2023年2月23日木曜日

ウクライナパイロットのF-16訓練に必要な期間、コストとは

 


This Is How Long It Would Really Take Ukraine’s Pilots To Convert To F-16s

米国はウクライナパイロットを数ヶ月で訓練できる。. Jamie Hunter


F-16操縦の教習は、ウクライナ軍パイロットが同機で戦闘できるようになるため必要な事項の一面にすぎない

クライナ空軍の能力を向上させるため西側の戦闘機を寄贈するとの申し出はまだない。しかし、利用可能なタイプのうち、先陣を切っているのは、F-16のようだ。その主な理由は、入手のしやすさ、サポートのしやすさ、広大な物流インフラ、パイロット訓練の能力、適応性の高いマルチロール機能などだ。しかし、F-16の操縦だけでなく、戦闘訓練をパイロットに受けさせるのは、実現可能なのか。

この話題では、不正確な主張と大胆だが空虚な発言がいっぱいだが、現実を見てみよう。

スピードの必要性

ウクライナ戦争が2年目に入る中、ウクライナ空軍に欧米の戦闘機を供給する良う求める声が絶えない。ウクライナの勇敢な戦闘機パイロットは、MiG-29、Su-27、Su-24、Su-25など戦闘機や、AGM-88高速対レーダーミサイル(HARM)など西側兵器を使い、少ない機体で成果を上げ、日々活動を続けている。しかし、航空領域ではロシアが数的・技術的に優位を保っている。

2022年3月までさかのぼれば、ウクライナ指導部のトップは、欧米戦闘機を求め嘆願してきた。今日に至って、欧米から数多くの最新兵器がウクライナに流入しているが、今日に至るまで、戦闘機の選択肢は一つも実行されていない。ソ連時代の戦闘機も西側戦闘機も追加提供されていない。

米国はウクライナ人パイロットを既存のF-16訓練パイプラインに組み込むことができる Jamie Hunter

ウクライナのパイロットと一部の軍幹部は、中古F-16をキーウに供給するのが望ましいと明言している。ウクライナのMiG-29パイロット「ジュース」は2022年12月、The War Zoneに対し、「F-16の場合、訓練プログラム、電子対策、エンジン、あらゆるもので選択肢がある、まるでレゴのようだ」と語った。「技術的な能力は非常に近い。一般的に、F-16が航空機そのものとして優れているとは言わないが、能力、入手可能性、手頃な価格、さらに最も重要となる持続性を考えれば、ウクライナにとって最も現実的な選択だろう」。

ウクライナ空軍司令部の首席報道官ユーリ・イグナート大佐は、ロシア空軍力に対して形勢を逆転させるためには、少なくとも最初は12機の飛行隊2個と予備機があれば十分だと述べている。

2023年1月24日、イグナートはこう語っていた。「ウクライナに提供される航空機の種類と、それに対応する(人材の)訓練条件はすでに決定されている」。ウクライナはすでに、西側戦闘機を受け入れるために、飛行場の改良に取り組んでいるとさえ言われている。

先月、バイデン大統領がウクライナへのF-16戦闘機の譲渡に断固として「ノー」としたにもかかわらず、この可能性は勢いを増しているようだ。アメリカ政府が自らF-16を寄贈することはなくても、オランダのような使用国の決断を承認することは可能だろう。また、もちろんF-16と他の機種を一緒に提供することも可能だが、1機種に集約することが、長い目で見れば訓練や維持のため非常に有効だ。

では、最終的にアメリカ政府がウクライナへF-16の譲渡を認可した場合、その内容はどのようなるだろうか。

ヴァイパードライバーの養成

機材供給が決定されれば、F-16が理想的なソリューションになるように思われる。ヴァイパーはヨーロッパでロジスティクスが確立されており、東のウクライナまで拡大するのは大きな飛躍ではない。また、F-16の中古機体も、その数は増えている。とはいえ、政治的な意思があれば、調達はそれほど難しくはないだろう。

イグナートは最近、ウクライナには少なくとも十分な英語力を持つパイロットと整備士30人がおり、F-16契約が合意できれば、訓練のため渡米の準備が整っているとAir Force Magazineに語っている。

「離着陸やA地点からB地点への飛行など第一段階を学ぶのに数週間かかるが、戦闘方法やミサイルの使い方を学ぶには半年はかかるだろう」(イグナート)。

テキサス州サンアントニオ・ラックランド統合基地の第149戦闘航空団がウクライナ軍パイロットの訓練場所になる可能性がある。 U.S. Air National Guard

F-16は比較的安全に運用しやすいので、ウクライナ空軍が越えるべき壁は高くない。あるF-16パイロットはThe War Zoneに、「不慣れな飛行士がF-16でそれなりに安全に飛行することが数ヶ月で可能になる」と語っている。システムも操作しやすく、操縦も簡単で、直感的に学べる。「ヴァイパーは、経験豊富な戦闘機パイロットにとって、純粋な飛行という観点だけとれば、どの機種からも簡単に移行できる」。「電源を入れ、スロットルを押し上げれば、あとは飛ぶだけだ。飛行制御システムが大きなミスを防いでくれるので、本当にやろうとしない限り、ジェット機が過剰なストレスを与えることはない」。

F-16基本教程は、Bコースとも呼ばれ、通常、パイロット訓練を終えたばかりのパイロット用の9ヶ月のプロセスだ。Bコースに加え、正式な訓練ユニット(FTU)では、他の機種で経験を積んだパイロット用の移行コースも実施する(通常、Bコースよりもはるかに短い期間となる)。

Bコースで最初の4週間は、F-16のシステムや緊急時対処法などを学ぶアカデミックなコースだ。その後、計器飛行の基礎や緊急時対応などをシミュレーターで8回ほど体験した後、2人乗りF-16Dで実機飛行を4回行い、最初の単独飛行に臨む。

