2021年3月18日木曜日

エリア51から太平洋にかけ高高度の制限飛行経路が設定されていた。利用した極秘機材とは何か

  

A map showing the route outlined in an unusual airspace restriction notice in March 2021.

FOREFLIGHT

 

週末、連邦航空局の航空関係者向け通達つまりNOTAMのデータベースに興味深い告知が加わっていた。米軍の極秘テスト施設、エリア51として知られるグルーム湖、トノパ試射場空港からサンフランシスコ南西を経由し太平洋に至る経路上の高高度飛行に注意喚起していた。

 

このNOTAMに気づいたのはDreamlandresort.comの掲示板で発出は2021年3月12日の日付だが実際に公表されていたのは翌日の現地時間5:45PMから8:15PMのみだった。通常は時間帯を最小に限定する軍の訓練やテスト活動としては不自然だ。通達では幅20カイリ、全長426カイリでフライトレベル450、600つまり45千フィートと60千フィートの設定で、ウェイポイント数カ所を設定し、ウェブサイトForeFlightは下のように図示した。

 

FOREFLIGHT

今回のNOTAMで設定した経路の全体像。

 

 

太平洋からはサンフランシスコへ104カイリ伸びて、次にモンテレイ西から54マイル先でカリフォーニアでも人口密度が低い地点で内陸上空に達し、ネヴァダ西部に入っている。

 

この飛行経路はネヴァダ上空の制限軍事空域R-4807Aの端で終わっている。R-4807Aは米空軍の広大なネヴァダ試験訓練施設の一部で、その北部にはR-4809としてトノパ試射場と空港がある。また南部にはR-4808Nが設定され、中にR-4808Aが「The Box」の設定がある。ここが極度に制限されているエリア51付近の空域だ。

 

実際の公示は以下の通りだった:

!CARF 03/165 ZOA AIRSPACE STNR ALT RESERVATION DEFINED AS 10NM

EITHER SIDE OF A LINE FM BEBOP TO PIRAT TO CYPRS TO CANDA TO RUSME

TO LIDAT TO TPH168031. FL450-FL600

2103140145-2103140415

 

今回の飛行制限は静止ALTRVとよばれ、ALTRVとは高度事前承認要求の略だ。今回はNTTR(ネヴァダ試験訓練施設)を太平洋と接続させ、高高度を飛行する対象用に設定したようだ。ALTRV対象経路を飛行中の航空機は交信が不要で、トランスポンダーを作動させる必要がない。

 

FOREFLIGHT

今回の飛行経路の東端を拡大した。ネヴァダテスト訓練施設(NTTR)の各種飛行制限空域がわかる。ここでKTNXはトノパ試射場空港のコードで、KXTAはエリア51専用のホーミー空港のコード

USAF

NTTR全体の地図で、エリア51付近の飛行制限空域もわかる。「The Box」と呼ばれるのは4808A。

 

 

今回の飛行ルートで興味を感じる理由がある。ここ数年のNOTAMからThe War Zone が推論した内容に非常に似て、NTTRとカリフォーニア北部沖間をいつも通過している。

 

もう一つ興味深いのはモンテレイ付近を通過する極秘の機体についてThe War Zone に語る航空機追跡愛好家があらわれたことだ。こうした機体が高高度の飛行回廊を通過し、太平洋東に設定のある米軍試射場に安全に移動できるよう手配されているのか。また極秘機材を米本土の外へ可能な限り効率よく迅速に東太平洋上空へ移動させ、回収したのか。

 

問題の飛行回廊を利用した機体が有人機とは限らない。こうした経路を無人極秘機が海上移動に利用する場合がある。では機材は何か。RQ-170の可能性がある。試験機はパームデイルから飛行しているが、その際はチェイス機が一緒に飛び、交信しながら通常の空域を一貫して利用している。

 

また、RQ-170が太平洋演習区域で何回も飛行していることがわかっている。さらに秘密に覆われた大型の「RQ-180」の可能性もあるが、カリフォーニア沖合の高高度を飛行する機体が実在するのは公然の秘密だ。今回は単独飛行で、給油機も付近におらず、また時間帯も夜間だった。

 

NTTR周辺の無線交信を熱心にモニターする航空機スポッターはエリア51、TTRで今回の飛行経路に関連する動きはなかったと言っている。これまでも同様の投稿があっても、スポッターから不自然な交信や動きの報告はなかった。

 

いいかえれば、今回の機体は全く存在を知らせない点で完璧だったことになる。■

 

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Mysterious High-Altitude Flight Corridor Was Opened Up Between Area 51 And The Pacific

The restricted strip of airspace bridged the Nevada Test and Training Range with the Pacific Ocean during a few-hour window last Saturday evening.

