2017年11月5日日曜日

トランプ大統領は日韓中でこれだけ使い分けが必要だ


本日から大きな外交ショーが始まりますが、日本ではともすれば日本ではトランプ大統領の動静ばかりに注目しがちで大きな文脈を見逃すことが多くメディアでもピント外れな論評が出そうで不安ですね。大事なのは本質であり、宿泊日数が長い短いとという外形ではないはずですが。


Trump Trip: Listen to Japan, Talk to South Korea and Dictate to China

トランプ歴訪にあたり日本には耳を傾け、韓国へは話しかけ、中国には指図せよ
U.S. President Donald Trump talks with reporters accompanied by First Lady Melania Trump as they depart the White House for a trip to Asia, in Washington D.C., U.S. November 3, 2017. REUTERS/Carlos Barria

November 3, 2017


  1. 地政学者はものごとを複雑にするのがお好きなようだがドナルド・トランプのアジア初公式訪問は実に単純だ。今回5カ国を歴訪するが最初の三カ国が最重要で、日本には耳を傾け、韓国とは意見を交換し中国には指図すればよい。
  2. 特に最初の訪問先選択が絶妙だ。米指導者がアジア歴訪を北京から始めた時代が去ったのは幸いというべきだ。
  3. 「ジャパンパッシング」がここ数年続いており日本首相は米大統領に北朝鮮問題で断固たる決心で政策実施を求めてきたが傲慢で注意散漫かつ怠慢なる米指導者が助言を無視したことで米国民の今日の不安が生まれた。今こそワシントンンは成績不振記録の更新を終了すべきだ。
  4. トランプは安倍晋三首相と良好な関係を構築しており、首相の言い分に普通に耳を傾けられるはずだ。また安倍首相の要請で北朝鮮工作員により1977年に新潟から拉致された横田めぐみさんの両親と面会するのは健全な印だ。金正日は2002年に小泉純一郎首相との会談で日本人13名の拉致を認め、横田さんもその一人だった。少女含む多数の誘拐は金政権のグロテスクな一面であり、歴代の日本首相が繰り返し米側に伝えてきたように北朝鮮が大量破壊兵器を保有する事態は看過できないことを思い起こさせてくれる
  5. したがって日本ではトランプは耳を傾けるだけでよい。
  6. 韓国では文在寅に話しかけるべきだ。5月に就任した「進歩派」の韓国大統領は北朝鮮を援助、貿易、投資で支援しようとしている。これでは金正恩はもっと強力な兵器を開発しかねない。今のところトランプは文の「太陽政策」あるいは金一族支配体制の「関与」の実行は思いとどまらせているが最終的ではない。文は機会あれば北へ架け橋を作ろうとするだろう。
  7. 今のところ金正恩は文提案を拒絶しているが、いつ方向転換し韓国と手をつながないとも限らない。他方でトランプ大統領は北朝鮮の「協力」申し出をはねつけてでも米政策を支持するほうが理に適うと文大統領に納得させる必要がある。
  8. また文大統領と対中関係を話す必要がある。かれこれ一年以上にわたり北京が醜い動きを展開しまずTHAAD装備展開をやめさせようとし、次に実際に懲罰を下してきた。中国が警告を無視してTHAAD配備に進んだ韓国に激怒しているのはレーダーが中国国内も探知するためもある。
  9. 中韓外相がこの問題を棚上げする共同声明を10月31日に出しており、文が中国に密約し火消しを図ったとの観測がある。いずれにせよカーネギー精華グローパル政策研究所Carnegie Tsinghua Center for Global PolicyのTong Zhaoは共同声明は米韓同盟を弱体化させようという中国のたくらみだとCNNに解説していた。トランプは親中姿勢を一貫して隠さない文の口から再確認を得る必要がある。
  10. その後で耳を傾けてから米国が防衛してくれるのかとの韓国の不安を解くべきだ。ここ数年、韓国政治家多数が米国が大国の地位を守れるのか不安に感じている。定期的にB-1を朝鮮半島上空に飛行させるのは韓国と日本へのメッセージである。
  11. そこでソウルではトランプは話す聞く双方が必要だ。
  12. 北京ではトランプは話すことに集中すべきだ。中国外交筋が好む言い回しで「結び目は作った本人がほどく必要がある」というのがあるが、北朝鮮へ二世代あるいは三世代にわたり支援し核兵器、弾道ミサイルの完成まで実現させたのは中国だ。でぶっちょ三世と呼ばれる体重300ポンドの指導者から恐ろしい手段を除去できるかは中国次第だ。
  13. 習近平は結び目をほどける。閉幕したばかりの中国共産党第19回大会で地位を強固にした習に言い訳はできない。
  14. 中国に相当の影響力を行使させる必要がある。中国は昨年北朝鮮の対外貿易の92.5%を占め北朝鮮の原油需要の90%を破格条件で提供している。北朝鮮の食糧需要では三分の一以上おそらく45%を中国が供給しているのが注目されるのは今年のかんばつが2001年以来の深刻だからだ。航空燃料では中国が100%供給する事態が数年続いている。
  15. このように中国は北朝鮮に多様な提供をしているが、最重要なのが北朝鮮高官に米韓また国際社会からの安全でいられるとの意識を与えていることだ。
  16. 中国と言えども金正恩の考え方を変えさせることは不可能かもしれないが、中国は北朝鮮兵器や金正恩本人を支持し続けられないと伝えることができるはずだ。
  17. 中国観測筋は金正恩が中国の意向に逆らったが特に大きな影響は出ていないと述べるが、最近の出来事で別の結果が出ている。金正恩はミサイル開発を加速化していたが、9月15日を境に発射していない。
  18. では党大会から静かになっている状況をどう利用すべきか。北京が平壌に中国政治上最重要行事のため挑発行為を差し控えるよう告げたのか。あるいは北朝鮮も中国を怒らせる事態は避けようとしたのか。いずれにせよ挑発行為がないことから中国が真剣になれば北朝鮮を制御できることを証明している。
  19. 金正恩が党大会に熱烈な祝辞を送ったのは中国が北朝鮮を制御できる別の証拠なのか北朝鮮が自らの立場をわきまえている証だろう。
  20. 歴代米政権は中朝による欺瞞否定戦術に翻弄されてきた。トランプは中国に対して圧倒的に強い経済財政力を行使することでだまされることを避けられるはずだ。
  21. トランプは習近平に結び目をほどけ、しかも今すぐに行えと伝えるべきだ。■
Gordon G. Chang is the author of The Coming Collapse of China. Follow him on Twitter @GordonGChang.
Image: U.S. President Donald Trump talks with reporters accompanied by First Lady Melania Trump as they depart the White House for a trip to Asia, in Washington D.C., U.S. November 3, 2017. REUTERS/Carlos Barria​