F-16のパイロット訓練は、ルーク基地やホロマン基地など、米国内の多くの場所で行われている  Jamie Hunter

次のフライトは、教官とのチェックライドに先立ち、計器飛行や緊急事態への対処の基準を満たす経験を積むためのものだ。この時点で、新米パイロットは全天候でF-16の操縦資格を得たとみなされ、暗視ゴーグル(NVG)を使う夜間飛行に移行する。

基本的な戦闘機操縦、空戦機動、戦術的迎撃などの空対空段階を経て、低空飛行、水上攻撃戦術などの空対地段階に入る。コースでは、移行期、空対空期、空対地期に分かれて、約60回のフライトをこなす。

経験豊富なウクライナの戦闘機パイロットにとって、F-16への機種転換は、TXとして知られる典型的なFTU移行転換コースに類似する可能性がある。これは従来、機種を変更する搭乗員や、複数型式の戦闘機に乗る必要のある上級将校に適用されてきた。欧米のシステムと標準操作手順(SOP)を取り入れた、カスタマイズされた移行コースは、フルクラムやフランカーを飛ばしてきた将来のウクライナのF-16パイロット用のシラバスになるかもしれない。

ジョイント・ヘルメット・マウント・キューイング・システムを装着したF-16パイロット。 Jamie Hunter

「欧米の戦闘機で500時間程度の経験を積んだパイロットで、F-16の操縦は未体験の場合(例えばホーネットから移行する場合)、休みなしで、週末も働いて、ヴァイパーを空対空と空対地で安全に使用するためすべてを学ぶのに69日間必要です」と、あるF-16教官はコメントしている。「これには、教習言語の英語が堪能であることが前提だ。69日間には、操縦と着陸を学ぶ飛行が6回ある。空対空は15回程度ですが、経験者であれば10回程度に抑えられます。空対地ミッションは6〜9回で、レーザー誘導爆弾(LGB)やGPS誘導の統合直接攻撃弾(JDAM)を使用する基本能力を身につけます。AIM-120AMRAAM(改良型中距離空対空ミサイル)のような複雑な兵器にすでに精通していることが前提ですが、大きな効果が得られるだろう」。

「また、210時間の講義と10~20回のシミュレーターイベントが必要です。1日2回のシミュレーターを10日間ぶっ続けでやることになる。つまり、69日間で、パイロットは戦術的な訓練環境で安全に航空機を使用できる可能性があるのですが、戦闘機となると話は別です」。

「Su-35やSu-27と戦闘を行うには、何年もの経験が必要です。新米には無理な話です。ジェット機のすべての機能を備えていても、パイロットが正しい使い方を知らなければ意味がありません。MiG-29パイロットにとって、すべてが違って見える新しいPVI(パイロット・ビークル・インターフェース)を学び、本でしか読んだことのない兵器を使い、3ヶ月の訓練を受けさせ、戦闘に投入するのは、大変な注文なんです」。

「MiG-29からブロック50やミッドライフアップグレードのヴァイパーへの性能の向上は大きなステップではありませんが、武器やエイビオニクスなど技術面では大きな飛躍があります。69日間の猛訓練を経ても、あくまでウイングマン資格でありミッションをリードできません。有効にするには、少なくとも1年間の集中訓練があれば、敵を粉砕できる。

「ウクライナ固有のニーズと脅威シナリオに基づいて新しいシラバスを構築することが必要でその後、戦闘に参加するには、6ヶ月から12ヶ月の訓練が必要です。それでもリスクはありますが、それ以上に見返りがあるかもしれません」。

ツーソンを拠点とする第162飛行隊に所属するF-16。U.S. Air National Guard/Tech Sgt Hampton E. Stramler

F-16を運用する各国は、初期資格訓練でパイロットを米国に派遣している。ポーランドやルーマニアのパイロットは、アリゾナ州ツーソンのモリス空軍州兵基地の空軍州兵第162飛行隊でF-16訓練を受ける。ここは、ウクライナ飛行士がF-16に換装するための理想的な訓練場所と言えるだろう。

別のF-16パイロットはThe War Zoneに、米空軍はヴァイパーFTUの既存のパイプラインに6〜12人のウクライナ人パイロットを比較的短期間で容易に押し込むことができ、戦地で必要とする特定スキルを提供する的を射たシラバスを与えることができるとコメントしている。

ウクライナのF-16がどのような役割を果たすべきかは、慎重に検討する必要がある。最新の単座マルチロール戦闘機は、純粋な操縦の観点からは扱いやすいかもしれないが、多様な任務が用意されているため、コックピットでの作業負荷もそれなりに高い。たとえF-16のような実績ある機種であっても、空軍が完全に対応できるマルチロール戦闘機の飛行隊を立ち上げるには、何年もかかる可能性がある。

AGM-88 HARMを搭載した米空軍のF-16CM。 Jamie Hunter

AIM-120AMRAAMのような西側の先進的な空対空ミサイルが加わった場合、パイロットは新しいスキルを身につける必要がある。「レーダーワーク、長距離飛行、ターゲティング、ターゲット識別などです。西側の第4世代機と旧ソ連の機体では、すべてが大きく異なるんです。コックピットのディスプレイ表示も違うし、ミサイルの運動力学も、ロシアと西側のミサイルでは仕組みも全く違う」。

最終目標がカギ

第4世代戦闘機導入で、ウクライナはどのような実利を得ることができるのか。軍事的に何が得られるのか、ウクライナのF-16は実際に何を達成できるのか。

ある元F-16パイロットはThe War Zoneにこう語っている。「ウクライナで戦闘機を採用するのなら、彼らが実際に何をしようとしているのかを問わなければならない。カリフォーニア航空州兵とウクライナのフランカーとの歴史的な密接なパートナーシップを振り返ると、紛争開始前でも、ウクライナのミッションの大半は1000フィート以下の低空で飛行していた」。

「今、ウクライナ全土におびただしい地対空ミサイル(SAM)があり、現実的にウクライナの戦闘機パイロットが大きなリスクを負わずに実行できるのは低空飛行だけだ。ウクライナは今、まったく異なる環境での作戦行動を展開している」。

