2017年6月25日日曜日

ワナクライは北朝鮮による国家サイバー犯罪だ



やっぱりというべきなのか、これでまた北朝鮮が犯罪国家であることがわかります。麻薬、密輸、偽札に加え、サイバー犯罪まで国家主導で行うような国家は存在を許されません。

The NSA has linked the WannaCry computer worm to North Korea ワナクライコンピュータウォームの背後に北朝鮮の関与をNSAが指摘

By Ellen Nakashima June 14

NSA国家安全保障局がワナクライ・コンピュータウォームと北朝鮮政府の関連付けをした。先月のワナクライ攻撃で150か国300千人が被害にあっている。
  1. 戦術手口や標的から北朝鮮のスパイ組織偵察総局(RGB)の関与を結論付けた。
  2. 評価分析でワナクライから「サイバー実行犯」にRGBの「支援」が疑われるとしている。ワナクライはNSAが作成したハッキングツールを入手して作成されたウォームで自ら闇のブローカー集団を自称する犯人がネットにしのびこませた。
  3. ランサムウェアと組み合わされ被害者のコンピュータ上のデータを勝手に暗号化しアクセス再開に身代金を要求する。
  4. ワナクライを使う北朝鮮の目的が資金調達なのは明白だが、分析専門家によればうまく行っていないという。ハッカー集団はビットコインで140千ドルを集めたが、今のところ現金化の動きはない。作業上のエラーで取引が追跡されやすくなっているためで各国の法執行機関も対策を講じている。
  5. そのためオンライン通貨に手を付けられないのだとサイバー保安企業の設立者ジェイク・ウィリアムズは説明している。「印をつけた紙幣を銀行強盗で得たようなもの」
  6. 評価分析は断定しないが、大量の証拠から平壌の関与が浮上している。コンピュータのインターネット・プロトコルアドレス多数は中国国内のものだがRGBが使用するアドレスと一致するし、その他西側機関が集めた情報とも一致する。ワナクライの背後にいるハッカー集団は「ラザルスグループ」と呼ばれる。
  7. ワナクライの原型は今春に西側以外の国の銀行で見つかったと情報機関は指摘している。このデータポイントが北朝鮮による評価の基礎となったという。
  8. このつながりからオバマ、トランプ両政権が北朝鮮の動きを封じ込めようとしているものの広範囲なサイバー攻撃にやむ気配がない理由がわかる。
  9. 「今回判明したのは...混乱を巻き起こすのに秀才は必要ないということです」と説明するのはマイケル・サルメイヤー(ハーヴァード大ケネディ校でサイバー保安体制研究を主宰)だ。「あの国は実行意思と能力を誇示しているのです」
  10. NSAはコメントを避けている。
  11. 北朝鮮は世界で最も閉鎖的な国であり、コンピュータの一般利用は極めて限定的だ。それでもサイバー戦力を養成し韓国を妨害しつつ歳入を確保し政権を維持している。
  12. 保安調査専門部門はアジア各地の銀行を襲ったサイバー襲撃事件の真犯人は北朝鮮と見ている。バングラデシュ銀行では同行のグローバル支払いメッセージシステムが悪用され81百万ドルが奪われた。
  13. 国家がサイバーツールで銀行強盗をするという事実は「サイバー戦の面倒な新局面」とNSA副局長(当時)リチャード・レジェットが今年3月に述べている。レジェットは北朝鮮の国名こそ口にしなかったが、言わんとしていたことは明瞭だ。
  14. 北朝鮮は2014年にはソニーピクチャーズエンターテインメントをハッキングし、金正恩を戯画化した同社作品の公開中止を求めた。ハッカー集団は同社内のコンピュータを使用できなくし、社内メールを公開し同社を狼狽させた。オバマ政権は言論表現の自由への侵害と受け止め、平壌の攻撃と公然と非難し経済制裁の新措置を発表した。
  15. ワナクライの原型となったNSA製のサイバーツールは同局がエターナルブルーと呼称し、マイクロソフト製のウィンドウズOSの欠陥を悪用し相手のコンピュータへアクセスするものだ。
  16. マイクロソフトはNSAから通知を受け、ソフトウェア修正パッチを3月に発表しているが、米国も含む世界各地でアップデートせず標的になった事例が発生した。サイバー防衛体制の整備を目指す非営利団体サイバースレットアライアンスを主宰するマイケル・ダニエルは米国内でも「相当数の」標的が生まれたと述べている。
  17. マイクロソフトは論評を避けている。
  18. 上記ウィリアムズは今回のコードを細かく分析し、ランサムウェアはテスト段階で誤って外部に漏れたとみている。これでコードに欠陥があることの説明がつく。現状では身代金を誰が支払ったのか攻撃側には見えないとウィリアムズは説明している。
  19. とはいえ、ウィリアムズは「(ハッキングツールを)武器に変え政府の後ろ盾を得て身代金を手に入れた事案です。もし北朝鮮が自由に実施できるのなら他国も同じことをするでしょう。サイバー脅威の図式が大きく変わってしまいます」と述べている。
  20. ダニエルはオバマ政権でサイバー保安調整官を務めており、「北朝鮮を全面的に」物理的にもサイバー分野でも「封じ込める」必要があると指摘。
  21. 米連邦検察当局は北朝鮮をバングラデシュ銀行強奪の犯人と立証し起訴にもっていけそうだ。司法省は起訴で海外ハッカーを摘発しており、中国、イランも対象になっている。
  22. アダム・B・シフ下院議員(民、カリフォーニア)は下院情報委員会のトップ議員で2016年大統領選挙へのロシア関与を調査している。同議員はソニー事件の後で取ったオバマ政権の対応は不十分だったと見ている。「ロシアは事態を見ながら米国は対応してこない、サイバー攻撃しても逃げ切れると考えたのだろう」と述べている。■