スコーピオンのサウジアラビア売込みは成功するのか、ドバイ航空ショーに注目


以前から中東某国からの引き合いがあると豪語してきたテキストロンですがまだ成約への道は遠いようです。米空軍の軽攻撃機実証では芳しくない評価だったようですが何が問題だったのでしょうか。


Saudi Arabia Puts Textron's Scorpion Light Attack Jet Through Its Paces 

サウジアラビアがテキストロンのスコーピオン軽攻撃機に関心を示す

Could the Kingdom be the adaptable jet's first customer? 

同王国がスコーピオン初の採用国になるのか



TEXTRON AIRLAND
BY JOSEPH TREVITHICKNOVEMBER 3, 2017

  1. サウジアラビアがテキストロン・エアランドのスコーピオン軽攻撃機の評価を開始した模様だ。ただし残虐なイエメン介入をやめる兆候がない同国へ反感が広まる中で商談は難航しそうだし、破談の可能性もある。
  2. 飛行経路追跡ウェブサイトで王立サウジ空軍のキングファイサル航空基地を2017年11月に離陸するスコーピオン実証機民間登録番号N532TXを発見した。FlightGlobalが砂漠上空を飛ぶ同機がを先に確認しており、テキストロンが今年のドバイ航空ショーに出展するとの観測がある。ショーは11月12日開幕する。
  3. 「スコーピオンの性能は(サウジの)要求にぴったりです」とテキストロンCEOスコット・ドネリーScott Donnellyが2017年7月に報道陣に語っていた。商談は「まだ初期段階」と述べ、正式商談ではないと強調していた。
  4. だがサウジはスコーピオンにぴったりな販売先と言える。ドナルド・トランプ大統領が同国を2017年5月公式訪問し両国は1100億ドル相当の武器売却で合意していた。
USAF
スコーピオン試作機N532TX
  1. うち20億ドルが「軽量近接航空支援」機材の想定だった。内容は不明だし、サウジが何機調達する想定かわからない。
  2. 販売提案はいわゆる「意向書」の形で「将来の防衛能力整備の可能性」に関心を表明した同盟国への米政府の対応だ。案件は最終ではなく最後には議会および国務省の承認が必要がある。
  3. テキストロンがスコーピオンのサウジ売り込みに力を入れているのは間違いない。同社は2012年に同機開発を開始し2013年12月に試作機を初飛行させたがまだ顧客がない。
  4. 米空軍は軽攻撃機(OA-X)候補各機の実証を2017年8月30日に終了した。ただし、空軍は同機が第二段階実証に進むのに必要な性能を有していないと明確に述べている。ただし第二段階はまだ実現していない。
  5. テキストロンが自社資金で始めた同機事業は運用経費、保守点検経費ともに低水準にすべく複合材や民生既成部品を多用し「プラグアンドプレイ」のモジュラー構造のため必要に応じエイビオニクス他を将来の高性能化に対応して搭載できる。エンジンは既成品のハネウェルTFE731ターボファン双発で民間ビジネスジェットと共通だ。
  6. スコーピオンは競合機より大型で重量も大きい。テキストロン自身のAT-6ウルバリン、知名度が高いエンブラエルのスーパーツカーノはみな単発ターボプロップ機だ。その他に農薬散布機を原型にした競合機もある。
  7. スコーピオンには比較的大型のミッションベイがあり、偵察カメラ、レーダー妨害装置、他の搭載が可能。実証では引き込み式センサータレットを機首下に搭載し電子光学赤外線フルモーションビデオカメラ数台を付けていた。
  8. 主翼下パイロン6箇所に各種兵装の搭載が可能だ。精密誘導爆弾、ミサイル、ガンポッドだ。2017年6月にはテキストロンはGBU-12/Bレーザー誘導爆弾、高性能精密攻撃兵器システムII(APKWSII)の70mmレーザー誘導度ロケット弾を実弾発射している。さらにGBU-39/B小口径爆弾(SDB)、共用直接攻撃弾(JDAM)、複合モード対応可能のブリムストーンミサイル、GBU-53/B(SDBII)の搭載も検討中だ。
TEXTRON AIRLAND
APKWS IIレーザー誘導ロケット弾を発射するスコーピオン試作機
  1. サウジに導入する場合は目標捕捉センサー一式と精密誘導兵器の組み合わせが理想的で、イエメン作戦に低経費で投入できる。イエメンではイラン支援を受けたフーシ反乱勢力等と戦っている。現在はF-15Sイーグルおよびユーロファイター・タイフーンの他可変翼式のパナヴィア・トーネードを投入して戦闘員を攻撃している。
  2. AT-6やスーパーツカーノと言った小型機と違い、スコーピオンは自機防御装備も搭載可能なのでイエメンの対空火砲に対し残存性が高い。実際のフーシの防空装備の性能は不明だが、旧イエメン軍のSA-2地対空ミサイルを入手している可能性がある。また携帯型防空装備(MANPADS)が相当数行き渡っている。
  3. サウジ軍はイエメン介入をはじめた2015年以降に十数機の固定翼機回転翼機を喪失している。直近ではタイフーン一機が10月に墜落しており、フーシが撃墜を主張しサウジ側が否定するのはいつも通りだ。サウジはモロッコ、バーレーン、UAEの軍用機にも被害が出ていると認める。
  4. 対地捜索レーダーを搭載すればスコーピオンなら低空低速国境パトロ―ル飛行にも最適で小舟艇や無人機の侵入に対応できる。現在は気象レーダーしか搭載していないがレオナルドのグリフォやEltaのEL/M-2032といった軍用パルスドップラーレーダーを搭載すれば理想的だろう
  5. サウジ側は同機の能力追加を評価するのではないか。フーシは国境を越えて活動を展開している。連合国側艦船に対艦ミサイルやバウ発物をつんだ遠隔操縦ボートで攻撃したほか紅海とアデン湾をむすぶマンデブ海峡で機雷敷設もしている。自殺攻撃無人機で防空装備の攻撃も狙ってくるだろう。
  6. スコーピオンに精密攻撃可能なAPKWSIIロケット弾と自動機関銃ポッドを搭載すればコストで効果的でかつ柔軟に脅威対象を対処できる。軽攻撃機部隊はサウジ空軍の高性能機の負担を軽減し本来の任務であるイラン警戒に投入できる。
  7. だがサウジとテキストロンの商談ではイエメン情勢が大きく影響し政治面に左右されそうだ。サウジが意図的に医療施設や民間インフラを国際法の保護を無視して攻撃したようだ。このためイエメンでは飢餓と伝染病の蔓延が発生した。
  8. このため米議会の共和民主両党議員はサウジ主導の軍事作戦の支援を快く思わない傾向が強まっている。米軍は空中給油、補給活動、情報共有を提供している。11月には下院議員数名がこの問題を取り上げアルカイダテロリストまたは「関連勢力」とは無関係の相手に対する米軍の関与を終了させようとしている。この定義だとフーシが対象外となる可能性がある。
  9. 下院版の国防予算案にも同様の条項が入っている。上院版にないため今後両院で最終形への調整が必要だ。
  10. このためサウジ作戦への米支援には政治面の要素が大きく作用し、スコーピオン導入も例外ではない。トランプ政権はオバマ大統領が課したサウジアラビアへの軍事装備提供の制限を撤廃しており、サウジの期待する内容には十分こたえられるようだ。
  11. サルマン・ビン・アブラジズ・アル・サウド国王King Salman bin Abdulaziz Al Saudが2017年10月にモスクワ訪問に踏み切り各種装備導入で合意を取り付けている。米国が躊躇するのならクレムリンにかわりにするだけだ。
  12. 双発練習機ヤコブレフYak-130がスコーピオンの競争相手になりそうだ。サウジ-ロシア間では航空機は具体的な想定はないようだが、クレムリンには以前からの米国の中東同盟国に高性能機材を売り込む絶好の機会がやってきたわけでUAEにはすでにSu-35SフランカーE十数機の販売が進行中だ。
  13. サウジアラビア向けのテスト飛行とは関係なく、テキストロンはドバイ航空ショーで重要な発表をしそうだ。■

