2017年6月10日土曜日

北朝鮮空軍の米空母攻撃模擬演習は笑止千万だ




これは完全なプロパガンダでこんな形で米空母に打撃を与えようとは狂気の沙汰で、出撃した機体に帰還のチャンスはありません。一人100殺とは戦時中の日本見たいですが、要は精神力が物理的な軍事力に勝るということでしょうが開いた口がふさがらないですね。

北朝鮮軍用機が敵空母を模した標的を攻撃している。Source: Rodong Sinmun

North Korean air force practises striking aircraft carriers

北朝鮮が空母攻撃の航空演習を実施

  Gabriel Dominguez, London - IHS Jane's Defence Weekly
07 June 2017

北朝鮮空軍が敵空母群攻撃の演習を緊張が高まる中で実施した。
  1. これは朝鮮労働党の日刊紙労働新聞Rodong Sinmunが6月5日に掲載したもので米海軍空母二隻が海上自衛隊部隊と日本海で演習を行った直後に報道している。
  2. 同紙によれば最高指導者金正恩も立ち合っ多今回の演習は朝鮮人民軍空軍、防空軍合同の「戦闘飛行競技」の一環だという。
  3. 演習の日時は不明だが、同紙には北朝鮮軍機の写真数点が掲載され、中には標的に向けミサイル発射、爆弾投下する光景もある。
North Korean MiG-29s, Su-25s, MiG-23s, and MiG-21s were among the aircraft that took part in a drill that involved targeting simulated enemy aircraft carriers. (Rodong Sinmun)
北朝鮮のMiG-29, Su-25, MiG-23, MiG-21の各機が敵空母攻撃の模擬演習に参加している。(Rodong Sinmun)
  1. 写真ではMiG-29「フルクラム」、スホイSu-25「フロッグフット」、MiG-23「フロッガー」、MiG-21「フィッシュベッド」、MiG-19「ファーマー」、MiG-15「ファゴット」、An-2「コルト」、Mi-4「ハウンド」、MD500ヘリコプターも見られる。
North Korean Mi-4 helicopters and An-2 aircraft were among the platforms that took part in a drill that involved targeting simulated enemy aircraft carriers (Rodong Sinmun)
北朝鮮Mi-4ヘリコプターと An-2機も敵空母攻撃模擬演習に参加している。(Rodong Sinmun)
  1. 北朝鮮空軍司令官上級大将Kim Kwang-hyokの発言が同紙にあり、競技は「戦闘部隊将校全員が一人100殺の戦闘要員となりいかなる敵も打破できるよう訓練するものであり、空母と言えども恐れるに足らない」とある。
  2. 平壌からの報道発表は米海軍ロナルド・レーガン、カール・ヴィンソンの両空母戦闘打撃群が海上自衛隊と日本海で共同訓練を行った数日後に出てきた。
  3. またニミッツ空母打撃戦闘打撃群が6月1日に出港したとの報道の中で今回の発表が出た。米メディア複数によれば同CSGはアジア太平洋に向け出港し、北朝鮮への圧力を増やすのが目的と言われる。■

2017年6月9日金曜日

ミッドウェイ海戦75周年、中国軍事戦略家は戦史から何を得ているか


今年はミッドウェイ海戦から75周年の節目です。戦史から何を学ぶのか。日本では失敗の代名詞として細かい点にこだわる傾向があるようですが、中国は本質の戦略論で同じ事例を分析しているようです。米海軍大学校准教授が中国記事を読んで分析していますのでご紹介しましょう。

 

What Do China's Military Strategists Think of the Battle of Midway? 中国軍事戦略思考家はミッドウェイ海戦をどう理解しているか


China likely recognizes that once wars are started with America, even when militarily successful, they may be extremely difficult to end.
中国もいったんアメリカと交戦すれば、軍事的に成功しても戦争終結が極めて困難だとわかっているのだろうか

