2018年4月26日木曜日

米海軍は超大型空母以外に「小型」空母を建造すべきなのか

日本他で出現しているF-35搭載「空母」はどこまで超大型空母を補完できるのでしょう。すくなくとも低甚度紛争に超大型空母を派遣しなくてもあれば戦力を有効に使えますが、F-35B数機程度では大きな攻撃力にならないのでは。と思いますが、これまでの戦力とF-35がケタ違いに違うのであれば話は別です。ここは超大型空母とは違う世界を想定しないと話が先に進みません。

 

The Real Story of Why the Navy Hates 'Small' Aircraft Carriers 米海軍が「小型」空母構想を嫌う理由はどこにあるのか



April 24, 2018


米海軍で供用中の原子力超大型空母10隻は最大規模の艦船だ。5千名を超える乗組員海兵隊員が住みかとするニミッツ級空母は原子力推進で艦載機90機近くを搭載できる。だがこの形以外も可能なはずだ。海軍が数十年前に今と違う選択をしていれば超巨大空母へ費用対効果に優れた中型空母が補完効果をあげていたはずだ。

第二次大戦中の米海軍には空母型式二つがあった。大型艦隊空母と護衛空母だ。大型艦が攻撃力の中心で戦闘機、急降下爆撃機、雷撃機を取り混ぜて搭載した。護衛空母は「ジープ」空母とも呼ばれ小型艦で艦載機を小規模搭載し輸送船団の防空護衛や必要な場合に大型空母の穴埋めに活躍した。
戦後の米海軍は各種空母を運用した。大型空母として原子力艦USSエンタープライズ以下があり、小型攻撃型空母、対潜空母として戦時中のエセックス級を使った。その中で小型空母の老朽化が進み、その後継艦は超大型空母だった。小型空母は建造されず1980年代中にはUSSミッドウェイ、USSコーラルシーを除くと全部超大型空母だった。

超大型空母への道のりに政治と実用面の二つが混ざって作用した。国防予算が比較的自由に使えた冷戦時には大型空母一隻を発注するほうが小型艦二隻を毎年発注するより安全な選択だった。突然の緊急事態で二隻目の空母の発注取り消しを迫られない保証はなかったからだ。

大型空母は投入費用で得られる効果も大だ。単一艦に6千名もの乗員が乗る方が二隻で合計9千名必要となる場合よりも安上がりだ。大型艦一隻なら随行水上艦の巡洋艦、駆逐艦、フリゲートも一組で十分だし艦載機も大型化でき、多数搭載できる。

ただし大型艦の建造単価は極めて高くなり、運用経費も莫大な規模になっている。そのため海軍内部外部で代替策の検討が進んだ。1970年代には当時の作戦部長エルモ・ズムワルト大将がヴィエトナム戦終結後の予算縮小傾向の中で大戦時の艦船がまだ残る海軍艦艇構成に手を付けていた。何も手を付けないと戦力となる艦艇数が大きく減る危険があった。

ズムワルト提案は艦隊規模の維持のため艦船のハイローミックスがあり、高性能ハイエンド戦闘艦と戦力は劣るローエンド艦を組み合わせる構想だった。この考えを空母に応用しズムワルトは「中型空母」で超大型空母を補完する構想を提唱した。中型空母とは61千トン程度の通常動力艦で飛行甲板は908フィート長、最大60機を搭載し総人員は3,400名程度だった。

中型空母は蒸気カタパルト二基と、超大型空母の4本より少なく搭載し、艦載機発艦のペースは超大型空母の半分程度だった。エレベーターも大型空母の三基にに対し二基としながらも艦載機に艦隊防空任務機と対戦任務機を含めず攻撃力に集中することで超大型空母とほぼ同等の効果を狙った。

小型艦の多数建造には有利な点があった。戦後初めて空母合計が20隻を割り込み、通常型戦闘ですべての要求に答えるべく空母を十分そろえることが不可能となった。航空戦力を多数の艦に分散させれば空母喪失の場合にも抵抗力が高まる。現実にはペルシア湾などの新しい作戦水域の追加で既存戦力は薄く展開を迫られている。