2017年11月4日土曜日

★新しい日本の防衛力整備>日米合同運用部隊が生まれたらこうなる



今回の総選挙が国内の何とか学園が争点ではなく、日本に期待される国際的な役割を本当に日本が果たす意思があるのかを試されていたことのですね。自分の議席を守ることにきゅうきゅうとして平気で主張を変える人も現れたようですが、日本の安全は国境線ではなく利益線にあることは明らかです。どこまでの視野と構想力を持っているのか政党別に潜在能力を試されたのです。


Japan's Military Provides America with New Strategic Options

日本の軍事力が新しい戦略選択肢を米国に提供する

Japanese Prime Minister Shinzo Abe reviews Japanese Self-Defence Forces' (SDF) troops during the annual SDF ceremony at Asaka Base, Japan
November 1, 2017


選挙大勝で安倍晋三首相と自民党はいよいよ日本国憲法第九条の改正に向かうと見る専門家が多いが改正は以前ほどの重要度は失ったと見られ、中国、北朝鮮の動きで安倍首相に従前の制約を緩和する作用をもたらし選挙勝利にもつながった。第九条に手をかけなくても日本が手に入れた兵力放射能力は日本の外交政策を支える手段となり、同時に同盟各国にも裨益することで域内安定度が高まっている。米軍規模が望ましい水準以下になっている現状からすれば日本の軍事力強化は日米両国に望ましい効果が生まれる。

憲法第九条をめぐる変遷
今日の日本は世界第七位の軍事支出国で、イージス搭載水上艦、高性能通常型潜水艦、ヘリコプター駆逐艦(米式にいえば両用艦)、F-35があるが日本では軍事力となるとまず憲法に触れるのが通常だ。70年前に制定された第九条が以下定めている。