2017年6月24日土曜日

★日本向けオスプレイ引き渡し開始は今年9月



なるほど日本のオスプレイ受入れ準備が着々と進んでいるのですね。いずも搭載が本当なら陸上海上両自衛隊が最初から統合運用されることになりますね。しかし最近鳴りを潜めているオスプレイ反対派(論拠が崩れているので今や感情的反発としか思えません)がどんなレトリックを繰り出してくるか注目ですね。東シナ海で運用すれば某国も黙っていませんから反対派を露骨に支援してくるかもしれません。
A U.S. Marine V-22 Osprey ascends the USS Bataan in Aqaba, Jordan, to begin a demo flight in support of Eager Lion 2017. (U.S. Army photo/Sgt. Mickey A. Miller)
米海軍向けV-22がUSSバターンから発艦している。イーガーライオン2017の実証でヨルダンで実施した。 (U.S. Army photo/Sgt. Mickey A. Miller)

 

More Countries May Buy V-22 Osprey as Japan, US Navy Get Aircraft 日本、米海軍に続きV-22導入国が増える


 Military.com | 22 Jun 2017 | by Hope Hodge Seck
SALON DU BOURGET, France -- 日本は9月に発注中のV-22オスプレイ17機の初号機を受領し、同機初の海外運用国になる。他国も控えている。
  1. パリ航空ショー会場で海兵隊でV-22事業を担当するダン・ロビンソン大佐は日本以外にも同機導入を目指す国との契約締結がまじかとMilitary.comに述べ、オスプレイの第三期複数年度調達契約で今年中の合意形成を期待しているという。
  2. 「同機の性能への多方面が関心を示しており、垂直離着陸しながら高速長距離飛行できる性能が注目を集めている。各種ミッションの実施に役立ちますからね」(ロビンソン大佐)「そのため海兵隊での活用状況、空軍の事例、さらに海軍が艦上運用をする様子に関心が高まっている状況です」
  3. 日本はオスプレイをヘリコプター空母いずもに搭載し、東シナ海の領土防衛に投入するとの報道がある。日本は4機を第二調達ロットから、残りを第三ロットで導入する。
  4. 米海軍はオスプレイをCMV-22として一部改修し48機導入する予定で燃料搭載量を増やし航続距離延長を狙う。このうち44機が老朽化してきたC-2グレイハウンド貨物人員輸送機と交代するがMilitary.comが入手した資料によれば救難や特殊作戦にも投入する構想だとわかる。
  5. 海軍向けオスプレイは複数年度調達の承認を受け次第2018年度に調達予定で2020年引き渡しとなる。部隊運用開始はその翌年だ。海軍のオスプレイパイロット訓練は第204海兵隊中型ティルトローター訓練飛行隊の本拠地ノースカロライナ州ニューリヴァーで行う。日本の飛行要員は同基地で訓練を開始している。
  6. オスプレイは開発初期段階で重大事故を繰り返し悪評判に苦しんだが、関係者は今や同機が使い勝手の良い働き手になっており、海兵隊航空機材で最高の安全実績を誇っているという。
  7. ロビンソン大佐も「非常に興奮しています。海軍が艦載運用を始め海外販売も軌道に乗り大きく進展してきました。V-22の将来が開けてきました。V-22なら必要なミッションが可能となります」と語った。■
-- Hope Hodge Seck can be reached at hope.seck@military.com. Follow her on Twitter at @HopeSeck.