中型空母構想の弱点は艦体の小ささでこれが原因で人気が出なかった。大型艦体があれば大型艦が実現するため海軍は引き続き大型空母建造を続けた。海軍は超大型空母で編成する空母戦力の実現を目指し、今日の空母部隊は全隻原子力推進超大型空母になっている。

だがこれで物語が終わったわけではない。新型フォード級空母の建造コストを憂慮したシーパワー推進派のジョン・マケイン上院議員も代替策模索に乗り出した。2017年1月のこと、同上院議員から白書が発表され、題名には「アメリカ軍事力の回復」とあり、「ハイ・ロー・ミックス」の空母整備を求めていた。アメリカ級揚陸強襲艦にF-35の短距離離陸垂直着陸型を搭載する構想なのだろう。今後も米海軍が空母調達を続ければハイ・ローミックス議論は続くはずだ。■

Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009, he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.

2018年4月25日水曜日

F-3開発:X-2の飛行再開はありうると防衛装備庁は見ている

たしかにX-2のフライトは50回想定のところ途中で終わったままですし、その気になれば追加テストも可能でしょうが、海外向けにはあまり意味がない機体になっているのでは。皆様ご指摘の通り米側に慮りすぎるとろくな結果にならないのでX-2と言うシンボルで国産技術水準をデモするつもりなのでしょうか。今年は重要な決定の年になりそうですね。

​Tokyo eyes multiple routes for new fighter jet

23 APRIL, 2018
SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
BY: GREG WALDRON
SINGAPORE
防衛装備庁(ATLA)は三菱F-2後継機構想各案の是非を検討中だ。
「RFIが継続中で、課題も変化している」と制式名F-3となりそうな新型機開発に詳しい同庁関係者は語っている。
ロイター記事でロッキード・マーティンがF-22とF-35のハイブリッド版を日本向けに売り込みたいとしているが、同関係者はコメントを避けている。
ただし同上関係者は各種提案をはかりにかけており、日本と英国が共同で「次世代戦闘機実現の可能性」を検討していると述べている。
新型戦闘機の方向性を日本は模索しているところで選択肢には完全国産機の新型開発、海外パートナーとの共同開発、既存機種の改良がある。
米製戦闘機を基にした開発ではF-16の原型から生れたF-2の事例があるが、大型ペイロード搭載で対艦兵器の運用が要求内容のためF-2の主翼面積はF-16より25%大きいし、複合材料の多用などの改良点もある。
ただいかんせんF-2は高価格になり当初の144機調達が94機で止まったのが現実だ。F-35とF-22の特徴を兼ね備えた機体でも価格高騰が危惧される。
もともと日本はF-22調達を希望していたのだが1998年に米議会が海外販売に待ったをかけ、実現できなくなった。劣化版の輸出仕様構想が2006年に一時浮上したものの、日本からイージス戦闘システム関連情報が漏洩した2002年の事件が発生していた。
三菱重工はライセンス契約でF-35を名古屋で42機製造中だが、F-22/F-35ハイブリッド機の生産が実現しても米政府がどこまでの技術移転を許すのかは不明だ。
他方で同上ATLA関係者はX-2高度技術実証機のフライトが34回で終了していると認める。同機は当初50回までフライト予定だった。
「予定のテストは完了している。X-2の今後は未定だ。テスト続行もありうる」
同機は岐阜航空基地に置かれている。当初ATDXと呼ばれ、日本産業界にジャンプスタートさせる目的とステルス第五世代や第六世代機の開発に必要な技術の探求も目的とされた。新型機開発では15項目もの技術開発が同時並行で進み、兵装庫、センサー技術、データリンク他があり高性能戦闘機にそれぞれ必要な技術だ。
.X-2では同国内の航空宇宙技術陣の知見を次世代に継承することも目的とされていた。■