BY TYLER ROGOWAY AND JOSEPH TREVITHICK MARCH 15, 2021

 


中国核ミサイル潜水艦を空から狩るP-8Aポセイドンは新しい抑止力の姿だ。ネットワーク機能で水上艦、潜水艦と連携して中国を封じ込めるのが狙い。

https://www.reutersconnect.com/all?id=tag%3Areuters.com%2C2016%3Anewsml_S1AEUDFCCOAA&share=true

 

強続くP-8Aポセイドン部隊の主任務は潜水艦の探知だ。ポセイドンは強力な威力を発揮する。米海軍は同機の増強に注力している。

 

中国の核ミサイル搭載潜水艦がグローバル規模の運用能力を増強する中、JL-2ミサイルは米国の一部も射程に入れているといわれる。対抗して米湖海軍は攻撃型潜水艦建造を進め、長距離無人装備を太平洋に配備し、対潜攻撃能力を備えたP-8Aポセイドンの調達を続けている。

 

太平洋の「距離の横暴」を克服しつつ、中国潜水艦部隊の追尾を図ろうとする海軍はヴァージニア級攻撃型潜水艦の年間3隻建造で議会の協力を取り付けようとしており、現行の年二隻建造体制から脱却を図る。空では新型トライトン無人機をグアムに配備し、ボーイングに24億ドルでP-8Aポセイドン哨戒攻撃機を19機追加生産させる。

 

ポセイドンの高性能監視能力は中国のインチキ島造成を南シナ海で監視したことで実証済み、高性能センサー類、ソノブイ、兵装で中国の拡張を抑え込む用途が実施されているのは想像に難くないし、中国の弾道ミサイル潜水艦(SSBN)への抑止効果を実現しているといえる。


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ここ数年のPLA海軍は太平洋の外まで活動範囲を広げており、軍事大国化を目指している。中国のSSBNが西太平洋を外れた地点で目視される例が増えており、搭載するSLBMのJL-2、今後登場するJL-3が米国に悩みの種となる。国家航空宇宙情報センターによれば、中国は2017年時点でJL-2を48発潜水艦に搭載していた。JL-2の射程は4,500マイル超で中国周辺の米拠点を十分射程に収める。

 

昨年のことだが、米太平洋艦隊で情報作戦部長を務めたジェイムズ・ファネル大佐が中国核ミサイル潜水艦の追尾対抗が必要と議会に訴えていた。

 

「中国のSSBNの出港を近くから監視し、核搭載ICBMがわが方に向け発射される前にSSBNを撃破する必要がある」と議会で語ったと国防大学の発行した「中国の新しい海中抑止戦略の教義及び能力」(トシ・ヨシハラ、ジェイムズ・ホームズ共著)にある。


同上文献ではさらに中国が発射するSLBMの迎撃が困難なため、「中国SSBNをミサイル発射前に捕捉、撃破する」のが賢明な選択とある。

 

ポセイドンをISR能力を強化したSSN攻撃型潜水艦と併用すればSSBN狩りミッションに最適な組み合わせとなる。P-8の時速564マイルの速力が従来のP-3オライオンより相当速いことに加え、燃料搭載量が増えて対応範囲が伸びている。海軍によればポセイドンは10時間のミッションを1,200カイリ範囲で実行できる。ポセイドンは広範な海洋で中国SSBNを探知できるようになる。

 

P-8Aはボーイングの民生737-800が原型で、魚雷、ハープーンのほか、ソノブイ129個、空中給油装備があり、長距離をカバーし、対潜戦では各種深度で各種シナリオに対応できる。P-8はソノブイを高高度から投下できるので、敵の反撃を受けるリスクが減る。その他無人機やISR機材でも探知は可能だが、ポセイドンは攻撃も可能な点が異なる。

 