パリ航空ショー:エンブラエルの輸送給油機KC-390がデビュー




Source: IHS Markit/Patrick Allen

Paris Air Show 2017: Embraer's KC-390 makes Paris Air Show debut エンブラエルKC-390がパリ航空ショーデビュー

 Peter Felstead, Le Bourget - IHS Jane's Defence Weekly
22 June 2017
  
  1. エンブラエルKC-390空中給油輸送機がパリ航空ショーでデビューし、試作二号機が毎日飛行展示を行っている。
  2. 報道陣に会場で同機の開発状況を説明したエンブラエル幹部のポール・ガスタオ・シルヴァによれば飛行試験用2機の累計飛行時間は1,000時間を超えており、テスト飛行で「設計の正しさが証明できた」という。
  3. ブラジル空軍 (Força Aérea Brasileira: FAB)が28機を発注しており、来年から引き渡しを開始するとシルヴァは述べた。FAB向け二号機、三号機も生産段階にあるという。KC-390のテスト用三号機、四号機は地上/静止試験に投入中だ。
  4. シルヴァによればKC-390は今年後半に「初期作戦水準通過」をし、来年に「完全作戦水準通過」になるという。ただしFABのKC-390部隊がそのまま稼働可能となるわけではない。来年にFABに引き渡すのは二機で、三号機は2019年になるとシルヴァは説明し、その段階で「最終軍用水準」になるというからだ。ブラジルの予算問題二よりエンブラエルは当初より控えめな納入工期に変更している。
  5. KC-390開発は2009年にFAB契約を受けて始まった。2015年に試作機が初飛行し、同年から飛行テストが始まっていた。■

KC-390の諸元
エンジン:International Aero Engines V2500ターボファン双発
最高速度:470 kt (870 km/h)
最大貨物搭載量:26トン



2017年6月23日金曜日

ユマ基地海兵隊F-35Bがソフトウェア問題で飛行停止措置、ルーク基地F-35Aは飛行業務再開



Marine F-35s grounded due to software concerns

海兵隊F-35がソフトウェア問題で飛行停止中

 By: Aaron Mehta, June 22, 2017

http://www.defensenews.com/articles/post-uk-election-team-skytale-to-equip-british-military


WASHINGTON – ユマ海兵隊航空基地(アリゾナ)配備のF-35B共用打撃戦闘機が飛行を一時的に停止している。基幹支援システムの問題が原因とされる。
問題の核心部分は自動兵站情報システム(ALIS)であり、ALIS関連ソフトウェアはF-35に搭載されミッション立案から整備まで広く使われる重要部分だ。ALIS2.0.2が4月にF-35Aと海軍用F-35CにインストールされたがF-35B向けは遅れていた。
「第三海兵航空団司令マーク・ワイス少将はVMFA-211の飛行業務を一時的に中止し直近のALISソフトウェアアップグレード2.0.2ヴァージョンの手直しを待つこととした」と第三海兵航空団広報のカート・スタール少佐が声明発表している。「機体の安全に何ら問題はないが地上配備ALISシステムの正常作動を確認してから飛行業務を再開する」
スタール少佐はF-35事業管理室と主契約企業ロッキード・マーティンが技術要員を派遣しており、アップグレード関連問題を調べていると述べ、問題の核心は「整備コード部分が正しくシステムに反映されていないこと」と述べている。運航停止を最初に伝えたのは Inside the Navy だった。
F-35批判派は今回のソフトウェア問題に対して設計不備による遅延の追加事例というだろう。米空軍はルーク空軍基地のF-35Aの飛行停止措置を解除した。空軍機は6月9日から21日にかけ低酸素症がパイロットで見つかったため大事を取り地上待機していた。2011年以降で低酸素症関連の事例15件がF-35Aで見つかり、うち5件は先月に発生して飛行停止措置になっていた。
最大のF-35ユーザーの米空軍は今回の措置に対してソフトウェア不良で飛行停止措置になったことは承知していないと述べている。F-35開発室から本件に関するコメントは得られなかった。■
Jeff Schogol with Marine Corps Times contributed to this report.