  1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない

 第二次大戦敗退直後に起草されたこの内容は将来の帝国主義的野望を未然に防ぐ目的があった。当時憲法改正にあたった芦田均は再武装化に含みを持たせる文言を最終案とした。1950年に第九条の解釈を見直し「警察予備隊」創設に動いた。続いて再度の見直しで保安隊となり、三回目の見直しで自衛隊(SDF)が発足した。陸海空部隊は第九条をそのまま解釈すれば憲法違反と言われても仕方がない存在だ。安倍首相は2014年に第四回目の解釈変更を明示、集団的安全保障を限定的ながら導入した。日本の防衛装備の進展を追う向きはこの点を見逃しがちで世界有数の実力を有する自衛隊のこの先を見通せないままだ。
 解釈変更の背景には日本を取り巻く安全保障環境の変化とともに日本自身の防衛力整備の加速化がある。周辺国の動きがSDFを伸ばしているともいえる。2005年の防衛大綱では中国を潜在脅威と表現したが、これは1976年以降初めての記述だった。2016年のスクランブル回数は4年で3百パーセント増(851回→1168回)で中国機の動向に呼応したものだ。2013年度防衛白書では中国とともに北朝鮮DPRKの動向にも懸念を表明しとくにDPRKのミサイル核開発を日本自身の安全への脅威としていた。
 自衛隊予算の変化そのものがDPRKと中国への対応のあらわれだ。2011年度予算での最優先事項は「効果的な抑止力と対応」とされ最上位優先事項の抑止効果は「情報収集、哨戒、監視の各行動」「遠隔島しょ部での各種状況の対処」「サイバー攻撃への対処」だった。これが2012年度には「近隣海洋部及ぶ上空の安全確保」「遠隔島しょ部への攻撃への対処」「サイバー攻撃への対処」にかわり、2017年度では再び「日本周辺の海域空域の安全」になり、「遠隔島しょ部への攻撃」に対処し同時に弾道ミサイル攻撃へも対処するとした。SDF予算は2012年以降毎年増額されている。こうした変化で大規模かつ近代的戦力を整備する親密な同盟国が米国に生まれている。日本政府の国際面の関心事項は米国と相似し、そのひとつに「安定、透明性、予測可能性を実現する国際環境」の希求がある。

日米合同軍事作戦で生まれる効果とは
 このような同盟国があることは国益実現のため展開できる兵力に限界がある米軍には頼りになる。「米国の財政が限定される中で同盟国・協力国に一層多くを求めるようになっている」とデレク・レヴァーソンDerek ReveronExporting Securityで述べている。あるべき規模より小さいのが米海軍で拡大の可能性はないのに需要は高まるばかりでアジア太平洋でこの傾向が強い。その解決策が海上自衛隊(JMSDF)との共同運用で、艦艇数を増やさずに兵力投射需要を実現できる。両国の方向性が合致すれば効果があがる。米海軍はJSMDF艦船115隻からの恩恵を受ける。
 共同作戦運航により兵力投射効果が上がるだけでなく域内抑止効果も引き上がる。両国合同部隊はプレゼンスもさることながら中国やDPRKへの対応力も上がる。たとえばJMSDFの新鋭ヘリコプター駆逐艦、いずもおよびかがの両艦はワスプ級強襲揚陸艦に相当し、日本はF-35Bを未導入だが、両艦は同機運用が可能なはずだ。そこで海兵隊のF-35Bを搭載すれば自衛隊は第九条に従い防衛任務に専念しつつ海兵隊は兵力投射手段が新たに手に入る。抑止効果を考えれば中国あるいはDPRKが攻撃してくればただちに両国の対応を招くことになる。自衛艦を攻撃すれば米海兵隊装備・人員の喪失につながりかねない。他方でF-35に攻撃を仕掛ければJMSDFが海兵隊機材の防御に動く。補完の抑止力シナリオでは米空母の護衛実施をJMSDFに増やす、また自衛艦を米海軍の航行の自由作戦に参加させることがある。いずれにせよ抑止効果と戦力規模が増えるだけでなくDPRKや中国の挑発行為は強力な軍事力を有する日米両国の即座対応につながるリスク要因となる。

日本の軍事力増強のもたらす意味
 安倍政権にはSDF増強を続けながら効果的な軍事スタンスを取るのであれば大きな課題が二点残る。まず、日本国民の支持を取り付ける必要がある。憲法解釈の変更や安全保障法案では相当の反対が見られた。安倍政権に批判的な向きからは2014年、2017年つまり再解釈と憲法改正方針の発表から日本国民が大胆な軍事力重視の姿勢は支持していないと見る向きがある。それでも中国とDPRKが一向に行動を収束する気配がないことからここにきて反対姿勢は減ってきたようだ。2014年と2017年を比較するとデモ参加者は減っている。また各種調査では憲法改正の支持は反対を上回っており、ある調査では93パーセントがDPRKを脅威とみなしている。安倍首相が今回選挙に大勝したことで日本国民は大胆な政策を受け入れやすくなっているといえよう。
 二番目は日本が軍事行動を増強した際に近隣国が示す反応だ。日韓関係が緊張する可能性があり、韓国が第二次大戦にまでさかのぼる日本の行いを繰り返し抗議していることを考えると日本の軍国化として非難しそうだ。だがここでもDPRKの動向ですべて吹っ飛ぶ可能性はある。安倍首相が2015年に慰安婦問題で正式謝罪したことで日韓両国は相互訪問を再開し、DPRK向け制裁措置強化や日米韓三カ国協力体制の話もある。韓国が中国の抗議の中で米国THAAD装備導入に動いたことで共通基盤づくりにつながるかもしれない。日本はここではシステムパートナーの地位を確立している。日韓間に確かに緊張があるが、DPRKや中国の脅威を両国がともに受けていることから対立どころではないはずだ。