2018年4月24日火曜日

シリア攻撃前に英潜水艦がロシア海軍に追尾されていた・ディーゼル潜水艦は原子力潜水艦の鬼門になるのか

A British sub was reportedly tracked by Russian subs in a 'cat-and-mouse' pursuit before the latest strikes in Syriaシリア攻撃直前に英潜水艦がロシア潜水艦の追尾を受けていた

UK Navy HMS Astute submarine coast guard英海軍原子力潜水艦HMSアスチュート、スコットランド北部スカイ島沖合にてOctober 22, 2010.REUTERS/David Moir
Apr. 16, 2018, 3:30 PM
  • 英潜水艦がロシア水上艦・潜水艦の追尾を東地中海でシリア攻撃前に受けたとの報道が入った
  • 近年はヨーロッパ周辺でNATOとロシアの潜水艦遭遇事案が急増している




英海軍アスチュート級攻撃型潜水艦がロシア潜水艦・水上艦の追尾をシリア攻撃前に受けていたとロンドン・タイムズ紙が軍事筋の話として報道した。
それによると追尾は4月第二週に数日間にわたり続き、テレーザ・メイ首相がシリア空爆に参加する検討中のことだったという。同首相は攻撃に備え潜水艦部隊にシリアへの攻撃射程内へ移動を命じていた。
英潜水艦は少なくとも一隻の、おそらく二隻のロシア潜水艦「ブラックホール」に追尾されていたとタイムズは伝えており、ロシア海軍の改良型キロ・ディーゼル電気推進式潜水艦のことを指している。
アスチュート級は「英海軍史上最大かつ最先端で最も強力な攻撃型潜水艦」と英国防省は表現している。今回の英艦はシリア標的への発射地点に向かい移動中だったとタイムズは伝えている
ロシアフリゲート艦二隻と対潜哨戒機一機も英艦探知に加わった模様で数日間にわたり探知しようとしていたという。英艦には米海軍P-8ポセイドン哨戒機が掩護についた。
英ロ海軍がヨーロッパ周辺海域で遭遇する事案が増えているが攻撃前の潜水艦が追尾されたのは今回が初めてのようだ。ただし、今回の英艦はミサイル攻撃を実施していない。
2017年6月には英海軍最新鋭空母HMSクイーンエリザベスが初の公試に出港するとロシア潜水艦の監視を受けた。別のロシア潜水艦が8月のスコットランド沖での英米海軍演習でも追尾していた。
2017年には米海軍NATO艦艇がロシア最新の改キロ級潜水艦クラスノダールがヨーロッパから黒海艦隊に合流するまで追尾した。
改キロ級潜水艦はロシア水中部隊の中心装備で冷戦後のロシアが潜水艦戦を再び重視する中で生まれた作品だ。とくに静粛性が改良され浅水海域等での作戦に優れる。
Krasnodar kilo class submarine russia navy
ロシア黒海艦隊に編入された改キロ級潜水艦クラスノダールKrasnodar Russian MoD
クラスノダールは航海終了前に巡航ミサイルを発射しシリア国内の標的数か所を狙った。米艦船がロシア潜水艦を地中海で追尾したのは冷戦終結後初めてのことだった。
空母USSジョージ・H・ブッシュがその前に地中海入りしており、同潜水艦の追尾を担当したが、同級潜水艦の運用方法、戦術技術を学んだ。空母乗組員には対潜戦の現実に初めて触れる機会になった。

「ここ15年間にわたり真剣に取り組んでこなかった分野で事情がどんどん変わっている現実が再び重要になってきたということだ」とブッシュ艦長ジム・マッコール大佐がウォールストリートジャーナルに語っている。■