AN/APY-10監視レーダー、MXシリーズの電子光学赤外線カメラで海面をスキャンするほか、パラシュート投下するソノブイは潜水艦を各種深度で探知する。また、同機は対潜ネットワークを構成する水上艦、無人艦艇、無人機搭載のセンサー類、さらに潜水艦といった各種装備の「中継点」になる。その場合、ポセイドンはアクティブ電子スキャンアレイ、合成開口レーダー、地上移動目標探知能力を駆使する。

 

水中聴音機、磁気コンパスをあらかじめ決めた深度に入れて、ケーブルで接続した水上発信機からポセイドンのソノブイは音響エナジーを信号に変換し、機内コンピュータで処理される。

 

ポセイドンが投下するソノブイが水中聴音機、センサーを配備した水中防衛ラインにも役立つ。これは中国北部からフィリピンを経由しインドネシアまで伸びていると、カーネギー平和財団の発表した「中国の核弾道ミサイル潜水艦と戦略安定性」と題されたエッセイに出ている。ポセイドンによる対潜能力の向上でこの水中防衛ラインの機能が高まり、中国SSBN各艦は探知されずに移動できなくなる。

 

興味深いことに、ポセイドンで敵SSBNを空中から探知撃破する高度技術が実用化できたことでペンタゴンの核抑止姿勢にも大きな変化を生まれそうだ。ペンタゴンの核三本柱による戦略抑止力では「攻撃力が最良の防衛」とされ、ポセイドンの投入はこの姿勢にも合致する。中国SSBNの活動を抑えれば、中国は潜水艦からの核攻撃に困難をきたす。その意味でポセイドンは核の三本柱の水中及び空中部分をつなぐ存在になる。ポセイドンは三本柱の空の部分を強化しつつ、重要な情報を水上艦、潜水艦に提供し、中国SSBNの追尾に役立てるだろう。

 

現在、米海軍以外には英国、ノルウェー、インド、オーストラリアの各国が同機を供用中で、採用国は増えそうだ。■


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How the P-8A Poseidon Will Hunt Chinese Submarines

March 15, 2021  Topic: U.S. Navy  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: ChinaMilitaryTechnologyWorldSubmarines

by Kris Osborn

 

Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army - Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University. This first appeared earlier and is being reposted due to reader interest.

Image: Reuters.

 


 

2021年3月17日水曜日

マッハ5超のSR-91は実在する?

 

ブラック案件がこの上なく好きな当方にはたまらない話題ですが、内容が浅いのはご容赦ください。

 

SR-91 Aurora

SR-91 Aurora, artist rendition. Image Credit: Creative Commons.

 

1980年代にマッハ5+極超音速偵察機の構想が空軍に生まれ、最速の有人機を目指した。試作機で目撃談が相次いだが、SR-91アウロラは実在するとしても構想段階を超えたことはないようだ。

 

SR-71ブラックバードの老朽化が進み、維持費が年間2-3億ドルと高額なため、後継機実現を目指した。特別アクセスプログラム(SAP)と呼称された極秘「ブラックプログラム」のためSR-91で判明している事実は皆無に等しい。アウロラの名称は1985年度予算要求資料の事前削除から漏れて流布したにすぎない。

 

2006年5月に英国防省の報告書が米空軍の優先事業としてマッハ4から6飛行可能な超音速機に触れていた。その後15年が経過しているが、これはSR-91アウロラのことだったのか、確認したくても情報があまりにも乏しい。

SR-91 Aurora

SR-91 Aurora, artist rendition. Image Credit: Creative Commons.

 

本当に存在しているのか

 

何度も繰り返される疑問はSR-91アウロラ試作機は実際に製造されたのか否かだ。製造を裏付ける証拠は皆無に等しい。

 

FighterJetsWorld.comによればSR-91かもしれない機体の未確認目撃ガ数回あったという。中でも広く知られているのは三角形機体を1989年8月北海で石油探索技術者クリス・ギブソンが目撃した事例だが、実態はB-2スピリットだった可能性がある。

 

あるいは可能性がもっと高いのはロッキードF-117ナイトホークで、実際に英空軍が1980年代末に同機をテストしていた。

 

情報が乏しい中でマッハ5飛行が本当に可能だったのかも不明で、機体形状も確認しようがなく、極秘機扱いの同機が北海上空で目撃されるほど低速飛行していたのか疑問だ。

 

さらに試作機なら一体どこから離陸し、着陸したのだろうか。北海は正確には絶海ではなく高性能機材のテストとしてはありえない場所のように思える。

 

