出しゃばるべきでもない。だが筆者の話し相手はそうやすやすと筆者を解放してくれず、「こちらは評価結果を見せたのだからわが方の状況に何をしてくれるのか正確に教えてほしい」と言われた。
そこで以下対応した:
ず、韓国には独自の戦略展望が必要であり、自国の戦略的意味付けに対応しても米国の希望をそのまま実現するものにすべきではない。以下詳しく解説しよう。韓国は大きな進歩を1950年代以降見せている。貧しい国だったが、今や豊かな社会になった。国民一人当たり所得は4万ドル近く、ニュージーランド、スペイン、オランダを抜き、日本・英国・フランスに近づいている。GDP1.93兆ドルの韓国経済は世界第14位でカナダを上回る。輸出総額は5120億ドルで世界五位で中国、米国、ドイツ、日本の下だ。
自動車、船舶、コンピューター、通信、高性能電子製品は手は原子力発電所まで韓国企業は西側市場で地歩を築いた。ストックホルム平和研究所によれば韓国の国防支出は372.7億ドル(2016年)で世界8位だった。ちなみに北朝鮮の国民総所得が327.6億ドルで韓国国防費より小さい。南北朝鮮の軍事バランスは複雑な様相を呈しており、開戦となればあまりにも不明な要素が多いのはクラウゼビッツが「摩擦」要因と呼んだものと同じだ。配備した兵器数で北が数的に優勢だと誤解しやすいが韓国の近代的で高性能な軍事力が北の旧式兵力に圧倒されるはずがない。米国の支援がなければ韓国が北に蹂躙されるとよく言われることへも疑問符がつく。
これだけ戦略的重みがあるのに安全保障となると韓国は米依存のままだ。国連軍の仕組みが朝鮮戦争時にできて、合同軍司令部が1978年に定まり韓国軍は米将官の指揮下におかれた。1994年に変更され韓国は平時の統率権を得た。ただし有事に指揮権は米国に戻る。
韓国はこの取り決めを廃止すべきだ。韓国は積極的に動いていないが、軍の統帥権は常時握るべきだ。米国の防衛姿勢が弱まることを恐れるあまり躊躇すべきではない。米軍が韓国に半世紀も駐留して(現在は28,500名)いるのは慈善目的ではない。歴代の米政権が一定の軍事プレゼンスが北東アジアにあることで国益に資すると判断しているからだ。この見方は変わることなく、特に中国軍事力の台頭を意識する必要があるが韓国が全部隊の統帥権を掌握しても韓国は米国との軍事協力体制を終わらせる必要はない。むしろ韓国は提携関係にもっと多く関与することになる。そうなると韓国は戦略思考で一層独自に考えざるを得なくなる。文大統領は戦時の軍掌握を目指しているが、不運な結末を迎えた朴槿恵前大統領も同様だった。そこでこの変更は十分可能と思われる。むしろ遅きに失しているのだ。
番目に、韓国政府は米国が北朝鮮の核戦力の完全配備を防ぐ目的で攻撃を始めた場合には支援しないと疑う余地なく明確にすべきだ。北朝鮮の核戦力開発には解決すべき技術課題がある。弾頭の小型化や大気圏再突入時の高温と振動に耐える構造設計等だ。予防戦争は韓国に破滅的結果をもたらすが北にも同様で、その評価は各方面が分析済みだ。外科手術的予防攻撃はファンタジーの世界と言ってよく、韓国は自国の将来を魔法的予想に賭けるべきではないだろう。
韓国はさらに先を目指すべきだ。自国領土、領海、領空を予防戦争の目的に使わせるべきではない。また米国との軍事演習も緊張高まる時期には再考してよい。北朝鮮は演習に怯えておらず、ましてや核やミサイルの進展を遅らせる効果は皆無だ。演習や軍事力行使は緊張を高める効果を生むだけだ。偶発事故や誤解の危険や技術誤作動が引き金となり危機的状況が戦争に発展しかねない。
朝鮮半島の地図を見ればワシントンとソウルで予防戦争を巡り見解が違う理由が分かる。ホワイトハウスの主が朝鮮半島情勢に驚くほど無知で、配下の国務長官の外交努力を無駄にし、いつの日か金正恩に会ってもよいと言いながら次には北朝鮮を「完全破壊する」と口にする大統領になった今は特に明白だ。ツイッター発言が一定していないことも韓国が予防戦争に頑として反対すべき理由になり、韓国はイベントの連続に流されるべきではない
番目に韓国は核兵器を容認しない政策を見直すべきだ。韓国も核兵器開発を1970年代に検討したが、機密解除となった米政府公文書によれば米国の圧力に屈したとある。同国が核不拡散条約に調印したのは1968年で批准は1975年だ。2004年に国際原子力エネルギー機関の追加議定書の実施に合意している。これら全部を不履行したら大変なことになる。だが戦略事情は変化している。韓国が北朝鮮の非核化をどれだけ熱望しても結果はひとつしかない。不可能だ。北朝鮮は貧しく友邦国もなく恐れ(今や中国に対しても)猜疑心を強めており、核兵器を米国からの攻撃の抑止手段と見ている。国営メディアや政府関係者は繰り返しムアマル・カダフィやサダム・フセインも核兵器さえ保有していればまだ生きているはずと主張している。金正恩にとって実戦投入可能な核兵器開発は最高優先事項だ。米軍の力の誇示、経済制裁、中国やロシアの舞台裏外交、トランプの脅かしや癇癪があっても金正恩の心は揺るがない。次のテストもすぐにでも行われると予測すべきだ。