The National InterestLyle J. Goldstein June 4, 2017

  1. 1942年の6月に米海軍航空部隊は日本帝国海軍の主力空母4隻を海底に沈めて歴史の流れを変えた。勝因には戦略、暗号解読、急降下爆撃機の技量、訓練の蓄積、運のよさに加え少なからぬ勇気と犠牲が加わった。
  2. エドワード・「レム」・マッシー少佐の例を挙げよう。1930年の海軍兵学校卒でニューヨーク州出身の少佐は米海軍初の魚雷投下で命中を上げている。本人が率いる飛行隊が1942年2月にクウェジェリン礁付近で日本海軍に打撃を与えている。運命の6月4日朝に少佐は飛行隊を率いてミッドウェイ海戦の大きな局面となった空母飛龍攻撃に向かった。「僚機は隊長機が大きな火の玉になるのを見た」
  3. マッシー少佐はむき出しのコックピットに乗り乗機TBD(アヴェンジャー)から250フィート下に魚雷を投下したが、命中で発生した炎から逃げることができなかった。海戦の結果を知るものからすればアヴェンジャー隊の犠牲は無駄死にではないと言える。デヴァステーター艦爆隊に道を開き半年前の真珠湾攻撃の仇を返すしたからだ。
  4. 今日の世界では太平洋の対岸で中国がミッドウェイ海戦を真剣に研究している。北京が空母二号艦を進水させ三号艦建造に向かっていることからすれば驚くべきことでもないが中国の海軍専門誌「現代艦船」に長文記事が掲載されたのは興味深い。記事は「ミッドウェイ島への道」の表題で戦術、技術、勇敢さのいずれも取り上げず、かわりに極めて厳密に1942年春時点での日本海軍上層部にあった作戦立案の選択肢を分析している。ミッドウェイの奇跡を生んだ要因の中で中国の分析記事は「戦略洞察力」あるいは日本が軍事的に有利な位置を無駄使いした事実に着目している。
  5. 分析では日本が東南アジア各地を瞬く間に占領し、しかも驚くほど代償を払わずに達成したことから始まっている。簡単に勝利が手に入ったため「次をどうする」が真剣に問われた。1942年3月の日本海軍は二方面作戦を検討していたといわれる。南方からオーストラリアを攻略するか、北に向かいアリューシャン列島を陥落させるかだった。日本海軍の作戦を立案し真珠湾攻撃を考えた山本五十六大将はハワイ攻略の是非も検討させたといわれる。興味深いのは日本海軍はインド洋まで遠征してセイロン(スリランカ)を攻略していた点だ。分析が示しているのは東京のインド洋作戦は突飛な発想でないことだ。日本海軍がインドまで勢力を展開したことで英国は脅威を感じ、インド植民地で英国支配に抵抗する勢力を勇気づけるとともにドイツに好印象を与え、枢軸勢力が手をつなぎ石油豊富なペルシア湾をおさえる可能性が現実にあったからだ。
  6. オーストラリア侵攻は一度も真剣に日本は検討していないと記事分析は結論づけている。実施しすれば最低20万の兵員とともに限りある日本の船舶力の三分の一をつぎこむことになるからだ。日本陸軍には海軍を支援し各種作戦をアジア太平洋で展開することに全く関心がないことを中国側は指摘している。日本の地上部隊はシベリア制圧を想定していたためである。他方で海軍はハワイ占拠で米国最大の太平洋の軍事拠点を無効にし、米軍による日本本土攻撃の可能性も大きく減ると見ていたと記事では強調しており、陸軍の「主体性のなさ、非協力的態度」はあからさまで海軍を支援する作戦には及び腰だったとまとめている。
  7. 山本大将は真珠湾攻撃の立役者として後光がさすほどの存在であったが日本海軍上層部には12月7日の奇襲攻撃でハワイ燃料集積地攻撃を逸した大失敗、さらに艦船修理施設も攻撃しなかった点も見逃していなかったと記事は紹介。ただし一番の失策は米空母部隊をせん滅する機会を逃したことだった。ドゥーリットル空襲で日本本土が直接攻撃されたため、これらの失敗は日本海軍上層部で喫緊の課題と認識された。さらに日本の軍上層部は決戦は先送りできず今仕掛ける必要を感じていた。米国で空母11隻が建造中なのに日本では1隻しかなかったからだ。
  8. それでもミッドウェイ作戦に反対の意見の軍上層部もかなり多かった。中国の分析では反対派は上空援護が不十分、かつ米国が空中で主導権を握る可能性があることを根拠にしている。ミッドウェイ島自体は何ら資源のない土地だが同島を抑えることで太平洋中部の日本の海上活動を抑える効果がある。反対意見ではミッドウェイ島は小さく、防御も難しいが大部隊の駐屯も困難と指摘していた。だが中国分析では山本が例えミッドウェイ島占領に成功してもハワイ攻略作戦の実施は不可能と断念したとある。つまるところもし日本がハワイを占領すれば4千キロという大海原があれば米国と言えども日本が新たに獲得した拠点の奪回に部隊を集結させるのは困難になると見ていた。
  9. ただしここまで大胆な作戦の実施前に日本海軍は米空母部隊をせん滅する必要があり、このためにハワイを攻撃するおとり作戦で米空母を決戦に引きずり出そうとした。アメリカへの欺瞞として日本海軍は「米軍の注意を分散させる」作戦を打撃部隊四つを別行動させた。だが中国記事の分析では「作戦案が過剰なまで複雑」で各独立行動部隊にそれぞれを支援する能力がなかったとまとめている。記事は戦略方針の検討を重視し個別の戦いの進展では説明を省いている。ただ日本側の情報部門がUSSヨークタウンが珊瑚海海戦で損傷したものの迅速に修理され戦場に復帰するとは見ていなかったことを失策としている。中国記事では日本側戦力(空母4艦載機227)は米戦力(空母3艦載機234)に対して圧倒的に多いとはいえず、ミッドウェイは「過剰なリスク」になっていたと分析する。
  10. おそらく中国による評価で一番興味をひかれるのは文末の数行で日本の観点による戦争終結の話題だ。1942年春に日本が戦争で目指していたのはアメリカを「戦争終結の交渉の席につかせる」ことだった。皮肉なのは日本が勝利を収めればそれだけ米国が日本との和平交渉に応じる余地が減ることだ。この観点からいったん開戦すればどれだけ軍事勝利をおさめても戦争終結が極めて困難になるとわかる。
  11. この点をさらに深めて、一度アメリカを怒らせたり、恐喝すれば、米国は必要な犠牲を厭わず勝利のため負担も苦と思わない国であることを中国戦略思考家にも理解してもらいたい。中国側作戦立案部門には軍内部の競合関係がどれだけ危険かを本事例から学んでいるかもしれない。また民間商船が戦略予備部隊として必要だと認識し、戦略的な集中をさらすことの危険性(例スリランカ)と資源を中心的課題に収集する必要性も教訓となるはずだ。中国がミッドウェイ海戦分析から得る可能性のある教訓は日本の失敗はハワイ攻略に必要な軍事力を整備せず努力を集中しなかったことだ。地理条件は今も昔も変わらないので結論として核の時代である今日の中国戦略思考家が十分なまで高度に思考し同様の作戦を今日実施すれば即座に大惨事になるとわかっているとよい。■
Lyle J. Goldstein is an associate professor in the China Maritime Studies Institute (CMSI) at the U.S. Naval War College in Newport, Rhode Island. The opinions expressed in this analysis are his own and do not represent the official assessments of the U.S. Navy or any other agency of the U.S. government.