結語
 安倍政権がSDFの能力拡大に努めた結果、第九条の再解釈を進める動きと所属党の選挙大勝とともに、日米両国にアジア太平洋地区の安定と抑止効果を軍事行動を通じて引き上げる好機がやってきた。両国の合同戦力は数の上でも抑止効果でも中国やDPRKの行動に単独対応する場合より効果的に対処できる。憲法改正がなくても両国の軍組織は目的を共有する限り中国やDPRKに対応する場合で共同行動の制約はない。合同部隊を節度を持って運用すれば望ましい域内秩序を守りつつ日本の防衛大綱が言う「安定、透明性、予測可能性のある国際環境」の促進維持が可能となるはずだ。■
Jonathan W. Kuntz is an active duty major in the U.S. Air Force, a fighter pilot and student at the U.S. Naval War College. These represent my own views and do not represent the official views of the Department of Defense.
Image: Reuters


2017年11月3日金曜日

エネルギー価格事情と地政学を結びつける新著「Windfall」


ここのところ原油価格はバレル当たり50ドル台前半で比較的安定しています。世界的な株価上昇の背景に原油価格の心配が必要がないのもあるのでしょう。ただし、いつまでも続かないからこそ、今がWindfall=絶好の好機と米国はとらえるのでしょうか。中東湾岸諸国さらにイランも再び影響力を強める時代がくるのでしょうか。あるいはそれまでに非石油文明が根付くのでしょうか。これからが見ものです。


How the New 'Energy' Affluence Strengthens the United States

エネルギー潤沢時代にあり米国の国力は強化される


November 2, 2017


  1. ドナルド・トランプ大統領はイランに対して制裁を発動させると先週発言して脅かした。イランはOPEC三番目の石油生産国で市場は迅速に反応した。中東で緊張が生まれるのか、外交政策とエネルギー市場の関連に関心が集まった。
  2. ハーヴァード大教授メーガン・オサリバン Meghan O’Sullivan の新著Windfallがこの点を真正面から取り上げ、米国が新たに手に入れたエネルギー自立から米国衰退論へ反論している。
  3. 外交政策をエネルギーの視点で研究する第一人者オサリバンは世界はエネルギー枯渇の恐怖からわずか数年でエネルギー潤沢状況に移行したと明らかにしている。新技術で原油は過剰生産となり、ここに天然ガスの過剰供給が加わる。水圧で岩盤を破砕するフラッキング技術のおかげで米国は今や世界最大の原油・天然ガス生産国だ。
  4. オサリバンの主張は新事態で混乱が生じたのではなくマーケット構造の変化で国力影響力の行使方法が変わった国が多数生まれたというものだ。エネルギー供給過剰でロシア、ヨーロッパ、中国、中東の政治状況が変わった。OPECの原油価格統制機能が揺らぎ、米国の敵ロシアが弱体化した。エネルギー過剰により伝統的な提携関係が逆転し、新しい協力関係のきざしも中国中心に出てきた。
  5. この本の真の価値はオサリバンが外交政策およびエネルギー市場を包括的に見る視点を加えた形でエネルギー問題を提示してくれたことだ。オサリバンはエネルギー地政学には外交政策だけ見ているのでは不十分との仮題を出発点としている。つまりエネルギー供給過剰の現状を外交政策の視点からだけで見るとあらたにエネルギーで自立した米国が中東から撤退するように見える。だが中東での進展の状況はこの仮説の反対なのだ。
  6. オサリバンが提供してくれる別の視点が必要だ。オサリバンの著作はホワイトハウス中枢での外交政策形成過程や国際交渉の経験に裏付けられている。外交政策とエネルギー市場を組み合わせてオサリバンは驚くべき視点もいくつか提供している。
  7. 常識と反するが、オサリバンはシェール革命が米国で進んでも中東の退潮にはつながらないとする。原油価格低下で中東は長期的に今より重要な原油生産地になるという。中東以外の各地で原油生産コストが上がるのでゆくゆく原油生産が商業的に成り立つのは湾岸だけになる。そうなると原油は中東に依存度を高めることになる。
  8. 世界のエネルギー資源に関する著作はたくさんあるが、エネルギーの現実を地政学とむすびつけた本はすくない。オサリバンのWindfallは実務家、政策決定者、研究者に必読書になった。外交政策・エネルギー政策の通念を改めさせる本であり、新エネルギー事情を米国がどう利用すべきかを示している。■
Juergen Braunstein is a research fellow at the Belfer Center’s Geopolitics of Energy Project, which is headed by Meghan O’Sullivan.
Image: The setting sun illuminates the sky behind wind turbines of a wind park near Neusiedl am See, December 22, 2014. REUTERS/Heinz-Peter Bade


興味をひかれる方はamazonで同書を入手されてはいかがでしょうか。

Windfall: How the New Energy Abundance Upends Global Politics and Strengthens America’s Power Hardcover – September 12, 2017


攻撃型原潜の修理工程が消化しきれない米国の事情


原子力潜水艦は建造してもその後が大変ですね。特にこれまでは燃料交換作業が前提の設計で酷使されていればあちこちが痛みます。退役させるだけでも大変で、ロシアは簡単に海に捨てていました。(日米が資金技術援助して後日処理しています)中国はあとで大変なことになるのではないでしょうかね。国防装備の整備とは経済インフラあってこそ可能と改めてわかるお話ですね。