2018年4月23日月曜日

★★★F-22/F-35ハイブリッド構想の実現可能性はない

先にご紹介したthe War Zone記事と反対の評価でこちらではF-22生産再開を日本に許しても米空軍が欲しい次世代戦闘機に及びもつかず、結局買い手がない、したがってロッキード案は絵に描いた餅になると見ています。さてどちらに軍配が下るのでしょうか。しかしながら爆撃機エスコート構想と言うのは何となくアナクロに聞こえるのですが。PCAまで作るよりもB-21だけでミッションが可能となればいいのでは。将来の戦闘機が今と同じ機体サイズである必要があるのでしょうか。そうなると航続距離・ペイロードで不満があってもF-22の活躍範囲は依然としてあるのでは。もちろん日本の求める制空任務にはF-22改があれば十分と思います。


Lockheed Martin Wants to Merge an F-22 and F-35 Into 1 Fighter for Japan. It Won't Happen.ロッキード・マーティンがねらうF-22/F-35を一つにまとめた日本向け戦闘機構想は実現可能性なし




April 20, 2018

ロイターが伝えたところによればロッキード・マーティンがF-22とF-35を一つにした機体を日本のめざす次世代航空優勢戦闘機として売り込もうとしている。

ロイター記事では同社はハイブリッド機を日本のF-3事業の情報提供に盛り込み、米国政府が技術移転を認めるのが条件としているという。1997年の改正によりF-22の輸出は厳しく制限されている。なお同機生産は2012年終了した。

提案内容の詳細は不明だが、ロッキードはF-35の高性能センサー、エイビオニクス技術をラプター改に搭載し圧倒的な空力性能(JSFとの比較で)を実現するのだろう。

新型機が仮に実現すれば日本製のF-35用プラット&ホイットニーF135アフターバーナー付きターボファン双発を搭載するのだろう。同エンジンはF-22用エンジンの派生型であり、F119エンジンも生産終了している。ロイター記事では構想では「F-22とF-35を組み合わせて双方より優秀な機体が生まれる」とうたっているとの匿名筋を引用している。

ただし提案にある機体はF-22・F-35の技術を応用するとはいえ、各種技術の統合、フライトテストは全く別の機体扱いとなるはずでハイブリッド機の実現には高費用かつ長期間を要するはずだ。そこに追い打ちをかけるのが米空軍が侵攻型制空戦闘機の要求水準からみて同機を採用する可能性が極めて低いことだ。

米空軍航空戦闘軍団からは次世代侵攻型制空戦闘機(PCA)の要求性能水準が示されており、それによればF-22、F-35のいずれの派生型でも達成は不可能な内容だ。中でも航続距離、ペイロード、ステルス、電子戦のいずれも大幅に現行機より伸びている。

たしかにステルス性能をとってもPCAには広帯域で全アスペクトでの低視認性が求められ、低周波レーダーにとらえられない想定がある。新型低周波レーダーでは現行のステルス機も探知可能だ。そうなると全翼機形状で垂直水平尾翼がない設計が有利だ。

空軍関係者PCAをノースロップ・グラマンB-21レイダー戦略爆撃機を援護する戦闘機だと公言し、防空体制の整備された敵地奥深くに侵攻する機体だとする。そうなると、設計では超音速飛行性能と戦闘機としての操縦性を兼ね備えた機体にしB-21の爆撃行をエスコートできる性能が必要となる。

航続距離の延長に加え空軍はPCAではペイロードの大幅増加を期待しそうで、F-22の規模を超える規模になるだろう。ラプターのパイロットから出る不満にはステルスやセンサー性能を生かせるだけのミサイル本数を搭載できないことがある。PCAが太平洋地区の広大な空域で活躍することを考えれば、機体には現行以上のペイロード搭載が必要となる。

PCAがペイロード、航続距離ともに拡大するとして将来の米空軍向け制空戦闘機にアダプティブサイクルエンジンの採用は必至だろう。空軍は米海軍とともにこの技術開発を進めており、実現すれば燃料消費は現行エンジン比で35%減となる。そうなると爆撃機よりは小さい機体のPCAには次世代エンジンがないと空軍の求める性能の実現は不可能と思われる。

F-22/F-35ハイブリッド構想が米空軍のPCAの要求水準を満足させるのは不可能だが日本の要求水準には合致することがありうる。そうなると日本は開発、テスト、製造の全般的費用を負担するのみならず、機体の買い手を米国で見つけることにもならず、費用の回収に困るはずだ。F-22/F-35ハイブリッド機の現実的なシナリオはあくまでも空想の世界だ。■
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.