もう一件しかないSR-91存在の「証拠」はロサンジェルス上空で何度も「空震」音が聞こえたとの記事で、グルームレイク(別名エリア51)から運用していた機体なのかもしれないが、アウロラと断定できない。

 

ロッキードのスカンクワークス(現ロッキード高度開発カンパニー)が主契約企業だったと言われる。だが本当にそのような機体があったとする情報は今に至るまで皆無に近い。こうしたことからアウロラは謎の機体のままというのが現時点の結論だ。■

 

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SR-91 Aurora: Mach 5 Hypersonic Spy Plane or Myth?

Peter Suciu

ByPeter Suciu

 

Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He regularly writes about military small arms, and is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com.


次期SSBNコロンビア級の技術的課題

 

 

 

 

中配備戦略抑止力の根本たる核弾道ミサイル潜水艦は見つかってはならず、探知されるす、姿を見せてはならない宿命だ。

 

この命題を維持するため潜水艦開発をいっそう複雑になっており、新型コロンビア級弾道ミサイル潜水艦はいまだかつてない静粛度を誇るステルス潜水艦となる。

 

コロンビア級はハイテクの駆使で探知を逃れる設定で、敵側が長距離高性能ソナー装備を使い探知能力を引き上げ、小型対潜無人潜水艇や航空機による潜水艦探知技術を進めているのを意識せざるを得ない。水面や浅海域レーザースキャナー技術も浮上しており、パトロール中の潜水艦の探知を目指していることにも注意が必要だ。

 

こうした中で海軍作戦部長マイケル・ギルディ大将のCNO NAVPLANで新型コロンビア級の運用開始を「時間通り」実現する必要を訴えるのは当然だろう。

 

 

一方で、水中無人潜水艇が急速な進展を示しており、静粛で小型かつ探知が困難なため、潜水艦艦長に新しい脅威となってきた。

 

中国は新型普級弾道ミサイル潜水艦の建造を進めており、JL-3長距離核ミサイルを搭載する。JL-3ミサイルにより中国は米本土をこれまでより広く射程に収め、米国への核攻撃がより現実味を帯びる。

 

こうした中、米海軍が高性能弾道ミサイル潜水艦の新型多数を必要とするのは当然だが、新型潜水艦はステルス性をこれまで以上に必要とし、海軍は新型水中戦技術をコロンビア級に統合する。

 

海軍の科学技術開発の成果がコロンビア級に搭載されるが、一部はブロックIIIヴァージニア級攻撃潜水艦から流用する。光ファイパー方式潜望鏡で、従来のように潜望鏡の下に立つことなく、艦の周囲を見ることができる。またフライ・バイ・ワイヤ航法は機械式の油圧機構と違い、高度の自動化で深度、速力等を制御できる。

 

コロンビア級に全く新しい静粛化技術が採用される可能性は高い。海軍兵装開発部門で話題に登っているのが電気推進技術だ。従来装備よりはるかに静粛で瞬時に機動性を実現できるが、艦内に高性能電子装備が多数搭載されるはずだ。指揮統制機能、自動航法システム、電動兵装、センサーのインターフェースが実現するはずだ。

 

探知を難しくする方法にミサイル発射管から運用する水中偵察機がある。海軍が開発中の各種無人機は潜水艦からの発進、回収を実現し、水中戦での情報収集に役立てる。無人ソナー・センサー装備としてリアルタイムで潜水艦本体に情報を伝えれば、コロンビア級潜水艦は探知されない位置に長くとどまることが可能となり、無人水中機を前方へ移動させハイリスク水域で敵潜水艦等を監視することになろう。■

 

 

Columbia-Class Submarine: The Most Stealth Submarine Ever Built?


January 17, 2021  Topic: Columbia-Class Stealth  Blog Brand: The Buzz  Tags: Columbia-class StealthColumbia-ClassU.S. NavyNavyMilitary

by Kris Osborn

 

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.