15 Subs Kept Out of Service: 177 Months Of Drydock Backups

補修作業待ち潜水艦15隻が戦力外で工程遅延合計は177か月に


Navy photo
ドック入りしたUSSグリーンヴィル
By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on October 31, 2017 at 1:54 PM
WASHINGTON:攻撃型原子力水艦の保守点検作業で15隻が順番待ちで、合計177か月相当の作業ができない状態になっており、海軍の打開策が予算不足で立ち往生していると下院軍事委員会スタッフがBreaking Defenseに紹介している。
  1. 待ち時間合計は潜水艦一隻なら供用15年間分に相当し、2018年に補修作業に入る艦が現役復帰するのが2033年になるようなものだ。
  2. 予算案を通過させ支出上限を設けることができるのは議会だけだと同スタッフは指摘の上、解決策の一部は海軍の手にあるとする。民間造船所への業務委託だが海軍には気に入らない選択肢だ。
  3. 潜水艦多数が惨めな状況になっている。好例がUSSボイシーでノーフォーク海軍工廠で大修理を2016年開始の予定だったが今も順番待ちだ。政府は原案を断念しニューポートニューズ造船へ委託事業385.6百万ドル相当の契約を交付した。同造船所は海軍工廠をはさんだジェイムズ河の対岸にある。ボイシーは当初予定より31か月遅れてなお供用不能の状態だ。
  4. だがボイシーだけではない。下院軍事委員会調べで他14隻で影響が出ており、遅延規模は2か月(USSコロンビア、モントペリエ、テキサス)から21か月(グリーンヴィル)までばらついている。保守点検作業をしないと各艦は安全潜航できず現役復帰できない。USSスレッシャー事故(1963年)以降、海軍はこの手順を厳格に守っている。「海軍原子炉部に規則改正を求めるのは至難のわざだ」とスタッフがこぼす。
Sydney J. Freedberg Jr. graphic from Navy data
  1. 海軍に緩和策があるが抜本解決策はない。予算がもっとあれば工程を調整し、有効証明の期間延長他を実施でき、修理作業も迅速に実施でき潜水艦部隊全体の待ち時間も81か月に短縮できるはずだ。
  2. 7年近くも海上で作戦できないことになる。各艦で供用期間の23パーセントをみすみす無駄にしていることになる。7年ムダにするのは2018年予算の新造艦から一隻を外し復帰まで2025年まで待つことと同じだ。
  3. 上図で数字を示した。だがここで見えないのは別のところへのしわ寄せだと議会スタッフは怖いことをいう。中間時点の点検修理を受けられない艦に加え耐用年数が切れた老朽艦の退役が思うようにできないことだ。
  4. 原子力推進艦では供用期間が終わったからと言ってポイと捨てるわけにはいかない。原子炉の稼働中止だけでも相当の手順があり、その後放射能を帯びた艦内部品を除去し、その他放射能と無縁の残り部分を解体する。
  5. さらに原子力潜水艦の耐用年数が終わりに近づくとが炉心出力が低下し、技術科員の尽力でやりくりしている。解体を待つ旧式艦は単純に係留されているわけではなく、ほぼ半数の乗組員が配属されたままなのだ。退役が遅れると予算とともに高度に訓練をうけた乗組員が無駄になる。
General Dynamics
エレクトリックボートの潜水艦建造施設はコネチカット州グロートンにある
  1. そのため潜水艦補修作業の緩和策が実施可能となっても、旧式艦の退役問題が残ることとなる。だが緩和策の実施そのものが困難になっている。一か月前に始まった2018年度予定の補修作業三例で予算手当がついていない。議会はその場しのぎ策の継続決議を通過させて政府支出を自動調整させるため今回のような緩和策向けに回すゆとりがない。議会が予算を認めても今度は予算管理法(BCA)の上限にぶつかり、各種即応体制の維持に必要な予算が確保できない状態が続いている。
  2. 現時点の海軍の問題の原因は過去のBCA起因の予算削減や継続決議にあると下院軍事委員会スタッフは見ており、レーガン時代に建造された艦が多数退役を迎えているのも別の原因だ。今日でも海軍の任務量は変わりがないが隻数は減っているので各艦の展開期間が長くなっている。その結果、当初の修理予定が実施できない艦がふえており、修理作業が混乱を避けられずだけでなく艦の疲弊度が高くなり故障箇所が増えるため作業工程がさらに伸びる。
  3. 攻撃潜水艦部隊でことを複雑にする要因が原子力推進だ。整備作業できるのは装備を完備し訓練を受けた人員がそろったわずか数か所で海軍は内部作業を好むが、原子力対応施設は限られており、さらに弾道ミサイル潜水艦や空母の作業が優先される。点検修理日程がミサイル原潜や空母で変更されると攻撃潜水艦はリストからはずされる。
  4. このため海軍はついにボイシーで修理点検をハンティントン=インガルス工業のニューポートニューズ造船所(ヴァージニア州)に外部委託した。同所は対応可能な民間施設二か所の一つでもう一か所はジェネラルダイナミクスのエレクトリックボート(ニューイングランド)だ。民間施設では作業の余力があり「今後5年間」は大丈夫と下院軍事委員会スタッフは見ている。その後は次期ミサイル原潜コロンビア級の建造が入るため余裕はなくなる。
  5. 民間施設での作業は高価になるのでボイシー除き外注の必要はないと海軍は議会に伝えているが、下院軍事委員会スタッフは真に受けていない。ボイシーは現在機関系の大修理中だが議会スタッフは「潜水艦の供用期間通じて一番複雑な作業が外部委託できる」とし、「今手にしている三年五年の戦略的な機会」を使えば民間施設を活用できるのに使わない手はあるだろうかと述べている。■