案の定、米有力議員が韓国THAAD凍結に非難の声を上げる


文在寅大統領はトランプ大統領との首脳会談を控えており、この件をどう説明するのか見ものです。法理よりも感情を優先するのは韓国特有の現象ですが、対外的には全く通用しません。韓国が虎の尾を踏んでしまった気がするのですが。米国も韓国の動向を理解できなくなりつつあるとすれば大変なことです。中国は裏でこの展開をほくそ笑んでいるでしょう。一番注視しているのは北朝鮮ですが。


U.S. Army soldiers install their missile defense system called Terminal High-Altitude Area Defense, or THAAD, at a golf course in Seongju, South Korea, on April 27, 2017. Shon Hyung-joo/Yonhap via AP
星州のゴルフ場内にTHAADを設置する米陸軍部隊。2017年4月27日撮影。Shon Hyung-joo/Yonhap via AP

US Lawmaker Chastises South Korea for Suspending THAAD
米議員が韓国のTHAAD凍結を厳しく批判

 POSTED BY: MATT COX JUNE 8, 2017

韓国政府がTHAADミサイル防衛装備の受領を遅らせていることに米上院議員が非難の声を発し、同国が10億ドルを投じる米国の動きを再考した理由を米陸軍上層部にも問いただした。
  1. 6月7日の上院歳出委員会の公聴会でリチャード・ダービン上院議員(民主イリノイ州)が「韓国国会がわが方の923百万ドル相当のミサイル防衛装備受領を決めかねている状況はここ数年間自分が危惧していた通りの展開だ」と発言。
  2. ダービン発言の同日に韓国大統領府からTHAAD展開は境影響調査が完了するまで凍結し、調査結果は一年以上後に出るとの発表があった。
  3. 「このTHAADミサイル防衛は中距離ミサイルを対象とし韓国国民の安全を守る意味があるのは明らか...にもかかわらず韓国国内で再度政治議論の対象になったことに困惑せざるを得ない」(ダービン)
  4. 同議員は陸軍長官代行ロバート・スピアおよび陸軍参謀総長マイク・マイリー大将に本件に関する説明とともに韓国政府が対米関係そのものを見直しているのかを問いただした。
  5. スピア長官代行は韓国指導層と話したことはないが「二国間関係は良好」と信じ、先行導入されたTHAAD二個隊は「展開済みで作戦行動可能」と答弁した。
  6. 韓国大統領府からは先行二個装備含む展開済み装備の撤去は求めていないと発表があった。発射装置とレーダーは星州地区に一晩のうちに搬入され、反対派は5月9日の大統領選挙前に慌てて手配したと批判していた。
  7. 大統領府は合わせて国防省が追加発射装備4基の搬入を秘密にしていた疑いの調査を開始し、環境インパクト調査対象から外れるよう陣地構築を小さく見せようとしたのではと疑っている。
  8. マイリー大将のダービン議員への回答では韓国とは連絡を保っているとし、「この事態の解決を目指します。設置場所で環境問題がからんでいると理解しています」「THAADは在韓米軍の防衛のみならず韓国全土の安全確保でどうしても必要です」とした。
  9. ダービン議員からは韓国大統領が提示している点は「意味が二つあり、環境問題とともに適正手続きの問題、つまりミサイル防衛装備の導入是非の議会審議が絡んでいる」との見解が示された。
  10. 一方で北朝鮮が短距離対艦巡航ミサイルと見られる数発を6月8日に発射したと韓国軍が発表しており、北朝鮮は引き続き米本土を射程に収める核ミサイル開発を進めている。
  11. 飛翔体数発は東海岸の元山から発射され約200キロ飛翔する中で最高高度は2キロだったと韓国の統合参謀本部が発表している。
  12. ミサイルの着弾地点は韓国と日本の中間海域で米空母USSカール・ヴィンソン、USSロナルド・レーガンの両空母打撃群が韓国海軍と共同訓練を数日前に終了した地点である。
  13. 「韓国側の理屈が理解できない」とダービン議員は述べた。「もし自分が韓国に暮らしていたら、ミサイル防衛手段はすべて導入してもらいたいと思うはずだ」■

6月8日北朝鮮が発射したミサイルの正体を推測する



今年4月15日の軍事パレードで北朝鮮が展示したロシアの3M24対艦ミサイルを元に北朝鮮が導入した装備。6月8日発射されたミサイルがこの同型の可能性がある。Source: KCNA

North Korea test-fires possible anti-ship missiles

北朝鮮が対艦ミサイル数発を発射した可能性がある

 Gabriel Dominguez, London and Neil Gibson, London - IHS Jane's Defence Weekly
08 June 2017