第5世代のステルス戦闘機なら、このような激戦区で自由に活動できるが、西側の第4世代プラットフォームには、SAMネットワークが最高の足かせになるだろう。その意味では、ウクライナで供用中の戦闘機在庫と変わらない。

ブロック50/52 F-16C/Dは、敵防空制圧(SEAD)任務に特化した機体。 Jamie Hunter

「このままでは、戦域全体が接近阻止領域拒否になり、固定翼機で効果を発揮するのがますます困難になると思われます。ロシアとベラルーシ国境には高度なSAMがあり、ウクライナは米国からペイトリオットミサイルを受け取ることになっているので、低空飛行が続くと思われ、MANPADS(人型携帯防空システム)や短距離システムの影響を受ける可能性があります」。

ロシアは、ウクライナ上空で戦闘機や爆撃機の定期パトロールを行っていないと考えられており、代わりに、ロシア領内で戦闘空中哨戒(CAP)を行い、ウクライナを長距離から安全に攻撃し、それによって兵器の標的捕捉の不確実性と不正確性を受け入れている。ロシアは長距離巡航ミサイルを一般区域に向け発射することを厭わないが、このようなプロファイルでは、大きな巻き添え被害が避けられない。

王立サービス研究所(RUSI)の直近の報告書によると、MiG-31BMやSu-35Sなどロシア戦闘機は通常、作戦地域上空をカバーするが、そのCAPは通常、ロシアとクリミアなどロシア領の上空だ。

  ウクライナ支援で新しいジェット機の提供をめぐる戦術的なゲームプランは、F-16供給の可能性に大きな影響を与えるだろう。ウクライナ当局は、ロシアの戦闘機や爆撃機を抑えるため、優れたレーダーと長距離ミサイルAMRAAMのようなミサイルを搭載した戦闘機が必要だと言っているが、アメリカ当局は、このような重要な動きをすることの利害関係を検討し、この戦場で航空戦力がまだ重要な役割を担っているかどうかを問う必要がある。ウクライナでは今後、特に反アクセス脅威が高まり、固定翼の航空戦力が大きな影響を与えにくい市街地で地上軍が戦えば、航空領域の影響力が低下する可能性がある。

ウクライナはAMRAAMを搭載したKongsberg-Raytheonの防空システム「NASAMS(National Advanced Surface-to-Air System)」を受領している。

AMRAAMを搭載した戦闘機は、ロシアの長距離ミサイルやドローン攻撃に対するウクライナ防御力をさらに高めるが、ウクライナは、巨大なレーダー範囲と強力なR-37M長距離空対空ミサイルなどを持つロシアのSu-35SやMiG-31BM戦闘機に対抗するには、新しい戦闘機もAMRAAMが必要だと強調した。

「優先順位は、まず第一に、前線の上を飛ぶ彼らの攻撃プラットフォームを撃墜することであり、彼らの戦闘機を狩ることではありません。まずは地域をカバーし、次は地上部隊をカバーすること、そしてそのあとはもちろん、他の戦闘機と楽しむことだけを考えてもいい。それは大きな挑戦でしょう。しかし、それでも、新しいハードウェアは、新しい戦術、すべての操作のための新しいドクトリンを意味し、すべてが私たちの成功に役立つと思いますし、ロシアは自国領空でさえ快適に感じられなくなります」。

F-16に搭載されたAIM-9サイドワインダー(左)とAIM-120AMRAAM(右)。 Jamie Hunter


F-16の幅広い能力のうち、ウクライナはどれを実際に手に入れることになるのか、大きな疑問だ。AMRAAMとスマートウェポンは明らかに空軍の能力を飛躍的に向上させるが、空からの脅威から長距離で低空飛行することになれば、AMRAAMでさえ無力になる可能性がある。あるF-16パイロットは、「私は、AMRAAMはペイトリオットミサイルの移転以上に政治的な難題になる可能性があると見ています」と言う。「AMRAAMの安全性と長距離運用から、この兵器の移転に関し政治的に非常にハードルが高い」。

バイデン政権は、米国の機密技術が戦場でロシアの手に渡ることを警戒し続けている。しかし、もう一度言うが、ウクライナはすでにAIM-120を保有しており、機密性の高い戦術や作戦能力を伴う空対空戦闘環境ではないとはいえ、積極的に使用している。

米国はF-16の輸出先の一部で、AMRAAMの前に共用していたレーダー誘導ミサイルAIM-7スパローに限定している。新品のヴァイパーを受け取ったにもかかわらず、イラク軍の戦闘機はAMRAAMを含まないダウングレードされた能力だ。F-16の長期運用者であるエジプトも、ヴァイパーにAMRAAMを搭載していない。これは、技術的な問題から地域内のパリティの問題まで、さまざまな理由によるものである。

さらに、ウクライナにはGPS誘導弾のJDAM(Joint Direct Attack Munition)供与をめぐる議論が長く続いている。F-16は、この精密空対地兵器を最も重要なスマート兵器と位置づけているプラットフォームなので、この話も大きく取り上げられそうです。現在のところ、ウクライナは未知のプラットフォーム用のJDAMを手に入れることになる。これは航空機と組み合わせた場合、ウクライナに最大2,000ポンドの誘導兵器能力を与える可能性があり、限られたスタンドオフ範囲を提供する。

F-16は他にも多くの兵装を搭載でき、それが最大の強みだろう。特にウクライナにとっては、スタンドオフ地上攻撃兵器の導入など、同盟国が適切と考える新たな能力を迅速に提供することができる。また、ウクライナはすでに珍しい地上発射型の小直径爆弾(SDB)を入手している。F-16は、非常に柔軟な方法でこれも配備することができるが、先に述べたウクライナ上空の防空密度のため戦線に近い地点で高度を制限しているため、これら滑空弾の射程も大幅に低下する。

ウクライナがF-16に習熟すればロシアの「対空傘」を劣化させるためF-16を使用できる、という意見もある。ウクライナはすでにAGM-88高速対レーダーミサイル(HARM)を保有しており、同国のMiG-29やSu-27戦闘機に即席で運用されている。最新のエイビオニクスとセンサーシステムを備えたF-16なら、この兵器を活用することができる。しかし、F-16を装備したウクライナ空軍にとって、これは当面の課題ではないだろう。

とはいえ、こう考えると、F-16がイエスかノーかだけでなく、もっと広い意味での話し合いが必要になってくる。ウクライナは、Mk82「愚鈍」爆弾と熱探知AIM-9サイドワインダー、またはAMRAAMとスタンドオフ兵器を搭載したF-16を受け取ることを期待できるのだろうか?