2018年4月22日日曜日

★★★F-3開発:急浮上したF-22生産再開提案は日本に費用負担大半を求める内容

降ってわいたようなこの話ですが、前からF-22生産再開の話はあり、日本の影もちらちらしていました。虫のいい話に聞こえますが、日本にはF-2事案でも苦い思いをした経験もあり、F-3国産開発で進んできたのですが、いよいよ今年中ともいわれる方針決定の段階で考慮すべき点は多く、以下の内容にも一定の長所はあるように思われます。実現するかは微妙ですが、貿易収支、米国の動向もにらむと可能性が皆無とも思われません。実現するとすればイスラエルも関与すべきと考えますが、皆さんはどう思いますか。


Lockheed Should Restart the Raptor Line If Japan Wants An F-22-F-35 Hybrid  日本向けF-22-F-35ハイブリッド新型機が実現すればロッキードはラプター生産ラインを再開する構えGeopolitical trends, security concerns, and industrial and combat aircraft capability needs, could give birth to an American-Japanese Raptor 2.地政学、安全保障、産業構造、戦闘機ニーズを考慮すると日米共同のラプター2.0が実現する可能性が浮上

BY TYLER ROGOWAYAPRIL 20, 2018
OSAKABE YASUO


ロッキード・マーティンと日本産業界共同でF-35ライトニングとF-22ラプターの長所を組み合わせた準国産戦闘機を開発する構想に関心が日本の関心を集めていいるとのロイター報道にThe War Zoneはさして驚かされていない。
以下ロイター電の抜粋だ。
「ロッキードは日本防衛省と協議を終え日本の情報開示請求(RFI)に対応した正式提案を機微軍事技術公開に関する米政府承認の後に提出する準備に入った。提案内容に詳しい筋から直接この内容が判明した。
高度機密航空機設計内容・ソフトウェアの公開を認める決定が下れば日本は中国軍事力に対する優位性を実現し、ドナルド・トランプ大統領は米軍事輸出政策の見直し約束の試金石となる。
提案の航空機は「F-22とF-35を組み合わせていずれの機体を上回る性能になる」と上記筋は述べている」
日本もラプターに似た次期戦闘機設計構想を進めているが、優秀な運動性能と低視認性を組み合わせてF-22とF-35の特徴を兼ね備えた機体の構想も並行して浮上している。エイビオニクスの改良、ミッションコンピュータの性能向上、センサーの更新のうえ整備性の高い機体表面塗装を施すことだ。The War Zoneはまさしくこの可能性を2016年に予測していた。(以下同記事'Just Allow The F-22 To Be Exported To Japan Already'より)
「日本はF-22取得を切望していた。だがほぼ20年前に米議会が超高性能戦闘機輸出を相手を問わず禁止してしまった。このためF-22取得の夢は日本で消えたが、その後も希望は表明されている。
これに北朝鮮の脅威が加わり、新しい情勢を日本は深刻に受け止める中、既存戦闘機材の性能を改修中だ。
F-22の技術は試験段階をとうに過ぎている。事実、数十年前の代物になっている。輸出もおこなわれるF-35の方が多くの面で技術的にF-22を上回る。この点でF-22の輸出禁止はもはや保護主義の意味しかなくむしろF-35の生産数を増やす効果しかない。
だが400億ドル規模の次期超高性能戦闘機を日本が国内開発あるいは輸入の形で調達しようとしている。三菱重工のX-2技術実証機が飛行したばかりだが、ただ技術実証の域は越えなかった。報道一部にX-2を試作機と誤って伝えるものがあるが、同機が今後生産される保証はどこにもない。同機はYF-22というよりBird Of Preyの存在だ。
米空軍はついにラプター生産ライン再開の検討をはじめたが、実現の可能性はゼロに等しい。なぜなら実現すればF-35へ影響がでるためだ。またF-22が日本の求める400億ドル規模の戦闘機選定で唯一の候補であるとしても、ロッキード、米空軍、米議会が認めないだろう。一方で、日本はF-35導入を決めており、42機を発注中だ。