  1. 6月8日に北朝鮮が同国東海岸から対艦巡航ミサイルの一斉発射テストを行ったと韓国聯合通信が同国統合参謀本部(JCS)発表を引用して報道している。
  2. 「北朝鮮が種別不詳の飛翔体数発を東海(日本海)に向け発射し短距離対艦巡航ミサイルの可能性がある。発射地点は江原道元山市近郊」とJCSが発表し、飛翔距離は約200キロとした。
  3. JCS報道官Roh Jae-cheon大佐は報道陣にミサイルは北東方向に飛翔し最高高度2キロに達したと伝えている。発射時刻は現地時間06:18 で飛翔時間は数分とも述べている。
  4. CNNも大佐の発言を伝えており、「北朝鮮は各種ミサイルの運用能力とともに米海軍空母打撃群が合同演習を行う中で正確な艦船攻撃能力があると示したかったのだろう」と述べている。
  5. またCNNは四発発射と伝えている。
  6. 今回の発射で今年に入って北朝鮮のミサイル試射は11回になった。韓国の新大統領文在寅の就任後5回目のミサイル発射になった。
  7. 今回のミサイルは4月15日金日成生誕105周年記念パレードで目撃された対艦ミサイルと同型の可能性はある。
  8. 北朝鮮から最新の発射状況の写真が発表されておらず確認できていない。北朝鮮はミサイル発射の翌日に当日の写真を公表することが多い。■

2017年6月8日木曜日

これでいいのか、韓国がTHAAD展開を凍結


This handout photo taken on November 1, 2015 and received by the US Department of Defense/Missile Defense Agency shows a terminal High Altitude Area Defense (THAAD) interceptor being launched from a THAAD battery.THAADは5月から稼働可能になっている。 Image copyrightAFP/GETTY IMAGES

これはいかがなものでしょうか。自分が知らされていなかったからと装備展開に待ったをかけ、環境調査の名目で先送りにする。(一年後に撤去を主張するでしょう)中国の機嫌を取りながら国内世論の感情面も満足させる綱渡りに見えます。そもそも一年間も北朝鮮が待ってくれるのでしょうか。いかにも感情を重視する決定で、禍根を残しそうな「鶴の一声」だと思います

South Korea halts Thaad anti-missile system rollout

韓国がTHAADミサイル防衛装備の展開を凍結
 7 June 2017
韓国が物議をかもしたミサイル防衛装備の展開を一時停止し、韓国政府が環境影響調査を実施する
  1. THAADの稼働が一年先送りになる可能性が出てきた。
  2. 現地に到着したばかりの発射装置4基は展開されないと関係者が語っている。すでに設置済みの二基はそのままとなる。
  3. THAADは北朝鮮ミサイルからの韓国防衛が目的だが、国内と中国に批判が出ていた。
  4. 米国はすでにグアムとハワイに北朝鮮対応策として同装備を展開している。
  5. 大統領に新しく就任した文在寅の大統領府からは総合的環境調査が必要であり、結論が出るには一年かかると述べている。
  6. その間のTHAAD展開は凍結する。調査が不要とするだけの「十分な緊急性がない」ためだという。
  7. THAADの韓国内展開は前政権下で今年初めに始まっており、文大統領は「残念」と評していた。
  8. 今回の凍結決定は国防省がTHAAD関連情報を大統領に秘匿していたと非難された直後のことで、文大統領にTHAAD発射機4基の追加搬入の情報が軍から伝えられていなかったという。
  9. 国防省は米国との機密保護合意を順守する必要があったためと弁解している。
  10. 韓国国内の反対意見はTHAAD陣地が攻撃目標となり、近隣住民が危険にさらされるからというもの。中国は同装備の稼働で地域内安全保障のバランスが崩れると反対している。■



パイロットが語るレッドフラッグ演習の実態とF-35投入の意義



筆者はイタリア空軍でトーネードを飛ばしていたパイロットで、3,000時間の経験があるそうです。このたびThe Aviationist執筆陣に加わり今後が楽しみですね。

Red Flag Memories: Combat Pilot Explains How RF Has Evolved And Why The F-35 Is A Real Game Changer In Future Wars

レッドフラッグを回想して:戦闘機パイロットが演習内容の進化とともに将来の戦闘を根本的に変革するF-35の意義を説明
May 31 2017 -
By Alessandro "Gonzo" Olivares

 