2021年3月16日火曜日

イスラエル空軍は米空軍の余剰F-15取得を期待。これまでもF-15バズとしてイスラエル仕様に強化改修した実績がある技術力の高さが背景に。F-35取得とあわせ、中東での航空戦力優越を狙う。

 本日(3月16日)は東京で日米外交防衛トップ会談があり、日本側はF-15JSIの価格急騰を話題にするとの報道があります。まさかEX導入に急遽切り替わるような大幅な方向転換はないと思いますが、イスラエル並みの技術力(あわせて意思の強さ)がないと、足元をみられてしますね。

Israeli Air Force exercise "Blue Flag"SARA LEMEL/PICTURE-ALLIANCE/DPA/

 

5世代戦闘機のみ調達するはずだった米空軍はF-15EX導入で方針変更した。新型イーグル配備の影響は今後長く続き、米空軍以外にも現れそうだ。

一つ考えられるのがイスラエル空軍IAFで、米国が提供する大型商談で高性能版F-15とともにF-35追加導入に動くものと見られていた。F-15EXにイスラエルは今の所音無しの構えで、F-35追加導入は発表があったが、新型F-15に全く言及がない。

イスラエルはF-15A/B/C/D各型『バズ』Bazを自国仕様にあわせ改修しているが、同機がIAFに登場したほぼ50年前が出発点だ。イスラエルは当初『対地攻撃能力皆無』のイーグルを長距離攻撃機材に変え、機体一体型燃料タンクも導入した。これはF-15Eストライクイーグルの登場前の話だ。さらに「イスラエル化」され、バズ2000改修は大幅なものになった。現在も真の多任務戦闘機として供用中で、米・イスラエル製兵装を搭載し長距離攻撃が可能だ。複座B/D型を特にIAFが重宝するのはネットワークや衛星通信中継機として指揮統制機能を強化しているからだ。

USAF

F-15バズ

 

米空軍の余剰F-15はイスラエルに流れ、バズ機材となっている。最近もF-15Dの余剰機材がIAFに渡り、対イラン戦で極めて重要な機材になる期待が高い。

受領した機材はD型でも最古のものだが、IAFはダビデの星マークに塗り替えただけではない。まず、慎重に分解して大幅改修を施してから再組立てした。その後、損耗機材のかわりに配備されている。

IAF

初期導入のF-15Dはイスラエルにより徹底的に手を加えられている。

 

ではIAFが新造F-15を導入する、導入しない話がどうからむのか。USAFが144機のF-15EX導入を発表したのは、旧型C/D機材の更新用とされたが、旧型機は合計210機ある。そのうち、178機はゴールデンイーグル・ロードマップで今後も供用を続ける予定だった。その中で最古参機には主翼交換が2020年代末までに必要とされ、多大な費用がかかるとされていた。こうした機材の主任務は本土防衛とならび極超音速ミサイル運用の想定で、空軍は結局旧型機の改修よりも新規製造のF-15EX導入に方針を変えた。

 

USAF

改修型F-15Dバズ

 

F-15X構想が突如登場したことで、200機以上ある後期製造分のF-15C/DをUSAFが余剰機材に区分する見込みが現実のものとなった。F-15EX調達が進めば、空軍で不要となるF-15が出現する可能性が高い。F-15Dの最後の機体がイスラエルに無償移譲されれば非常に魅力的な話になる。新規製造F-15EXの機体単価が80-90百万ドルになり、製造まで時間がかかることを考えればなおさらだ。

ストライクイーグルが原型のF-15Iがイスラエルに25機あり、現状ではイスラエル航空戦力の中心的存在だ。そこにF-35と新型スタンドオフミサイルが導入されれば、あえて第4世代戦闘機の新規製造機体に重点をおかなくてもよくなる。必要なのは兵装運搬手段でありネットワーク機能を充実した機体でイスラエルの求める仕様に特化し、国内装備品を搭載した機体だ。必要な追加F-15の8割を2割のコストで実現できれば、抵抗するのはが極めて困難だ。

USAF

イスラエルはストライクイーグルをF-15Iとして25機運用中。 

 

同様に改修を加えるF-35Iは攻撃任務に適化して、航空作戦の初期段階で敵防空能力が高い状態での活躍を期待される。F-15は後衛につき、長距離戦術支援機材あるいは兵装トラックとして、スタンドオフ兵器を運用し、ネットワーク指揮統制機能を発揮することで、F-35I含む僚機に機能を発揮させる。しかも非常に魅力的な機体価格でこれが実現する。ここにF-15C/Dの伝説的とも言える空対空対応能力が加わる。有人機・無人機の並行運用も「忠実なるウィングマン」の登場で現実のものになりつつある。複座F-15Dを改修すればこの任務にも理想的となろう。