パリ航空ショー:クフィールを米民間企業売り込みを図るイスラエル航空宇宙工業


アグレッサーを民間企業が飛ばすというのがいいですね。クフィールはロシア製戦闘機をシミュレートするのでしょう。アルゼンチンが機体を受領しなかったのは支払い能力の問題だったのでしょうか。

クフィール(写真後方)を運用するATAC他民間請負企業にIAIがアルゼンチン向けに製造した12機-14機の販売を働きかけている。Source: Textron

Paris Air Show 2017: IAI looks to offload unsold Argentinean Kfirs to US 'Red Air' training companies

パリ航空ショー2017:IAIが売れ残りアルゼンチン向けクフィールを米国「レッドエア」民間訓練企業向け売却を狙う

 Gareth Jennings, Paris - IHS Jane's Defence Weekly
20 June 2017
  1. イスラエル航空宇宙工業IAI)がクフィール戦闘機の米国向け販売を狙っている。アルゼンチン向けだった機体を「レッドエア」訓練機材として民間請負企業に売りたいとIAI幹部が6月20日にパリ航空ショー会場でJane'sに語った。
  2. IAIのLAHAV事業部長ベンジャミン・コーヘンによると同社は民間企業二社とクフィール12機から14機の販売交渉中だという。機材はアルゼンチン向けに製造されたが成約していなかった。
  3. 「販売先として『アグレッサー』訓練機を飛ばしている会社がいいと見ている。ATACは同型機を運用中で、ドラケンインターナショナルも候補だ」とし、ディスカヴァリーエアには接触していないが、候補になると述べた。
  4. アルゼンチン向けのクフィール売却は2014年に発表され、Jane's取材陣がテルアヴィヴ生産施設を訪問した際にアルゼンチン国旗があるのを見てCEOのジョセフ・ワイスの公表につながったもの。その時点でIAIはアルゼンチンが顧客であるかに言及を避けたが、コーヘンは声明文で同国向け商談が最終段階にあることを認めた。
  5. クフィールはコロンビア、エクアドル、スリランカで供用中でIAIは同機の改修型を各国向けに2013年発表した。ブロック60仕様の機材では「ゼロタイム」機体構造、システム、センサー、兵装でいずれも性能が向上しており、単座複座双方がある。■

歴史に残らなかった機体(11)ノースアメリカンF-108レイピア


北米の防空戦闘機構想がここで大きな曲がり角に来たことが分かります。以後米国は防空よりも攻撃力整備に注力していくのですね。一方で、この機体の当初の想定を見ると第二次大戦中の爆撃機掩護任務の思想が見えてきます。やはり前の戦争のイメージが後世を支配するのですね。いかにもアメリカ的なパワーで勝負するコンセプトとともに費用対効果を決定の根拠とするこれもアメリカ的な意思決定の在り方が見えてくる機体です。

 

The F-108 Could Have Been America's Mach 3 Cold War Super-Interceptor
F-108はマッハ3飛行可能の冷戦時スーパー迎撃機になるはずだった