翼端にAIM-120 AMRAAMを搭載したF-16C。Jamie Hunter


現実が物を言う

ミグとスホーイの運用を続け、規模を拡大することは、西側諸国のジェット機を導入するよりも実際に利点があるかもしれない。ロシアと同じようなタイプの航空機を運用することは、航空事情を複雑化させることにつながる。ハイテンポな作戦展開でも、訓練の負担を増やすことはほとんどなく、ロジスティクスチェーンも部分的ながらすでに整っている。

 ウクライナはまた、減衰中の戦闘機を強化するため、ロシア製戦闘機を繰り返し要求している。Su-27の調達先は明らかではないが、ブルガリア、ポーランド、スロバキアからMiG-29を調達する動きが繰り返されている。すでに実現したようにAGM-88HARMを追加したり、何らかの方法でAMRAAMを追加するなど、これらの航空機に改修機能を付与して譲渡することが、ウクライナの戦術航空兵力を強化する一つの可能性で浮上している。しかし、「ジュース」は、そうすることはほとんど意味がないと指摘している。「旧式ジェット機に空対空システムを統合するには、あまりにも時間がかかり、あまりにも高価で、あまりにも複雑だ」と。さらに、アクティブレーダーミサイルは、たとえできたとしても、ソ連設計のジェット機に装備されているレーダーとのマッチングが悪い。

 しかし、これではウクライナの長期的な将来にむけた戦闘機が提供できないし、ウクライナが西側戦闘機を使うという避けられない結果になる可能性を、先送りにするだけだ。また、長期的には将来のロシアによる侵略を抑止できない。

 もしウクライナがヴァイパーにゴーサインを出した場合、パイロットは基本的な操縦方法を習得するため非常に凝縮された訓練シラバスで、最終的に迅速にスピンアップできる。この場合、アップグレードした最新のF-16のマルチミッションスペクトラムをすべてカバーする必要はない。

 もしウクライナ軍パイロットがF-16の操縦を教わり、空対地の基本武器(おそらく最初は無誘導弾を使用)と空対空用のサイドワインダーの基本を学んだら、おそらく数ヶ月で熟練とみなされるだろう。しかし、これではウクライナが求めているものは得られない。もっと時間がかかるし、数週間ではなく、何カ月何年もかけて戦闘機を移行していくことになる。

 だから、ウクライナへのF-16供与には、確かに方法がある。しかし、その意志はあるのだろうか?

 いずれにせよ、答えは出るはずだ。■

This Is How Long It Would Really Take Ukraine's Pilots To Convert To F-16s

BYJAMIE HUNTER, TYLER ROGOWAY|PUBLISHED FEB 8, 2023 5:50 PM

THE WAR ZONE


2023年2月22日水曜日

バイデン大統領の電撃キーウ訪問はこうして実施された.....岸田首相も同じ行程を取るのでしょうか。その際に米軍の全面支援は期待できるのでしょうか

 

AP Photo/ Evan Vucci / Government of Ukraine / capture via Twitter


飛行機、列車、自動車など複雑に絡み合い、過去の作戦にないリスクへ対処が必要だった



シアによるウクライナへの本格的な侵攻から1周年を目前に控え、ジョー・バイデン米大統領は本日、予告なしにキーウを訪問した。この訪問は、昨年ロシア軍がウクライナに押し寄せてから初めてで、大統領はこの間に新たな軍事支援策を発表したが、安全保障上の懸念から数カ月前から予定されていた。バイデンとウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキーが首都キーウの外を歩いていると空襲警報が鳴り響き、この都市がロシアの攻撃による非常に現実的な脅威に直面していることが強調された。

 「1年前、世界は文字通り、キーウの陥落に備えていた。おそらくウクライナの終わりさえも」とバイデンはウクライナの首都からのスピーチで述べた。「一年後、キーウは立っている。そしてウクライナが立っている。民主主義が立っている。アメリカはあなた達と共に立ち、世界はあなた達と共に立っている」「それがかかる限り、戦う価値がある」とバイデンは続けた。「そして、それが私たちがあなたと一緒にいる期間です、大統領閣下。必要な限りです」

 「我々はやる」とゼレンスキーは発言を締めくくり、バイデンの手を握った。

 「プーチンが約1年前に侵攻を開始したとき、彼はウクライナが弱く、西側が分裂していると考えていた」と、バイデンはホワイトハウス発表の声明で述べている。「彼は我々を出し抜けると考えた。しかし、彼は大間違いだった」

 バイデンのキーウ訪問は、アメリカの「ウクライナの民主主義、主権、領土の完全性への揺るぎないコミットメント」を再確認するためのものだと、声明にある。

 ゼレンスキーはバイデンに対し、今回の訪問は「ウクライナ人全員に対する極めて重要な支援のしるし」だと語った。

 すでに述べたように、バイデンは、ロシアが2022年2月に全面的な侵攻を開始して以来、ウクライナを訪問していなかった。ボリス・ジョンソン、リシ・スナック両英首相、エマニュエル・マクロン仏大統領、オラフ・ショルツ独首相など他の西側諸国指導者は、その後、他の米国高官と同様にウクライナの首都を訪れている。