  1. レッド・フラッグ(RF)は一部の批判筋が言うような「ジョーク」ではない。進化し続ける演習であり、最新シナリオを再現する場であり、第五世代機が成否のカギを握る。
  2. レッド・フラッグは世界有数の規模の空戦演習である。機材多数が投入される開戦直後10日間を再現している。友軍(青軍)が敵部隊(赤軍)に対決するシナリオでパイロットに実戦経験を与え技能を高める狙いがある。レッド・フラッグのモットーがうまくこれを表している。「戦いに備え訓練せよ、訓練は戦いだ」
  3. 筆者はRFに二回参加している。2002年にネリス空軍基地(ネヴァダ州)の「標準式」のRFと2010年はアラスカに飛び、レッド・フラッグ-アラスカを体験している。
  4. RFにはパイロットを現実シナリオに慣れさせるる効果があり、新戦術が生まれる場であり、テストされる場である。
  5. ネリスAFBから70機超の機体が離陸しているのは鮮明に覚えている。日替わりでテーマが代わり、地対空あるいは空対空、目標もROE交戦規則も変わる。RFは通常の大規模演習とは一線を画している。
  6. RF二回に参加したがシナリオは変化し続けていた。2002年の場合は念入りな準備があり、敵の位置やこちらにどう反応するか、脅威の場所等があらかじめ分かったうえで実施した。2010年には「国境線」シナリオで敵部隊が友軍の位置に混じっている場合や人口稠密地に入り込んだ場合を想定し、CDE(民間人巻き添え損害予測)が極めて重要となり、目標のVID(目視識別)やEOID(電子光学識別)が成否を握った。つまり8年でRFのシナリオが進化し、たえず変化していく「戦闘環境」に適合した形になった。
  7. 最近のRFはさらに変化を示している。
  8. 例としてRF17-1では2チームが戦闘状況ではなく「危機」想定で対峙している。シナリオで最新かつ高性能の脅威を想定しているので戦術面で変更が必要だけでなく、レベルを上げて「戦場情報管理」が重要になっている。これはF-35で実現できるかで論争を呼んだ部分だ。
  9. 今日のRFはパイロット、地上部隊、情報分析部門、サイバー宇宙部門の力を結集したテスト訓練作戦になっており、部隊はネリスからラスベガス北のネバダテスト訓練場にまで広がっている。
  10. 参加人員の目的はひとつ。一緒に作業し敵をFITS(見つけ、識別し、追尾して撃破する)することで多様な戦場状況で敵を攻撃することだ。これは実際に遭遇された場面を元に構築した筋書きで今後も発生するとみられる状況だ。これが最近のRFの中心であり、大きな変化の内容だ。
  11. RFでは敵役を20から25そろえる。機材のみならず地対空装備や移動目標や正体不明の装備もここに入る。これまでの固定的なシナリオが「動的」になりリアルタイムで「戦闘地帯」の調整が必要になっている。
  12. このため近年のRFシナリオの目標は各種戦闘力の融合に置いている。つまり、F-35が強固かつ「不詳の」敵地奥深くに侵入し、戦場の「全般統制」を提供する役目を担う。F-35や同様のセンサー融合機能がある機材は第4世代機を補完しながら情報を「プレイヤー」各機と共有しつつ自機の火力も提供する。
  13. ステルス性能を第五世代機の性能である情報管理能力と組わせるのがRFのミニ作戦演習で勝利を収める条件となる。
  14. 将来戦シナリオでは単一機能あるいは単一機材だけに頼っていては勝利はおぼつかないが、F-35は「戦闘環境」調整役として「戦いのやり方を根本から変える」存在であり、柔軟性、性能を新たに投入する以外に友軍の「残存性」を大幅に上げる存在だ。
  15. 「危機」状況では連合軍部隊は迅速に変化するシナリオに対応する必要がある。情報データを集め、管理し、提供するため RF 17-1 ではF-35が脅威の位置情報を集め、標的とし、必要な武装を(シミュレーションで)選択した。兵装すべてを使い果たしたF-35がそのまま現地にとどまり友軍機にライブで情報をLink-16で伝えた。
  16. ここに第五世代戦闘機の付加価値がある。敵目標を制圧しながら、味方の「旧式」機を助け空と戦場双方を制圧しておけるのだ。
  17. 戦闘機が攻撃任務をしながら戦術戦場統制を兼ねるの簡単な仕事ではない。ROE交戦規則やF-35と組むF-22の役割がどうであれ、20対1の撃墜率をアグレッサー部隊相手にあげたのは実に素晴らしい結果だといえよう。
  18. RF17-1を振り返ると(少なくともベテラン戦闘機パイロットからすれば)F-35が敵脅威上空を飛び、攻撃に成功しながら指揮統制任務をこなしつつ友軍機の攻撃を支援して傷一つなく帰還したのはすごいことだと思う。
  19. 筆者自身が参加した過去のレッドフラッグでは「通常」想定でかつ第五世代機は参加していなかった。ウィングマンとして筆者の役目はリーダーと一緒に目視を絶やさずにリーダーに追尾し空対空戦はリーダーにまかせながら無事TGT(目標)地点につけば、地形を利用して赤軍の探知を逃れることだった。わずか10年足らず前には友軍には高性能対空ミサイル陣地を攻撃できるF-35のような機材はなく、演習では長距離スタンドオフ兵器を装備した重度防衛拠点との交戦をシミュレートするに過ぎなかった。
  20. 新世代機の登場でこれが大きく変化した。第五世代機と飛ぶウィングマンは航空戦管理の役割を担い、戦場を「見る」ことができるが、F-15やF-16ではこれは不可能で、リーダー機がPGM精密誘導弾を地上に投下し、敵機と交戦する。
  21. 2002年には戦闘ではBVR視程外距離から距離を詰めてWVR視程内距離に入るのが大変だった。今日では敵もステルス戦闘機の所在を「推定で」知ることができるが、実際の位置はわからないし、どの方向に距離を詰めて標的に近づいたらいいかもわからないし、交戦にどうもちこむかもわからないのだ。
  22. まとめると第五世代戦闘機の真の付加価値は(RF実戦共に)情報提供能力であり、リアルタイムの戦場統制管理能力であり、動的なFITS(探知、識別、追尾、攻撃)で味方損耗と民間人巻き添え被害を防ぐことにある。■

★次期戦略偵察機SR-72(極超音速機)の開発状況がほんのわずか判明



Lockheed Martin


新型機の話題になるとAviation Weekがいつも真っ先に報道することになっており、時として内容がずれることがあるのですが保母信頼していいでしょう。2020年代はすぐそこにきているとはいえ、SR-72の供用は2030年代になるのでしょう。気を長くして待つしかないですね。