更に大きな可能性がある。イスラエルは後期生産型のF-15Cを単座バズ部隊に導入する構想も練っている。USAFのF-15Cでは多くがAN/APG-63(V)3アクティブ電子スキャンアレイ方式(AESA)レーダーを搭載し、最強の空対空戦闘機用レーダーとなっている。改修費用は米空軍が負担済みで、そのまま引き渡されそうだ。

AUTHOR/TYLER ROGOWAY

米空軍142戦闘航空団のF-15Cに新たに搭載されたAN/APG-63V3 レーダー

 

とはいえIAFにF-15EX導入の可能性がないわけではない。20年前のF-15I導入と同じ話だ。同型機導入構想に有利な条件もある。なんといっても新規製造機材の信頼性・高寿命に対抗できる選択肢は他にない。またF-15EXの性能水準も否定しがたい。それでも、F-15バズ改修でUSAF提供の最古参D型機を再生するのに成功しており、イスラエルはF-15EXの高性能なみの水準を想定しているのではないか。現状のF-15A-Dバズが50-55機、F-15Iラアムが25機あるところにF-15を追加導入し、さらにF-35も追加導入しても両立は可能だろう。

USAFは現行の「制空任務イーグル」全機を用途廃止しF-15EX導入を進めるようだ。これでIAFに夢だった事態が現実になる。バズ改修で第4世代重戦闘機のニーズが満たされ、十分な数の機材が低価格で入手できれば、IAFがF-15EXを真剣に導入する必要はなくなる。とりあえず、今回は。■

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Israel Could Be Waiting For Surplus US Air Force F-15s Instead Of Buying New Advanced Eagles


米空軍がF-15EX導入を進める中、イスラエル空軍は余剰機材を入手する機会を待つ

BY TYLER ROGOWAY MARCH 13, 2021


2021年3月15日月曜日

歴史に残る艦(2) 日本海軍に対抗し建造され、真珠湾攻撃も生き延びたUSSフィーニックスは、アルゼンチンへ売却されへネラル・ベルグラーノとして英原潜の魚雷攻撃で生涯を閉じた。

 


 

 

れまで原子力潜水艦で沈められた艦艇は一隻のみだ。日本軍と戦う想定で建造されたUSSフィーニックスは真珠湾攻撃を生き残り、太平洋各地で戦闘に加わった。真珠湾攻撃の41年後に、同鑑はフォークランド諸島沖大西洋で英潜水艦HMSコンカラーに撃沈された。

 

USSフィーニックスは軽巡洋艦ブルックリン級5番艦で設計はロンドン海軍条約(1930年)による制約を受けた。主要国海軍は戦艦建造に制限がつき、巡洋艦に着目した。新条約体制で加盟国間の重巡洋艦の8インチ主砲搭載数で制約がついた。英国は帝国各地の警備用に軽巡洋艦が必要で、6インチ主砲の新型巡洋艦で小型化を狙った。

 

予算難の英海軍本部に不幸だったのは米国と日本の優先事項が別だったことだ。日本は6インチ主砲15門を三連装5砲塔に搭載し、全長は重巡洋艦並みの軽巡最上級を建造した。これに対抗したのがブルックリン級で同じく6インチ砲15門を搭載した。ブルックリン級の排水量は10千トンと最上級よりわずかに低く、最大速力は33ノットだった。当時の米海軍の考え方では軽巡洋艦は主力艦戦列に沿い火力を展開し、敵駆逐艦の接近を拒む任務を期待された。機能面で重巡洋艦と軽巡洋艦の違いは軽微で、6インチ主砲は8インチ主砲より威力が劣ったものの、再装填時間が短く大きな効果があった。

 

 

USSフィーニックスは1935年起工され、1938年末に就役し真珠湾へ配備されたが、真珠湾攻撃を無傷で過ごした。攻撃当日の午後にフィーニックスは急遽編成された日本の機動部隊追尾部隊に加わった。1942年はじめ南太平洋へ展開し、蘭印東インディーズ諸島制圧をねらう日本の動きを封じようとした。1943年は大部分を修理に費やしたが同年12月に第一線復帰した。

 