June 18, 2017



  1. ソ連爆撃機の来襲を恐れた1950年代の米空軍は超音速迎撃機を開発しようとした。
  2. 実現していれば、マッハ3で高高度飛行する迎撃機は今日の戦闘機のスピード水準を大きく超えていただろう。
  3. 1949年に空軍が出した要求水準に対しリパブリックエイビエーションは1951年にXF-103ラムジェット戦闘機構想を提示した。翼を付けたロケットのような同機の最高速度はマッハ3で高度80千フィートまで上昇可能だった。この時点で亜音速のF-86セイバーとMiG-15が朝鮮上空で空戦を始めるところで現在の戦闘機でもマッハ2超の速度は出していない。
  4. だがXF-103は当時の技術水準のはるか先を狙いモックアップだけで開発中止になった。米空軍はあきらめなかった。
  5. 1955年に長距離迎撃戦闘機実験事業が始まった。1957年にノースアメリカンエイビエーションがXF-108開発契約を受注し、二名搭乗でマッハ3、千マイルの戦闘半径と最高高度70千フィートの性能を想定した。
  6. 偶然ではなく、マッハ3と上昇限度70千フィートは同社のXB-70ヴァルキリー戦略爆撃機構想と同じだった。XF-108はレイピアの名称がつきXB-70掩護の役割が想定された。いわれてみると両機種の外観には類似点があり、ジェネラルエレクトリックYJ93エンジンと乗員脱出用カプセルは共通だった。
  7. XF-108では長距離性能とヒューズ製AN/ASG-18レーダーの組合わせが注目され、後者は米国初のパルスドップラーレーダーで広域走査しながら個別目標をロックできるはずだった。
  8. F-108では「遠距離早期警戒(DEW)レーダーの穴を埋める」役目が期待されていたとデニス・ジェンキンスとトニー・ランディスが著作で述べている。「少数機を極地航空基地に展開し、十分な機数を滞空させればレーダー網の穴を埋められたはずだ。F-108は278千平方マイルとテキサス州より広い地域を走査できた」
  9. F-108はファルコン空対空ミサイル三発を搭載する空中レーダー基地になるはずだった。
  10. XF-103は技術の壁の前に破たんしたが、XF-108の場合は予算の壁が立ちふさがったといえる。アイゼンハワー大統領は空軍のF-108調達案(480機)の試算は40億ドル(現在の330億ドルに相当)高すぎると批判した。
  11. だがもっと重要なのは高速高高度飛行可能な迎撃戦闘機の構想そのものが問題になったことだ。1950年代末にICBMが有人爆撃機にかわり米国の脅威になりつつあった。国防予算を巡る論争の中で防空体制整備論は根拠を失った。
  12. XF-108は1959年9月に取り消しとなったが、XF-108の特徴は驚くほど外観が似ているA-5ヴィジランティに継承されたのですべてが消えたわけではない。ヴィジランティは米空母で運用可能な爆撃機として最大の外寸となりヴィエトナム戦で広く使われた。
  13. F-108が就役していれば米国は敏捷性に欠ける超高速大型機多数を運用し、ソ連爆撃機の阻止には(想像だが)有効だったろうがヴィエトナムの戦術用途には全く使いものにならず、操縦性と爆弾搭載量が重視された中で不満足な機体になっていたはずだ。現在の戦闘機各種は速力こそ劣るが、操縦性、センサー、ステルスが優れている。
  14. それでも1950年代にマッハ3戦闘機が出現していたら注目すべき成果(限定はあったはずだが)があらわれていただろう。■
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook.
Image: XF-108. Wikimedia Commons/Creative Commons


2017年6月22日木曜日

★★F-22生産再開の可能性は消滅




ラプターもそのうちに改修の限界、機体の限界に達するでしょう。如何せん機体数が少ないのでミッションで酷使されるでしょうから。次期戦闘機を開発するとしていますが、従来型戦闘機の形態である必要もなく、無人機の存在も無視できなくなってきます。なによりステルス性能を発揮するのに小型機では限界があります。そうなると空軍の中に歴然と残る戦闘機パイロットを頂点とする文化も消えていくのでしょうか。

An F-22 Raptor from Tyndall Air Force Base, Fla., sits on the flightline while a Raptor launches from the Tyndall runway Dec. 10, 2015, during Checkered Flag 16-1. (Photo: Senior Airman Sergio A. Gamboa)F-22ラプターがティンダル空軍基地フライトラインに見える。2015年12月のチェッカーフラッグ演習16-1にて。 (Photo: Senior Airman Sergio A. Gamboa)
The F-22 Fighter Jet Restart Is Dead: Study
F-22生産再開の芽消える報告書
Military.com | 21 Jun 2017 | by Oriana Pawlyk