Aerospace Daily & Defense Report

Skunk Works Hints At SR-72 Demonstrator Progress

スカンクワークスがSR-72実証機開発の進捗状況をほのめかす

Jun 6, 2017 Guy Norris | Aerospace Daily & Defense Report



DENVER, Colorado—マッハ6の攻撃偵察機の開発構想発表から4年がたったが、ロッキード・マーティンによれば極超音速技術は十分成熟化し飛行実証機の製作が視野に入ったとする。
  1. 同社の極秘開発部門スカンクワークスが2000年代初頭から同技術に取り組んでおり、飛行可能な極超音速機の基本構成が完成しており、退役済みの米空軍マッハ3偵察機SR-71ブラックバードの後継機となるSR-72の縮小版を開発中と2013年に Aviation Week に明らかにしていた。しかしその後の開発状況はほとんど不明のままだった。
  2. 「これまで20年いつも極超音速飛行はあと二年で実用となると言ってきましたが、技術は今や成熟し当社はDarpaや各軍とともにこの性能をなるべく早く実現すべく奮闘しているということです」とロッキード・マーティン執行副社長兼高性能技術開発事業(スカンクワークス)部長のロブ・ワイスは語る。
  3. 当地で開催中のAIAA Aviation 2017会場でAviation Weekにワイスは「具体的な日程や性能の詳細については語れません。極めて機微な情報です。敵対勢力もこの分野で急速な進展を示しており、当方が今何をしているのかを語らないことにしています。一般的な性能水準はいいのですが、開発状況の各論には触れられません」と断わりを入れた。
  4. ただしワイスはコンバインドサイクル推進方式含む中核技術で進展があることをほのめかし、極超音速飛行への実現がかなり進んでいること、実証機に技術が応用されつつあることを認めた。実証機では地上テストが2013年から2017年にかけておこなわれており、同社は任意で有人飛行可能な飛行研究実証機(FRV)の製作に早ければ来年にも取り掛かるとみられる。FRVはF-22とほぼ同寸で実際のコンバインドサイクルエンジンを一基搭載する。
  5. 詳細は全く不明だが、ロッキード・マーティンがロケットダインと共同で2006年から既存タービン部品にスクラムジェットを組み合わせたコンバインドサイクル推進装置を製作中でマッハ6プラスを狙っていることは知られている。作業には空軍/DarpaのHTV-3X再利用可能極高音速実証機を使っている。同機は2008年に開発が中止されたが高速飛行可能タービンの統合のため再利用されている。HTV-3構想はDarpaのファルコン事業の一部でその他小型打ち上げ機、共用飛翔体や極超音速巡航飛翔体の開発を目指していた。
  6. 「コンバインドサイクルの実現はもうすぐで空気取り入れ式の極超音速実現で大きな突破口になります。極超音速飛行ではコンバインドサイクル以外にも必要な要素があります」(ワイス)
  7. FRVの初飛行は2020年代初頭の見込みそので進展を見て実寸大の双発SR-72製作に移行するとロッキード・マーティンは発言している。SR-72はSR-71とほぼ同寸の大型機となり2020年代末に飛行テストを開始する。■

2017年6月7日水曜日

★米海軍の進める電磁レイルガンの最新動向



ONRはリスク低減策を模索し、EMRGの砲身耐用期間を延長し毎分10発の発射を実現しようとしている。Source: John Williams/USN

レイルガンの実用化を一番恐れるのはロシア、中国、北朝鮮といったミサイルで西側を脅かそうとする勢力でしょう。それだけに米側も開発の実態を極力秘匿しておきたいようで、予算要求案を見ても一括要求都市レイルガン自体の開発予算はわからないようにしています

USN recharges railgun science and technology effort

米海軍はレイルガン研究開発に引き続き取り組む姿勢を強化

 Geoff Fein, Washington, DC - IHS Jane's Defence Weekly
06 June 2017
  

  1. 米海軍は2018会計年度予算で電磁レイルガン(EMRG)の艦艇搭載は要求せず、かわりに研究開発に予算を引き続き計上し試作型のテストを2019年度に実施をめざす。
  2. 2018年度予算で海軍が要求するのは93百万ドルで研究開発試験評価 (RDT&E)を数点の革新的海軍試作装備 (INPs) に投入するとし、EMRGもその中に含まれる。ただしレイルガンへの要求額は明らかでない。海軍がEMRG研究開発単体の予算額の公表を避けているからだ。
  3. 実際の予算額がどうであれ、EMRGは目標の32メガジュール毎分10発発射で長期間稼働可能砲身の実現にむけて引き続き開発を続けると海軍研究部門ONRでEMRGを担当するトム・バウチャーがJane'sに述べている。
  4. 一般の艦載砲と異なりEMRGは電力で砲弾を発射する。(弾頭はつけない)射程は100カイリ超となる。磁界が高電流で生まれ、金属製導体(アーマチャア)を加速し、4,500から5,600マイルで砲弾を発射する。
  5. 現在開発部門が取り組む課題は以下の分野だ。毎分10回発射の実現、EMRGの砲身内部の耐用期間を延長できる素材の模索、内部の熱管理、EMRGの電源管理システムの作成である。■

2017年6月6日火曜日

★日本生産F-35A一号機がロールアウト、今後の行方を占う



小牧基地を反対側から眺めることができる名古屋空港(愛知県営)は飛行機好きにとってたまらない場所ですが、今後はF-35の姿も普通に見られるようになりそうですね。旧国際線ターミナルを改装したモールのエアポートウォーク名古屋の一番上に展望室がありその横には金網がありますがバルコニーもあります。もうひとつおすすめは国内線ターミナルの屋上ですが、もうひとつ航空館Boonがある神明公園です。駐車場も豊富にあるのですが、今後はいずれもスポッターでにぎわいそうです。肝心のF-35ですが今の調達機数が確かに中途半端な規模ですが大幅な追加調達は日本からはないのではないでしょうか。韓国空軍のF-35は日本のFACOは利用しないと言っていますから今後の対応に注目しましょう。