常軌を逸しているように聞こえるかもしれないが日本にF-22生産再開の費用負担させるのも一策で、USAFがラプター追加調達に踏み切れないのもコストが原因だ。ただし、現実は新型F-22に投じる予算はF-35生産を削ることで実現する。そうなるとUSAF関係者がF-22追加調達を希望する声を上げても政治的にはそのまま実現するとは考えにくい。
とにかくF-35を守ることが最優先なのだ。
では今後どうなるのか。大手米防衛産業企業が日本の鉄の三角形で守られた防衛産業基盤とF-22に酷似しながら完全なコピーではない機材を生産した場合、単純な生産ライン再開より費用が高くなるが、これならF-35の予算を脅かすことなく、USAFやペンタゴン全体としても安心できるはずだ。
似たような事例は前もあった。三菱とロッキードがF-16から準国産と言えるF-2を作り、100機ほどが日本に納入され、機体単価は100百万ドル超となり直接高性能版F-16を輸入した場合の三倍となり、性能面も決して高くない結果になった。
こう書くとおかしな話に聞こえないだろうか。今回はF-22生産を再開し、性能向上版に高性能かつ整備性の高いエイビオニクス他部品を搭載し、おそらく日本側負担で調達する可能性がある。USAFはJASDF発注に便乗し現在183機しかないF-22(このうち実戦仕様は125機のみ)を増やすことが可能となる。こんなにチャンスはめったになく今後二度と発生しない可能性が高い」
時を現在に進めると、F-35開発はもう戻れない段階まで来ており、トランプ大統領は同盟各国向け武器販売拡大を目指している。これを念頭に入れると、今回の提案が成立する確率が増えている。最大の疑問は日本にそれだけの財政負担の余裕があるのかで、特に同国にはほかにも重要な案件があることを考慮する必要がある。イージスアショア弾道ミサイル防衛やF-35Bのヘリコプター空母への搭載だ。
336百万ドルを投じた三菱X-2技術実証機は初飛行後、比較的短い間しか稼働しなかった。技術的な課題に直面したのは明らかで、海外企業との提携がないとステルス戦闘機の配備は困難と日本も学んだはずで、日本企業にも恩恵がある形での提携を模索するのではないか。
新たに判明したのはUSAFがF-22改修版の生産再開時のコスト試算作業を完了した事実だ。主な内容は以下の通り。
-194機の追加生産した場合の総予算は約500億ドル
-内訳に生産再開時の初期コストが70から100億ドル。機体調達コストが404億ドル
-機体単価は206-216百万ドル(F-22最終号機の単価は137百万ドルだった)
この規模ではUSAFもそのまま負担できないが、日本にはF-22性能向上版に近い機材をこれいかの金額で配備することは不可能だろう。ラプター生産再開を米軍のみの想定とする政治判断が撤廃されれば費用も下がりそうだ。
もし日本が自国開発機の代わりに改修型ラプター導入に踏み切れば日米両国に良い効果が生まれる。もし米国がF-22生産再開の一部費用負担ですめば、USAFはF-22機数をテコ入れでき、両国に望ましい結果が生まれそうだ。
ふたたびF-35支持勢力がこの動きを阻みそうだ。たとえF-35の将来が保証されても妨害してくるだろう。戦闘機予算が別の機体に投じられればそれだけ既存機種の予算が減ることになる。だがUSAFがラプター2.0を巨額の初期投入コストや開発費用の負担なしで調達できるとしたら願ってもない機会だ。日本が二百機ほどを購入し、米側も追加購入すれば機体単価も低下するだろう。
日本からすれば単価が下がり、技術移転が行われ、また一部部品の製造元となれれば恩恵は大きい。また機体の輸出が実現すれば効果を上乗せできるが、これにはF-35の海外販売への影響を恐れ米側が抑制するだろう。だがなんといっても既存かつ実証済み機材の導入は日本にとってリスク低下効果があり、米政府、米産業界が全面支援するとあれば恩恵が大きい。
日本が準国産機に高額な費用を喜んで負担するはずがないとは考えるべきでない。F-2は今日のF-35程度の機体単価になったあげく、搭載レーダーには問題が多い。日本はF-16後期型を購入しておけばF-2の三分の一程度で問題は最小限の機体を導入できたはずだ。
だがドナルド・トランプ大統領が安倍晋三首相と極めて親しい関係にあることも考慮すべきだ。日本に「最高性能」の機材調達を許しながら国防大手企業のポケットも潤せるなら大統領には望ましい提案に写るはずだ。日本向け防衛装備輸出ではトランプが安倍の求める装備を喜んで売るはずだ。