 大統領は、計画の各段階と潜在的な不測の事態について十分な説明を受けた後、金曜日に大統領執務室と国家安全保障内閣の主要メンバー数人を電話で招集し、最終的に「行く」「行かない」の決定を下した、と、ジョン・ファイナー国家安全保障主席補佐官は本日初めの記者会見で述べた。「この訪問は、ホワイトハウスの関係部署(首席補佐官のオフィス、NSC、ホワイトハウス軍事オフィス)が関与し、ペンタゴン、シークレットサービス、そしてもちろん、訪問に関する脅威評価を提供した情報コミュニティと同様に、数ヶ月にわたって綿密に計画されてきた」。

 バイデンがキーウに同行させたのは比較的少数の側近だけであった。ファイナーによれば、同行者は「ごく少数の側近、小さな医療チーム、カメラマン、そしてセキュリティパッケージ」で構成されていた。

 キーウに同行した米国の警備チームの正確な構成は不明である。2人の大統領がウクライナの首都を歩くる写真やビデオには、私服のシークレットサービス隊員と、ヘルメットや防護服などの戦闘服の隊員が写っている。後者はAR-15/M16タイプの各種ライフルやその派生型を装備しており、過去の西側諸国首脳の訪問時の様子から、ウクライナ人の可能性が高いと思われる。いずれにせよ、米国シークレットサービスのカウンターアサルトチームが近くで待機していたことは間違いない。

 CNNは、バイデンがキーウに行かない選択肢も提示されていたと報じている。この都市はポーランド国境に近く、昨年の全面戦争以来、外国政府関係者にとってリスク少ない訪問先と見なされてきた。

 興味深いことに、今日の記者会見でフィナー国家安全保障担当副顧問とともに、ジェイク・サリバン国家安全保障担当顧問も、バイデン訪問が間近に迫った数時間前に、米国政府がロシア側に警告を発していたことを明かした。

 サリバンによれば、これは「混乱を避けるため」であった。「その通信の機密性のために、私は彼らがどのように反応し、我々のメッセージの正確な性質が何であったかに触れることはできませんが、我々が通知を提供したことを確認することができます。」

 サリバンはさらに、バイデンのキーウへの正確な移動手段について確認を避けたが、ニューヨークタイムズによると、最後の行程はポーランドからの列車移動を含んでいた。ホワイトハウスのプレスプールは後にこれが事実だったを確認し、バイデンはポーランド国内のコンボイでルツェズフからほぼ空っぽのPrzemyśl Główny駅まで移動したと明らかにした。

 バイデンは、彼が乗る特定の列車車両のほぼ真上で降ろされた。Fox News報道によると、当然のことながら、この列車にはかなりの警備員が同乗していた。フォックス・ニュースによれば、列車は「少なくとも一度、追加警備を迎えに行った以外は、はっきりしない理由で何度か停車した」後、約10時間後にキーウに到着した


キーウに向かう列車内のジョー・バイデン米国大統領(右)とジェイク・サリバン国家安全保障顧問。 AP Photo/ Evan Vucci


AP Photo/ Evan Vucci

 ウクライナが紛争に巻き込まれて以来、欧米の政府関係者が首都を訪れる際には、列車が常套手段となっている。バイデンは鉄道が好きなことでよく知られており、歴代の大統領も鉄道が政治的なキャリアに一役買ってきた。そのため、この歴史的な訪問には、鉄道という交通手段がぴったりだった。


キーウに列車で到着したジョー・バイデン米大統領 AP Photo/Evan Vucci


 バイデン訪問を取り巻く秘密主義は理解できるものの、過去24時間の間に、バイデンまたはハリス副大統領の訪問が差し迫っていることを示す兆候が多数あった。ハリスは、昨日終了したミュンヘン安全保障会議のため、ドイツに到着していた。C-32Aでドイツに向かった彼女の存在は、ある意味でバイデン訪問を援護するものであった。C-32Aが予備機として投入されたが、関係者やその他の人物を追加で呼び寄せるため、ここまで大規模な旅行をサポートすることは前代未聞だ。

 バイデンを最初にポーランドに運んだのは、C-32A特殊空挺任務(SAM)輸送機だった。オープンソースの飛行追跡データは、昨日早朝、ワシントンDC郊外のアンドリュース統合基地を出発し、ヨーロッパに向かうコールサインSAM060を使用した同機を捉えていた。Fox Newsによれば、アンドリュース基地では、「飛行機はシェードを引いて駐機場から離れた格納庫の横に暗闇の中で駐機し、バイデンの到着を待っていた」そうだ。

 AP通信によると、ドイツで給油した後、乗員はポーランドとウクライナ国境に近いRzeszów空港への短い移動のためにトランスポンダをオフにした。ルツェズフ空港は、ウクライナに向かう米国や外国の軍事援助の主要な中継地だ。

 同機は、副大統領や他の米国高官の移動によく使われるが、様々な理由からエアフォース・ワンの役割で採用されることが多い。

 ポーランドの東部ウクライナとの国境付近で、訪問までの数時間、オンライン闘争トラッカーは他の空中活動の異常な多さを検知していた。、E-3セントリー空中警戒管制システム(AWACS)レーダー機のペア(コールサインNOVA01と02)が、国境のウクライナ側の活動を監視できる地域のポーランド領空に駐機していた。また、米空軍のRC-135Wリベット・ジョイント、米海軍のEP-3EアリエスII、米軍のARTEMISジェット、スウェーデンのS 102Bコルペンなど、さまざまな情報収集機がウクライナ国境付近で活動していた。

これほどの数ではないものの、各型機はこの地域で定期的に運用されているが、特にE-3は注目に値する。その他、C-17やKC-135空中給油タンカーなど米軍機がこの地域を飛行しているのが追跡された。ただしこれは追跡可能な航空機だけで、戦闘機などの米軍戦術機や一部のヘリコプターなど、追跡不可能な航空機も多数存在する。