Japan Just Built Its Very First F-35 Joint Strike Fighter


June 5, 2017


  1. 三菱重工業の小牧南工場内のF-35最終組み立て点検施設(FACO)が日本国内組み立てによるF-35A共用打撃戦闘機の一号機がロールアウトし米日両国の賓客が式典に参列した。
  2. 「日本国内組立てによるF-35A一号機から改めて本事業のグローバルな性格が見えてくる」と新任のF-35事業責任者マット・ウィンター海軍中将が述べた。「最新鋭の組み立て施設で才能豊かでやる気に満ちた人材が働き、他にはないノウハウと才能で世界最高性能の多用途戦闘機が生まれている。F-35により各国との訓練、演習、軍同士の交流で安全保障上のつながりとともに、長い時間を経て形成してきた同盟各国とのつながりがあらためて強まる」
  3. 日本政府は2011年12月にF-35を航空自衛隊のF-4EJ改ファントム後継機に選定した。F-4は三菱重工がライセンス生産したが、F-35はライセンス生産方式をとらない。三菱重工はFACOでの機体組み立てを担当し、米政府監視のもとロッキード・マーティンの「技術支援」により生産する。
  4. 「日本産業界との長い関係の上に当社はMHIとF-35生産提携関係を続け日本防衛省を支援する所存だ」と式典でオーランド・カラヴァルホ(ロッキード・マーティン・エアロノーティクス執行副社長)が抱負を述べた。
  5. 日本が導入する予定のF-35は計42機で、ロッキード・マーティンは4機をフォートワース工場(テキサス)から引き渡しずみで、残る38機は日本国内で組立てる。
  6. 米国防省は名古屋FACOを北部アジア太平洋の地域内重整備修理改修(MROU)施設として米国のF-35に利用する。
  7. 日本がボーイングF-15イーグルや三菱F-2の後継機としてさらにF-35を導入する可能性もある。
  8. 日本は国産第五世代ステルス戦闘機を開発中で、航空優勢任務につける意向だが、新型機国産機の完成に先立ちF-35追加調達が実現する可能性も十分ある。
  9. 日本はロッキード・マーティンF-22ラブター購入を断られ国産ステルス戦闘機開発に乗り出した経緯がある。米側がラプター売却を拒否した根拠がオベイ改正案で米国にF-22輸出を一番近しい同盟国にも禁じ同機技術が流出することを防ぐのが同法の趣旨だ。F-22購入の道を断たれた日本は三菱X-2心神の開発に走り、同機がF-3戦闘機につながるとみられる。■
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @Davemajumdar.
Image: Lockheed Martin.


中国急成長のからくりと近づいてきた破たん


借りたものは返す、数字はうそをつかない、という常識は中国では以下に踏み倒すか、都合の良い数字に置き換えるかと理解されているようです。 嘘はいつか破たんします。中国経済が嘘の塊であれば信用した世界が一番の被害者になります。中国経済が破たんしたとき軍事力を中国はどう使う(使わない)つもりなのでしょうか。解放軍も一種の企業体であることを忘れてはならず、国営企業の常と同様に巨額の借り入れがあってもおかしくありません。このままでは中国の夢は文字通り夢に終わりそうです。朝鮮、中国と日本は大変な国家に囲まれていますね。

Five-yuan note. Flickr/David Steadman

Why China's Rise Is Built on Debt (And the Bill Keeps Getting Bigger)

中国はどうやって借入れをもとに台頭できたのか(そして借入額はどんどん増えている)

May 25, 2017

遅きに失したが中国が27兆ドルの債務の山を崩そうとして金融市場に動揺が走っている。果たして中国はバブルが破裂する前に信用の急膨張を制御できるのか。
どれだけ債務が増えているのか
  1. 前回National Interestが中国の借金問題を報じた際は国内総生産GDPの260パーセントを超え、2008年の163パーセントから急増し、金融危機前の米英の債務合計増加を上回る勢いになっている。
  2. 中国の「シャドーバンキング」も急拡大し、金融商品が3.8兆億ドルと三年で三倍になる一方、企業部門の借り入れはGDP比156パーセントになり、7年で四倍になった。
  3. ムーディーズは今週に入り中国債権の格付けをひと刻み下げ、中国政府が目指す経済成長の持続には借入を増やす必要があると指摘した。
  4. この切り下げ前に公表された中国のGDPデータでは政府が相変わらず借り入れ前提のインフラ建設で経済成長を狙っていることが明らかになった。第一四半期の成長率は6.9パーセントと伝えられ、市場予想の6.8パーセントを上回ったが、ANZリサーチは「いつも通りの投資の筋書きだ」と論じた。
  5. 固定資産投資は建設、不動産ともに上昇したが、サービス部門等の第三次産業の成長は鈍化している。
  6. 過熱気味の住宅分野はさらに熱くなり、不動産投資は9パーセント超の増加、住宅投資は10パーセントを上回った。住宅ローンは8,000億元(1,160億ドル)増と最大の伸びを記録した。
  7. 社会投資の合計は経済の全般的信用枠の把握に使うが、年率4パーセント増7兆元となり、320パーセント超の成長をしたシャドーバンキングが助けた格好だ。
  8. 第一四半期だけで借金が4.2兆元増え、GDPの四分の一に相当するとANZリサーチが指摘している。
  9. 「重要な問題は投資先導モデルがこのまま維持できるのか、当局が信用枠拡大の抑制に苦労していることです」(ANZ銀行)
  10. 「中国トップ指導層が金融引き締めをもっと強力に進めるのか注視したい」と同行は4月17日調査報で述べていた。
  11. これに対して別の格付け会社フィッチレイティングスは今年の経済成長目標が6.5パーセントと控えめになのに対し信用枠はGDPを50-100パーセント上回る増加ぶりだと警句を鳴らしている。
  12. 「この信用枠拡大により今年の中国経済では借り入れがさらに増える。当局は金融リスクの拡大を認識しているのだが」と同社は研究レポートで述べている。