もしペンタゴンが賢明なら改修版F-22を日本と生産再開する案を歓迎するはずだし、日本政府が費用の大半を負担する覚悟がありながら、USAFがこの話に乗ってこないとしたら愚鈍といわれてもしかたがない。■

2018年4月19日木曜日

ロッキード案のMQ-25登場、でもUCLASSを取りやめた海軍が構想した給油機は必要なのか

Lockheed Is Already Pushing A Stealthy Version Of Its MQ-25 Stingray Tanker Drone MQ-25スティングレイ無人給油機のロッキード案の概要が明らかに

The sad thing is, the whole idea originally was for the Navy to get a stealth drone, but it ended up getting a flying gas can. 残念なのはもともとは海軍が想定したステルス無人機が空飛ぶガソリンタンクになったこと

BY TYLER ROGOWAYAPRIL 11, 2018
LOCKHEED MARTIN VIDEO SCREENCAP


ロッキードがMQ-25空母運用給油機競作で自社案を発表したが全翼機形状無人機に低視認性で兵装運用能力を付け加える構想と判明した。
同社が制作した派手な映像がメリーランドで開催されたシーエアスペース展示会で公開された。動画で同機の活躍場面を示し、最後の部分でMQ-25には給油タンクではなく共用スタンドオフミサイル兵器(JSOWs)が搭載されている。タイトルには「これからのミッションでの柔軟性が残存性につながる」とある。
LOCKHEED MARTIN


映像でロッキード版MQ-25の特徴が分かる。例えば電子光学センサータレットが左主翼下に格納される様子がわかる。
VIDEO SCREENCAP


また実にクールなエアブレーキがついており、機体中央部の円錐状形状に溶け込んでいる。
VIDEO SCREENCAP


だが何と言っても興味を感じるのはMQ-25が飛行甲板上でどう運用されるかだ。機体の移動状況は地上管制装置でモニターできるようで広角ビデオカメラ数個がついている。機体自体も機首のLEDライトと前脚扉につけた表示で今どんな動きをしているかを周囲に示すとともにこれからの動作も表示するようだ。実に格好いいではないか。
MQ-25は半自律運航を目指し、従来のような人員による飛行制御は必要ない。ただ空母艦上で機体を位置につけるため手の動きを認識するソフトウェアが必要なのか、それとも管制官が位置を指示するインターフェイスやほかのコマンド方法で機体を動かす方式なのか不明だ。
VIDEO SCREENCAP
VIDEO SCREENCAP