北朝鮮核ミサイルで米本土を攻撃可能となれば米国に北朝鮮への報復ミサイルが何発あっても関係なくなる。韓国にとっても北朝鮮が実戦核戦力を整備すればゲームは戻れない道に入る。拡大核抑止力の概念も無用の存在になる。米国はソウルを守るためロサンジェルスを犠牲にできない。もちろん北朝鮮の核が本当に攻撃能力があるのかは議論の余地があるし、米国あるいは韓国への核攻撃が圧倒的な米反攻につながるかでも議論はあるだろうし、平壌も他の核保有国同様に非核保有国を脅かすのに核兵器は使えないことに気付くかもしれない。ソウルが平壌の核兵器に悩まされなくなれば韓国内の軍指導者や民間戦略専門家を納得させられなくなるだろう。
韓国が非核化政策を変換すれば大きな影響が生まれ、日本、中国、米国からの抗議を生み韓国に現状変更しないように圧力がかかるはずだ。政策変更は国内でも激しい論議を呼び、実際に韓国では核兵器保有の選択について議論がこれまでより強くなっているし、最近の世論調査では韓国民の60パーセントが核戦力整備に賛成している。文大統領はこの道には進まないと発言しているが、韓国は拡大抑止力を信頼しないのであれば核の選択肢を排除すべきでない。
番目に韓国は長期戦略で中国と関係強化すべきだ。南北を比較すれば中国には韓国の重要性の方が北朝鮮よりはるかに高く、中国と韓国の関係は日中間のような過去の負の歴史はない。中国が韓国と一層建設的な関係になればソウルは北京指導部が苛ついても平壌に対する立場が強まる。ソウルの新中国政策の効果は大きいはずだ。地域内の力のバランスにつながるためだ。中国はこの二十年間で軍事力を増強し米国が有事に北太平洋で兵力投射すれば相当の対価を支払わせる体制を整備している。このため中国が強力になれば韓国は敵対関係に巻き込まれるリスクを覚悟することになる。もうアメリカの保護は期待できない。米国と縁を切れば韓国には愚かな選択となるが、新しい力の地図を有利に使う立場になれる。このためには思考を塹壕状態から脱する必要がある。

短期的には韓国は米THAADにどこまでの防衛を期待するのかを決めつつ、対中関係の見返りに同装備の展開を取りやめるべきかも決心する必要がある。北朝鮮ミサイル攻撃に同装備がどこまで有効なのか、韓国が必要とするソウル首都圏の防衛に役立つのかを見極めることだ。同装備は迎撃ミサイル48発と高性能レーダーの攻勢で韓国南部星州に展開している。ミサイルに詳しいテオドール・パストル他がTHAADの実効性に疑問を呈しており、ソウルには参考になるだろう。
番目にソウルは半島での戦争リスクを減らす案を支援し、東北アジアの経済開発を促進する構想を推進し各国の経済自律を促し北朝鮮も参加させるべきだ。文大統領が発表したばかりの「平和と繁栄の半島」構想にはこの方向に通じるものがある。構想には各種の事業があり、韓国が北朝鮮の崩壊を望まず計画もせず再統一はあくまでも協力協調で進めると確認すること、「軍事信頼醸成」に向けた手順の実施、各国の投資で「三大経済ベルト地方」を創設し朝鮮半島、中国、ロシアをむすぶことが含まれる。構想が一般的な内容なのは認めなくてはいけないし平壌を説得して核兵器開発を中止させるのが非現実的なのは確かだが、文大統領は賛辞を受けてしかるべきだ。韓国独自で構想をまとめたからだ。さらにトランプの目指す方向とは違う点が新鮮に見える。トランプは脅迫を主にし戦争も辞さない姿勢で、中国も米国からのご褒美で非核化した北朝鮮の出現を期待しているように見える。
上5つの視点では韓国が自ら選択し進路を独自に決める前提で、同国が達成した経済軍事力をその背景とする。出発点としてソウルはワシントンに対して韓国の国益と米国の国益がどこが同じでどこが異なるのか明確に示し、「レッドライン」はどこなのかも示し、大胆な構想で自国でしっかり運営していける自信も示し、もはや乗せられるだけの存在ではないと主張したらどうか。これだけは明確だ。ソウルは今まで通りの運営はもうできない。あまりにも多くの状況が変化している。さらに多くの変化がこれからやってくるのだ。■
Rajan Menon is an Anne and Bernard Spitzer Professor of International Relations at the Powell School, City College of New York/City University of New York. He is also a senior research scholar at Columbia University’s Saltzman Institute of War and Peace Studies, and author of The Conceit of Humanitarian Intervention.
Image: U.S. President Donald Trump and South Korea's President Moon Jae-in hold a joint news conference at the Blue House in Seoul, South Korea November 7, 2017. Reuters/Jonathan Ernst