太平洋に戻ると同艦はダグラス・マッカーサーのニューギニア攻略作戦に加わり、フィリピン解放にも投入された。1944年6月に日本軍の空襲を受けたが、目立つ損傷はなかった。ジェシー・オルデンドーフ提督のもと、スリガオ海峡海戦に1944年10月に加わり、日本の戦艦山城の撃破を助けた。その後は援護役にまわることが多くなり、援護対象艦が神風攻撃をうけたが、フィーニックスに損傷は皆無だった。戦後に予備役にまわされた。

 

1951年4月にフィーニックスはアルゼンチンへ売却され、ディエシシエテ・デ・オクトゥーブレと命名された。姉妹艦ボイシーも同じくヌエヴォ・デ・フリオになった。ブルックリン級軽巡は南米各国の旧式戦艦の後釜になった。アルゼンチンにつづき、チリも2隻、ブラジルは一隻導入した。1956年にアルゼンチン独立の指導者にちなみヘネラル・ベルグラーノに改称された。

 

フォークランド戦争でアルゼンチン海軍は諸端こそ上陸作戦を展開したものの、それ以外は動きがわずかだった。1982年4月26日、へネラル・ベルグラード投入が決まり、駆逐艦二隻とフォークランド諸島南方へ展開することになった。この展開は政治的に意味が明らかだったが、軍事上では意図不明だった。へネラル・ベルグラーノには当時の新鋭艦にも十分対応する武力があった。英艦が12マイル以内に迷い込めば6インチ主砲に撃破する火力があった。同艦の装甲は戦艦並とはいかなかったが、当時の対艦ミサイルには防御力は十分だった。ただし、同艦の活動範囲に英水上艦が入る可能性は極めて低く、対空・対潜装備が皆無のため、戦闘の行方に貢献する機能も低かった。5月2日、へネラル・ベルグラーノは随行艦とアルゼンチン本国への帰還コースをとった。

 

アルゼンチンに不幸な展開はHMSコンカラーが4月29日に同艦を探知していたことだ。コンカラーは追尾を続け、英国政府は攻撃を決断した。5月2日、コンカラーは魚雷発射地点に移動し、通常型非誘導式魚雷3本をへネラル・ベルグラーノに発射した。命中したのは2本と、護衛駆逐艦二隻が報告している。戦闘後に駆逐艦の一隻に不発魚雷が衝突していたとわかり、改めてコンカラー乗員の技量の高さを示した。へネラル・ベルグラーノは大きく損傷を受け、転覆したのち沈没した。攻撃を受けて30分後だった。乗員のうち770名が救助されたが、323名が死亡した。

 

へネラル・ベルグラーノ撃沈まで事態収拾の望みもあったが、巡洋艦が海に沈むと期待も消えた。アルゼンチン側は英国の非を追求した。攻撃地点が事前発表の攻撃対象圏外であり、同艦は英機動部隊から離れる航路だったと主張。事実はへネラル・ベルグラーノは撤収ではなく再配備の途中で、老朽化で限界があったといえ、依然として英軍には脅威対象だった。同艦が英軍作戦へ支障を与える可能性もあった。ただし、へネラル・ベルグラーノを喪失し、アルゼンチン海軍はその後の活動が不活発になり、英軍作戦を助けた。

 

結語

 

へネラル・ベルグラーノ撃沈はいまも論争のたねであり、アルゼンチン及び英国内左翼陣営が批判を展開している。これに対しアルゼンチン海軍ならびにベルグラーノ艦長は攻撃は合法だったと説明。ただし、ベルグラーノの最後へ焦点をあわせると、第二次大戦時のUSSフィーニックスによる太平洋の戦歴が隠れる。真珠湾攻撃を生き残り、その後も供用を続けた最後の艦艇が敵攻撃の前に海に没したのであり、「敵」が英海軍だったというのもなんとも皮肉だ。■

 

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History Tells Us Nuclear Submarines Don't Really Kill Anything

March 11, 2021  Topic: Nuclear Submarines  Blog Brand: The Reboot  Tags: Nuclear SubmarinesU.S. NavyMilitaryWorld War IIArgentine

by Robert Farley 

Robert Farley, a frequent contributor to The National Interest, is a Visiting Professor at the United States Army War College. The views expressed are those of the author and do not necessarily reflect the official policy or position of the Department of the Army, Department of Defense, or the U.S. Government. This article first appeared last year.

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