ロッキードが低視認性版スティングレイを追加する可能性があるとしても驚くべきことではない。同社スカンクワークスには数々の全翼機製造の実績があるが、ロッキード本社の説明と食い違う点もある。
Aviation Weekのジェイムズ・ドリューがロッキードで無人給油機の設計を世界に伝える役を与えられた、MQ-25事業を統括するジョン・ヴィンソンにインタビューしている。
「ステルスは全面的に信頼できない。効率を追求して全翼機形状に落ち着いた。給油機では燃料を主翼で運び燃料重量と主翼揚力を分散させることが多いが、ペイロードが燃料のため当方は全翼機設計とした」
機体表面の追加塗装、アンテナ処理、その他小改良で低視認性が実現するのであれば、ステルスを念頭にMQ-25を設計したのだろう。実際にスカンクワークスはこの作業をしたようだ。ボーイングのMQ-25試作機が途中で挫折した無人空母運用偵察攻撃機(UCLASS) から生れたのであれば、UCLASSの低視認性要求から将来の改良でステルス機に発展する可能性がある。
ここで話題にしているのは高性能低視認性かつ深度侵攻機ではなく、高い残存性を敵の高度防空体制で発揮でき、場合によってはそのまま敵領空内に侵入可能な機体だ。
他方でジェネラルアトミックス案は低視認性機材に発展する可能性が低い。だが同機は他社よりも燃料搭載量が多くなりそうで、エンジンが強力なのでペイロードに対応できそうだ。
このことから三社がUCLASSの影響を引き継いでいることが分からう。ロッキードは「完全新型」設計というが同社のシーゴーストUCLASS構想との強い関連を示している。シーゴーストとはRQ-170センティネルを原型としていた。
LOCKHEED MARTIN
Sea Ghost concept based on the RQ-170 Sentinel.


MQ-25の要求性能にステルスはなく、これが原因でノースロップ・グラマンに有望視されていたX-47B実証機がありながら同社は競合から降りたといわれる。米海軍がそもそもUCLASS競合の時点で給油能力の優先度を高くしておけば各社がより競合した形で提案を出し、敵地深く侵入しながら低視認性の戦闘航空機材で必要に応じ給油能力も発揮できる機材が生まれていたのではないか。空母から500マイル地点で14千ポンドの給油用燃料を搭載する性能が実現できないのであればもう一機を発進させて任務を達成させればよい。
いいかえれば、UCLASSのまま給油能力を付与していれば、海軍は給油能力は限定されてもその他ミッション多数をこなせる機材を実現できていたはずだ。また海軍がスーパーホーネット多数の調達に動いており、コンフォーマル燃料タンクを各機が搭載することを考えるとスーパーホーネットが現在課せられている空中給油任務は今後大きく減ることが予想できる。
そうなると海軍がUCLASSの時点で四社あった入札業者のうち最良の無人戦闘航空機(UCAV)を調達していれば、現状の有人機の二倍三倍の航続距離を有する艦載戦術機材を入手していたのではないか。またそもそも給油機支援など不要だったはずである。そこでMQ-25給油機のかわりに108機保存中のS-3ヴァイキングを砂漠から呼び戻せば足りたのではないか。
また戦闘機パイロットが多数派の海軍と議会内の愚かな議員連の決定でステルスの空母運用UCAVが息の根を止められていなければ、無人機で半分以下の費用で三倍四倍の距離まで飛びパイロットの生命を危険にさらさず運用できるのにF-35Cが本当に必要なのかとの疑問がうまれていたはずだ。
だが将来の姿を見通して最適なUCAVを導入する代わりに海軍は予算を給油無人機に投入しながら本当に必要な機能は実現せず、制空権が不完全な空域では中途半端な機能しか果たせない機材を手に入れようとしている。海軍は今後の改良型の開発配備を必要と感じているのか。
結局のところ、UCLASSを葬り、無人艦載機を空飛ぶガソリンスタンドに変えたのはあまりにも近視眼的と笑うしかないし、いかにも腹黒い動きだ。無人機にパイロットがしたくない仕事をさせ、UCLASS開発取り消しのために生れた仕事をさせるのは有人戦闘機開発を温存させるための策略なのだろうか。
残念ながらすべて事実なのである。■
Contact the author: Tyler@thedrive.com