ラプターファンには申し訳ないが、F-22生産再開の可能性はやはりない。だが最大の理由は費用以外と新しく出た報告書にある。
  1. 議会に提出された極秘報告によると米空軍は「F-22を新規生産した場合500億ドルとなり、一機当たり206百万ドルから216百万ドルの試算」とある。Military.comに21日関係者が語った。
  2. 「総額は生産再開の初期費用99億ドル、機体調達費404億ドルの構造だ」と空軍は説明している。
  3. 空軍長官ヘザー・ウィルソンが報告書を議会国防委員会に6月9日に送付した。下院軍事委員会航空地上小委員会が昨年空軍にロッキード・マーティンF-22を生産再開した場合の検討結果をまとめるよう求めていた。
  4. 「空軍にF-22生産ライン再開の予定はない。経済的運用面で実施に意味がない」と空軍報道官エミリー・グラボウスキ大尉が声明を発表した。
  5. 「航空優勢2030事業戦力実現チームで提唱する開発事業」に財源を振り向けたほうがよい大尉は述べている。
  6. 航空優勢2030構想とは高性能戦闘機、センサー、兵装を開発し予測が困難になる脅威環境の拡大に対応するもの。
  7. F-22生産再開となれば数十億ドル規模の予算が必要となるのは必然だ。
  8. 2010年のRand研究所報告ではF-22生産再開で75機製造した場合はインフレ調整後で200億ドルと試算していた。ここで想定したラプターは1990年代製のオリジナルではなく新型性能向上型だ。
  9. 「以前と同じ機体を作るのではないとさらに高額事業になります」と国防アナリストが3月に背景をMilitary.comに説明していた。「そうなると旧型F-22を新しく製造するのか、改良型機を作るのか選択することになる」
  10. Rand研究所の数字は粗い試算で小ロット生産を再開した想定だが、雇用費用、新規ステルス性能の統合、パイロット訓練等は含まない。
  11. そうなると結論はあきらか。F-35に賭けるしかない。
-- Oriana Pawlyk can be reached at oriana.pawlyk@military.com. Follow her on Twitter at@Oriana0214.


★★日本側が調べたフィッツジェラルド衝突事件の全体像



うーんACXクリスタルが円を描いた航行をしていたのは事故後に現場に戻るためだったようですね。事故発生時間そのもので混乱があったのは通信機能がとまっていたためのようです。ただしこれは日本側のまとめた途中経過で肝心の米海軍からはなにも情報開示がありませんので断定はできないと思います。事故はクリスタル側に非があったようですが、今後NYK含め関係者は相当の賠償責任を負いそうですね。イージス艦体制にひずみが出ると今後痛い影響が出そうです。

USS フィッツジェラルドの右舷の様子

Investigators Believe USS Fitzgerald Crew Fought Flooding For An Hour Before Distress Call Reached Help

遭難信号が出る一時間前にUSSフィッツジェラルド乗員が浸水を防いでいた。

 By: Sam LaGrone
June 21, 2017 8:28 PM


  1. 商船に衝突された誘導ミサイル駆逐艦の乗組員が艦の沈没を防ごうと懸命に努力しながら同艦から救援を求める第一報が発信されたのは事故発生一時間後であったと日本側捜査陣は理解している。
  2. 日本側捜査陣の推理ではUSSフィッツジェラルド(DDG-62)とフィリピン船籍の商船ACXクリスタルの衝突後、駆逐艦の通信機能が一時間停止し、その間に船体は四倍の大きさのある商船側は衝突に気付かず、現場に戻って初めて軍艦に衝突したと気づいている。日本側による捜査に詳しい複数筋がUSNI Newsに6月21日明らかにした。
  3. 捜査陣はクリスタルは東京に向けオートパイロットを作動し、乗組員は注意を払わずあるいは就寝中に駆逐艦右舷に現地時間1:30 AMごろに衝突したとみている。クリスタル乗組員は何かにぶつかったと感じ航路からUターンし衝突地点に18ノットで戻りフィッツジェラルドを発見し、救難信号を2:30 AMごろに送信した。米海軍は事故発生時刻と救難信号を同時刻の2:30 AMごろと述べていた。
  4. クリスタル左舷船首の衝突を受けた駆逐艦は通常の形で日本沿海部を通過中だったとUSNI Newsは把握している。クリスタルの船首が駆逐艦上部構造物数か所を破壊し、艦長ブライス・ベンソン中佐の居室もその一つだった。
  5. 衝突で艦長居室に穴があいたほか鋼板がずれベンソン館長は「艦体にはさまれ艦の外に体の一部が押された」と損傷を見た水兵がUSNI Newsに述べている。「命があって幸運」
衝突後のブライス・ベンソン中佐の居室の様子。外部が見える.