グアム攻撃演習を繰り返す中国は北朝鮮より懸念すべきではないか



北朝鮮ばかりに目をむけるのではなく、本質的に警戒すべきちゅごくの軍事力、作戦構想、行動を意識しなければアジア太平洋の安全保障は片手落ちになるよね、という当たり前の話なのですが、統合参謀本部議長に同行する報道陣に背景説明する米関係者の力の入れようがわかります。日本の記者は同じ話を聞いても勝手に解釈した「解説」をしてしまうのでしょうか。一時ほどではありませんが、中国の取り扱い方にはまだ遠慮した内容がめだちませんか

China has practiced bombing runs targeting Guam, US says

中国はグアム空爆の予行演習をしていると米国が発表

U.S. military officials are concerned over China's increasing air power in the Asia-Pacific region. One activity by the Asian nation is proving especially worrisome.
米軍関係者は中国空軍力がアジア太平洋地区で強化されている現状に憂慮している。

By: Tara Copp    1 day ago

JOINT BASE PEARL HARBOR-HICKAM, Hawaii — 中国が米領グアムを標的に爆撃演習を行い、その他行為とともに米側に中国が北朝鮮以上に太平洋地区最大の心配の種だと改めて感じさせている。
  1. 南シナ海人工島への中国による軍事施設構築はよく知られているが、中国は同時に大規模の戦闘機部隊を整備し、東シナ海、南シナ海さらにその先で連日のように演習を行っていると米軍関係者は指摘している。中国の非軍事手段も米国の作戦実行を困難にする手段と見られている。
  2. 米関係者が中国の過熱する動向を伝えたのは統合参謀本部議長ジョセフ・ダンフォード大将Chairman of the Joint Chiefs of Staff Gen. Joseph Dunfordの視察旅行に同行する報道陣向けブリーフィングでの席上だ。
  3. 同関係者は北朝鮮の脅威が高まっているが同国との武力衝突は「米側の勝利に終わる」と楽観視しつつ対戦には「懸念している」と違いを明白にした。
  4. ダンフォード大将は「軍事力だけを見えれば中国はまだ整備中だがこちらが太平洋各地の同盟国の要望に応える力を維持する必要がある」と述べた。
  5. 昨年の日本による中国機へのスクランブル回数は900回を超え、中国は2013年に独自に防空識別圏設定を発表して範囲は日本のADIZと重複し、尖閣諸島も含んでいた。それ以降、空中での日中緊張が高まり、日本は那覇航空基地に戦闘機飛行隊2ケを移転させたと関係者は語る。
  6. 「今や連日のように中国の武装フランカーと日本機が対峙している」と関係者は相互に接近しているとし、米中間でも迎撃事例が増えているという。「PRC軍用機が米軍機を迎撃するのもごく普通になっている」と同関係者は中国の略称を使って述べている。
  7. また中国機の米防空識別圏への接近も増えており、H-6K「バジャー」爆撃機が射程1,000マイルの空中発射巡航ミサイルを搭載しグアム島周辺で米防空体制を試している。バジャー編隊は「定期的に」米領の範囲内に飛来して「PRCはグアム攻撃を訓練している」という。
  8. フライトの大部分は「危険飛行」など問題を起こさず発生しているが、同関係者によれば米太平洋軍ガイドラインにしたがい、万一の事態に備えつつエスカレーションを回避しているという。
  9. 米中間の軍組織同士の関係は今でもオープンだが、管理下にあると同関係者は述べている。米中関係者は年二回の軍事海洋協議合意に基づく会議で顔をあわせており、安全保障全般とともに侵犯事案を取り上げている。
  10. 中国の戦闘機・爆撃機の活動拡大は中国のめざす「戦わずに勝つ」作戦の一部として、中国の望む形を徐々に日常に根付かせる動きのあらわれだ。
  11. 圧力は他にもある。例として同関係者は人民解放軍海軍が15万隻もの民間漁船を指示し中国海軍と別に動員できると紹介した。中国漁船は統制の取れた動きでベトナム漁民に攻撃してきたと同関係者は説明し、パラセル諸島付近で衝突し沈没させている。中国は同地をベトナムから1970年に強奪し軍事施設を設置した。付近はベトナムが長年漁場としている。
  12. 総合すると中国の動きは拡大境界線の防御だと米関係者は憂慮している。「九段線で自国領土だと決めている地帯の実効支配準備が出来ている」と関係者は述べ、中国が南シナ海全体を中国の支配海域と認識している点に触れた。
  13. 静観すれば中国は「法に基づく秩序」つまり国際法や規範を基にしている各国を中国との安全保障上の同盟関係に鞍替えさせようとするだろう。ダンフォード議長は米国はそのような事態を現実にさせないと発言。「米国は太平洋国家だと自覚している」「米国は太平洋にとどまれないと述べる向きがあるが、米国のメッセージはあくまでも太平洋国家として太平洋を去ることはないとする。米国経済の将来はこの地域の安全保障、政治上のつながりと表裏一体だ」
  14. 説明に出た関係者全員が今のところ中国と差し迫った危機は存在しないと強調したものの米軍は太平洋で戦争が発生した場合の想定を考え直しつつある。
  15. 「まず空爆を受ける想定」と関係者は述べる。対応策のひとつに「迅速戦闘活動」 “agile combat employment”があり、日本国内の高性能戦闘機を分散させ、10ないし15か所の航空施設に分散させる。遠隔地なので補給活動が必要になる。米空軍は燃料の分散補給訓練を行っている。航空機を分散させれば中国も攻撃の優先順位で混乱するはずと見る。
  16. ドナルド・トランプ大統領の太平洋地区歴訪が今週後半から始まり、日本、韓国、中国、ベトナム、フィリピンを訪問する。ダンフォード議長は中国の侵犯事例と経済圧力が増える中で経済安全保障面の課題が出ていると指摘。
  17. 「中国と同じ見方をしたいのであればそれは勝手だ。だが原則に基づく国際秩序が中心にする必要がある。国益追求で米軍の力が試される。この点で妥協はしない」■