 今朝早く、アメリカ大統領のウクライナ訪問の可能性について、より直接的な噂が流れ始めた。ソーシャルメディアに投稿されたビデオでは、大きな車の行列が現れる前に、キーウのいくつかの主要道路が閉鎖される異様な様子が映し出されていた。キャラバンは、米国大統領車列と同じような特徴を持っていたが、主役をサポートする要素はなかった。そのため、このような作戦にはリスクが伴うが、そのような要素を含めれば、間違いなく輸送隊であることが分かるだろう。

 少なくともバイデンがキーウで使用した車両は、何の変哲もない白のトヨタ製装甲SUVであった。彼はこの車でウクライナ大統領の公邸であるマリインスキー宮殿に到着した。この車のナンバープレートから、ウクライナ政府のものである可能性が高い。

 フィナー国家安全保障担当副顧問は、本日の記者会見で、今回の訪問のロジスティックスは、「ウクライナに軍の拠点がなく、アフガニスタンやイラクでの大統領の戦時訪問時の大規模作戦に比べ、非常に軽い大使館の存在」によって大きく決定されたと指摘した。

 ホワイトハウスはさらに、米大統領が安全にキーウを訪問できるようにするためのプロセスを、「論理的に複雑で困難」と表現した。ホワイトハウスのケイト・ベディングフィールド広報部長によると、「このような活発な紛争地域への米大統領の訪問は前例がなく、(中略)非常に慎重な計画が必要だった」という。

 イラクやアフガニスタン含む戦地への米大統領訪問は過去にもあったが、これらには少なくとも米軍が現地にしっかり駐留し、重要インフラを統制している利点があった。何より、これらの場所では、空は米国が完全に支配していたのかもしれない。しかし、ウクライナでは、脅威が無数に存在する。

大統領の移動の警備を行うため、改造したピックアップトラックに立つ米軍特殊作戦部隊員。 OLIVIER DOULIERY/AFP via Getty Images

OLIVIER DOULIERY/AFP via Getty Images


 欧米高官がウクライナに飛ぶのはリスクが高すぎるという事実は、バイデン訪問を計画する側にさらなるハードルとなったことだろう。より一般的な大統領の海外出張や、副大統領をはじめとする米国高官の訪問に先立ち、車両やその他の戦力保護資産は、軍の貨物機で運ばれてくる。車列を使用する場合でも、マリーンワンのヘリコプターが常に待機している。大統領を避難のきっかけとなった出来事の震源地から遠く離れた場所へ連れ出すため、警戒態勢のまま待機しているのだ。このようなことは、国内はもとより、特に国際的な停車駅のほとんどで起こっている。

 2022年9月に英国で行われたエリザベス2世の葬儀へのバイデンの出席と、カマラ・ハリス副大統領の最近のドイツ訪問に先立ち到着した先遣隊の様子で、こうした作戦の典型的な範囲と規模がわかる。

 数カ月にわたり計画していたとしても、バイデンのキーウ訪問には明らかなリスクがあった。バイデンが滞在中に空襲警報が鳴り響いたことは、ウクライナ首都が依然としてロシアの空爆やミサイル攻撃の脅威下にあることを浮き彫りにした。

 何がきっかけでサイレンが鳴ったのかは、すぐには分からない。ロシアが隣国ベラルーシの空軍基地から、キンザル弾道ミサイルを搭載可能なMiG-31Kフォックスハウンド戦闘機を発進させた可能性が指摘されている。未確認情報によると、戦闘機は現地時間午前11時30分ごろに離陸し、約2時間後に着陸した。バイデン訪問中、ロシアの兵器がキーウに向けられた兆候はない。

 私たちが目にしないのは、この作戦に参加しなければならなかった膨大な量の独自の不測事態対応計画であり、その一部はおそらく前例のないものだっただろう。国境沿いには、大規模な脅威が生じた場合にウクライナに移動できるよう、戦術的な航空兵力の主要パッケージが用意されていたと考えるのが自然だ。ここには高度な対空・空対地能力が含まれるはずだ。

 そして最大の難関は、万が一の事態に備えた大統領の撤収である。キーウはNATO国境から何百マイルも離れている。このような事態を想定し、特殊作戦用機材とオペレーターをフルパッケージで待機させておく必要があった。CV-22オスプレイは、速度性能、航続距離、防御装置、通信、積載能力から、主要なプラットフォームだったはずだ。このような事態に備えて、米軍特殊作戦部隊が反応時間を短縮するためにウクライナ国内に一時的に待機していた可能性は十分にあるが、現時点ではその証拠はない。

 また、米国がウクライナに贈った元アフガニスタンのMi-17ヘリコプター(米国特殊作戦部隊やCIAの上層部が限定的に使用しているタイプ)のような現地航空機を、有事の脱出プラットフォームとして投入した可能性もある。ウクライナ政府関係者は、過去にこの地域で機密性の高い旅行をする際に、自ら他の手配を利用したことがある。いずれにせよ、キーウだけでなく、長時間の列車移動を含む大統領の全行程で危機対応の必要性がある

 それから、バイデンの首都での公開移動には、ちょうど対無人航空機システム(C-UAS)パッケージが存在していたはずだ。武装小型ドローンやうろつき型装備の脅威は、トップとは言わないまでも、大きな懸念事項であったと思われる。

 この作戦を成功させるため必要な人材、ハードウェア、能力を挙げればきりがない。キーウでの作戦の足跡は非常に軽微に見えたが、このようなミッションを支えるトータルパッケージは、決してそうではない。

 通常の大統領輸送ミッションはバレエのようなものだが、海外ミッションは特に複雑である。今回のミッションは、その複雑さと創造的なリスク軽減の必要性という点で、他に類を見ないものであったろう。