  1. フィッツジェラルド乗組員は艦長室のドアを曲げ戻しベンソン艦長を引っ張り出し艦内部に戻そうとした。その後艦長と水兵二名が日本のヘリコプターで横須賀の海軍病院へ搬送された。
  2. 艦長居室とドアの写真を見ると鉄鋼材料が曲がり外が見えており、右舷外側の写真では居室がほぼ全部つぶれているのがわかる。
  3. 他方で甲板下ではクリスタルのバルバスバウにより10フィート四方から14フィート四方の穴が喫水線下にあき、機械室と兵員居室が浸水しはじめた。
  4. 第七艦隊司令官ジョセフ・オーコイン中将から衝突で損傷を受けた区画の説明があった。

USSフィッツジェラルド図面でACXクリスタル衝突で生じた損害箇所がわかる

  1. 「区画三つが大きな損害を受けた。
  2. 「うち機械室がひとつ、居室がふっつで、乗組員116名用の居室だった」
  3. 浸水を食い止めるため水密扉が閉められ水兵7名が居室に閉じ込められたと海軍は遺族に説明している。
  4. ただし当直が衝突警報または総員配置をクリスタル衝突前に鳴らしていたかは不明だ。
  5. 区画で損害が出たことに加えフィッツジェラルドの通信機能がほぼ一時間にわたり機能停止した。乗組員は予備のイリジウム衛星通信を使用可能にし救援を求めた頃、クリスタルが現場に戻り別個に遭難信号を発したと乗組員がUSNI Newsに語った。
A photo compilation depicting the seven sailors who died during June 17, 2017 collision between a merchant ship and the guided missile destroyer USS Fitzgerald. USNI News Image
事故で死亡した水兵7名。 USNI News Image

  1. 米海軍捜査陣は調査内容で口を閉ざしており、海軍内部でも同様だが、USNI Newsは海上保安庁による調査からフィッツジェラルドは衝突時に通常通りの航行中だったと理解しベンソン艦長が両船の接近時に艦橋に居なかった理由の疑問が生まれている。
  2. 第七艦隊は月曜日から海軍法務部マニュアル(JAGMAN)に従った捜査を開始しており、衝突時の事実を確認中で別個に米海軍安全規則による調査も始まっている。
  3. 衝突から5日たちフィッツジェラルドではこれ以上の損害を食い止める作業が続いている。クリスタル衝突の衝撃で浸水とともに艦体に凹みが生じたがねじれも発生している。ポンプ排水で艦を浮かしている状態だ。

  1. 海軍海上システムズ本部は日本で修理が可能か米本土に移送し修理すべきかを見極めようとしている。乗組員は衝突のショックから回復すべく休暇を与えられている。その間同艦は横須賀在港中の他艦が担当すると海軍当局はUSNI Newsに説明。
  2. 海軍作戦部長ジョン・リチャードソン大将が海軍最上級兵曹長スティーヴ・ジョルダーノと横須賀に赴きフィッツジェラルド乗組員および家族と話している。■



パリ航空ショー P-1展示をした日本の軍用装備輸出の方向性



 

今一内容がわかりにくいのですが、中古機の再生輸出で米国の力を借りることなのか、P-1等新型機の輸出で米国等の技術力を応用するのでしょうか。いずれにせよ輸出で安全保障上のつながりが海外で生まれればよいニュースとなりますね。また内向きだけでよかった日本の防衛産業、行政の姿勢が外向きに変わることも長期に見ればよい効果を生みますが、中国は神経をいらだたせ、日本国内でも同調する動きが足を引っ張ろうとしてくるのでしょうね。

 