最大のリスクとは
  1. 4月後半になり北京政府はやっと金融部門の債務拡大リスクの懸念に対応を示した。習近平主席が会議を招集し「国家金融市場の安全確保策」を4月25日に検討した。これは上海株式市場が2017年最大の下げを記録した翌日のことである。
  2. 過剰借入れ、株式投機などすべての対策と並行して中国保険規制委員会の前委員長が解任され、国家統計局の局長が収賄疑惑で起訴された。
  3. その結果として株式市場が停滞し政府発行債の利回りが急上昇した。ベンチマークになる上海複合指数は4月11日の最高値から4パーセント急落し、10年物政府債の利回りは2015年4月以来最高水準を記録した。
  4. 政府は資金の流れを制御しようと規制を一層強化にする一方、公式交換レートは高く誘導されたのは「通貨市場にパニックが広がるのを防ぐため」とエコノミストのXia Leは述べている。
  5. 中国企業が売り出しを止めた企業債は今期だけで推定1,840億元にのぼるが、一方で3兆元の金利支払いが必要だ。債券利回りは上昇傾向にある。支払い不能を宣言した企業は3月31日以来4社で今後借り入れコストがさらなる上昇で債務不履行となる企業は増えるとみられる。
  6. フィナンシャルタイムズによればファンドマネージャーの三分の一が中国の信用引き締め策が遅くに失しており「今や市場で最大のテイルリスク」と見ている。2016年1月以来、ユーロ圏崩壊の可能性より高いリスクとして中国が認知されているとバンクオブアメリカ=リンチはまとめている。
  7. オックスフォード大チャイナセンター研究員のジョージ・マグナスは中国には五つの罠が待ち構えているという。資本、債務、人口、中間所得層および歴史だという。「中国国内の信用形成を見れば、時間の問題であり、おそらく二三年以内に資金回収の波がやってくるはずで、低成長になり元安が長期間続くでしょう」
  8. マグナスの意見ではシャドーバンキング部門が中国のアキレス腱で、今年秋の全国人民代表会議までに経済を正常にしようとする政策部門にとって障害だ。
  9. 「この部門の貸付は仕組み上国営企業や銀行の債務よりもっと緊急性が高い時間問題」とマグナスは見ており、「闇貸付の危機は貸し手側が制度からはじかれてその結果焦げ付いた貸付が金融制度全体に悪い影響を与えることですが、今から半年から2年以内に表面化するはずです」
  10. マグナスはGDP成長率が6.5パーセントを下回るのが政府の「テスト」となるとみている。「債務問題は平和的に解決できない」とフィナンシャルタイムズに語っている。
  11. ロイター調査では中国経済は今年の6.5パーセントが2018年には6.2パーセントになるとみている。昨年の6.7パーセントが過去26年間で最低だった。

一帯一路の損金処理は
  1. 政策部門は全人代の前に減速を防ごうと必死だ。全人代は習近平の権力基盤強化になるとみられる。習が自らの地位を固めるため打ち出した一帯一路構想Belt and Road Initiativeは借金を増やすだけかもしれない。
  2. 同構想に参加する各国向けの中国各銀行の貸付は2,840億ドル(2016年末)に上っており、最近開かれた一帯一路サミットで追加1,000億ドル枠の提供が約束された。
  3. それでもクレアモント・マッケンナ大のミンシン・ペイ教授はプロジェクト全体は中国さえも対応不能な巨大な債務の山に終わると警告している。
  4. その指摘ではラオス向け総延長260マイルの鉄道敷設の費用は60億ドルとなっているのに対し、東南アジア最下位の同国のGDPは120億ドルにすぎず、巨額貸付が押し付けられており、借り入れ側は返済が困難になる例だという。
  5. 「中国は債務国側に対して影響力が限定され今後一帯一路が不良債権化すれば回収はわずかしか期待できないでしょう。中国の納税者がツケを払わされます」
時間がない
  1. 短期的に中国政府の期待は金融部門取締まり強化で過剰貸し付けを制限し、不動産価格急落を防ぐことだろう。後者は歳入確保を土地販売に頼る地方政府や金融機関に打撃となる。
  2. 国際通貨基金から中国の国内銀行までさらに政治家も債務危機を警告しているが、時間はどんどん減っており、このままだと2008年以来最大の債務危機は回避できそうもない。暴落が一度始まれば、アジア全体並びに世界がすぐに痛みを感じるはずだ。■
Anthony Fensom, a Brisbane, Australia-based freelance writer and consultant with more than a decade of experience in Asia-Pacific financial/media industries. You can find him on Twitter: @a_d_fensom.
Image: Five-yuan note. Flickr/David Steadman