 バイデン大統領はその後、ウクライナを離れ、ポーランドの首都ワルシャワに移動している。

 ともあれ、ロシアが全面的な侵攻を開始してから1年が経過したこの時期に、バイデン大統領が非常に公然とゼレンスキーと会談し、キーウの街を歩き、米国の継続的な支援を約束したことの象徴的な意味は大きい。さらに、バイデン大統領はこの機会に、ウクライナに対して約4億6000万ドル相当の新たな大規模な軍事支援を発表した。

 この新たな支援には、ブラッドレー戦闘車(M7)の特殊型が初めて含まれ、砲撃作戦を支援するため設計されたものだ。また、砲弾やロケット弾多数、ジャベリン対戦車誘導弾、型式不明の防空レーダーなども含まれる。

 サリバン国家安全保障顧問によると、バイデン大統領はゼレンスキー大統領と進行中の戦争のすべての側面について話す機会があったとし、「両名は、戦場という観点から、今後数ヶ月について、そして戦場で成功するためウクライナが必要とする能力について話すことに時間を費やした」。

 東ウクライナでロシアが再び攻勢をかけていることが明らかになる中、砲弾問題は今特に切実な問題だ。ブリュッセルで開催中の欧州の外相会議でも議論されている。

 EUの外務・安全保障政策担当上級代表であるジョセップ・ボレルは、ブリュッセル会議に先立ち、「最も緊急の問題だ」と述べた。「失敗すれば、戦争の結果が危うくなる」とも述べた。

 エストニアのカジャ・カラス首相が提案した、EU諸国が共同でウクライナに弾薬を提供する案も議題となった。

 バイデンは本日、米国の新たな支援に加え、ロシア軍を支援していると考えられる企業への規制強化を含むロシアへの追加制裁を今週末に発表すると述べた。

 さらに言えば、明日にはプーチン大統領がウクライナ戦争の最新情報を含む重要演説を行う予定であり、再びロシアに注目が集まる。当初、ロシア国民には「特別軍事作戦」と婉曲的に説明されていたが、クレムリンは現在、この紛争を米国を筆頭とするNATOや西側諸国に対する代理戦争と位置付ける傾向が強まっている。

 米国政府はキーウへの武器供与にサインをし続けているため、バイデンの今日の発表がプーチン大統領の演説に登場する可能性は高いと思われる。また、バイデン大統領のウクライナ訪問を阻止しようとする姿勢が見えないという批判が国内で出はじめているため、プーチンがこの機会に直接反論する可能性もある。

 少なくともロシアの国営テレビ局は、プーチンが安全保障を提供しないと判断すれば、バイデン大統領訪問を中止させることもできたはずだ、とすでに断言している。

バイデン氏のウクライナ訪問は、長い時間をかけて慎重に計画された結果であり、ウクライナをはるかに超えたところで反響を呼んでいることは明らかである。


更新。午後9時30分(日本時間)

 オンライン飛行追跡ソフトによると、米空軍の大統領専用機VC-25A2機のうち1機と、E-4Bナイトウォッチ「ドゥームズデイプレーン」がアンドリュース空軍基地から出発した。大西洋を横断するルートで、バイデン大統領とその側近を迎えにポーランドへ向かうようだ。

 空軍は4機のE-4Bを保有しており、高度な専門性と生存能力を備えた空中指揮所として機能している。大統領に有事の際のバックアップとして、国家司令部(NCA)と呼ばれる仕組みで核攻撃を開始できる空中司令塔となる。そのため、ナイトウォッチの1機は通常、大統領が海外に飛ぶ際に随伴する。

 バイデンはすでに2月20日から22日にかけてポーランドを訪問し、ポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相と会談する予定だった。ポーランドに常駐する米軍部隊を増やすなど、米軍の戦力態勢を変更する可能性や、その他の米ポーランドの軍事協力が議題に上る見通しだ。■


The Historic High-Stakes Operation That Brought Biden To Kyiv

BYJOSEPH TREVITHICK, THOMAS NEWDICK, TYLER ROGOWAY|PUBLISHED FEB 20, 2023 7:48 PM

THE WAR ZONE


台湾が陥落すればこうなる。なぜ、台湾の自由と独立を守ることが西側世界に最重要なのかを理解する。

 


ミュレーションや卓上演習で、中国が台湾を攻撃したらどのような事態になるかがわかる。しかし、なぜ台湾が重要で、防衛する価値があるのかについては、ほとんど語られていない。新しい研究では、もし台湾を失ったらアメリカは何を失うのか、その次に何が起こるのかを検証している。

まず知るべきことは、台湾はいまや非常に大きな問題であるということだ。アメリカの政治・軍事の指導層は、台湾海峡が世界の戦略的中心地であるとの確信を深めている。これほど構造的に不安定、政治的に厄介、世界の超大国を戦争に引きずり込む可能性の高い一触即発の地点は他にない。

第二に、侵略はもはや考えられない事態ではないことだ。習近平主席は台湾政府を消滅させる意思を表明している。多くの証拠が、中国が恐ろしいことをする準備を整えていることを示唆している。ワシントンでは、習近平が台湾を攻撃するかどうかという問題ではなく、いつ、どのように攻撃するかの懸念が高まっている。

最後まで考え抜く

紛争は避けられないものではないし、中国上層部が鉄則のスケジュールで行動しているかでは議論の余地がある。習近平は、台湾併合に抵抗する台湾政府を崩壊させる強制的な作戦が成功すると確信しているのだろう。

台湾防衛の議論で過小評価されているのは、終戦後に何が起こるかという点である。中華人民共和国が台湾征服に成功したら、何が起こるのか。その場合、米国の安全保障にどのような影響があるのだろうか。

もちろん、戦争がどう展開し、米国が何をしたか(あるいはしなかったか)に大きく左右されるが、どのようになったとしても、厄介な意味は不変だろう。台湾は、その並外れた政治的性格、独自の軍事・情報能力、グローバルなハイテク供給網における重要な役割、東アジアの中心という地理的条件などにより、アメリカにとって極めて大きな戦略的価値を持つ国なのだ。