Japan looks to US to partner on used aircraft resale

日本が中古機材の対外販売で米国との提携を模索中

By: Jill Aitoro, June 21, 2017 (Photo Credit: TED ALJIBE/AFP/Getty Images)
  1. 防衛装備輸出の拡大を目指す日本が東南アジア向け中古機輸出で米国の協力を求めようとしている。
  2. 今回の方針はTC-90をフィリピンに供与する事業が成功したことから出てきたもので、フィリピンはイスラム国との戦闘に同機を投入しているといわれる。事業成立のため防衛装備庁の吉田孝弘事業監理官(航空機担当)はフィリピンを8回訪問したという。
  3. 「中古機のASEAN向け輸出は支援をパッケージにいして可能性を探って生きた。国名は出せないが数カ国と対話を続けており、米国をまじえASEANとの協力関係を模索する」と吉田はパリ航空ショーでDefense Newsに語った。「TC-90はすでに現地に引き渡し済みだ。次は用途廃止済みヘリコプター含む機材の部品輸出を目指している」
  4. この背景に防衛産業の輸出基盤を作る狙いがあり、日本が進める戦闘機開発事業も関係する。防衛省によれば日本はF-2後継機の決断時期が近付く中「多数国と協議中」で機材海外調達、国産開発、国際共同開発の委sれかの選択に向かうという。
  5. F-2の用途廃止は2030年代中頃以降となる。来年夏までに後継機の選択が必要だが中国が影を落とす。
  6. 「もちろん中国の次世代戦闘機開発は承知しており、中国技術の先をいつも目指し中国に対する技術優越性はいつも必要だ」
  7. 国防産業は日本に比較的なじみのない分野で、従来は制約が強く研究開発では米国依存色が強かった。方針は最近方向転換され日本も国際共同を模索できるようになった。
  8. 「無論のこと政策を決めるのは政治家であり、われわれではありませんが、日本政府全体として輸出や海外向け装備品供与を進めていきたいと考えています」
  9. パリ航空ショーではP-1哨戒機が展示されている。P-3Cオライオン後継機として供用開始している機体だ。
  10. 「P-3は優れたセンサー技術を搭載しているので輸出には慎重な対応が必要です。P-1輸出の相手国要件は機体改修に必要な技術があり情報保全体制がしっかりしていること、さらに日本のパートナー国であることです」■


2017年6月21日水曜日

短信)パキスタンがイラン無人機を撃墜、JF-17初の実戦撃墜例


JF-17による実戦撃墜例はこれが初となりました。

A JF-17 Thunder fighter jet allegedly shot down the Iranian drone. ─ APP/File

JF-17 ─ APP/File

 

Iranian drone allegedly on spying mission shot down 'deep inside' Balochistan

イラン無人機がパキスタン国内でスパイ活動中に撃墜された

AP | Syed Ali Shah | Naveed SiddiquiUpdated about 5 hours ago


スパイ活動中のイラン無人機をパキスタン空軍(PAF)のJF-17サンダー戦闘機がバロチスタン州パンジグル地方で撃墜したと関係筋が20日明らかにした。
関係筋によると無人機は「パキスタン領空内部」に侵入しスパイ活動中にJF-17が撃墜した。
19日に現地治安部隊が墜落現場を発見し残骸を確保しているが、撃墜の日時は不明のままだ。
イラン無人機の撃墜は24時間で二例目となり、先に米主導連合軍がイラン製無人機をシリア南部で20日に撃墜したとの発表があった。
イラン軍参謀総長からは先にイランはパキスタン内部の「戦闘員安全地帯」を攻撃する用意があるとの発言があり、パキスタンの強い抗議を招いた。今年初めには戦闘員は国境を越えて移動したといわれる戦闘員によりイラン国境警備隊員10名が殺害されていた。■

短信)MiG、スホイが2019年に統合される


Russia’s aircraft corporation to merge MiG and Sukhoi into combat aviation complex

MiG、スホイの統合でUACに戦闘航空機事業体が生まれる

  June 20, 19:37 UTC+3

LE BOURGET (France), June 20. /TASS/
ロシアの合同航空機企業(UAC) はMiGおよびスホイ両航空機企業を単一戦闘航空機事業体として2019年に統合するとUAC社長ユーリ・スリュサアルが6月20日述べた。

「当社にとって2019年は企業形態を単一企業体に切り替える年であり、該当事業部はUAC傘下企業になる」とスリュサアルは述べた。これはスホイ、MiGから生まれる戦闘航空機事業の在り方についての質問への回答。UAC法人形態の切り替えは2019年末になるとも述べた。

「現在統合に向け作業中で参照するロードマップは2016年末に取締役会で承認済みだ」(スリュサアル)

ロシアの産業貿易相デニス・マンチュノフからは先に統合があってもMiG、スホイ両ブランドは残ストの発言があった。■


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http://tass.com/defense/952422