2017年11月2日木曜日

★B-2がミズーリ州上空で北朝鮮空爆を訓練して判明したこと



うーんこれはどうなんでしょうね。平文で交信したのは意図的で北朝鮮への示威もありますが軍の動向に関心を持つ一部の熱狂的市民通じたデモンストレーション効果もねらったのでは。それにしてもB-1がなぜ「死の白鳥」なのでしょう。どこかで誰かが混同して言い始めたことがいつの間にか定着していますね。B-2が行動を開始しても誰にもわからず、いつの間にか事態を解決することになるのかもしれませんね。今後は各種偽情報が出てきますのでお気をつけください。

Here Are Some Interesting Details About The Way U.S. B-2 Bombers Trained Over The U.S. To Strike North Korea
B-2編隊が米本土で北朝鮮空爆を演習して判明した興味深い側面とは

Oct 30 2017 -


  1. 異例な動きがミズーリ州上空で数週間前にあった。B-2編隊がDPRK標的を攻撃と無線交信していた。通常訓練なのか平壌へのメッセージなのか。
  2. 演習は2017年10月18日と19日の夜にCONUS(米大陸部)で展開された。
  3. B-2、B-52、E-3セントリーAWACS、KC-10、KC-135と多彩な機材が参加した空爆演習はミズーリ州全域で展開された。現地では軍用通信エアバンドでUHF、Mode-S、ADS-B通じ州内で聞くことができ、演習の様子が分かり一部興味深い詳細面が判明した。異例だったのは一機が「DPRK首脳部移動先と思われる場所」について無線交信しており伝えていた緯度経度を調べると場所はジェファーソンシティ空港の格納庫だったことだ。
  4. 以下は読者投稿。
  • 10月17日の夜、妻と屋外でのんびりしていると午後8時ごろB-2三機を目にし、KC-135らしき機体が針路080で高度25千以下を飛んでいた。軍用機の飛行はここ東カンザスでは珍しくない。
  • 軍用飛行中の交信を傍受が趣味で数年前にもB-2が上空に向かってくるのがわかり、慌てて外に出たことがある。B-2はコールサイン「BAT」を使っていた。(B-2ではREAPERやDEATHを使うことが多い)
  • 30分ほどして別周波数でB-2他の機体が入ってきた。なんらかの戦闘をシミュレートしているようだった。別のコールサインMOJOと交信しGBUを各目標に投下する調整中のようだった。目標の緯度経度を無線で読み上げていた。いそいでGoogle Mapで投下場所を記録していくとジェファーソンシティ空港の格納庫がその場所で着弾後の時間経過を話しているようだった。
  • 翌日の夜も演習がまだ続いているのかと受信機を横に置き、記録用ソフトウェアを準備しておいた。ほぼ同じ時刻の午後8時に爆弾投下がはじまり、MOJOとWOLVERINEが交信していた。目標の一つは緯度経度からミズーリ州オセイジビーチ空港の滑走路と判明した。ある時点で友軍機と交信し危険な150メートル爆弾投をやはりジェファーソンシティ空港の同じ格納庫を標的にしていた。
  • この地域でここまでの規模の演習は初めてだ。
  • 交信は暗号化されておらずアナログAM受信機でも聞こえた。興味を一番惹かれたのは「指揮命令書おそらくDPRK指導部の移動先」と述べていた部分だが、まだ録音の準備ができていなかった。
  • ミズーリ州のオザーク地方は北朝鮮に似ているのだろう。だが何かの準備なのか万一に備え実施してるのかは見極められなかった。
  1. この読者が録音した内容を5分ほどにしたものを聞くことができる。短いが10月18日に何があったのかがわかる。(原文を参照してください
  2. 演習は北朝鮮「VIP]への空爆を想定していたのか。
  3. 答えは多分にYesである。数か月を準備にあててきたのだろう。ミズーリ州上空でB-2を三機編隊で夜間運用するのは今回の演習の数日前に空中給油訓練があったが標準形といってよい。
  4. 奇妙なのは無線交信でDPRK標的と明瞭に言っていることだ。愛好家数千名が軍事通信チャンネルを傍受して軍事航空の動向を追っているのは公然の事実だ。このため実際の作戦では演習でも厳格な無線使用手順を踏み詳細情報が「敵」に流れないようにするのが通例だし、暗号化や周波数飛ばしがよく使われる。だが今回の演習はすべて暗号化せずに実施されている。これは意図的なのか過誤を防ぐためなのか。また通常は国名も決して口にせず実際の攻撃だと誤解されることのないようにする。一方で同機が3万ポンドのMOP(大型貫通爆弾)を投下する画像が最近公開されたのも潜在意識にしっかり埋め込まれている。
  5. Mode-Sトランスポンダーを使い演習参加機の一部が飛行経路追跡ウェブサイトで確認できた。ただし、このこと自体は特異とは言えない。ADS-Bを使う軍用機はRC-135、グローバルホーク、他戦略ISR機材と数多い。いずれもウクライナや朝鮮半島など機微な地区上空の飛行でADS-BとMode-Sを友に作動させるので民生既製品や一般公開飛行経路追跡ウェブサイトでその姿がわかるのだ。
Okie 33 was a KC-135 supporting the B-2s during their simulated air strikes.
An E-3 Sentry also supported the Spirit bombers during their simulated air strikes.

Top image: Todd Miller