中華民国(台湾)がどのように中国共産党に取り込まれるかにかかわらず、世界は主要民主主義国家を失い、地域の安全保障構造は変化する。これは、アメリカの外交史上、トラウマになるような、そしておそらく破滅的な出来事となる。     

民主主義が滅びるとき 

台湾は世界で最も自由な国のトップ10にランクインしている。2022年、フリーダムハウスは世界の自由度を測る指標として、台湾に100点満点中94点の総合スコアを与えた(これに対し、米国は83点、中国はどん底に近いランク)。米国はじめとする多くの国は台湾と強固な関係を築いており、台湾は民主主義世界の各国政府から、責任感があり、志を同じくするパートナーであり、良い統治のモデルだと広く認められている。 

しかし、台湾が征服されれば、中国の一党独裁による占領地となる。台湾という自由で独立した国は消滅し、抑圧的な警察国家が出現する。

共産党は、台湾住民に対して恐怖政治を展開すると予想される。新疆ウイグル自治区やチベットに見られるような大規模な監視・統制システムが導入される可能性が高い。北京直轄の地方代理政府が台湾を統治し、かつて中華民国政府が統治していた地域はすべて厳しく取り締まられるだろう。

最も優れた民主主義国家を失った国際社会は、非自由主義勢力が台頭し、権威主義の蔓延を強く意識することになる。台湾を失えば、多くの政府が自信喪失に陥る可能性がある。中国のマルクス・レーニン主義モデルが優れている、あるいは少なくとも優勢であり、自由民主主義国は北京が作り出そうとする新しい世界秩序に対抗できないという結論を下す観察者も出現するかもしれない。

軍事・情報能力の喪失

台湾が陥落した場合、軍事基地と情報施設は中国共産党に占領される。中国海軍は台湾の水深の深い港に艦船や潜水艦の基地を置くと予想される。台湾東海岸の海軍基地は、中国共産党にとって貴重であり、歴史上初めて太平洋に無制限にアクセスできるようになる。

併合後、台湾に拠点を置く中国の爆撃機とミサイル部隊は、米軍を奇襲の危険にさらすだろう。台湾と澎湖諸島に拠点を置く中国海軍の水上戦闘部隊と航空部隊は、日本と韓国の主要な海上通信路を遮断することで封鎖の脅威を与える。南シナ海の先端は「栓」され、PLAの弾道ミサイル潜水艦に海上砦を提供し、中国の東南アジアでの軍事的支配をさらに強化することになる。

米国は重要な情報収集へのアクセスを失い、米情報機関は中国への主要な窓を失う。台湾は中国語の言語訓練と中国に関するあらゆる情報源として、かけがえのない存在なのだ。台湾がなければ、国防総省やCIAは欠陥のある分析資料を作成し始め、政策立案者は情報に乏しく、戦略的なミスを犯しやすくなる可能性がある。中国が台湾侵攻を成功させた場合、米国の情報面での失敗が劇的に増加する可能性がある。       

サプライチェーンの崩壊

今日、台湾は米国にとって第8位の貿易相手国で、知識集約型経済の柱だ。 両岸戦争が起きれば、アメリカ国民何百万人が職を失い、何兆ドルが失われる可能性がある。台湾喪失は米国経済の健全性に深く影響し、米国および全世界の経済恐慌の引き金となる可能性がある。

最近の報告書では、チップ部門、相手先商標製品製造、相手先商標設計製造、技術関連材料生産の中心拠点としての台湾の優位性から、「台湾は技術のエコシステム全体において最も重要なリンク」と断言されている。言い換えれば、台湾を制するものがインターネットと世界経済の未来を制する。

地政学の厳しい現実

台湾を占領することで、中国政府は暴力的に強力な勢力圏をアジアに切り開くことになる。国際法、民族自決の理念、国家主権の原則に重大な影響を与える可能性がある。

台湾の陥落は、米国の世界的な外交・軍事的リーダーシップに対する認識を損ない、米国の同盟システムや国連システムを緊張させる(場合によっては崩壊させる)可能性がある。中国は世界で最も強力な国家であり、21世紀を動かす原動力と見なされるであろう。

北京が中央集権的で権威主義的な新しい世界秩序というビジョンに向かって歩みを進めると、各国の指導者は恐怖を感じるだろう。核軍拡競争が加速され、制御不能に陥るのはほぼ確実である。帝国の新時代となるだろう。そして、ジャングルが支配する時代となる。

アメリカに決定権がある

なぜ北京の台湾攻撃を阻止することが重要なのかを理解するためには、失敗した場合の結果を注意深く考慮する必要がある。厳しいシナリオの存在に直面することは、最初のステップに過ぎない。次のステップは、予防可能な戦争に発展する前に、侵略を阻止する行動をとることである。

台湾の戦略的重要性に鑑み、米政府は、少なくとも1500人の特殊作戦部隊と海兵隊が、訓練、助言、連絡の目的で台湾にかなりのプレゼンスを確立する利点をもっと考慮すべきである。船舶の寄港、台湾海峡の共同パトロール、ワシントンから台湾への定期的な上級指導者派遣などは、低コストで大きな効果を上げる追加的なオプションである。習近平の計算を狂わせ、自信を失わせる可能性があるのは、大胆な行動だけである。

ワシントンが最もやってはいけないことは、北京の「レッドライン」を信用しすぎることだ。レッドラインは国際法上の根拠がなく、台湾がますます脆弱になり、征服しやすくなるように意図的に作られたものなのだ。

自国の重要な利益を守るために、米指導者は中国政府を挫折させなければならない。台湾の陥落はアメリカにとって間違いなく許されないことだ。■

If Taiwan Falls, What Happens to America? - 19FortyFive

ByIan Easton

Author Expertise and Experience    

Ian Easton is a senior director at the Project 2049 Institute and author of The Final Struggle: Inside China’s Global Strategy. This article draws heavily from The World After Taiwan’s Fall, edited by David Santoro and Ralph Cossa. Reprinted with permission.